「日本人は働きすぎじゃないの?」
「『残業は当たり前』という日本人の仕事観はおかしい…」
「なぜ日本人は働きすぎるのか、その理由が知りたい!」
日本人の働き方について外国の方に質問すると、「日本人は働きすぎだ!」という声も聞かれるでしょう。
実際、働き方改革や雇用の多様化で労働環境は少しずつ改善に向かう一方、残業や休日出勤で仕事に明け暮れるビジネスパーソンはいまだ多いかもしれません。
そこで本記事では、「なぜ日本人は働きすぎるのか?」その理由を解説し、海外の仕事観や働きすぎに対する改善策なども紹介します。
この記事の目次
日本人が働きすぎる10の理由
日本人が働きすぎる原因としては、以下に挙げる10の理由が考えられます。
- 残業は当たり前と考えている
- 仕事を断れない
- 業務範囲があいまい
- 休むことに対する罪悪感
- 労働生産性が低い
- ITスキルが低い
- 失敗が怖い
- 我慢や苦労は美徳
- アナログな慣習
- 昭和の働き方
これらの中身について解説します。
残業は当たり前と考えている
1つ目は、「残業は当たり前」という文化が浸透していることです。
このような考え方の背景には、「人員増加をしない雇用体質」があります。
例えば、景気の浮沈や時期要因によって仕事が増えたとき、日本の企業は「人員増加」ではなく「配置転換」で対応する傾向があるのです。
つまり、現状の社員のリソースだけで乗り切ろうとするわけです。
また、日本では専門性よりも総合力を重視した人材採用を行います。
この総合力には、仕事に対してだけでなく、柔軟な転勤への対応や残業の可否など、企業側としての「使い勝手の良さ」も含まれているのです。
このように、日本の労働環境は慢性的に長時間労働になりやすい環境に陥っているのです。
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仕事を断れない
2つ目は、仕事を断れない性格・文化が根付いていることです。
仕事が断れない原因としては、「自分の仕事はここからここまで」と割り切って考えたり、相手のお願いを断る勇気を持てない日本人が多いことにあると考えられます。
仕事を断れないと、自分の仕事に集中できず、常にキャパオーバーの状態に陥ります。
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業務範囲があいまい
3つ目は、業務範囲があいまいなことです。
業務範囲があいまいな職場にありがちなケースは、例えば以下の通り。
- タスクをこなしても次から次へと仕事が回ってくる
- 自分の仕事は終わっているのに上司が残っていると帰れない
- 頻繁に転勤や異動が発生する
上記の通りで、業務範囲・責任範囲があいまいな職場では、残業の増加や仕事を断れない雰囲気の温床になりやすく、負の側面が大きいです。
休むことに対する罪悪感
4つ目は、休むことへの罪悪感を感じる人が多いことです。
エクスペディアが毎年調査している『有給休暇の国際比較調査』の2022年版によると、日本の毎月有給休暇の取得率は、世界16地域のうち何と世界一の39%でした。
これは一見すると、本来の主旨とは真逆の結果に思われるかもしれません。
しかし、同調査を見ていくと、「週休3日制を導入してほしくない」「休暇中に連絡を遮断しない」と回答した割合も世界一でした。
こうした回答の裏には、「長期休暇を取ることに対して消極的」「休むことに対する後ろめたさ」といった考え方が潜んでいるようにも思えます。
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労働生産性が低い
5つ目は、労働生産性の低さです。
労働生産性は、「GDP(国内総生産) ÷ 労働量」で算出されます。
労働生産性を高めて「働きすぎ」の現状を打破するには、GDPを拡大するか、労働量を減らさなくてはいけません。
しかし、少子高齢化で労働人口が減少し続ける日本がGDPを拡大するのは難しい課題です。
実際、日本のGDPはアメリカ・中国に次ぐ3位に位置するものの、年々減少しています。
そのため、業務を効率化して労働量を減らす工夫が求められるものの、「残業が当たり前」の日本において、労働量を減らすことが可能なのかは疑問に思うでしょう。
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ITスキルが低い
6つ目は、ITスキルが低いことです。
ガートナー ジャパン株式会社が世界の主要9カ国の企業で働く従業員を対象とした『Gartner 2021 Digital Worker Experience Survey』を見てみます。
すると、日本は自分を「素人」「中程度」とする正社員の割合が6割以上で、主要9カ国の中で最も高い結果でした。
実際、日本の教育現場におけるICT教育がなかなか進まないことや、高齢者に対するデジタル化対応の理解が進まないことなども、ITスキルの低さを助長していると考えられます。
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失敗が怖い
7つ目は、仕事で失敗するのが怖いと感じる人が多いからです。
「失敗が怖い」を生み出す原因としては、周囲の目や世間体が気になり、安定行動ばかりをとってしまう保守的な考え方などがあるでしょう。
