今後のキャリアについて考える時、とても気になるのが「給料」です。
転職前に、給料についてチェックしておくべきなのは「給与額」だけではありません。給与体系や制度についても知っておかないと、後々損するかもしれません。
そのような中で、よくアスリートの給与体系として「年俸」という言葉が使われます。耳にしたことがあると思います。
そして「年俸」「月給」「年収」の違いが何なのか、よくわからない方も多いでしょう。
そこで本記事では、給与制度の一つである「年俸制」について解説。
年収・月給・手取りとの違いや年棒制を採用するメリット・デメリットなども解説します。
年俸とは?
年俸制とは、簡単に説明すると「一年単位で支払われる報酬」のことを指します。
以下で、年俸について詳しく解説していきます。
- 「1年間に支払われる給料が決まっている」制度のこと
- 年俸と年収の違いは?
- 年俸と月給の違いは?
- 年俸と手取りの違いは?
- 年俸制を採用する理由
- 年俸に残業代は含まれるのか?
- 年俸制でもボーナスはある?
- 年俸制になると退職金は無くなるの?
「1年間に支払われる給料が決まっている」制度のこと
「年俸制」とは、支払われる賃金を1年単位であらかじめ定める制度のことです。ただし、全額が一度に支払われることはありません。
労働基準法第24条第2項には、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とされているため、これに則って分割して支払われます。
分割の方法としては、12等分して毎月1回の支払、もしくは14ないしは16等分して、毎月1回と年2回の賞与のタイミングで支払うケースが一般的です。
年俸制では、1年ごとに支払われる金額が確定されます。
毎年、個人のスキルや達成すべき成果の内容に鑑みて、翌年の年俸について会社と契約を結ぶ必要があります。
外資系・不動産・スポーツ選手など、個人の業績が評価される成果主義が重視される業界・企業で採用されている給与形態です。
また、勘違いされやすいのは年俸制の社員であっても正社員であれば厚生年金や社会保険の対象であるということ。
契約社員としての報酬を年俸で支給されるケースと、正社員の給与体系として年俸制を採用することでは雇用形態が異なるため注意してください。
年俸制であっても正社員であれば、継続的な雇用が保証されています。ここでは、おもに後者のケースについてご紹介します。
年俸と年収の違いは?
年俸と年収の違いは、以下の通りです。
- 年俸:一年単位で報酬が支払われる給与形態
- 年収:給与形態に関わらず、一年で得られる収入
年俸は給与形態、年収は収入を意味するのでそもそも言葉のカテゴリが違います。
年俸とは、年俸制の契約に基づいて1年間に支払われる給与のことを指します。年俸の他に、ボーナスや残業手当が支給されるかは契約の内容によります。
年収は給与形態に係わらず、その1年間で得た収入すべてのことです。
基本給に加えてボーナスも残業代も、副業で稼いだ額もすべて年収となります。
年収と年俸の金額が同じになる場合もあります。
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年俸と月給の違いは?
年俸制も月給制も毎月の給与の支払いがあり、一見すると大差はないように思えます。しかしながら、各月ごとにもらえる金額が確定しているかどうかという点に大きな違いがあります。
年俸制の場合、1年間に支給される賃金があらかじめ決まっているため、その金額の1/12が毎月振り込まれます。
これに対し、月給制の場合は、例えば会社の経営不振などによって従業員へ給料を払うのが苦しくなると、会社側の決定で減額する措置を取れます。
また、月給制の場合は大きな成果を残した場合には賞与の増額などに反映されますが、年俸制の場合は事前の取り決めがない限り、給与の増額はありません。
年俸制で大きな成果を出した場合には、翌年にも同様の成果を出せる事を期待して年俸増額の交渉を行う事となります。
いわば、月給制は当年の成果に対する報酬を当年のボーナスと翌年の昇給に反映するのに対し、年俸制は「前年の成果と翌年の成果の期待値」に対して定めるという違いがあります。
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年俸と手取りの違いは?
