コロナ禍による経済の停滞で、将来性と需要のあるIT業界への転職を考える方は多いでしょう。
そして、ITエンジニア未経験ならば「SES(エスイーエス)」がよいという話をよく聞くと思います。その一方で、「SESはやめとけ」という声も。
そこで本記事では、SESの概要・SESは「闇が深い」といわれる理由・SESで働くメリットなどを解説。IT業界やSESに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事は現役エンジニアによって監修済みです。
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この記事の目次
SES(System Engineering Service)とは
本章では、SESの概要や年収の目安を解説します。
- SES契約は客先にエンジニアの労働力を提供する
- SESの年収の目安
- SES営業とは
SES契約は客先にエンジニアの労働力を提供する
「SES(System Engineering Service:システムエンジニアリングサービス)」とは、クライアントに対して労働力を提供する契約形態のことです。
SESの場合、クライアントに指揮命令権はなく、おもにベンダー(自社の責任者)の指示のもとで業務を遂行します。
ただし、勤務態度や仕事の進め方などに問題があると、個人の評価のみならず自社の評判も落としかねないため、責任感を持って働かなければなりません。
SESの年収の目安
SESで働くSE(システムエンジニア)の一般的な年収の目安は、以下の通りです。
- 新卒:約300万円
- 2年目〜3年目:330万円〜350万円程度
- 4年目〜7年目:350万円〜400万円程度
- 8年目以降:400万円〜480万円程度
ちなみに、厚生労働省の『令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、社内SE・プログラマーなどに該当する「ソフトウェア作成者」全体の平均年収は、約550万円でした。
また、男性の平均年収は約571万円、女性の平均年収は約455万円で、いずれも日本の平均年収よりも高いという結果。
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SES営業とは
ちなみにSES企業には、「SES営業」と呼ばれる営業職があります。
これはプロジェクトの規模拡大や人材不足などの影響でエンジニアの労働力を欲している企業と、自社のSESで働くエンジニアを仲介する職種です。
つまり、自社のSESエンジニアを商品として営業活動を行います。SES企業が企業活動をする上で、SES営業は売上に直結する重要な存在といえるでしょう。
SES営業を行う上では、顧客がどんなエンジニアを求めており、顧客の要望を満たす技術や知見のあるエンジニアをうまくアピールできるかどうかが鍵です。
そのため、営業職であっても顧客に技術的な話を展開する必要があるので、営業力だけでなくエンジニアに必要な技術面も求められるでしょう。
SES・受託開発・自社開発の違い
SESとよく比較される、受託開発・自社開発との違いを解説します。
- SESと受託開発(SIer)の違い
- SESと自社開発の違い
SESと受託開発(SIer)の違い
受託開発(SIer:エスアイヤー)は、クライアントから依頼を受けて要件定義から運用保守までを一貫して行う企業形態です。
SESと受託開発を比較すると、以下の通りです。
- SESは成果物が必要ない、受託開発は成果物が必要
- SESの報酬は労働時間に対して発生、受託開発の報酬は成果物に対して発生
- SESは瑕疵担保責任がない、受託開発は瑕疵担保責任がある
ちなみに、瑕疵担保責任は2020年4月1日の改正民法の施行に伴い、正式名称が「契約不適合責任」に変更されました。
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SESと自社開発の違い
自社開発は、自社でサービスの企画から開発、販売までを行う企業形態です。
SESと受託開発を比較すると、以下のような違いがあります。
- SESはクライアントワーク、自社開発は自社で完結する
- SESは報酬が低め、自社開発は報酬が高め
- SESは安定した報酬が得られる、自社開発は業績に左右されやすい
SES契約と他の契約形態の違いについて
続いて、SES契約と他の契約形態との違いを解説します。
- SES契約と準委任契約は同じ
- SES契約と委任契約の違い
- SES契約と派遣契約の違い
- SES契約と請負契約の違い
SES契約と準委任契約は同じ
準委任契約は、委任者(クライアント)が法律行為以外の業務を受注者(ベンダー)に依頼する契約形態です。
また、準委任契約は委任者に指揮命令権はなく、受注者は仕事の完成の義務を負いません。
つまり、SES契約と準委任契約は同じ契約形態です。
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SES契約と委任契約の違い
