今年も就活生の採用状況は「超売り手市場」といえるようです。
ミレニアル世代の就職活動は非常に厳しく「就職氷河期」とさえ呼ばれました。しかし、ここ数年大卒求人倍率が増加の一途をたどっているのです。
そもそも売り手市場とは、どのような状態を指すのか振り返ってみましょう。
この記事の目次
売り手市場とはどういう意味?
簡単にまとめると、売り手市場とはあるものを欲しいと思っている方の数が、提供したいと思っている方の数を上回っている場合のことを言います。
つまり「転職は売り手市場」といった場合、「採用したい」と思っている企業の数が「転職したい」と思っている方の数を上回っているということです。
買い手市場とはどういう意味?
買い手市場は、売り手市場の逆の事象を指します。
就職・転職の場合、買い手市場とは、転職志望者数を企業の採用数が下回っていることです。いわば、人材が引く手数多の状態です。
売り手市場と就活の関係性
景気が落ち込み企業の業績が落ち込むと、企業は新卒の採用を絞ります。
そのような年に就職活動をする新卒生はたいへんな苦労を強いられます。
しかし売り手市場であれば状況は全く違います。企業は積極的に新卒採用を行うので、求人総数は就職希望者数を上回ります。
すると求人倍率が高くなり、学生は就活がしやすくなります。
2019年卒の就活は引き続き売り手市場
2019年も、引き続き売り手市場となるようです。
しかし、このように書くと「本当に就活は売り手市場なのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
本当に今は売り手市場なのでしょうか。具体的なデータを見ていきます。
大卒求人倍率が7年連続上昇中
実際、大卒求人倍率は増加の一途をたどっています。
売り手市場はいつから始まったのか
大卒求人倍率調査(2019年卒)によると、2012年には1.23倍にまで落ち込んだ大卒求人倍率は、翌年2013年には1.27倍と微増しました。
その後も増加を続け、2019年3月卒の大卒求人倍率は1.88倍まで回復を見せています。実に、7年連続で求人倍率が上昇しているのです。
また同調べによると、全国の民間企業の求人総数は、前年の75.5万人から81.4万人に増加しています。
求人に対して38.1万人の人材不足が予測されるなど、今が超売り手市場となっているのが読み取れます。
引用元:大卒求人倍率調査(2019年卒)
中小企業は過去最高の9.91倍
また中小企業の求人倍率においても驚異的な増加が見られます。
従業員規模が300人未満の中小企業の求人倍率は、9.91倍と前年度より3.46ポイント上昇しました。
これは過去最高の求人倍率になります。
求人倍率の上昇により、300人未満の中小企業の人材不足は41.6万人となる見込みです。
対して従業員規模が大きい企業の求人倍率は、さほど変動していません。
ということは、従業員規模が小さい企業ほど採用活動が厳しい状況であるといえます。
引用元:大卒求人倍率調査(2019年卒)
求人総数も拡大中
前述したように、全国の民間企業の求人総数も増加しています。
大卒求人倍率調査(2019年卒)によると、求人総数は前年の75.5万人から81.4万人に増加。
5.8万人も増加しています。
求人倍率増加率も、前年度に対して+7.7%と大幅な伸びを見せています。
対して就職希望者数は2.1%しか上昇していません。
同調べによると、大卒求人倍率は2010年から2013年までは下降の一途をたどりました。
しかし、2015年に+25.6%と驚異的な回復を見せます。大卒求人倍率は、その後の7年間上昇を続けています。
引用元:大卒求人倍率調査(2019年卒)
2018年最新版 売り手市場の業界
売り手市場である現在。この時に活動できる就活生は、たいへん恵まれているといえます。
自分の志望する業界が売り手市場であれば、就活生にとっては大きな安心材料になるでしょう。
しかし、どの業界も押しなべて売り手市場なのでしょうか。最も売り手市場だといえる業界はどこでしょうか。
大卒求人倍率調査(2019年卒)で、各業界の動向を見てみましょう。
引用元:大卒求人倍率調査(2019年卒)
流通業
業界別求人倍率調査で最も高い大卒求人倍率を見せるのは、流通業です。
