2020年からいよいよはじまる義務教育におけるプログラミングの必修化。
開始が近づくにつれ、どのように授業が行われるのか気になっている方も多いでしょう。
この記事では、プログラミング教育の必修化の2019年の最新の情報について解説。プログラミング教育が授業でどのように行われるのかや、具体的な授業の事例についても理解できます。
この記事の目次
プログラミング教育はなぜ必修化されるのか
まず、プログラミング教育が必修化される背景について解説します。
ITを活用したビジネスの競争に勝つため
プログラミング教育の必修化は、世界各国とのITを活用したビジネスの競争に勝つため。
子どものうちからプログラミングを学んでITのスキルを底上げすることが大きな目的です。
高齢化社会が進み、労働人口が減少すれば、単純に考えれば日本の国としての経済力は下がります。それを避けるためには、日本は1人あたりの生産性を上げる必要があります。
そこで重要になるのがITスキルなのです。未来の学びコンソーシアムの資料によると、すでに90%の職業において基礎的なITスキルが必要とあります。
その他にも、最大で79万人が不足すると言われているITエンジニアの不足に対する対策という面もプログラミング必修化の背景の一因です。
プログラミング的思考を育むため
プログラミングを学ぶことで、ロジカルな考え方のできるプログラミング的思考を持った子どもを育てることもプログラミング教育必修化の目的とされています。
プログラミング的思考とは、簡単に言うと課題解決能力。
プログラミングのスキルを身に付けることだけではなく、それによって思考力・判断力・学ぶ姿勢・人間性などを育むことも国は重要であると考えているのです。
また、どのようにプログラムが動いているのかという仕組みを理解することで、ITを受け身ではなく、攻めの姿勢で使えるようになるでしょう。
文部科学省による「小学校プログラミング教育の手引」には、小学校プログラミング教育の狙いとして以下の3つが挙げられています。
・知識及び技能
・思考力・判断力・表現力等
・学びに向かう力、人間性等
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プログラミング必修化で小学校の授業の何が変わるのか
プログラミング必修化によって、小学校の授業は実際にどのように変わるのでしょうか。以下でその詳細について解説します。
「プログラミング」という教科ができるわけではない
ただし、「総合的な学習の時間」の中で、プログラミングを含めた情報に関する学習を行う時間は設けられます。
その他にも算数・音楽・理科など、さまざまな教科に取り入れられるのが中心となるでしょう。
教育課程内だけでなく、教育過程外のプログラミング教育も想定されており、学校によって幅広い取り組みが行われることが予想されます。
2020年のプログラミング必修化に先駆けて、町田第三小学校の「AI×プログラミング」の公開授業のように取り組みを模索している小学校も少なくありません。
参考URL:グーグルが考える「AI×プログラミング」の授業案–町田第三小学校で公開授業 – CNET Japan
プログラミングのみの教科書もない
プログラミングという学科できるわけではありませんので、プログラミングのみを扱った教科書もありません。
それぞれの教科の教科書の中で、必要に応じてプログラミングについて言及されます。
そのような、プログラミングに関わる内容は1年生の教科書から登場するので、自然に慣れていくイメージとなるでしょう。
教育課程内の学習活動はAからDに分類される
文部科学省による「小学校プログラミング教育の手引」によると、小学校における教育課程内のプログラミング学習はAからDに分類されるとあります。
A:学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの
B:学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの
C:教育課程内で各教科等とは別に実施するもの
D:クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの
教育課程外のプログラミング教育もある
以下の教育課程外のプログラミング教育も想定されています。
E.学校を会場とするが、教育課程外のもの
F.学校外でのプログラミングの学習機会
これだけではイメージがつかみづらいと思います。次で具体的な事例について紹介していきますので、参考にしてください。
プログラミングが扱われる教科の指導事例
A分類に含まれる学習内容の指導事例
上述で紹介したA分類に含まれる学習内容の指導事例を見ていきましょう。
算数
小学校5年生を対象に、Scratchを利用して、プログラミングで正多角形などの図形を描いたり、円周と直径について学んだりする事例です。