委任契約は、委任者が法律行為に該当する業務を受注者に依頼する契約形態です。
エンジニアは法律行為に該当する業務はないため、委任契約を結ぶことは基本的にありません。
SES契約と派遣契約の違い
派遣契約は、派遣会社に登録して派遣先の企業で勤務する契約形態です。
SES契約と派遣契約の大きな違いは、指揮命令権の所在です。
具体的には、SES契約の指揮命令権はベンダー、派遣契約はクライアントにあります。
また、派遣契約には、「一般契約」と「特定契約」が存在します。
一般派遣
一般派遣は、派遣先の企業で決められた期間内で雇用が発生する契約形態。
派遣契約の終了と同時に雇用契約も終了し、次の派遣先企業と新たに雇用契約を結びます。
特定派遣
特定派遣は、派遣会社の正社員として雇用契約を結び、派遣先の企業で勤務する契約形態。
一般契約と異なり、次の派遣先が決まっていなくとも正社員としての給与が発生するため、安定性が高いです。
ただし、特定派遣が適用される業種は専門性が高いため、エンジニアに求められる条件は高いといえます。
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SES契約と請負契約の違い
請負契約は、受注者が仕事の完成を約束し、発注者が仕事の成果に対して報酬を支払うことを約束する契約形態です。
SES契約と請負契約の違いは、成果物に対する責任があるかないかです。
SES契約は、労働時間に対して報酬が発生するため、成果物に対する責任はありません。
一方で、請負契約は成果物に対して報酬が発生するため、成果物に対する責任が発生します。
「SESはやめとけ」など、SESの闇について語られがちな理由
SESには、デメリットや特有の構造的な問題が含まれています。
そこで本章では、下記のようなSESの「闇」と表現される部分を解説します。
- 給料が安くなりがち
- 指揮命令権の所在があやふやになりやすい
- 環境が変わることが多くストレスが大きい
- 帰属意識が薄れやすい
- 仕事を続けてもスキルアップできないことも
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給料が安くなりがち
「SESはやめとけ」といわれる理由の1つ目が、給料の低さです。
SESは、労働時間に対して報酬が発生します。そのため、成果物のクオリティがどれだけ高くとも、成果物に対するボーナスは発生しません。
また二次請けのSES企業になると、1社を挟むことによる中間マージンが発生して単価が下がり、結果として給与も低くなりやすいです。
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指揮命令権の所在があやふやになりやすい
2つ目は、他の契約形態と比較して指揮命令権の所在が明確になりにくいことです。
SESでは、クライアント側に指揮命令権はないと説明しました。
しかし、実際の現場では客先から作業指示を受けているという事例もあります。
そして、指揮命令権の所在を示す証拠は残しにくいため、指摘するのが難しいのです。
環境が変わることが多くストレスが大きい
3つ目は、客先や担当する案件を月単位・年単位で転々とすることが多く、順応するまでにストレスがたまることです。
SESで働く場合、一カ所にとどまって仕事をする機会は少ないかもしれません。そのため、新しく人間関係を築くのが苦手な方は、大きなストレスになるでしょう。
帰属意識が薄れやすい
4つ目は、自社に対する帰属意識が低下しやすいことです。
SESの場合、自社に戻るのは定例会や面談などのタイミングだけです。
したがって、自社と向き合う時間が減り、会社のビジョンとベクトルが合わず、転職につながる可能性もあるでしょう。
仕事を続けてもスキルアップできないことも
5つ目は、スキルアップにつながらない可能性があることです。
SESという性質上、案件の多くは大規模なシステム開発プロジェクトが多い印象。
そして大規模システムに採用される技術は、先鋭的なものよりも、多少古くても安定的に使える技術を採用するケースが多いです。
したがって、チャレンジングなプロジェクトで活躍したい、新しい技術に触れたいという方には向いていないかもしれません。
SESに向いているエンジニアとは
SESに向いているエンジニアとは、柔軟性が高く、新しい環境でも順応しやすい人です。
実際、SESのエンジニアは早ければ数ヶ月で次のプロジェクトに移ることもあります。長くても2〜3年で働く環境が変わるため、適応能力の低い人・環境が変わることにストレスを感じてしまう人は新しい環境や人間関係に慣れるのに苦労するでしょう。
一方でむしろ一箇所の環境に長く身を置くのが苦手な人や、新しい人間関係を構築していくことが好きな人は、SESのエンジニアとして働きやすいかもしれません。
また、働く環境や組織が変われば、そこでのルールに従う必要もあります。それまで働いていた組織でのルールに固執してしまうと、うまく仕事ができない原因になるので、柔軟性の高さもSESのエンジニアには求められるでしょう。
