企業の雇用形態としては、「正社員」や「契約社員」が一般的です。
しかし、中には「準社員」というポジションも存在します。準社員は、正社員でもなくパートやアルバイトでもありません。
企業の求人情報で「準社員募集」という案内をたまに見ることがあります。準社員とは、一体どんな契約内容なのか気になる人も多いでしょう。
そこで本記事では、準社員とは一体どんな雇用形態なのか、準社員の保険周りに関する疑問、準社員になるメリット・デメリットなどをまとめました。
準社員とは?
ここでは、準社員とはどういった雇用形態なのか、「非正社員」など似ている言葉との違いなどを解説します。
- 準社員は非正社員で定義はない
- 求人内容や会社への確認が必要
- 準社員の採用事例
準社員は非正社員で定義はない
「準社員」とは、正社員に準ずる雇用形態を指しますが、労働基準法による明確な定義はなく「非正社員」に括られます。
準社員の働き方・給与・待遇などは会社によって異なり、イメージとしては正社員とパート・アルバイトの中間にある雇用形態です。
準社員の就業時間や賞与など、契約内容も働く会社によってさまざま。
パートやアルバイトと変わらない待遇の企業から、月給が固定になっている比較的高待遇な契約内容の会社もあり、大きな差があるのが現状です。
準社員は、正規雇用と非正規雇用の中間的な意味合いで使われていることも多く、別名で「限定社員」と呼ぶ企業もあります。
準社員という名称は同じであっても、働く会社によって雇用条件がまるで違う可能性もある、ということを覚えておきましょう。
求人内容や会社への確認が必要
準社員として企業の求人に応募する際は、求人内容を細かく確認しなければなりません。
なぜなら、後に「思っていたより稼げない」や「待遇に不満がある」など、働く上でストレスを感じてしまうことに繋がりかねないからです。
前述したように、明確な定義が存在しない準社員という雇用形態は、企業ごとに契約内容に大きな差があります。
例えば以前、他の会社で準社員として働いていたからと言って、新しい勤め先が同じ待遇である保証はありません。
求人情報を元に面接を受ける際は、求人情報をくまなく確認しましょう。
もし働き方が不明確ならば、事前に電話・メールなどで月給の手取りや働く期間に決まりがあるのか、正社員との違いは何かなどを聞いてみてください。
特に、以下の項目は特にしっかり確認しましょう。
- 雇用期間は決まっているか
- 給与体系と福利厚生
- 業務内容
雇用期間は決まっているか
例えば、雇用期間が6ヶ月とされている場合は、雇用期間に達した時点で契約終了になる可能性があります。
企業側は求人内容に契約期間をあえて記載しないこともあります。
この場合は面接の時点で知らされることも多く、結果として時間のロスにもなってしまうので、事前に確認しておくことが大切です。
給与体系と福利厚生
明確な定義がない準社員は、企業によってはアルバイトやパートと同じように給与が時給計算になっていることもあります。
そのほかにも、ボーナスや賞与の有無、明確な手取り金額などは、基準が曖昧な準社員だからこそ確認するべきポイントとなっています。
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業務内容
業務内容は、自分がどのような仕事をするのかはもちろん、正社員と準社員の「責任」の違いについても確認するべきでしょう。
正社員と同じ責任が課せられているにも関わらず、給与は正社員より低いなら、メリットは少ないと判断できます。
基本的には、正社員よりも責任のウエイトが軽いのが準社員となっています。
準社員と他の雇用形態の違い
ここでは、準社員と他の雇用形態との違いについて解説します。
- 準社員と正社員の違い
- 契約社員との違いはほとんどない
- 派遣社員とは雇用先が異なる
- 準社員とパート・アルバイトの違い
準社員と正社員の違い
準社員と正社員の違いは、大きく分けると「雇用期間」と「給与」の2つです。
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雇用期間について
1つ目は雇用期間です。
正社員は、雇用期間に制限はなく無期限で雇用されることがほとんど。しかし準社員は、雇用期間が決められている場合があります。
準社員で雇用期間が決められている場合は、契約が更新されない限り、期限が来た時点で雇用を打ち切られてしまう可能性があります。
ちなみに、準社員の場合は契約期間中であっても早期契約終了となることも。こちらも、企業によって基準が異なるので事前に確認することが大切です。
給与面について
2つ目は給与面です。
準社員は、正社員と比較すると給与面や福利厚生の待遇水準が低くなる場合が多いです。企業によっては準社員の場合、福利厚生が適用されない会社もあります。