こうした行動を取り続けると、自己肯定感が下がり、さらにチャレンジするのが怖いという悪循環を生んでしまいます。
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我慢や苦労は美徳
8つ目は、我慢や苦労を美徳ととらえるからです。
具体的には、「体調が悪くても会社を休まない」 「病気でも働く」「定時に帰るときは他の社員に謝る」 などが、日本人の特徴ともいえます。
これは労働だけでなく、スポーツの世界にある「疲労や怪我に耐えてプレーを続けた選手」が称賛されやすい風潮にもよく表れています。
アナログな慣習
9つ目は、いまだ残り続けるアナログな慣習です。
アナログな慣習の具体例としては、FAX・紙の資料・印鑑などです。
そのため、外出中にも関わらず、会社の印鑑がどうしても必要だから帰社しないといけない、といった経験を持つ方も多いでしょう。
近年では、電子印鑑やタブレット端末などの活用も広まっているものの、いまだアナログな慣習から抜け出せない企業は多いです。
昭和の働き方
アナログな慣習と同じく、昭和の働き方が色濃く残るのも、働きすぎを生む原因です。
昭和の働き方を代表する制度・考え方としては、以下の4つ。
- 終身雇用制度:正社員採用されている社員を定年まで雇う制度
- 年功序列:勤続年数や年齢が反映されてベースアップする人事制度
- 正社員主義:正社員雇用こそが最高の雇用形態であるという考え方
- 学歴・性別によるフィルター
上記の通りで、終身雇用や年功序列は崩壊しつつあるものの、辞職できない雰囲気や年齢でキャリアを囲い込む考え方は、いまだ見られるのが現状です。
働きすぎを改善する方法
日本人の働きすぎ問題に対する改善方法としては、4つの方法が考えられます。
- キャリアパスを明確にする
- 信頼できる上司に相談する
- タイムマネジメントを実践する
- 転職する
これらの内容について解説します。
キャリアパスを明確にする
1つ目は、キャリアパスを明確にすることです。
政府の「働き方改革」にあるように、これからは多様な就労形態のある社会に変化します。
そして、多様な就労形態が認められることで、フリーランス・副業・兼業といった働き方も一般化していくはずです。
つまり、正社員でないとキャリア形成ができない時代は終わりを告げます。
こうした時代の中では、自分のキャリア形成において必要なスキルを考え、場合によっては正社員以外の働き方も模索できるキャリアパスを描くべきでしょう。
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信頼できる上司に相談する
2つ目は、信頼できる上司に相談することです。
明らかに許容量を超える業務を指示するリーダーが働きすぎの原因ならば、社内で信頼できる先輩や上司に話しましょう。
すると、タスクを分散するための人員補充やスケジュールの見直しなど、何らかの改善策を施してくれるはずです。
しかし、「信頼できる上司がいない」「相談したけど一向に改善されない」といった場合は、近くの労働基準監督署に相談するか、思い切って転職するのがよいです。
タイムマネジメントを実践する
3つ目は、タイムマネジメントを実践することです。
働きすぎの原因が、仕事の進め方に問題がある場合、以下のような改善策がおすすめです。
- 業務の重要度・優先度を決めて取り組む
- 明日やることは事前にリストアップしておく
- 業務を前倒しで進める
タイムマネジメントの詳細は「【社会人必見】タイムマネジメントとは?メリット・手順・コツなどを紹介」で紹介しているので、合わせてご参考ください。
転職する
4つ目は、転職することです。
以下のような問題が発生した場合は、速やかに転職活動に入るのがおすすめです。
- 業務改善を上司に相談したのに一向に対策してもらえない
- 自分の能力と業務内容がマッチしていない
- サービス残業やハラスメントなどのブラック労働が常態化している
上記の通りで、1つの会社に骨を埋める必要は一切なく、より自分が輝ける働き方を求めて転職した方が人生が豊かになるでしょう。
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日本人の働きすぎを改善するヒント①ドイツ人の仕事観
労働生産性が高い国として知られるのが、ドイツです。
ドイツ人の仕事観をまとめると、以下の4つです。
- 省エネ労働
- 役割分担が明確
- マネジメントを見直す
- 私生活を大事にする風潮
これらの内容について解説します。
省エネ労働
「ドイツは労働生産性が高い」とはいえ「残業が一切ない」わけではありません。
しかし、OECDの労働時間調査によれば、2022年のドイツの年平均労働時間は「約1,341時間」で、日本(約1,607時間)と比較すると、266時間もの違いがあります。
つまり、ドイツ人は日本人よりも約2ヶ月分少ない省エネ労働で仕事をしているのです。
ドイツ人の労働時間が大幅に少ない理由は、おもに2つです。
1つ目は、法律による厳しい規制で、ドイツでは1日の労働時間が原則8時間で、延長した分は別で労働時間を短縮しなければなりません。
2つ目は、日本でいう「労働基準監督署」の目が日本よりも厳しいことで、ドイツでは労働時間の抜き打ち検査がたまにあり、毎日10時間を超えて労働を課した企業には罰金刑が科されます。
