2020年から、小学校でのプログラミング学習が必修化します。それに伴い、どのようにして子ども達にプログラミングを教えるのかが懸念されています。
そこで注目されている学習方法として「アンプラグドプログラミング」があります。
本記事では、アンプラグドプログラミングとはなにかを解説。また、アンプラグドプログラミングの学習方法やメリット・デメリットを紹介します。
アンプラグドプログラミングについて詳しく知りたい方はぜひ参考にして下さいね。
この記事の目次
アンプラグドプログラミングとは
アンプラグドプログラミングとは、パソコンやタブレット端末などの電子機器を使わず、プログラミング的思考を身に付ける学習方法です。
実際にプログラミング言語を使う訳ではなく、コンピュータが動く仕組みや問題解決の手順といったプログラミングにつながる知識をパズルやカードなどを用いて学びます。
そのため、難しい技術的な話は出てこないので、プログラミング学習の入り口として小さな子どもにピッタリなのです。
アンプラグドプログラミングを学ぶ方法
アンプラグドプログラミングの学習方法は、大きく分けて以下の3つです。
・本で学ぶ
・カードやボードゲームで学ぶ
・アクティビティで学ぶ
以下で1つずつ見ていきましょう。
本で学ぶ
まずはアンプラグドプログラミングを本で学ぶ方法があります。本によって内容はさまざまですが、基本的には絵本として楽しみながら読めるものが多いです。
有名な作品としては、フィンランドの女性プログラマーであるリンダ・リカウスが書いた「ルビィのぼうけん」といった絵本があります。
この絵本にはプログラミングのコードなどは一切出てきません。ルビィという女の子が宝石集めの冒険をしながら、プログラミングに必要な考え方を学んでいく内容となっています。
読書が好きな子どもは、まずは本からプログラミングの考え方を学習するのもよいでしょう。
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カードやボードゲームで学ぶ
カードやボードゲームで学べるメリットは遊び感覚で熱中しながらプログラミング的思考を学べるといった点です。
また、プログラミングの基礎である「順番に実行する」「処理を繰り返す」などといった原則にのっとったゲームが多いので、自然と考え方が身に付くようになっています。
さまざまな商品が発売されており、どれも遊び感覚で学習が可能。プログラミングの勉強をしているといった意識もなく楽しめます。
アクティビティで学ぶ
実際に身体を動かしてプログラミング的思考を学ぶ方法もあります。
例を挙げると、プログラマー役1人がコンピュータ役数人に対して「足踏み・まわる・ジャンプ・キック」などの指示を行い、それに従ってコンピュータ役が動くといったものなど。
実際にこういったアクティビティを行ってみると、同じことを繰り返し、決まった動作をすることに対して、以下のような人間とコンピュータの特徴の違いが明確にわかります。
・人間:間違ったり疲れたりする。飽きてしまう
・コンピュータ:正確であり体調に左右されない。新しい動作を思いつくことはない
アクティビティを通して、コンピュータの特徴からプログラミング的思考を学習できるのです。
アンプラグドプログラミングの日本での実践例
以下で、日本で行われたアンプラグドプログラミングの実践例について解説します。
ルビィの冒険を使った成増ヶ丘小学校の実践例
東京都プログラミング教育推進校である板橋区成増ヶ丘小学校では、積極的にプログラミング教育が取り入れられています。
2020年1月31日に公開授業として、研究成果を発表しました。
その中で、1・2年生がアンプラグドプログラミングの教材「ルビィの冒険」を使って、給食の準備をフローチャートにするなどの授業内容が公開されました。
成増ヶ丘小学校のWebサイトには、PETS・レゴWeDo2.0・Scratchなどのプログラミングの教材を使った事例も公開されていてとても参考になります。
練馬区立大泉北小学校のお絵描きゲーム
パソコンを使わないアンプラグドプログラミングのお絵描きゲームによる公開授業が大泉北小学校で行われました。
2年生は「○を書きます」などの命令が書かれたカードを組み合わせて、絵の書き方を説明するお絵描きゲームを通してプログラミングの考え方を学習。
練馬区の小中学校でパソコンの配備が遅れており、それをカバーするという目的もあって大泉北小学校ではアンプラグドプログラミングの授業が重ねられてきました。
教育ネットによる「すぐプロ」の無料ダウンロード提供
紙・ハサミ・鉛筆で始められるアンプラグドプログラミングの教材集「すぐプロ」。
そのすぐプロの製品抜粋版の無料ダウンロード提供を開発元である教育ネットが2019年7月から行っています。
これは、2020年から本格的に始まるプログラミング教育に学校や教員が備えられるようにという意図があります。
どのようにプログラミング教育に臨むべきか悩んでいる先生や、子どもの教材に迷っている保護者の方にとってとても参考になる教材と言えるでしょう。
すぐプロは東京都や神奈川県横浜市などで20以上の実践例があります。
すぐプロだけでなく、アンプラグドプログラミングを学べる教材には本・カード・ボードゲームなどさまざまな種類があります。
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アンプラグドプログラミングのメリット
アンプラグドプログラミングは一般的なプログラミング学習とは目的やアプローチが違うため、勉強することによって生じるメリットも変わってきます。
ここでは、アンプラグドプログラミングを学習するメリットを紹介します。
電子機器を使わなくても学べる
そのため、生徒一人ひとりに高額なデバイスを用意する必要がありません。また、画面の操作自体でつまづくこともないので、気軽に学習に取り組めます。
