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SESの営業本部長が考える、エンジニアが働きやすいSESを見極める6つのポイント【アバンテック株式会社】

更新: 2019.11.08

日本のシステム開発を支える業態の一つにSES(System Engineering Service)がある。

SESはシステムの開発、保守・運用などの業務に対してエンジニアの労働力(作業時間)を提供する準委任契約で、派遣先の指揮命令のもと業務を行う派遣契約や、成果物に対して報酬を受け取る請負契約とも異なるものだ。

だが、現場によっては基本的なルールが守られていないことがあり、厳しい労働環境下で疲弊しているエンジニアも多いのが現実だ。そこで、受託開発事業とSES事業を手掛けるアバンテックを営業として牽引してきた原田剛さんに、エンジニアが働きやすいSES企業を見分けるポイントを聞いた。

多重下請構造がエンジニアを疲弊させる

「いわゆるエンジニアの常駐開発案件で『ブラック』と言われているのは、発注元である顧客企業と現場で、開発に携わるエンジニアとの間に何社も介在している場合がほとんどです」

アバンテックでおよそ20年にわたって営業に携わる原田さんはそう話す。

「2次請け、3次請け、ときには4次請けという多重下請け化している案件の場合、どうしても下位の企業ほど受注金額が落ちてしまいます。そのため下位の企業に所属するエンジニアの待遇や労働環境が悪化してしまうのです」

さらに、自社のエンジニアでは受注を賄いきれない場合、パートナーシップ契約を結んでいるSES同士で人材を融通し合うことがある。中にはエンジニアの育成や教育が行き届いていないSESもあるため、パートナー企業の選定には苦労すると原田さんは言う。

「作業を遂行できる技術力が伴っていなかったり、勤怠が悪かったりすると顧客からクレームが入り対応に忙殺されてしまいますし、プロパーのエンジニアたちにも多大な迷惑をかけてしまいます。営業としてもそうしたブラックなSESとは付き合いたくないので、綿密な事前ヒアリングに加えて、業界内での評判にも常に気を配るようにしています」

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ブラックなSESを見分ける6つのチェックポイント

そこで原田さんに、良いSESとブラックなSESを見分けるポイントを6つ挙げてもらった。

<現役営業本部長が考える6つのチェックポイント>

▢1次請け案件をどれだけ受注しているか?
▢プロジェクトの規模が大きすぎないか?
▢営業が親身になって話を聞いてくれるか?
▢他の案件を担当する自社エンジニアと交流はあるか?
▢技術力、マネジメント力を鍛える機会はあるか?
▢明確で公平な評価制度があるか?

1.1次請け案件をどれだけ受注しているか
「冒頭にもお話しした通り、一般的に2次請け、3次請けが主体のSESでは、エンジニアの処遇は悪くなりがちなのでお勧めしません。孫請け以降になると、どうしても低い報酬に甘んじなければなりませんし、顧客の要望を直に聞くことも難しくなります。それではエンジニアも開発へのモチベーションは高まりませんし、スキルアップを望むのも難しい。逆に、1次請けが主体ならこうしたリスクは避けられますし、取引先が大手企業ゆえコンプライアンスが重視されるため、過重残業や休日出勤を強いられるケースはまずありません。もし気になるSESと出会ったらまずは一次請け案件の比率がどの程度あるか確認すべきでしょう」

2.プロジェクトの規模が大きすぎないか?
「大規模プロジェクトに携わることに憧れを感じるエンジニアもいると思います。しかし、数百名規模の大プロジェクトでは、個人が携われる技術領域は非常に限られてしまいます。そのため、開発の醍醐味や顧客からの信頼を勝ち取ったときの達成感は、中小規模のプロジェクトと比べて少なくなってしまいます。開発分野や開発フェーズにもよりますが、もし長期スパンで技術力やプロジェクトマネジメント力をつけたいと思うなら、20〜30人規模の案件を数多く回しているSESを選ぶべきだと思います」

