eSportsの高まりやVRゲームの登場により、GPUを搭載した高性能なパソコンに興味を持つ方は多いと思います。
そこで今回は、GPUの種類の1つである「iGPU」に関して、概要やほかのGPUとの違い、メリット・デメリットなどを解説します。
この記事の目次
iGPUとは?
本章では、iGPUの概要について解説します。
GPUについて
iGPUを解説する前に、事前知識としてGPUについて解説します。
GPUとは、「Graphics Processing Unit」の略称で、3Dグラフィック処理のような画像処理を快適に行うための装置(半導体チップ)です。
近年は、4K・8Kなどの高精細なグラフィックが注目を浴びており、3Dゲームや動画のグラフィックが格段に進化しています。
そして、これらの高精細なグラフィックを処理する目的で、高性能なGPUを搭載したパソコンの需要は伸びると予想されます。
実際、GPUを含む半導体分野は2021年2月現在、新型コロナによる生産ラインの縮小も相まって、供給が追いつかず旧製品の再出荷などの措置を取りながら対応されているようです。
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グラフィックボードとGPUの違い
さらに補足事項として、間違いやすいグラフィックボードとGPUの違いを簡単に解説します。
グラフィックボード(グラボ)とは、GPUを核としてさまざまな部品を組み合わせてできた金属板のことです。
つまり、GPUはグラフィックボードを構成する部品の1つということです。
グラフィックボードには、GPUのほかにも排熱用の冷却ファンや細かい部品、製品によってはイルミネーションパーツなどの遊び心のある装置も搭載されています。
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iGPUとは CPUに内蔵されたGPUのこと
iGPU(内蔵GPU)とは「Integrated GPU」の略称で、CPUに内蔵されたGPUのことです。
iGPUの主流は、Intel社の「Core i」シリーズやAMD社の「Ryzen」シリーズの2つです。
また、iGPUの技術はIntel社を中心に強化が続いており、2020年9月に発売された「第11世代 Coreプロセッサー(Tiger Lake)」は、後述するdGPUに匹敵する性能を持つとして注目されています。
したがって、2021年以降もiGPUおよびiGPU搭載のパソコンに目が離せません。
APUについて
ちなみに、前述したAMD社が開発したiGPUは、別名「APU(Accelerated Processing Unit)」とも呼ばれています。
APUは通常のiGPUとは異なるメモリ共有方式を採用するといった、AMD社の独自技術が詰まっていることから、別の名称が使われているようです。
しかし、役割自体はiGPUであることに変わりないため、一般ユーザーの目線であれば「iGPU = APU」という認識で特に問題はありません。
iGPU・dGPU・eGPUの違い
本章では、これら3つの種類の違いについて解説します。
dGPUとの違い
dGPUとは、「Discrete GPU」の略称で、CPUとは独立してグラフィックボードなどに内蔵されたGPUのことです。
つまり、iGPUとdGPUは、CPUに内蔵されているか否かという点において違いがあります。
dGPUのメリット・デメリットを簡単にまとめると、以下の通りです。
- iGPUと比較して、シンプルにGPU性能が高い
- 専用のVRAM(GPUメモリ)を搭載している
- iGPUと比較して、消費電力が大きい
- 高性能であるがゆえに高価格
ちなみに、「GeForce」シリーズで有名なNVIDIA社と「Radeon」シリーズで有名なAMD社は、dGPUメーカーの二大巨頭です。
eGPUとの違い
eGPU(外付けGPU)とは、「External GPU」の略称で、おもにThunderbolt 3で接続して使う外付けのGPUです。
つまり、eGPUはGPU自体が完全にコンピューターの外側に存在します。
eGPU(外付けGPU)のメリットは以下の通りです。
- 外付けなのでPCに後からGPUを増設・交換できる
- GPU性能の低いノートPCを簡単にゲーミングPC並みの性能に変えられる
一方、eGPU(外付けGPU)のデメリットは以下の通りです。
- 製品によっては高価格(新しくPCを購入した方が安く済む可能性もある)
