ブルーオーシャンという言葉は聞いたことがあっても、意味や実際にその言葉や概念をどのような場面で利用するのかについてはよくわからない、と思ってはいませんか。
本記事では、ビジネスを成功に導くために必要なブルーオーシャンについて、意味や事例などを詳しく解説します。
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この記事の目次
ブルーオーシャン戦略は現代のビジネスで重要な概念
ブルーオーシャン戦略とは、ブルーオーシャン(未開拓の市場)を発掘し、そこの開拓者となることで市場における優位性を確立するための戦略を指します。
さまざまな物やサービスが販売・提供されている現代において、企業はいかに競合他社との差別化を行い自社の売上を伸ばしていくかの判断を常に迫られています。
競合同士が閉じられた市場の中で顧客の奪い合いを行うレッドオーシャン(競合性の高い市場)を抜け出し、競合性の低いブルーオーシャンを見つけることで、自社ブランドの確立や事業の成功を実現させることが出来ます。
広く普及しているサービスや商品の中にはブルーオーシャン戦略によって生み出され、大きな成功を収めたものもあります。
このブルーオーシャンという概念は現代のビジネスにおいて重要なものであると言えるでしょう。
ブルーオーシャンとは
ブルーオーシャンとは、ビジネスの市場空間を「海(オーシャン)」に例え、その市場空間の中で未だ開拓されていないエリアのことを指します。
穏やかな波のある青い海のイメージから、競合性が低い(あるいは競合性がない)市場や業界を指す言葉として使われています。
ブルーオーシャンが「未開拓な市場空間」であることに対して、すでに多くの企業が進出し多様なサービスが展開された「既知の市場空間」のことを「レッドオーシャン」と呼びます。
ブルーオーシャンは「ブルーオーシャン戦略」という言葉で、2005年に欧州経営大学院教授のW・チャン・キム とレネ・モボルニュによって著されたビジネス書で初めて使われました。
2000年台に入ってから作られた言葉ですが、今ではビジネス戦略を考える上では常識と言える概念です。ブルーオーシャンという言葉の使い方や例文、事例については後ほど解説します。
ブルーオーシャンは自らの手で開拓する
未開拓な市場を指すブルーオーシャンですが、世の中にはすでに多くの商品やサービスが生み出されており、その状況下で未開拓のエリアを見つけることは容易なことではありません。
ブルーオーシャンという言葉が「ブルーオーシャン戦略」という言葉で使われることが多いのは、ブルーオーシャンはただ競合性の低い市場を見つけることだけが目的でなく、その市場の最初の開拓者となることで、自らのポジションを確立させることも目的としているからです。
つまり、まだ認知されていない新しい市場に飛び込むことに加えて、また既存の市場の中でも新たなサービスやプロダクトで、未だ満たされていない顧客のニーズを満たすこともブルーオーシャン戦略と言えます。
ブルーオーシャンがレッドオーシャンに変化する可能性はある
ブルーオーシャンは現状分析や新しいニーズの発掘、発想の転換など、さまざまな手法によってようやく見つけることができるものです。
しかしながら、一度見つけたブルーオーシャンであっても、競合他社の参入や類似するサービスの登場によってそれが間もなくレッドオーシャンに変わる可能性もあります。
手付かずの市場において、いかにスピード感をもって自社独自のポジショニングを確立するかが重要。
その意味でブルーオーシャンとはただ単に「楽に稼げる市場」ではなく、「アイディア次第で今までにない利益が見込める有望な市場」であると言えます。
「ブルーオーシャン」の言葉としての使い方と例文
ブルーオーシャンの言葉の意味や概念を知っていても、具体的にどのような場面でその言葉を用いればよいのでしょうか。
ここからは、「ブルーオーシャン」という言葉が使われる具体的なシーンと例文を紹介します。
ブルーオーシャンの使い方
これまでの解説の通り、ブルーオーシャンとは「見つける」あるいは「発掘する」するものとして、以下のように使われます。
・ブルーオーシャンを見つける
・ブルーオーシャンを探す
・ブルーオーシャンを築く
・ブルーオーシャンを開拓する
・ブルーオーシャンを創造する
ちなみに英語では「blue ocean」と書き、「ブルーオーシャン戦略」は「blue ocean strategy」、「ブルーオーシャンを築く」は「build a blue ocean」と表現します。
ブルーオーシャンを使った例文
見つける、探すといった言葉とともに使われるブルーオーシャンは、具体的には以下のように使われます。
・弊社でこれから展開するサービスは、ブルーオーシャンを創造する取り組みです。
・この戦略は、ブルーオーシャンを開拓することに繋がる可能性が高い。
・既存市場でブルーオーシャンを開拓するには、「差別化」と「低コスト化」を同時に実現する必要がある。
