厚切りジェイソン「Why Japanese Engineer!? アメリカではもっとエレガントに開発してるよ!」
更新: 2019.11.08
今やエンジニアの競争相手は国内だけではない。グローバル化が当たり前という状況の下で、エンジニアたちはどうマインドチェンジしていけばいいのだろうか。
そこで、IT企業役員と芸人という2つの顔を持ち、日本と海外のエンジニアを見てきた厚切りジェイソンさんにインタビュー。歯に衣着せぬ厚切りジェイソンさんの「Why!?」から日本のエンジニアの課題点が浮き彫りになってきた。
この記事の目次
【Why!?1】コードが書けるだけでエンジニアと名乗っていいの?
――厚切りジェイソンさんから見た日本と海外のエンジニアの大きな違いって何ですか?
はっきり違うのは入り口の部分。アメリカではコンピューターサイエンスの学士がないと面接を受けさせてもらうこともできません。それくらい、エンジニアは専門性が要求される職業なんです。
――入社後も、日本だと若手や孫請けの開発会社のエンジニアの中には、自分の関わっているシステムの全体が分からず、ただ指示書に書かれたことに従って手を動かしているだけの“オペレーター”的な人もいます。
僕から言わせると、そういうエンジニアがいること自体が間違っていると思います。だって、エンジニアの仕事はただコードを書けばいいってわけじゃありませんから。自分の考えを持ってより効率的に、そしてオンタイムでコードを書けるのが、良いエンジニアの条件。そんなエンジニアをアメリカでは「エレガントなエンジニア」といいます。
もしもただ言われた通りにコードを書いているだけの人がいるとしたら、それは今後確実に仕事を奪われていくでしょうね。
【Why!?2】「クビにならなければ安泰」で本当にいいの?
――日本では派遣のエンジニアも少なくなくないですが、アメリカにもこういうスタイルで働いているエンジニアはいますか?
僕の知る限りないですね。個人で業務を請け負っているエンジニアはいますけど、派遣会社が間に入ってエンジニアを企業に派遣するというケースは聞いたことがないです。
――なぜ日本はそういった構造が成立しているのでしょうか?
いろいろ理由はあるでしょうけど、僕が思うにアメリカならその人材が不要になったら簡単にクビを切れる。でも、日本の企業は一度雇用すると簡単に解雇はできません。それだけ企業はリスクを引き受けなければいけないわけです。そのリスクをできるだけ回避するために、派遣会社が間に入って、案件ごとにエンジニアを派遣するというシステムがあるんじゃないですか。
――なるほど。簡単にはクビにされない日本のエンジニアは恵まれてるんですね。
そうですか?
――え。違います?
だってその代わり自分がやりたくないと思う業務もやらなければいけないわけでしょう?
――た、確かに。エンジニアの中には、案件ごとに扱う言語や領域が変わって、そのたびにまだスキルを習得し直さなければならず、専門性と呼べるまでキャリアを深めることができない……という悩みを持っている人もいると聞きます。
それって自分のキャリアを自分でコントロールできていないということ。僕は雇用が流動的であることより、そっちの方がよっぽどリスクだと思います。
そもそもアメリカでは一つの会社に長く勤め続けるという考えは、あまり人気がありません。自分のスキルが上がったら、それに見合う会社にステップアップしていくのがアメリカ流。そうやって自分の得意領域をどんどん深掘りしていくんです。
だから、アメリカのエンジニアは約2年周期で転職します。日本だとまだまだ同じ会社で長く働くのが美徳と考える人もいるかもしれませんが、大事なのは自分のスキルを磨ける環境です。そのために自分で自分のキャリアの手綱を持っている方が、僕はいいと思いますよ!
【Why!?3】どうして自分の会社のシステムをよそに丸投げするの?
――そもそもなんですけど、いわゆる孫請け的な開発会社ってアメリカにもあるんですか?
うーん。あっても一次請けぐらいじゃないですか。そもそもSIerという存在自体がアメリカでは珍しくて。基本的にアメリカは内製が主流。社内できちんとIT部門を設置して、基幹システムは自社開発しています。
――日本とは全然違うんですね。
そこでカバーしきれない業務を一次請けにお願いすることはあるでしょうけど。丸投げというのははまずありえないですよ!