やはり正社員に比べると給与も低くなりがちで、中には時給で給与を計算する企業も。「社員」とついていますが給与、待遇共に正社員とは大きな違いがあるのが現実です。
そのため、向上心のある方やキャリアアップを狙う方にとっては、消化不良に感じることが多い雇用形態とも言えます。
契約社員との違いはほとんどない
正社員と準社員には大きな差はありますが、契約社員と準社員には明確な違いはなく、給与、待遇面でも同じ扱いの会社が多いです。
あらかじめ雇用期間が決まっている点は、準社員にも共通することで、契約社員のことを準社員として扱っている企業もあります。
基本的に契約社員、準社員共に正社員と比べて責任を課せられることは少ない反面、給与や待遇が低くなる傾向にあります。
基本的な契約内容は共通することが多いので、気になる方は面接時や電話で問い合わせる際に「準社員との違いはありますか?」と確認してみると良いでしょう。
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派遣社員とは雇用先が異なる
準社員や契約社員と似たような雇用形態に「派遣社員」もあります。
一見、契約社員や準社員と同じように見えますが、雇用契約の面で大きな違いがあります。
準社員や契約社員は企業と直接雇用契約を結んでいますが、派遣社員は自分が所属する派遣会社と雇用契約を結んでいます。
派遣会社と雇用契約を結び、各会社に派遣される形で働くスタイルの派遣社員は、似ているようです内容はかなり異なるのです。
契約期間に決まりがあることは契約社員と共通しています。しかし、間に派遣会社が入っているので給与に差があることも多いです。
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準社員とパート・アルバイトの違い
「社員」という単語がついている準社員ですが、実際はパートやアルバイトとの間に明確な差があるわけではなく、会社ごとの区分によって違いがあるのが現状です。
例えば、「準社員 = 週5日、1日8時間フルタイム勤務」で「パート・アルバイト = 週3日、1日5時間〜」のように、勤務時間に明確な違いがあれば分かりやすいです。
しかしパート・アルバイトでもフルタイムで働く方はいますし、学生のアルバイトと同じくらいの短い勤務時間の準社員もいます。
準社員とパート・アルバイトの区分をするならば、準社員の方が給与が高かったり、福利厚生を受けられる幅が広いことが多いのが特徴と言えるでしょう。
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準社員でも保険に加入できる?
ここでは、準社員でも正社員と同様、保険に加入できるのかどうかについて見ていきます。
- 社会保険加入の条件を満たせば加入できる
- 加入条件に満たない場合は国民健康保険に入る
社会保険加入の条件を満たせば加入できる
正社員と同じような待遇を受けることができない印象の準社員。
実際は、「正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数で働いている人」ならば、社会保険に加入することができます。
これはパート・アルバイトの方にも共通しており、社会保険に加入させる基準として法律で定められたものになっています。
準社員や契約社員にとっては、社会保険に加入できることはメリットになることが多く、保険料の負担額を控えることができます。
また、準社員として企業で働いていたことがある方で、条件を満たしているにも関わらず、社会保険への加入を断られた経験がある方もいるかもしれません。
しかし、これは明らかな違法行為なので、受け入れてもらえない場合は転職を考慮すべきです。
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加入条件に満たない場合は国民健康保険に入る
「正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数で働いている人」という条件に満たしていない準社員の方は、社会保険に加入することができません。
社会保険に加入できない方は、国民健康保険と国民年金保険に加入する義務があります。国民健康保険は、各自治体や一世帯の加入人数に応じて金額が変わります。
お住まいの地域によっては社会保険に比べて、保険料が高めになってしまうことも。
しかし保険に入っておかないと保険証をもらえず、医療費も全て自己負担となってしまうので、必ず加入するようにしましょう。
準社員になるメリット
ここでは、準社員になるメリットを6つ紹介します。
- 正社員登用されることがある
- 長い期間雇用されることが多い
- 転勤になる可能性が低い
- 定時に帰りやすい
- 仕事とプライベートを両立しやすい
- 実務経験が浅くても専門職に就けるケースがある