・そのマーケティング手法はすでに競合他社がやっている。我々はブルーオーシャンを見つけなければいけない。
レッドオーシャンや似た言葉との違いについて
対義語として使われるレッドオーシャンなど、ブルーオーシャンと合わせて知っておきたい言葉について紹介します。
レッドオーシャンとは
ブルーオーシャンの対の言葉としてよく使われるのが「レッドオーシャン」です。
「赤い海」を意味する言葉は、競合性が低く穏やかなブルーオーシャンとは反対に、競合企業や商品・サービスが乱立し、それぞれが顧客を奪い合う激しい競争が行われている既存市場を指します。
そのため、「血で血を洗う激しい市場」といった過激な表現もされるのです。
レッドオーシャン戦略では、競合他社や競合サービスの分析、差別化などによって既存市場の中でさらなる売上の増加やシェアの拡大を目指します。
しかし、すでに確立された市場においてある企業が利益を上げるということは、他社の利益を奪うことを意味し、レッドオーシャン戦略ではただ顧客の奪い合いが行われているだけに過ぎません。
コモディティ化もレッドオーシャンと似た意味で使われる
ブルーオーシャン、レッドオーシャンという言葉を使うシーンにおいて、「コモディティ化」という言葉も近年使われ始めています。
そもそも、コモディティ(commodity)とは「日用品」。コモディティ化とは「商品やサービスが一般化すること」を指しています。
市場に同じような商品やサービスが流通し、消費者にとっては「どこのメーカーも同じ」という状態です。
例えば、「この商品はすでにコモディティ化している」といったように表現します。
隙間産業とブルーオーシャンの違い
隙間産業とは、大企業などが進出しない専門的で小規模の市場や、これまで注目されていなかった分野に着目や進出すること。
また、新しい販路を開発するなどして生み出された産業のことです。「ニッチビジネス」や「ニッチ産業」とも呼ばれます。
すなわち、ブルーオーシャンが未だ誰も開拓していない市場であることに対して、隙間産業はすでに認知はされてはいるものの、その専門性の高さや利益率の低さなどから誰も参入してこなかった市場を指します。
隙間産業の具体的な事例については次の記事で詳しく紹介しています。合わせてご覧ください。
隙間産業を企業が狙う理由!ニッチ産業の例やブルーオーシャン戦略との違いを解説ブルーオーシャン戦略を立てる方法
ブルーオーシャン戦略の必要性を認識していたとして、実際に戦略を立てられるかどうかはまた別の話です。
刻一刻と変化するビジネスシーンにおいて、どのように戦略を立てるべきなのかについて解説していきます。
差別化と低コスト化の同時進行が基本
ブルーオーシャン戦略を立てる上で重要なのが「バリューイノベーション」という概念です。
バリューイノベーションとは、「コストの引き下げと付加価値の向上」を同時に進行させることです。
買い手にとってより価値の高いものを提供すると同時に、それにかかるコストをカットしていきます。
例えば、あるサービスや商品について見直す場合には
・余計なパーツや機能、サービスなど取り除くことは出来ないか(低コスト化)
・ターゲットが求めるサービスや機能を付け加えることが出来ないか(付加価値の向上)
の観点を取り入れることで、バリューイノベーションの実現を目指します。
戦略キャンバスで投資しているポイントと顧客メリットを理解する
ブルーオーシャンを見つけるためには、既存市場がどのような価値の提供に重点を置いているのかを正確に把握する必要があります。
そのために活用される分析ツールが「戦略キャンパス」です。
戦略キャンパスとは、
・横軸に業界の競争要因(=顧客から見た価値)
・縦軸には各要因に対して「顧客がどの程度のレベルを享受しているか」
を示すチャートであり、それぞれのスコアが高いほど、企業がその要因に力を入れていることを意味します。
戦略キャンバスを作成するメリットは、主に以下の二つです。
・既存市場の現状の把握
・競合他社が何に投資しているか(自社の商品やサービスの何を売りにしているのか、顧客にどのようなメリットを提供しているのか)
この二つの点を理解した後、次に紹介する「4つのアクション」を通して、ブルーオーシャンの発見を狙います。
「4つのアクション」で事業の展開を膨らませる
4つのアクションとは、ブルー・オーシャンを切り開くための具体的なアクションを見つけるため、次の4つのことについて問いかけることです。
1.業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何 か?
2.業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か?
3.業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か?
4.業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か?