年俸として示された金額は、その金額がまるまる給料として支給されるわけではありません。
そこから年金・健康保険・雇用保険などの社会保険料と、住民税・所得税が引かれた金額が手取り額として口座に振り込まれます。
また、給料引きとしている場合は個人でかけている生命保険料、確定拠出年金等の退職金、労働組合費なども差し引かれます。
会社と契約する年俸は税引き前の金額であり、手取りは税引き後の金額であることを覚えておきましょう。
年俸制を採用する理由
従来から多く用いられてきた月給制は、終身雇用制度と強く関連した給与体系となっています。
月給制の給与は基本的に上昇し続ける「本給」と、成果に応じて上昇率が異なる「加給」、会社業績と個人の成果に応じて変動する「賞与」に分けて計算される事が一般的です。
個人の成果や能力によって上昇率は異なるものの、本給と加給は上昇し続けるか現状維持となることが大きな特徴で、減額される事はあまりありません。
年俸を定める際に、最低年俸などのベースが定められていることもありますが、一般的に成果に応じて配分される比率が高く、より多くの成果をあげれば翌年の年俸も上がります。
逆に成果をあげられなければ、年俸は減額されてしまいます。
本人の業績により給与を大きく上げる事が出来る年俸制を取り入れる事で、企業側は従業員のモチベーションを高く維持でき、従業員側は自分の努力によって、より大きな収入を得られやすくなります。
また、企画職や研究職、会社役員等の上級管理職など、労働時間で成果を評価する事が難しい職種も年俸制を採用する企業があります。
詳しくは後述する「年俸制を採用するメリット」でご説明します。
年俸に残業代は含まれるのか?
企業は年俸制、月給制などの給与体系に関わらず、残業代を必ず支払わなければなりません。
労働基準法第37条では、以下のように規定されています。
「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」
これによれば、企業ごとに定められた所定の労働時間を超えて労働をさせた場合には、超過分の賃金、すなわち残業代を支払わなければ違法となります。
また、1日8時間と定められた「法定労働時間」を超えた時間や休日の労働に対しては、2割5分の割増賃金も支払わなければならないとされています。
年俸制の場合もこれは同様で、雇用契約書にある勤務時間(この部分が所定の労働時間となります)を超えて働いた場合には残業代が別途支払われます。
所定の残業時間を超えた分については、年俸とは別に残業代が支払われるのが一般的です。
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年俸制であっても残業代が支払われないケースも
残業代が支払われないケースとは、具体的には裁量労働や事業場外労働によるのみなし時間制が採用された場合です。
みなし時間制とは、管理者や外回りの営業職の様に、労働時間で成果を図る事がむずかしい職種に適用される制度です。
みなし時間制が採用された場合には、所定の時間に対応する賃金を支払うことで、残業代は発生しません。
残業代の処理は給与形態によらずトラブルとなりやすい部分です。残業代の取り扱いについては、就業規則を確認し事前に取り決めしておきましょう。
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年俸制でもボーナスはある?
年俸制であっても、企業や個人の業績に連動させた賞与やボーナスを年俸とは別に支給している企業もあります。
その際には、年俸とは別にボーナスをもらうことができますが、あくまでも年俸決定時の契約や企業の就業規則に基づき定められます。
このような場合は、年俸を16等分し、年に2回の賞与として2/16づつ受け取るか、14等分して、1/14づつ受け取るケースが多く見られます。
原則として、年俸制の場合は契約時に一年間の賃金が定めれれており、そのなかにボーナス分も含まれていると理解しておきましょう。
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年俸制になると退職金は無くなるの?