正社員登用されることがある
準社員として企業で経験を積ん場合、正社員として採用してもらえる会社もあります。
優秀な成績を残せる人材になれば、会社からしてもメリットになるため、準社員ではなく正社員として雇用してくれることも多いです。
その際は、月収や契約内容の見直しなども行ってもらえることもあり、年収や待遇面も正社員として同じ待遇を受けることができます。
準社員から正社員へのキャリアパスは、会社によってさまざま。単純に良い成績だけ残せばいい、とは限りません。
会社によっては、正社員として本採用する前段階として準社員という雇用形態で採用している場合もあります。
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長い期間雇用されることが多い
準社員の雇用期間はあらかじめ定められていない場合が多いです。業績や成果を上げることで雇用期間も長くなる傾向にあります。
契約社員は契約期間が明確になっていることも多いですが、準社員は期限が決まっていないことも多く、仕事の結果次第で契約が延長されていくこともあります。
1つの会社で長い期間準社員として働いている場合、交渉次第で正社員として採用してもらえることもあります。
しっかりと結果を残し、企業にとって必要な人材になれば、働きぶりを評価されて雇用期間がさらに延長されることもあるでしょう。
転勤になる可能性が低い
準社員の雇用条件は、基本的に契約の際に会社と取り交わした書類の契約内容がすべて。
当初の契約内容に転勤がない旨や特定の勤務地が明記されていた場合、契約内容に沿って転勤になることはありません。
企業でのキャリアアップを目指しているわけではなく、仕事よりもプライベートや家族との生活を重視したい方は準社員として働いた方が良い場合もあります。
定時に帰りやすい
準社員は基本的に、給与や勤務時間が固定されている場合が多く、残業が発生する可能性は正社員と比較すると低いです。
勤務時間が固定の場合は、それ以上働くことはできませんので、裏を返せば残業なしで定時に帰宅できる可能性が高いということ。
残業を沢山してお金を稼ぎたい人には向かないですが、主婦の方などで毎日定時で仕事を終える必要がある方には準社員として働く方が良いこともあるようです。
ただどの会社でも準社員なら定時で上がれるわけではありません。何度も言うように会社によって契約内容に違いがあるのが準社員なので、事前に確認するようにしましょう。
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仕事とプライベートを両立しやすい
勤務時間が固定されている準社員であれば、定時退社後や休日の予定が立てやすいです。
趣味や家族と過ごす時間など、プライベートの時間が取りやすく、自由度の高い働き方ができるでしょう。
仕事よりも私生活を重視する方にとっては、正社員を選択するよりも、準社員として働く方が合っている場合もあります。
福利厚生や給与面のみを見ると、正社員の方がメリットが多いと感じます。
しかし、責任のウエイトが少ない点だったり、転勤や残業が少ないという傾向は、正社員では手にすることが難しいことでもあります。
仕事でのキャリアアップをとるか、プライベートの充実をとるか、または準社員として働きながら他の仕事もするのか。
自分の人生プランに対して最適な選択はどれなのか、事前に熟考すると良いでしょう。
実務経験が浅くても専門職に就けるケースがある
システムエンジニアやデータサイエンティストなど、専門性が高く実務未経験からの転職が難しい職種であっても、準社員であればポテンシャル採用される可能性が十分にあります。
例えば、福岡に拠点を置く「LINE Fukuoka 株式会社」では2023年9月現在、社内システムヘルプデスクやテスターなどの準社員募集を実施。
テスター募集では、プログラミングスキルの有無は採用要件には入っていないので、未経験の方でも準社員として採用されやすいようです。
機能テストなど、比較的簡単な業務から少しずつ実務経験を積むことで、未経験から将来的なエンジニア転職を目指すといったキャリアプランも描きやすくなります。
現在は、エンジニアのような専門的なスキルが必要な職種であっても、未経験者を積極的に採用している会社も多いです。
そのため、準社員から仕事に必要なスキルをどんどん学んでいくのも1つの方法。
特にプログラミングについては、独学よりも実務として働きながら覚えた方が効率が良いでしょう。準社員から経験を積んでキャリアアップに繋げることもできます。
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準社員になるデメリット
メリットもあればデメリットもあります。
ここでは、準社員になるデメリットを5つ解説します。
- 正社員より給料が低い
- ボーナスが出ない場合が多い