上述した通り、ブルーオーシャンの発見にはバリューイノベーション(コストの引き下げと付加価値の向上)が重要な役割を持ちます。
戦略キャンパスで描いた業界の競争要因(横軸)の中から、自社サービス・商品が力を入れる要素・抜く要素を決定することで、具体的な事業の展開方法を決定します。
ブルーオーシャンの成功事例
ブルーオーシャンの発見のためには、時には事業の方向性やサービス・商品の軸を大幅に変更する決断が求められます。
最後に、適切かつ大胆なブルーオーシャン戦略によって事業を成功させた企業をいくつか紹介します。
シルク・ドゥ・ソレイユ
出典元:Cirque du Soleil
ブルーオーシャン戦略の成功事例として最も有名なものの一つに「シルク・ドゥ・ソレイユ」があります。
シルク・ドゥ・ソレイユはそれまで主に子供をターゲットとしていたサーカス業界において、「大人向けのサーカス(エンターテイメント)」市場を創造しました。
子供向けのアミューズメント施設やテレビゲームなどの普及によって収益の減少に悩まされていたサーカス業界。
シルク・ドゥ・ソレイユはコストのかかる花形パフォーマーや動物によるパフォーマンスを削り(コスト削減)、さらに大人をターゲットとしたチケット価格を設定すること(客単価の向上)で、サーカスでもない「シルク・ドゥ・ソレイユ」という独自のエンターテイメントを作り出すことに成功しました。
Android OS
Apple社がすでにスマートフォンの販売を始めていた市場において、差別化と低コスト化を実現することで世界的なシェアを獲得したのがAndroid OSです。
Apple社のiPhoneが作り上げたスマートフォン市場において、「スマートフォン=iPhone」というイメージを持つ人も多かった一方、高級品であるiPhoneは新興国ではあまりシェアを伸ばすことが出来ずにいました。
そこに目をつけたGoogle社は、
・OSだけを他社に開放し(差別化)、
・中国や韓国のハードウェアの会社に低価格のスマートフォンデバイスを大量生産させる(低コスト化)
という手法により、Android OSのシェアを世界的に広げました。
カセラ・ワインズ
出典元:Casella Family Brands – Homepage
「ワイン=高級な飲み物」や「ワイン=難しい」という意識が強かった状況の中で、「気軽に楽しめるワイン市場」を創造したのがカセラ・ワインズです。
カセラ・ワインズのイエローテイルブランドは、
・飲みやすさ(伝統や格式を省いた低コスト化)
・選びやすさ(知識はないが楽しみたい人への付加価値)
などを重視した気軽なワインを販売し、「味が複雑」「値段が高い」「種類がありすぎてわからない」といった理由からワインから遠ざかっていた顧客層の獲得に成功しました。
もともと夫婦が小さなワインブランドであるカセラ・ワインズですが、イエローテイルの販売をきっかけに飛躍的に売上を伸ばし、販売後わずか2年でアメリカの輸入ワイン市場でNo.1の売上を達成しました。
QBハウス
駅の構内などでよく見かける理髪店「QBハウス」が作り出したのは「高機能性の理容市場」です。
髪を切る前のカウンセリングや洗髪、ドライヤー、マッサージ、セットなど髪を切る行為以外のさまざまなサービスがある従来の理容室は、全てが完了するまで1時間以上かかることも多々あり、「切りたいけれど時間がない」「予約が取れない」といった不満(不便さ)を生み出していました。
そのような状況の中で、出来るだけ早く(短時間で)散髪を済ませたいと思っている人が一定以上存在することに気づいたQBハウスは、
・提供するサービスの削減による施術時間の短縮(約10〜15分)
・サービスカットに伴う料金の引き下げ(税込1,200円)
により、「サービスを受けたいけれど受けられなかった」従来の理容業界が取り逃がしていた潜在顧客の獲得と、高い回転率による理容師の時間あたりの収益を約50%向上させることに成功しました。
任天堂
出典元:Wii
任天堂が発売したゲーム機「Wii(ウィー)」は、子供だけでなく幅広い世代で楽しめるゲーム機として大ヒットしました。
「Wiiリモコンを使った、今までにない体験ができるゲーム」に重点を置いて開発された任天堂Wiiは、
・画質を下げることによる低コスト化
・誰もが直感的に操作できる気軽さ
などによって「子供だけでなく家族みんなで楽しむ」という新しいゲームの楽しみ方を創造することに成功しました。
メルカリ
ヤフーオークションや楽天などのオークションサイトがすでに存在していた中で利用者数を伸ばしたメリカリが提供したのは、「楽しいショッピングの体験」です。
せどり業者なども多く利用し、相場価格がある程度決まっているヤフーオークションなどを違い、主婦や学生など幅広い年代の人がお小遣い程度の収入を期待して気軽に出品ができるメルカリでは、
・いらないものを売りたい(まだ使えるから捨てるのはもったいない)
・欲しいものを安く買いたい
という出品者、購入者の両方のニーズを満たすことに成功しました。実際のフリーマーケットでも行うような会話(商品のサイズや色に関する質問や値引き交渉)もアプリ内で行えることで、ただ物を売りたい・買いたいという欲求に加え、行為そのものを楽しむという新しい価値を作り出しました。
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