実際に手を動かすことで自分が図形を描くのと、プログラミングで図形を描くことの違いを理解できるでしょう。
また、コンピュータに正しく命令をすると、早く正確に図形が描けることも実感できます。
理科
レゴ WeDo 2.0を使って、電気をムダなく使う方法と結びつけて学習を行う事例です。
身近な発電ラジオ・自転車のライト・モーターなどから電気が蓄えられることをまず学習。
そのうえで、プログラミングによって実際にモーターなどでロボットを動かすことを体験します。
理解と体験が紐づき、楽しみながらプログラミングに親しむことができるでしょう。
総合的な学習の時間
「まちの魅力 PR大作戦」というテーマを掲げ、街の魅力を伝えるための案内方法を考える上でプログラミングを自然な形で学ぶという事例です。
B分類に含まれる学習内容の指導例
B分類に含まれる学習内容の指導例について紹介します。
国語
敬語の使い方を考える授業で、Scratchを使って理解を深めるという事例です。
Scratchで場面や人物に合った敬語を選ぶと、その入力した結果によって出力される表情が変わります。
視覚的に結果が理解できる点が、今までの国語の授業とは異なる点と言えるでしょう。
音楽
音楽のリズムや仕組みを学ぶ授業での事例です。
リズムのカードを組み合わせることで、繰り返しのリズムを実際に作ります。
組み合わせによってどのように変わるかがすぐにわかるので、違いを体感しながら学習が進められるでしょう。
家庭
家族と食べる朝食を考える授業での事例です。
その中で、普段は意識することのない自動炊飯器のごはんを炊くためのプログラムについて考えます。
コンピュータやプログラミングが身近なものであることを理解してもらうことが目的です。
プログラミング教育は何年生からはじまるの?
おもに4年生以上の小学校高学年が対象です。
2020年に必修化された後は、指導する先生や学校のカリキュラムによって変更があると予想されています。学習内容や教育の対象も変化することは十分に考えられるでしょう。
文部科学省・総務省・経済産業省と企業や団体がともに設立したプログラミング教育のポータルサイト「未来の学びコンソーシアム」をご覧いただくと、最新の情報がチェックできます。
最新の動向や事例が知りたい方は、合わせて未来の学びコンソーシアムもご覧ください。
参考Webサイト:小学校を中心としたプログラミング教育ポータル Powered by 未来の学びコンソーシアム
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小学校のプログラミング教育で使われる言語と学習方法とは
文部科学省の事例に掲載されている言語は以下の通りです。
ビジュアルプログラミング言語
出典元:Scratch – Imagine, Program, Share
小学校のプログラミング教育では、ビジュアルプログラミング言語が使われる機会が多いと予想されます。
ビジュアルプログラミング言語とは、テキストではなくオブジェクトで直感的にプログラミングが行える言語です。
以下で、代表的なビジュアルプログラミング言語であるScratchとViscuitについて解説します。
Scratch(スクラッチ)
Scratchはビジュアルプログラミング言語を代表する存在と言えるでしょう。
シンプルでわかりやすいだけでなく、複雑なプログラムの構築までできるという特徴があります。そのような柔軟性の高さから、小学校から大学まで幅広い世界中の教育機関で使われているのです。
Viscuit(ビスケット)
国産のビジュアルプログラミング言語「Viscuit」。
Scratchとの大きな違いは、小学生以下の低年齢の子どもでも遊ぶようにプログラミングができる点です。
UIもかわいらしいため、子どものプログラミングの入門に最適な言語と言えるでしょう。
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ロボトップログラミング
出典元:LEGO Education
ロボットプログラミングは、ロボットをプログラミングで動かすことを指します。ブロック・電子パーツ・プログラムという要素で構成されることが多いです。
構築したプログラムからどのような結果が得られるかがロボットを動かすことですぐにわかります。
ロボット作りの楽しさを通して、プログラミングにも親しめる学習方法として人気が高いです。
事例の中ではレゴ・ArtecRobo・micoro:bit・MESHなどの教材が使われています。
アンプラグドプログラミング
PCやタブレットなどのコンピュータを使わずにプログラミング的な思考を身に付ける学習方法です。