3.営業が親身になって話を聞いてくれるか
「SESという契約形態は、顧客企業に常駐してエンジニアリングサービスを提供するものですが、顧客側から直接指揮命令を受けることはありません。業務上の指示は同じSESに所属する開発リーダーから受けることになるのですが、職場の人間関係や仕事の不満を相談する相手は、常駐先を担当する営業が窓口になる場合が大半です。営業の人柄の良さも大事ですが、日常的に会って話す時間はあるか、親身になって話を聞いてくれるか、困ったときにすぐに連絡がつくかというのは、非常に大きな見極めのポイントになります」

4.他の案件を担当する自社エンジニアと交流はあるか
「顧客企業に常駐したままでは、帰属意識が持てず孤独感に苛まれたり、仕事に対するモチベーションが低下したりしまいかねません。当社の場合、月に1度の帰社日に加え、社員旅行や部署ごとに開かれる非公式のイベントなどを通じて、社内で働くシニアクラスのエンジニアや、他の現場で働くエンジニアと交流する機会をつくり仲間意識を醸成するよう配慮しています。こうした社風を知るのも、良いSESを判断するポイントになるでしょう」

5.技術力、マネジメント力を鍛える機会はあるか
「技術力を提供する以上、技術教育の機会があることは大前提です。しかし、年齢を重ねてもエンジニアとして活躍し続けるためには、新しい開発言語やフレームワークの習得といった“狭い”意味での技術教育だけでは足りません。なぜなら、どのようなシステムも1人だけで開発することができないからです。コミュニケーション力やプロジェクトマネジメント力の向上など“広い”意味での技術教育にも力を入れているかどうかも、将来性のあるSESを見極める材料になると思います」

6.明確で公平な評価制度があるか
「SESで働くエンジニアの評価基準は、大きく分けて3つあります。1つは営業や常駐先とのコミニケーションに対する評価、2つ目が勤怠など技術力以外の評価、3つ目が営業貢献です。最後の営業貢献というのは、顧客の開発需要や人材不足などの情報を会社に伝えるなどして、売上に貢献した際に加点される評価となります。それぞれどの評価基準を重く見るかは企業によっても異なりますが、いずれにしてもこうした評価があり、適切に運用されていることはSES選びの重要なポイントです」

SESで鍛えられたエンジニアの将来は?

ここまで原田さんに、良いSESとブラックなSESを見分けるポイントを教えてもらったが、アバンテックでは、実際どのような志向のエンジニアが働いているのか聞いてみた。

「一般的に技術力を伸ばしたいと考えるエンジニアが、場数を踏むためにSESで経験を積みたいというケースはよく耳にします。また1度配属された現場が自分に合わなければ、現場を変えてもらうこともできるので、自分の専門性を模索するためにSESを選ばれる方もいるようです。ただ当社に限って言えば、長期的なキャリアを見据えて、経験を積んでプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーを目指す方、また社内の受託開発部門でIoTやVR関連の開発に携わることを目指して経験を積んでいる方が多い印象です」

一言でSESといっても、エンジニアの働く環境も経験できる案件の内容も千差万別。原田さんが上記に挙げた6つのポイントと照らし合わせて、少しでも自分の将来にとって有益な選択をすべきなのは言うまでもない。

「SESというと一時的なキャリアをイメージされるかもしれませんが、当社のエンジニアのように長期的な観点でSESを選んで働いている人も少なくありません。我々営業にとって、エンジニアの思いを叶えるも大切な仕事。手厚いサポートを提供するだけでなく皆さんの好奇心を刺激するような案件を1つでも多く受注できたらと思っています」

「顧客先で適度な緊張感を持ち、自分に合った開発案件に取り組めるのがSESで働くメリット」だと原田さんは言う。現場をよく知る現役営業本部長のアドバイスを参考に、ぜひ自分に合ったSESを見つけて欲しい。

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取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/桑原美樹

こちらの記事はエンジニアtypeのコンテンツから転載しております。元記事はこちら

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この記事を書いた人

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