プログラミング的思考が学べる
ロジカルに物事を考えるプログラミング的思考が学べることは大きなメリット。
プログラミング教育によって得られる成果として、文部科学省はプログラミング的思考を重要視しています。
プログラミング的思考とは、コンピュータやプログラミングの概念に基づいた、問題解決するための考え方を指します。
プログラミング技術そのものではなく、どのようにして問題を解決するのかといった考え方や手順を学べるので、プログラミングを学ぶはじめの一歩目としてピッタリなのです。
コンピュータの仕組みが概念的に理解できる
アンプラグドプログラミングの学習では、具体的にどのようなプログラムが組まれてコンピュータが動いているのかなどはわかりませんが、動く仕組みが概念的にわかるようになります。
絵本や図形など、視覚を使って説明することで、子どもでもわかりやすく理解することが可能。
コンピュータの仕組みを把握しておくことで、プログラミングに対する抵抗が少なくなり、学習のハードルが下がります。
プログラミングの楽しさがわかる
大人でも挫折する人が多いプログラミングは、決して簡単なものではありません。
そのような大人でさえ難しいと感じるプログラミングを子どものうちから始めるとなれば、楽しさを感じられず、苦手意識が芽生えてしまう可能性は高いでしょう。
しかし、アンプラグドプログラミング学習を経験することで、プログラミングが楽しいものだと感じ、本格的に学習を始めるきっかけになるのです。
アンプラグドプログラミングのデメリット
ここではアンプラグドプログラミングのデメリットについて見ていきましょう。
知識が身に付くわけではない
アンプラグドプログラミングの学習をしたからといって、パソコンやサーバーの専門知識、プログラミング言語の書き方・役割などの知識を学べるわけではありません。
大人でも難しいと感じるような専門知識はアンプラグドプログラミングでは学べないのです。
そのような知識をつけたいのであれば、情報が記載されている書籍を読んだり、インターネットで調べたりしましょう。
実践的なことは学べない
プログラミングに関する実践的なことが学べるわけではないので、実際に企業へ入ってサービス開発ができるようなスキルが身に付くことはありません。
学べるのはあくまでも技術的なことではなく、それ以前の考え方や概念の部分です。
目的を勘違いすると、意味のないことをやっているのではないかと思ってしまう可能性もあるので、しっかりと認識しておきましょう。
プログラミングに対する苦手意識が生まれる可能性
子どもがアンプラグドプログラミングの学習を楽しく感じられないと、プログラミングに対する苦手意識が生まれる可能性があります。
子どもには向き不向きがあるので、アンプラグドプログラミングを苦手だと感じる場合もあるでしょう。それにも関わらず「プログラミング学習の入り口になるから」と無理やりやらせれば、プログラミングやITを嫌いになってしまうことも考えられます。
必ずしも、アンプラグドプログラミングが入門に最適なわけではありません。ロボットプログラミングやビジュアルプログラミングなど、他にもアプローチの方法はあります。
子どもの興味にあった方法で学ぶことが大切なのです。
アンプラグドプログラミング学習についての意見
ここでは、小学校で導入されるアンプラグドプログラミング学習についての意見を紹介。肯定的な意見もあれば否定的な意見もあるので、それぞれで見ていきましょう。
肯定的な意見
来年度からプログラミング教育始まるので、今年度から支援級でも色々やってみてます。アンプラグドの授業とかビジュアルプログラミングなど、支援級にぴったりのものもあるのでオススメですね
視覚的に優位な子が多いのでかなり有効だと思っています— ゆとり主任 (@yutori_chief) July 14, 2019
アンプラグドから始めるプログラミング教育は筋が良い。3年生でアンプラグド、4年生でロボットプログラミング等。コンピューター上でのアルゴリズム学習は国が小中学生向けのオンラインのクラスを用意すれば良い。先生はそのサポート。国語ではぜひ論理学を。 https://t.co/rxY7bV3AXn
— Hokkyokuguma (@hist102) April 9, 2019
視覚的な面でわかりやすいアンプラグドプログラミングは、小学校で習うプログラミング学習のサポートや導入として利用するのにはピッタリとの意見があります。
利用する目的と導入するタイミングが適切であれば、アンプラグドプログラミング学習は効果的と考える人も多いようです。
否定的な意見
アンプラグド方式は教える側の都合です。プログラミング教育にはコンピュータを使いましょう。 pic.twitter.com/2YK67MJOns
— やまガメ (@yamagame) April 18, 2019
小学校のプログラミング”教育” 、ビスケット(Viscuit)を使えば、あえてアンプラグドというのは必要ないと思うのですけどねぇ。
もちろん、PCが不足していて仕方なくアンプラグドという選択肢はやむを得ないと思いますが、ちゃんとPCのがあるのに、PCでやる前にアンプラグドでってどうなんでしょう? https://t.co/xWX7RyhqSR
— 金子 正晃 / デジマインド (@kmasaaki) April 10, 2019
プログラミングを教えるにあたっては、やはりコンピュータを使わなければいけないという声もあります。
また、パソコンがちゃんとあるならばViscuit(ビスケット)などのビジュアルプログラミング言語の学習をすればよいのではないかという疑問の声も。
アンプラグドプログラミング学習の導入はこの先も物議を醸し出す可能性があるでしょう。
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