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【Why!?4】資格じゃなくて、自分が何をなし遂げたか証明できることが大事じゃないの?
――アメリカのエンジニアって自己投資にも積極的なイメージがあって。やっぱり資格をたくさん持っているエンジニアも多いんですか?
資格? アメリカのエンジニアはあまりそこについて関心はないと思いますよ。むしろ資格に関しては日本の方が積極的な気がします。
――どうしてですか? 資格は自分のスキルを明確に示せる基準じゃないですか。
資格を取ったって、その技術や知識を使ってなきゃ忘れるでしょう。日本は、資格を取ることが目的になり過ぎている。アメリカのエンジニアは、自由な時間があれば、自分で製品を開発したり、本を書いたりする人が多い。使えない可能性がある資格を取るより、今使えるものに時間と労力を投資する方が有効じゃないですか。
――でも日本だと資格手当が出る会社もありますし、それこそ転職するときも書類選考で資格の有無を見られるって聞くんですけど……。
アメリカでは資格があるからお金をよこせ、なんて言いません。それよりも自分は何ができるかが全て。今までどんなことを成し遂げたのか。これから与える責任に対し、遂行できる能力があるのか。それを証明できる人に、ふさわしい待遇を与えます。
【Why!?5】どうして給与交渉しないの?
――あの、そこで聞きたいんですけど、日本って面接の場で給与交渉をするのは、どこか意地汚いみたいな風習が残ってて……。
どうしてですか? 面接で給与交渉をするのは、労働者の当然の権利。むしろ給与交渉をしないで何をするのかが分からないです。僕は以前、交渉した結果、給与が他で頂いた内定条件と比べて5倍になったことがあります。
――5倍……! 上手い給与交渉のやり方を教えてください!
上手いやり方というのはなくて……。会社側が提示してきた業務内容と給与額を付き合わせた上で、見合わないと思うならそう言えばいいんです。「御社で働きたいとは思っていますが、この金額だと他の会社に行かざるを得ません。どうしますか?」と真剣に相手に決断を突きつける。必要なのは覚悟だけです。
――なるほど。入社後の給与交渉ってどうやってますか?
アメリカでは入り口で給与は決まります。その後、年次が上がったからって、給与が上がることはない。
給与が上がるタイミングは、責任が増えたときだけです。
――そこです! 日本だと責任や業務内容がアドオンされたのに、給与は据え置きということがよくあって。
そこが交渉のポイントなんです。そこで我慢するからダメ。だから周りの皆の給与も上がらないんですよ。
――どういうことですか?
仮にその責任に見合わない給与金額だとして、誰か一人でも「この金額でやります」って言ってしまったら、それがベースになる。低い金額でやってくれる人がいるなら、わざわざ会社も給与を上げようなんて思いませんから。
給与交渉は労働者の権利だし、同時に周りの皆の給与ベースを値崩れさせない大事な役目を持っている。不満があるなら、我慢せず、ちゃんと説得できる材料を持った上で交渉に臨んだ方がいいと思います。
――お話を聞いていると、いろいろ意識を変えなきゃいけないところが多いんだなと思いました。
でもこれだけ言いましたけど、技術レベルで言ったら日本のエンジニアもアメリカのエンジニアもそう変わらないですよ。優秀な人は優秀だし、そうじゃない人はそうじゃない。そこに日本も海外も関係ありません。
要は、どれだけ自分が納得しているか。今のままでいいと思っているならそのままでいいと思うし、何か不満があるなら一歩踏み出したらいい。一番ダメなのは、周りの目を気にして、やりたいことを我慢すること。「無難な人生で良かった~!」と言って死ぬ人っていないでしょう? 全ての決断は、自分の人生を最高にするためにあるんだから!
変だな、とか、自分にとって最善の選択じゃないな、って思ったらもっと大きな声で「Why!?」って言ってみればいいんですよ!
取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴
こちらの記事はエンジニアtypeのコンテンツから転載しております。元記事はこちら
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