年俸制になると退職金は無くなるのでしょうか。
従来の月給制の給与体系の場合、賃金の一部を企業や組合が退職一時金として積み立てています。
一方で、正社員として雇用されている場合は、年俸制の場合でも同様の積み立てが行われるケースが多くあります。
年俸制の特徴として、企業側が人件費の計画を立てやすいと言う面がありますが、退職金についても確定拠出年金を利用するなど、積立金運用に係わるリスクを減らす方法が選ばれています。
退職時に一時金がもらえるか否かは生涯賃金に大きな違いがありますが、退職金制度が無い場合は、給与の一部に退職金が含まれている事を理解し、運用方法についても良く検討するべきでしょう。
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年俸制を採用するメリット
年俸制を採用することで、どのようなメリットが生じるのでしょうか。
以下で1つずつ見ていきましょう。
- 1年間の給料が確定する
- 従業員のモチベーションが上がる
- 人材の流動性が高くなる
1年間の給料が確定する
年俸制のメリットとして、契約当初に1年間の賃金を確定出来ることがあります。
これにより、大きな買い物をしたり、家や車のローンを組んだりといった計画が立てやすくなります。
また、自分が働けなくなったり、業績を残せなかったとしても、その年は年俸として提示された金額が受け取れます。
もし途中で報酬の減額などがあった場合は契約違反となり、会社側が罰せられる可能性が高くなります。
反面、これは年俸制のデメリットとも関わるため、「年俸制のデメリット」の項でご説明します。
企業サイドにとっても、1人の社員に支払う給与が確定できるため、経営計画が策定し易いと言うメリットがあります。
従業員のモチベーションが上がる
年俸制の場合、成果主義を前提としているため年齢や勤続年数に係わらず各社員の業績や評価によって給料が決まります。
年俸の契約時に、その1年間で自分に求められる成果と対価を明確に定められるため、高いスキルを持っている場合には、それに応じて高い報酬を受け取る事が出来ます。
また業務内容や職種も契約に含めることで、希望しない異動や職種の転換のリスクもなくなります。自分の能力をフルに生かせる職場を得やすく、業務に集中して取り組めるでしょう。
企業側としても、年俸制を採用することで従業員のモチベーションが上がり、会社全体の業績向上につなげやすくなります。
この際重要となるのは、成果と報酬のバランスを適正に取ることと、成果を公平に評価する基準をあらかじめ定めておくことです。
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人材の流動性が高くなる
年俸制は年功序列の給与体系とは正反対の考え方といえます。
年功序列の給与体系は、一つの企業に長くいるほど給与が高くなるため、長く一つの会社にとどまる事に対するインセンティブとして働きます。
一方で年俸制はあくまでも能力と成果によって給与が定まるため、一つの企業に長く居続ける必要が有りません。
高い能力を持った人材であれば、より条件の良い企業へ移る事で収入を増やしたり、やりがいのある仕事に就く事が可能です。
転職によるデメリットが少なくなり、人材の流動性を促し、企業選択の幅が広がります。
プロジェクト単位で業務が進むソフトウェア開発など、専門性の高い職種に適した給与体系と言えるでしょう。
年俸制を採用するデメリット
年俸制にはメリットがあれば反対にデメリットもあります。
以下で1つずつみていきましょう。
- 評価が収入に反映されるまで時間がかかる
- 年俸がダウンする可能性もある
- 正当な評価が得られなければモチベーションが下がる
評価が収入に反映されるまで時間がかかる
月給制の場合、ボーナスは個人の成果を反映するケースが多く、1年あるいは半年など、特定の期間内で残した成果によって決まります。
良い成果をあげれば次のボーナスに反映されるため、早ければ出した成果から半年以内に給与に反映されることになります。
しかし、年俸制の場合は1年分のボーナスの金額もあらかじめ決まっていることが多いと説明しました。
つまり、よい成果をあげたとしても評価が収入に反映されるまでに時間がかかります。
原則、翌年の年俸の更新のタイミングまで待たなければなりません。
1年契約の契約社員などの場合は、当年の成果が翌年の年俸に反映される保証がありません。
いずれにせよ、成果に見合う報酬を得るため、事前に業務の達成目標など、求められる成果の評価基準と報酬を明確にしておくことが重要と言えます。
まだまだ稀なケースですが、年俸の契約時に、出来高制の報酬を盛り込むことができれば、当年の成果を当年の給与に反映する事もできます。
年俸がダウンする可能性もある
年俸制は、契約した時点で1年間に支払われる賃金が確定しますが、その1年間何も成果を残せなかったり、欠勤が多かったりすれば翌年の年俸は減額してしまう可能性があります。
終身雇用をベースとした年功序列の給与体系の場合、おおよその生涯年収を計算出来ますが、年俸制の場合は収入が変動する可能性が高くなります。
年俸は前年の業務の成果と、個人のスキル、翌年期待される成果によって決まることは説明した通りです。これらの中でも前年の成果が最も重視されることは説明するまでもないでしょう。
自分が約束した成果が果たせなかった場合は、翌年の報酬に大きく影響を与えます。