- 接続ケーブルおよびeGPUの設置スペースが必要
- PCの性能が低いと、eGPUのパフォーマンスを十分に発揮できない可能性がある
eGPUは上述の通り、気軽にPCのグラフィック性能を高められる反面、PC全体のスペックを考慮しないと本来のパフォーマンスを引き出せないなど、扱いが難しい側面もあります。
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iGPUのメリット
- 設置スペースがいらない
- パソコン本体の小型化
- 消費電力が低い
- 価格が安い
- ハードウェアエンコードが優秀
- 汎用性が高い
設置スペースがいらない
1つ目は、GPUを設置するスペースが必要ないことです。
iGPUは、前述したようにCPUに内蔵されているGPUのため、自分でGPUを用意する必要はありません。
したがって、ノートPCやタブレット端末のような持ち運び可能なデバイスにとっては大きなメリットです。
パソコン本体の小型化
2つ目は、パソコン本体の小型化に寄与していることです。
CPUに内蔵されていることで、パソコンを構成する部品が少なくて済むように進化しました。
これにより、パソコンの小型化・薄型化に成功しており、近年のモバイル端末の利便性はiGPUによる恩恵によるものといえるでしょう。
消費電力が低い
3つ目は、パソコンの消費電力を低く抑えられることです。
dGPUやeGPUは、高性能であるがゆえに消費電力が大きく発熱も多いです。
これにより、場合によっては手で触れないほど発熱してしまったり、冷却ファンの稼働による騒音といった別の問題も発生します。
しかし、iGPUは性能面では劣るものの、少ない電力で動きます。
そのため、最小限の発熱で済むだけでなく、電気代の節約やGPUの消費電力によりブレーカーが落ちるといった心配もないでしょう。
価格が安い
4つ目は、価格が安いことです。
前述したように、パソコンの部品を少なくして本体の小型化に成功したことで、価格も下がります。
近年では、Intel社の「Tiger Lake」シリーズのように高性能なiGPUが開発されており、安くても十分な性能を誇るデバイスがこれから続々とリリースされるでしょう。
ハードウェアエンコードが優秀
5つ目は、ハードウェアエンコードが優秀であることです。
ハードウェアエンコード(Hardware Encoding)とは、動画や音声データを別の形式へ変換する処理(エンコード)を、ハードウェアで行うことを指します。
一般的に、動画や音声データのエンコードはCPUによるソフトウェアエンコードで行うよりも、GPUによるハードウェアエンコードの方が処理能力が高いとされています。
さらに、近年はiGPUとdGPUでハードウェアエンコードの性能に大きな差はなく、コスト面においてはiGPUが勝っているという見方もできます。
ちなみに、Intel社が開発したiGPUのハードウェアエンコード技術のことを「QSV(Quick Sync Video)」、AMD社が開発したiGPUのハードウェアエンコード技術のことを「VCE(Video Coding Engine)」と呼びます。
汎用性が高い
6つ目は、汎用性が高くさまざまな用途で使えることです。
例えば、前章で紹介したdGPUで代表的な「NVIDIA GeForce」や「AMD Radeon」は、どちらかといえばゲーム特化型のGPUです。
そのため、ほかのプログラムを処理する上では本来の性能を発揮できない可能性があります。
しかし、iGPUはさまざまなプログラムに最適化できるように設計されており、ユーザーは用途を限定せずに使えます。
iGPUのデメリット
- dGPUよりも性能が劣る
- メモリ共有により処理速度が遅くなる
dGPUよりも性能が劣る
1つ目は、dGPUやeGPUよりも性能が劣ることです。
iGPUの性能は年々上がっているとはいえ、ゲームや動画などをフルHDや4Kで楽しむには、まだまだ性能が追いついていない状況です。
実際、「NVIDIA GeForce RTX 20」シリーズのような最新のdGPUには、「リアルタイムレイトレーシング」という最新技術により、実写と見間違うほどのリアルなグラフィックが再現できるように進化しています。
したがって、dGPU・eGPUが性能面で勝るという状況はこれからも続くと予想されます。
メモリ共有により処理速度が遅くなる
2つ目は、CPUとメモリを共有することで処理速度が遅くなることです。