- 正社員より福利厚生が受けられない
- 責任のある大きな仕事を任されない
- 雇用が長期間続くとは限らない
正社員より給料が低い
準社員は、正社員と比較すると給料が低くなる場合が多いです。
働く会社や契約内容によって異なりますが、正社員と同等の給料が貰えることはありません。
また、正社員は年齢や勤務年数に応じて基本給がアップすることはありますが、準社員はこのような待遇を受けることは少ないです。
正社員と同じ月給を稼ぎたいと考えるなら、準社員から正社員を目指す必要があります。
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準社員はボーナスが出ない場合が多い
準社員では、給料が低くなることに加えボーナスも支給されない会社が多いようです。
稀にボーナスを支給される会社があったとしても、正社員と比較すると低めの金額。ボーナスを含めた年収を計算しても、正社員よりも準社員の方が給料は低いことがほとんど。
なので「準社員としてガンガン稼いでいきたい」という考え方を持っている方は、根本的に考え方を見直した方が自身にとってメリットでしょう。
一般的に準社員は昇給しづらく、勤務時間も固定されています。一定の金額以上を稼ぎたいなら、正社員になることや、副業を探すなどの対策が必要です。
正社員より福利厚生が受けられない
福利厚生の中には、適応対象が正社員のみのものもあります。
交通費や有給休暇などの制度は受けられる場合は多いですが、福利厚生すべてを準社員にも適用している会社は少ないようです。契約条件の確認が必要です。
福利厚生の待遇面でも正社員と同等に扱われるわけではありません。
会社によっては、準社員とパート・アルバイトの線引きが曖昧なところも多く、正社員と準社員の間で大きな違いがあることも珍しくありません。
準社員だからと言って「社員」として扱われるわけではない、ということは頭に入れておかなければなりません。
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責任のある大きな仕事を任されない
仕事の内容にも準社員と正社員の差があります。
一般的には、キャリアアップに繋がるような責任感のある仕事は、基本的に正社員が担当するようになっています。
準社員は基本的に正社員のフォローに回ることが多く、「どんどん上に行きたい!」という高い志を持った方にとっては、少々やりがいを感じにくい労働環境になるでしょう。
LINEが定める準社員のように、スキルを持っていない方でも準社員として雇用してもらえるような企業で認められたい。
その場合は、準社員として正社員からスキルを学び、その上で正社員として採用されるような結果を出すことが求められます。
そもそも準社員は、スキルうんぬんよりも労働力それ自体を提供することが目的に近いので、中々社員にアピールできる機会は少ないかもしれません。
そのため、キャリアアップを狙う方は少ないチャンスを見逃さないことも重要です。
雇用が長期間続くとは限らない
契約期間が定められている場合(有期雇用契約)、会社の方針や経営状態によっては、準社員としての契約が更新されない可能性があります。これは契約社員も同様です。
契約期間が満期になって更新されなければ、契約解除となります。
無期限で契約している準社員の場合(無期雇用契約)も、会社の経営不振などによって契約が解除されることも考えられます。
会社の業績が伸びないなどの理由で、やむなく人材をカットしていかなければいけない状況になった場合、正社員と準社員では準社員の方がリストラ対象になります。
これは、準社員として入社して正社員を目指す方にとっては、事前にこのような状況になることもあるということを理解しておかなければなりません。
すると、ライフプランもキャリアプランも悲惨なものになってしまいます。
現在の企業のあり方では、正社員でも安心することはできません。しかし、準社員はそれ以上にリスクのある働き方であることも自覚しておきましょう。
準社員についてのまとめ
準社員は、勤務時間が固定されていることが多く、仕事とプライベートの両立がしやすいのが特徴となっています。
一方で、収入面や雇用の安定性としては、正社員と同じ待遇を受けられない傾向。キャリアアップを目指す方には、不向きな雇用形態とも言えます。
自分で副業をしていたり、複数の仕事を掛け持ちしている方など、収入の支えがあれば準社員の雇用形態がメリットになる方もいるでしょう。
準社員として働くことに不安があるのであれば、正社員採用を行っている企業へ転職するのも一つの手です。
現在は多様な働き方ができる時代です。自身のライフプランやキャリアプランと照らし合わせて、最適な働き方を選択するようにしましょう。
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