カード・パズルなどを使って学ぶため、ICT環境が整っていなくてもプログラミングが学べるというメリットがあります。
プログラミング教育必修化が抱える課題
プログラミング教育の必修化が抱えている今後解決すべき課題について解説します。
学校によって学習のクオリティに差が出る
現在のプログラミングの授業での取り入れる予定を見ると、それを想像するのは難しくありません。実際に教育課程の中での現在の取り組みの事例を見ても、使っている教材をはじめとした違いがあります。
学校がどの程度プログラミングに力を入れるかによって、その成果は大きく異なるでしょう。
教師の98%が授業に不安を感じている
プログラミング必修化に対して不安を感じているのは、保護者だけではありません。リセマムのアンケートによると、教師の98%が少なからず不安を感じているとあります。
育成のためにプログラミング教育を担当するすべての模擬授業研修は行われますが、それも2019年の夏からです。
一般的にプログラミングの仕事の基礎と言えるスキルを身に付けるには1,000時間かかると言われています。
プログラミングのスキルを身に付けることだけではなく、プログラミング的思考を学ぶことが目的であればそこまでのスキルは必要ないと言えるかもしれません。
しかし、十分なプログラミングへの理解がない教師が授業を行うことに不安を覚える保護者の方は少なくないでしょう。
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プログラミング学習に適したICT環境が整っていない
プログラミング学習を進めるための最適なICT環境が整っていないことも課題の1つです。
2019年秋から整備計画がはじまり、2020年からICT環境の整備がはじまります。そのため、開始当初はICT環境が整っていない学校も多く見られるでしょう。
また、文部科学省の「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について」という資料によると、学習用のコンピューターが1人1台が好ましいけれど、3クラスに1クラス分程度が適当とあります。
これがプログラミング教育の授業が最低限できるレベルという判断されました。
コンピューターだけでなく、LANや学習用サーバーなどのネットワーク環境の整備も必要ですので、充実したICT環境が整うまでにはまだ時間がかかるでしょう。
プログラミングを学ぶおすすめの方法について
2020年のプログラミング教育必修化に備えて、プログラミングを学習するおすすめの方法について紹介します。
プログラミング教室に通う
プログラミング教室に通わせるのは費用がかかりますが、一緒に学ぶ友だちがいるのは子どもにとってやる気につながります。
一口にプログラミング教室といっても、その学習内容はそれぞれで異なります。学べる内容は大切ですが、子どもが学びたいと意欲を持てるプログラミング教室を選ぶことを大切にしましょう。
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ゲームを楽しんでプログラミングを学ぶ
ゲームを楽しみながらプログラミングを学ぶ方法もおすすすめです。「勉強」ではなく、「ゲームをクリアする」と考えると子どもも自然に取り組めるでしょう。
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子供向けのプログラミングの書籍を活用する
子供向けのプログラミングの書籍を活用するのもおすすめの学習方法です。
プログラミングの独学の定番と言える書籍。大人向けのものは難しく敬遠している方もいらっしゃるでしょう。
ただ、最近では子どもを対象としたプログラミング学習の本も増えています。「ルビィのぼうけん」のように絵本でプログラミング思考が学べる本もあるので、子どものプログラミング入門として利用するのもおすすめです。
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将来を考えたプログラミングの習得のサポートがベスト
学校の成績などを考えるよりも、子どもの可能性を広げることが大切。
プログラミングを含めたITスキルはこれからの世の中で確実に重要になるでしょう。それを踏まえて、将来を見据えたプログラミングの学習に対するアプローチを行うことをおすすめします。
高いスキルが身に付くプログラミング教室に通わせたとしても、苦手意識が生まれてしまっては意味がありません。ITを活用することの楽しさを実感して、子どもが主体的に学べるサポートをすることが大切です。
もしも、自分がプログラミングがわからなくてどうすればよいか悩んでいるのであれば、この機会に一緒に学ぶとよいでしょう。
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