例えば、dGPU・eGPUには「VRAM」というGPU専用のメモリが存在します。
これにより、グラフィック処理が高速化するので、解像度の高い状況においても多くの色数で画面表示できます。
これに対してiGPUは、VRAMを持たずCPUとメインメモリを共有するので、GPUに割り当てられるメモリ容量は少なくなります。
したがって、ゲームや動画を楽しむ際は、解像度を低く抑えなければなりません。
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iGPUがおすすめな人
- ネットサーフィンが主目的の人
- パソコンを置くスペースがない人
- パソコン初心者
ネットサーフィンが主目的の人
1つ目は、ウェブ検索やSNSの利用などのネットサーフィンが主目的の人です。
ビジネス目的であっても、簡単なデスクワーク程度で使うことを想定しているならば、わざわざdGPU搭載の高級モデルを用意する必要はありません。
パソコンを置くスペースがない人
2つ目は、パソコンを置くための十分なスペースを確保できない人です。
dGPU・eGPUの場合、デスクトップPC・周辺機器・接続ケーブルなどを設置するスペースが必要です。
さらに、機器を置くためのパソコンデスクなども用意することを考慮すれば、それなりのコストもかかります。
しかし、iGPUの場合は本体がノートPCやモバイル機器が多いので、設置スペースに困りません。
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パソコン初心者
3つ目は、パソコン初心者の人です。
dGPU・eGPUの性能をフルに発揮するには、パソコン本体および周辺機器に関する知識がないと難しいです。
また、パソコンを自作するにしても、iGPUの方が部品点数が少ないため、初心者向きといえるでしょう。
iGPUをおすすめしない人
- ゲーミングPCを探している人
- 高度なグラフィックデザインを行う人
- iGPUとdGPUを併用したい人
ゲーミングPCを探している人
1つ目は、ゲーミングPCを探している人です。
カードゲーム・ボードゲーム・タイピングゲームのような2Dゲームであれば、iGPUでも十分でしょう。
しかし、最新のFPSゲーム・対戦型格闘ゲーム・オンラインゲームなどは、iGPUでは動作環境を満たせないケースが多いです。
そのため、ゲーミングPCを探す場合は遊びたいゲームの公式HPで推奨環境を確認した上で、dGPU搭載のモデルを検討すべきでしょう。
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高度なグラフィックデザインを行う人
2つ目は、3Dモデリングや映像関連のソフトでグラフィックデザインを行う人です。
つまり、映像関連・3Dゲーム関連の仕事をするグラフィックデザイナーやプログラマーの方々が該当します。
例えば、3DCG制作においては、モデリング・アニメーション・レンダリングなどの複数のタスクを同時進行で進めなければなりません。
そのため、iGPUでは動作条件を満たせず、dGPUのように高負荷な処理に耐えられるモデルが必要です。
iGPUとdGPUを併用したい人
3つ目は、状況に応じてiGPUとdGPUを使い分けたい人です。
例えば、3Dゲームや3DCG制作などの処理の重い作業はdGPU、日常的な作業はiGPUのように切り替えて使う場合は、同時起動できるパソコンを用意すべきでしょう。
iGPUとdGPUを併用すると、用途を気にせず快適に使える、普段は低消費電力のiGPUにより電気料金をなるべく安く済ませられるなどのメリットがあります。
その反面、仕組みを理解しないとソフトウェアのクラッシュや不具合をもたらす原因につながるため、注意が必要です。
目的に合わせてiGPU・dGPU・eGPUを選択しよう
iGPUの概要、ほかのGPUとの違い、iGPUのメリット・デメリット、iGPUをおすすめする人・しない人を解説しました。
iGPUは、dGPU・eGPUと比較して性能が劣る反面、汎用性やコストの面では勝っています。
そのため、3Dゲームに特化して使う場合は、iGPUよりもdGPUを搭載したゲーミングPCを選択するべきでしょう。
パソコンの用途に合わせて、どのGPUが自分にとってベストな選択肢なのか判断してみましょう。
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