求められる成果のレベルと、得られる報酬のバランスが適正であるか、十分に考慮する事が重要となります。
年俸制の給与は個人の実績によって上がることもあれば下がることもあると理解しましょう。
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正当な評価が得られなければモチベーションが下がる
年俸制の最大の特徴は、成果に応じた適正な利益配分を得られる点です。
労働者の視点から見ると、年俸制を希望する場合にもっとも期待するのは成果に対する正当な評価であると言えます。
年俸制の根幹となる成果の評価が不当に低い場合はモチベーションを大きく下げる原因となります。
年俸制のメリットを十分に生かすためには、評価基準の公平性と契約時の合意形成のプロセスが重要です。
年俸はプロ野球選手に例えると分かりやすい
プロ野球選手を例として年俸制を考えてみましょう。
プロ野球選手は所属する球団と年俸制にて契約することが一般的です。その選手の活躍や、今後の活躍見込みなどを考えて年俸が決まります。
より優秀な成績を残した選手ほど年俸が上がりやすくなります。
プロ野球選手の仕事の成果は、練習時間や試合時間では評価できません。試合にフル出場しても空振りやエラーが多ければ評価は下がります。
逆に1回の打席にしか出場してなくても、試合の流れを変える逆転ホームランを打てば評価は一瞬にして上がります。
逆に、怪我などによって1年間のうちほとんど試合に出られないとなれば評価は下がってしまいます。年俸も下がりますし、場合によっては戦力外通告を受けてしまうこともあります。
野球選手は個人事業主として球団と契約するので、完全に同じというわけではありません。
ただしプロ野球選手と同じような給与形態を、一般の企業でも採用している場合があるのです。いかに年俸制が成果主義的かがわかるでしょう。
年俸制を採用している業界・職種
ここでは年俸制を採用している業界や業種について紹介します。
- プロスポーツ選手(野球・サッカー)
- 外資系企業
- エンジニア・プログラマー
プロスポーツ選手(野球・サッカー)
先ほどのプロ野球選手の例えのように、プロスポーツ選手は年俸制で働いている場合が多くあります。
働いた時間で成果を評価することが難しいため、成果の判断基準を設けて、年俸制を採用しています。
また、想定以上の成果を上げられた時の為、一定の課題をクリアできれば追加報酬を得られる出来高払いを含めた契約や、長期の成果や成長を見込んで複数年契約を盛り込むケースも。
複数年契約を行う場合、試合で結果を残すほど年俸も上がっていく、まさに実力主義の世界です。
外資系企業
海外に本社を置く外資系企業では、給与体系として年俸制を採用していることがあります。
海外では日本の様な終身雇用制度は発達せず、成果主義による人事評価が定着しました。
個人の成果に応じて責任と報酬を与える評価制度では、年俸制の給与体系の方が親和性が高く、日本国内でも外資系企業は年俸制を採用しているケースが多く見られます。
成果さえ残せば、勤続年数に関わらず若手社員であっても出世や昇給の機会を与えられます。反面、成果を出せなければ収入が下がる可能性がある、厳しい職場とも言えるでしょう。
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エンジニア・プログラマー
エンジニア・プログラマーの求人の中にも、給与は年俸制を採用している企業があります。
エンジニアやプログラマーも開発に関する専門的で高いスキルが求められる職種です。
高いスキルを持ち、高度な開発ができるエンジニアやプログラマーに対しては、年俸制を導入することで成果に対応した高い報酬を与えやすくなります。
また、システム開発にあたりエンジニアにかかる作業や負担はとても大きく、作業時間も長くなりがちです。
年俸制で成果に対する報酬を保証し、裁量労働などを導入する事で、作業の効率を改善する意識を高めつつ高いモチベーションの維持を図れます。
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年俸とは?まとめ
年俸制は成果主義が重視される職種や企業において多く採用されていますが、年俸制や月給制にはそれぞれの特徴があります。
年俸制で給料を得ることには、個人の能力や性格の適正、もしくは職種などにより向き不向きがあります。
ですので、もし現在年俸制で働いていて、収入や安定性などに不満のある方は、本当に今の仕事を続けるべきか考え直してみる必要があるでしょう。
これから働く会社が年俸制を採用している場合には、給与に関する契約内容や、就業規則についてよく確認してください。
まずは給与形態だけでなく、雇用条件が正社員なのか契約社員なのかについての確認をしましょう。
また、年俸に対する残業代の取扱いはどうなっているのか、ボーナスは含まれるのか、社会保険や税金、給与の支払方法も確認してください。
もっとも重要なことは、成果の評価方法です。
成果が売上金額など数値で評価出来る場合は判りやすいですが、研究や開発の場合は必ずしも数値化できない評価基準もありますので誤解なく合意出来る様注意して下さい。
仕事を始めたはいいが思っていた収入と手取り額が全く違っていた、雇用保障が十分ではなかったなどの事態にならないよう、契約内容には十分留意しましょう。
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