さらに、新しい技術を自発的に学び、スキルや知識をアップデートすることを好む人も、SESのエンジニアとして活躍しやすいです。
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SESで働くことにはメリットもある
SESには、下記のようなメリットもあります。
- 未経験でも正社員として雇用されやすい
- 大きな案件に関われることがある
- 労働時間が管理されている
- 職場環境に変化がある
- エンジニアとしての幅広いスキルが磨ける
未経験でも正社員として雇用されやすい
1つ目は、プログラミングやIT業界が未経験でも、正社員になりやすいことです。
例えば、自社開発企業は競争率が高くポテンシャルの高い人材が求められます。
一方でSES企業は、自社開発企業よりもスキルセットや競争率が低いため、正社員のエンジニアとしてスタートを切るのに適しています。
これからエンジニアを目指す人や、まだ実務経験に乏しい方でも採用される可能性は高いでしょう。IT業界でのキャリアをスタートする環境としては適している面もあります。
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大きな案件に関われることがある
2つ目は、さまざまな企業や案件に関われることです。
社員として大企業の大きな案件に関わることは難しくても、SESで関わることもできます。
案件を通して他社の方々と関わる機会が多いため、人脈を広げるのにも適しています。評価次第ではヘッドハンティングされる可能性もあるでしょう。
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労働時間が管理されている
3つ目は、残業が少ないことです。
残業が多いというイメージを持つ人もいますが、クライアント企業との契約には労働時間に関する内容が含まれることもあります。
その場合、クライアント企業は労働時間を守る必要があり、基本的には契約内容以上の仕事をさせられません。
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職場環境に変化がある
4つ目は、職場環境に変化があることです。
環境の変化にストレスを感じる人もいますが、気持ちがリフレッシュできたり、人間関係に悩むことが少なくなったりとメリットもあります。
ふつう職場環境は転職や異動がないと変わりませんが、SESは出向先が変われば働く環境も大きく変わります。飽き性の人には向いているでしょう。
エンジニアとしての幅広いスキルが磨ける
5つ目は、経験を積むことでエンジニアとしてのスキルアップにつながることです。
これは、前章で説明した闇の話と矛盾するように感じると思います。
しかし案件単位で働くということは、さまざまな環境で経験を積めたり、幅広い業界の知識を得るチャンスがあるとも捉えられるでしょう。
自分である程度現場を選べる優良なSES企業であれば、エンジニアとしての伸ばしたいスキルを効率的に伸ばすことができます。
SESの優良企業とブラック企業を見分ける方法は?
SES企業への転職を考えているならば、その企業が優良企業かどうかを判断した上で、転職したいところです。
ただし、その企業かブラックなのかホワイトなのか、企業のWebサイトを閲覧しただけでは判断しにくいでしょう。その場合は、以下の方法で判断材料を集めてみましょう。
- 口コミサイトを利用する:OpenWork・キャリコネ・転職会議など
- 企業の代表や社員のSNS・ブログをチェックする
- 企業が参加する転職フェスやセミナーで疑問点を聞いてみる
- 面接で採用担当者からの逆質問で疑問点を聞いてみる
転職フェスやセミナーなどで社員から疑問点を直接聞ける場合は、給与体系・福利厚生・勤怠ルールなどを聞いてみるのがおすすめ。
判断材料が増えれば、その分優良企業と出会える確率は上がるはずです。
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まとめ:SESで働くなら優良企業を選ぼう
さまざまな企業や案件に関わったり、未経験でも始めやすいことから、SESを選択するのは十分にありだといえます。
コロナ禍でSESを利用する企業が減少しているのも事実。しかし、その中でも優良SES企業の人材はニーズがあり、仕事を獲得できる確率も高いです。
つまり、安定して働きたいのであれば、優良なSES企業を見つけることが大切。
優良なSES企業を見分けるには、「福利厚生が整っている」「自社のエンジニアの育成に力を入れている」といったポイントを理解する必要があります。
SESの優良企業を見分けるポイントは「SESの優良企業とは?見分けるポイントやランキングを紹介 大手上場企業も」で解説しているので、参考にしてください。
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