流通業とは、商品を仕入れて卸す卸売業と、スーパーやデパートなど商品を販売する小売業をまとめたものです。
2019年卒の就活での求人倍率は、12.57倍
もともとが求人倍率の高い業界ですが、底辺となった2013年の3.73倍から回復傾向となりました。
7年間上昇を続け、2019年3月に至っては12.57倍の大卒求人倍率にまで上昇しています。
流通業の代表的な企業
日本経済新聞の小売業売上高ランキング(2018/1/22)によると、1位がイオン、2位がセブン&アイ、3位はファーストリテイリングとなっています。
10位までには伊勢丹や高島屋、Jフロント(大丸と松坂屋)などの百貨店、ヤマダ電機やビックカメラなどの家電量販店、ユニファミマなどが名を連ねています。
建設業
次に大卒求人倍率が高いのは建設業界です。
2019年卒の求人倍率は、9.55倍
建設業界の2019年の大卒求人倍率は、9.55倍です。
2010年の4.14倍を底辺に、増減を繰り返しながらも全体的には上昇傾向を続けました。
9.55倍という数字は、流通業に次いで2位です。
建設業の代表的な企業
前述の日本経済新聞の小売業売上高ランキングによると、建設業界売り上げトップは大和ハウスです。
次いで積水ハウス、大林組となります。
ランキング4位以降も鹿島、清水建設などの大手ゼネコンが続いています。
全体の人気業種ランキングに変化
NHK NEWS WEBによると、就活生の人気業種ランキングにも変化が生じているようです。
引用元:NHK NEWS WEB
銀行はこれまで志望業界トップの常連で、実に2012年から昨年まで連続して首位に座していました。
しかし、2019年3月卒の大卒対象の志望業界調査では、銀行は4位に落ち込んでいます。
銀行の人気が低下したのはなぜ?
同記事は、人気を落とした原因として次の2点を挙げています。
・銀行の長引く低金利による収益の悪化
・大手行の人員削減のニュースが就活生の不安要素になった点
銀行には一時期ほどの圧倒的な人気がなくなったといえるでしょう。銀行に代わり志望業界1位となったのが、情報・インターネットサービス業です。
文系学生に人気の業界
引用元:NHK NEWS WEB
意外に思われる方が多いのですが、多くの文系学生が就職先として情報・インターネットサービス業を選んでいます。
NHK NEWS WEBによると文系学生の就職決定企業の業界は、情報・インターネットサービス業が2位になっています。(理系学生では1位)
文系学生に人気の銀行に次いで、多くの学生に就職先として選ばれているのが分かります。
先ほど大卒求人倍率の高い業界として、流通業と建築業を紹介しました。
しかし、大卒求人倍率ではトップの流通業は、ランキングに入っていません。
志望業界でも就職決定先でも、載っていません。
建設業は、各ランキングに入っていますが、文系就職決定先の5位が最高位です。
このように売り手市場の場合は、求人倍率が高い業界と、学生に人気の業界は必ずしも一致しないといえるでしょう。
理系学生に人気の業界
理系学生の就職決定先で最も多かったのは「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」です。
これは実に、理系学生の1割以上を占めている数字だそうです。「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」は、文系でも大きく順位を挙げました。
前年度は就職決定先21位でしたが、2位へと大幅に順位を上げています。
同業界が、文系理系に関わらず高い採用意欲を持っていることが分かります。
売り手市場でも無内定というケースもある
就職・転職は空前の売り手市場にあるとご紹介してきました。売り手市場の傾向は、今年も続きます。
しかし、このような売り手市場でも就職・転職がうまくいかず、無内定・・・というケースもあります。それは何故なのでしょうか。
大手企業・有名企業はいつでも買い手市場
「売り手市場」というのは、あくまで全体的な就職・転職市場の傾向を示す言葉です。実際の採用倍率は、企業によって異なるのが現実です。
特に誰もが知っているような有名企業、大企業は常に多くの志望者からエントリーシートが届き続けています。
つまり、売り手市場においても大企業は「買い手市場」なのです。