それでも改善が見られない場合は、経営者に対して刑事告発を行い、有罪となれば禁固刑、つまり前科者として刑務所に入るリスクもあるのです。
役割分担が明確
ドイツの労働生産性の高さは、業務の役割分担の明確さにもあります。
これにより、仮に作業が遅れたらどこがボトルネックになのかが洗い出しやすく、効率的に仕事の成果を出せるのです。
マネジメントを見直す
ドイツでは、現場が回らなくなったら、責任は「マネジメント」にあると考えます。
つまり、日本のように残業で現場を回し続けて成果を出す、といったことは行いません。
その代わり、残業が慢性化するような事態になったら、マネジメント担当者が更迭されるということもドイツでは珍しくないのです。
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私生活を大事にする風潮
ドイツを含めたヨーロッパの人々は、仕事よりも家族と過ごす時間や趣味といった「プライベート」を優先します。
実際、「出社日は1週間で4日にして、残り1日は別の仕事に充てたい」といった要望に対しても、ヨーロッパの企業はフレキシブルに応じています。
つまり、やるべきことをやればスケジュールの組み方や働き方は自由、という考えなのです。
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日本人の働きすぎを改善するヒント②アメリカ人の仕事観
アメリカも、労働生産性の高い国の1つとして知られています。
アメリカ人の仕事観をまとめると、以下の6つです。
- 決定事項は大事にする
- 自分の仕事の範囲は明確にする
- 総合力より専門性重視
- 上司が相手でも徹底的に議論する
- 与えられた役割や給与の分をしっかりと働く
- 有給休暇は取得しづらい場合も
これらの内容について解説します。
決定事項は大事にする
アメリカでは、何よりも重視するのが「決定事項」です。
つまり、1度決定したことを後から無理やり変更しようとしたり、追加で条件を加えるというのは、決して歓迎されません。
そのため、何らかの意思決定をするまでは、徹底的な議論が重ねられます。
自分の仕事の範囲は明確にする
アメリカでも、「仕事範囲の明確化」は重視されます。
契約社会であるアメリカでは、一般的に決められた以上の仕事はする必要がなく、日本のように部下になら何でも指示してよいという論理は通用しません。
そのため、上司の立場を利用して部下に業務範囲を超える仕事を命令した場合、「契約違反」になることもあります。
総合力より専門性重視
アメリカでは、「高いプログラミングスキル」「多国語を話せる」など、その人にしかない専門性が重視されます。
そのため、アメリカでは前もって仕事を用意しておき、仕事に適応できる人材を採用する「ジョブ型雇用」が一般的です。
一方で、日本の新卒採用のように、優秀そうな人を大量を採用し、入社後の適性やスキルで業務を割り当てる「メンバーシップ型雇用」はほとんど行いません。
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上司が相手でも徹底的に議論する
意思決定を重視するアメリカでは、結論に達するまでフラットに話し合いをします。
その議論の場では、上司も部下も立場に関係なく意見を出し合います。
議論が重視されるのは、後々に「やっぱり仕様を変更したい」というような全体のロスになるような変更が起きないようにするためです。
徹底的に議論した上で出す結論だからこそ、皆が結論にコミットした上で仕事ができるのです。
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与えられた役割や給与の分をしっかりと働く
アメリカでは、役割や給与にコミットして働くので、 役割を超えて「何でも屋」のように仕事をすることはありません。
そのため、アメリカでは仕事量が増加しそうな場合は、配置転換や残業増加ではなく、「人員増加」で対応する傾向にあります。
有給休暇は取得しづらい場合も
アメリカでは、より人件費が安いメキシコや近隣諸国への工場移転が続いています。
こうしたことから、アメリカ国内では職を失う人が増えているのが現状です。
そのため、有給休暇を取得すると「このまま職を失うのでは?」と考える方もいるようで、実は取得しづらい風土が生まれつつあります。
また、アメリカは先進国の中で唯一、年次有給休暇が法律で規定されておらず、雇用者と被雇用者の間の労働契約の中で決められています。
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日本人は働きすぎ!働き方や仕事観を見直そう
「なぜ日本人は働きすぎるのか?」の理由、海外の仕事観、働きすぎに対する改善策なども紹介しました。
働きすぎる日本人の背景には、日本人特有の仕事観や昭和的な雇用の影響などがありました。
そして、こうした働き方は労働生産性を低下させるだけでなく、心身の健康やプライベートを犠牲にするため、決してよいものではありません。
政府は働き方改革を進めているものの、達成できる日は不透明です。
そのため、まずは自分の働き方を見直し、不必要な残業や古い仕事観に疑問を持ち、改善行動を自ら取ることが、働きすぎ問題を解決する糸口になるでしょう。
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