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【茂木健一郎氏インタビュー前編】「アウェーに転じる“引越し”で脳に負荷をかけ、成長を目指せ」

更新: 2019.11.08

2018年4月に発刊された『結果を出せる人の脳の習慣』(廣済堂出版)で、茂木健一郎氏は「アウェーで戦える人こそが現代社会で最強」というメッセージを投げ掛け、「最強」になるための脳の習慣を説いている。

そこで、「ではエンジニアが最強になるための習慣は?」という問い掛けをしてみたところ、茂木氏ならではの強力な提言を返してくれた。技術オリエンテッドで進行する変化の時代、エンジニアが志すべき成長とは? そして、「アウェーで戦う」ことの意義とは?

脳科学者 茂木 健一郎氏

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。その後、理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、現在はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学、大阪大学、日本女子大学等でも非常勤講師を務める。専門は脳科学および認知科学。2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。2006〜2010年にはNHK『プロフェショナル 仕事の流儀』でキャスターを務めた。近著に『結果を出せる人の脳の習慣』(廣済堂新書)がある

【提言①】エンジニアがグレート・コミュニケーターになるための習慣

「エンジニアはコミュニケーションが苦手」とよく言われています。私もさまざまな領域にいるエンジニアの方たちとお会いする中で、確かにその通りだな、と感じることが多々ありました。

けれどもそこには至極当然な理由があるんです。最適な技術を選び取り、合理的かつロジカルに組み上げて何かを生み出すのがエンジニア本来の仕事。そこでは精緻な論理構成が求められますし、妥協を許さず完璧を目指す姿勢が問われますから、良い意味での「オタク」にならなければいけません。一方、人と人とのコミュニケーションは曖昧さや不確実性の中で進みます。つまり双方は、全く質の異なる行為であり、使用する脳の部位も違うわけです。

もちろん例外はあります。つまり、エンジニアでありながら、なおかつグレート・コミュニケーターでもある成功者。スティーブ・ジョブズもそうでしたし、日本では堀江貴文さんあたりもその代表格。彼らのことを憧れのまなざしで見つめつつ、「自分には無理だ」と諦めている人も多いかもしれません。でも、そんなことはないんです。エンジニアだからこそ、の解決策があります。ポイントは2つ、「メタ認知」と「モードチェンジ」です。

メタ認知というのは、簡単に言えば自己を冷静かつ客観的に認知することです。対象となるものにどういう特性があって、何が不足していて、何が過剰なのか……そんな分析行動ならばエンジニアは大得意のはず。その分析眼を自分に向ければ良いだけです。

また、決められたルールに従って考え、行動することも、エンジニアなら日々の仕事で鍛えられていますからきっと得意でしょう。ですから、普段のコミュニケーションでも、自分にちょっとしたルールを課し、ルールベースでやる習慣を付ければよいのです。

例えば、技術領域の仕事をしている方に多い失敗例の一つに、「専門ジャンルの話題になったら、延々と話し続けてしまう」があると思うのですが、メタ認知のプロセスを経て、自分にそうした傾向があると判明したら、「人と会話する時は、必ず相手への質問を入れる」というルールを設けてみてはどうでしょうか。

メタ認知→客観分析→法則抽出→解決策策定→実行というような、エンジニアらしい行動プロセス。これを習慣付ければ、一定の効果は上がるはずです。

そうしてコミュニケーションに対する苦手意識を克服できたなら、曖昧さを排除するエンジニア脳と、曖昧さの上で物事を進めていくコミュニケーター脳を意識的にモードチェンジしていくことも難しくなくなります。

【提言②】アウェー領域にチャレンジしていくための習慣

私は著書『結果を出せる人の脳の習慣』の中で、「変化の時代を生き抜くには、ホームでの戦いにしがみつくのではなく、アウェーで戦えることが重要だ」というメッセージを書きました。例えば国内での仕事に引きこもってばかりいないで、グローバルというアウェーで戦える人間にならなければいけない。慣れ親しんだ社内での業務や、特定の人間関係や環境の中でしか成果を出せないようでは、これからの時代は戦っていけない、という話もしました。

なぜ脳科学者の私がそんな話を書いたのかといえば、脳というものが「初めての体験」をした時にだけ、ある種の回路を作動させて成長を果たす、という傾向を持っているからです。

アスリートを思い浮かべれば分かりやすいと思うのですが、ホームグラウンドでの戦績は高いのに敵地での成績はいま一つ、という選手っていますよね? 逆にアウェーの時に活躍する選手というのもいる。では、オリンピックのようなグローバルな戦いでどっちが成果を上げるのかといえば、誰もが後者の方だと認知しているはず。ビジネスパーソンでも、それは同じことだと考えているんです。