大企業、有名企業に絞って就活、転職活動をする人は選考で落とされ続けることも珍しくはありません。無内定の状態に陥ってしまうのが、就活・転職ではリスクです。仕事を探す際は、より視野を広く持つことをおすすめします。
就活期間が短縮。企業が学生を見れる時間が減少
学生の場合、就活期間の短期化も選考に大きな影響を与えています。
企業の社員サイドからすると、学生の選考に当てられる時間がそれだけ短くなり、一人一人の個性やキャリアと向き合うことが難しくなっています。
また大学生の側からしても同様です。短い就活期間で数十社にエントリーし、すべての企業を分析。自己PRを組み立てるのは簡単ではありません。面接の予定を入れるだけで精一杯でしょう。
その上「売り手市場」という市場環境が影響。就職氷河期には「どうせ大企業に応募しても受からないだろう」と考えていたような学生が、大企業にエントリーしてみるというパターンが増えています。規模が大きい企業であればあるほど、採用の母数が増加。結果、パイの食い合いのような状態が生まれています。
売り手市場でも、企業と学生のマッチングが進まない
2018年卒、2019年卒の学生はいずれも半数近くが、売り手市場にも関わらず就活に苦戦しているというデータもあります。このような学生からすると「売り手市場なんて、大嘘だ!」と感じるかもしれません。
売り手市場にも関わらず、買い手市場のような状態が生まれている背景には「学生と企業のマッチングが進んでいない」現状があります。就職活動に失敗した学生がいる一方、採用がうまくいかない企業が存在するのも現実なのです。
両者をマッチングする仕組みの登場。また就活に失敗した学生が、柔軟に就活に再チャレンジできる制度の整備が期待されます。
就職・転職におすすめの業界
売り手市場と好条件にある中、おすすめの業界は何でしょうか。
IT業界
IT業界が、その一つに挙げられます。
IT業界は、2017年には就職決定先として文系2位、理系1位であった実績のある業界です。
おすすめの業界である理由を挙げてみましょう。
・採用傾向として文系理系の隔たりがないこと
・桁違いの将来性が見込まれる業界であること
前述の通り、2019年卒生を対象とした、IT業界の社員採用状況は非常に活発化しました。IT企業が内定を出す数が増えているのです。
理系学生の1割以上が、最終的にIT業界を就職先に選んでいます。
また、文系学生の就職先としても前年度21位から2位へと順位を挙げました。
エンジニアは慢性的な人手不足
IT業界の積極的な採用活動の背景には、著しい市場拡大の動きがあります。
急成長を続けるIT先端技術ですが、IT企業は担い手となるエンジニア社員を、何としても確保したいところです。
IoT、AI、ビッグデータなど急速にニーズが高まっている業種において、深刻なエンジニア不足が予測されているからです。
「2020年までに人工知能やIoTを扱える先端IT人材は4.8万人不足する可能性がある」
これは「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」よりの抜粋です。
就活生であれば、もう聞いたことがある内容でしょう。
ITの能力が高い人には、高待遇を提示
IT業界は、能力が正当に評価される業界だともいえます。
そこが、業界の将来性に加えて就職先としておすすめな理由です。
NHK NEWS WEB によると、IT業界は優秀な人材の確保のため、相次いで具体的なアピールを始めています。
例えば、優秀な人材には初任給のアップなど高い待遇があることを発表しています。
例を挙げると、大手情報セキュリティー会社「ラック」は、初任給をボーナス、残業代なども含めて30万840円にすると発表。
この上、国家資格を持つなどITスキルの高い学生には、最大で1万5000円余りを上積みするそうです。
企業が用意したハイレベルなITの問題に正解した学生には、何と初任給増額という仕組みもあります。正解者はその場で社長と最終面接にのぞめ、採用するというから驚きです。
このような好待遇の提示が相次いでいるのが、IT業界の採用の今です。IT業界は、日本において最も変革が行われやすいフレキシブルな業界でもあります。
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