転職も、ある意味ホームとアウェーという発想が当てはまるかと思います。しかし、実際の転職では「会社は変わったけれども、前職と同じようなポジションに就いて、似たような業務をしている」というケースが多いようです。これでは「果敢にアウェーでチャレンジしている」とは言いがたい。「初めての経験」で得られるはずの脳の成長も望めません。

重要なのは、何を「ホーム」だと規定するか。エンジニアの場合は、何よりもまず「専門とする技術」こそがホームなのだと思います。そう捉えた上で、近年エンジニアを取り巻く環境の変化も見ていくと、アウェーの重要性もはっきり見えてくるでしょう。

分かりやすいのは自動車。ガソリンをエンジンという内燃機関で動力に変えて車体を動かすのがこれまでの自動車でしたが、電気自動車の時代、あるいは自動運転の時代が、もうすぐそこまで来ています。そんな変化の時代に「私は内燃機関の専門家なんだ」というプライドにこだわり続けているだけでは、エンジニアとしての未来は開かれていきません。

もちろん、職人気質を否定するつもりはありません。「生涯をエンジン開発に捧げた」という先人たちがいてくれたからこそ、日本のモノづくりは進化してきたのですから。でも、これからエンジニアとして未来を築いていくためには、ホームである内燃機関系技術にだけ固執することはリスクにもなる。異なる領域の技術にいち早くチャレンジした者や、今までと異なる役割に自分を置き換えた者だけが生き抜く時代なのだと言えます。

ではどうすれば良いのか、というと第一に「動く」という習慣を体得すべきだと私は考えています。

【提言③】北斎に学ぶ、イノベーターの「動く」習慣

唐突かもしれませんが、ぜひ葛飾北斎という人のことをエンジニアの皆さんには知ってほしいと思います。今さら言うまでもなく、江戸時代を生きた彼は日本ばかりか世界の美術に変革をもたらしたイノベーターです。技術を用いて対価を得る、という意味合いではアーティストとエンジニアは通じる部分があります。北斎の生き方から学べるものはきっと多いと思うのです。

先ほど「動く」習慣がエンジニアを成長させる、と言いましたけれども、北斎は実によく動いた人でした。生涯の間に引っ越しを93回もした人なんです。なぜそんなに引っ越しを繰り返したのか、という部分については諸説あるのですが、私は「イノベーションを起こす人間には引っ越しって重要なんじゃないか」と思っています。

モノづくりに携わる者にとって、工房は大切なホーム。細かなところにまで神経を行き渡らせるはずですから、それを引っ越しによって変更すれば、かなりの負荷がかかります。そこをあえて93回も引っ越したのが北斎です。脳というのは負荷がかかった時ほど成長をします。北斎がそんなことを知っていたとは思えませんが、結果として彼はイノベーションを起こしました。

よく似た環境に転職をしただけではアウェーに転じたとは言えない、という話をしましたが、エンジニアの皆さんもあえて開発環境を一変させるような「動き」をしてみてはどうでしょうか。

例えばエンジンの専門家だった人が電気の領域にチャレンジする。そうして技術領域そのものに「動き」を加える。あるいは同じ技術でも用いるプロダクトや使い方が変わるような場へ「引っ越し」をする。組織内での役割を変える「引っ越し」でもいいでしょう。そういう「動き」によって脳に負荷をかけ、新しい経験をする機会を与えていけば、間違いなく今までにない成長をすることが可能です。

それが転職という形なのか、社内での異動なのか、働き方改革で注目されている「複業」という形なのかはケース・バイ・ケース。大切なのはエンジニアがこのようにして「アウェーに向かって動き出す」ことなのだと思うのです。

余談ですが、93回も引っ越しをしたこの天才画家は、代表作『神奈川沖浪裏』の絵を70歳を過ぎてから描きました。IT業界では古くから「プログラマー35歳限界説」なんて議論がありますが、イノベーションを起こすような人間の脳は、35歳なんて早いタイミングで成長を止めたりはしないんです。「北斎は天才。自分とは違う」なんて発想はしてほしくありません。

 

取材・文/森川直樹 撮影/赤松洋太

こちらの記事はエンジニアtypeのコンテンツから転載しております。元記事はこちら

 

結果を出せる人の脳の習慣 ―「初めて」を増やすと脳は急成長する―』

茂木健一郎・著(廣済堂出版)

結果を出せる人の脳の習慣 「初めて」を増やすと脳は急成長する (廣済堂新書)

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この記事を書いた人

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