AirPodsの登場やSpotify・Podcastなどの音声プラットフォームの活況により、ワイヤレスイヤホンの需要は増々高まっています。
イヤホンのワイヤレス通信には、Bluetoothという技術が採用されており、Bluetoothコーデック(音声圧縮変換方式)の違いで音質や音の遅延に影響があります。
そのため、なるべく良い音質で音楽を楽しみたい人も多いはずです。
そこで本記事では、Bluetoothコーデックについて、以下の項目に沿って解説します。
- Bluetoothコーデックとは何か
- Bluetoothコーデックの種類とそれぞれの特徴
- パソコン・スマホのBluetoothコーデックの確認方法
ぜひ参考にしてみて下さい。
※記事内の情報は2023年7月執筆時の内容です。最新情報は公式サイト等でご確認ください。
この記事の目次
Bluetoothコーデックとは?
Bluetoothのコーデックとは、「音声データを圧縮する方式」のことです。
スマホやPCからワイヤレスイヤホンなどに音声データを送る場合、データ量が大きく時間がかかり遅れが出てしまいます。それを解消するのが圧縮技術です。
圧縮技術にはさまざまな方式があり、それぞれ遅延・圧縮効率・音質などが異なり、その圧縮方式の総称を「コーデック」と呼びます。
Bluetoothについて知りたい場合は、「【初心者向け】Bluetoothとは?Wi-Fiとの違いや使い方までわかりやすく解説」を参考にしてください。
コーデックにより遅延・圧縮効率・音質が異なる
Bluetoothコーデックによる違いは、おもに以下の3つです。
- 遅延
- 圧縮効率
- 音質
「遅延」は、送信側と受信側のタイムラグを表します。例えば動画を視聴するとき、遅延が少ないほど映像と音声のズレが少なく自然に鑑賞できるでしょう。
「圧縮効率」は、音声データをどれだけ効率的に圧縮できるかを表し、圧縮効率が高いほどデータ量を減らせます。
aptX LLやaptX adaptiveなど、高音質・低遅延で接続安定性の高いコーデックほど、圧縮効率が高いといえます。
コーデックは音質を決める一要素
「Bluetoothコーデックによって音質が変わる」といわれることがあります。しかし、これはあくまでも「音質を決める一要素」と捉えたほうが的確です。
例えば、ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く場合、音が伝わる順序を簡略化すると、以下のようになります。
- スマホで音楽を再生する(再生機器・ソフト)
- 音楽データが圧縮され、イヤホンに伝送される(コーデック)
- イヤホンが受信したデータをアナログ信号に復元(DAC)
- アナログ信号を増幅(アンプ)
- 増幅された信号をスピーカー部に伝える(ドライバー)
以上のように、Bluetoothコーデック以外にも音質を決める要素はさまざま。
そのため、「Bluetoothコーデックだけで音質が変わるわけではない」ということを理解しておくと良いでしょう。
Bluetoothコーデックのおもな種類
Bluetoothオーディオ機器に採用されている、おもなBluetoothコーデックを紹介します。
コーデック名 | 特徴 |
SBC | Bluetoothオーディオの標準コーデック。遅延性は比較的高い。 |
AAC | おもにiPhoneで採用されている高音質コーデック。遅延性は中程度。 |
aptX | SBCやAACより高音質・低遅延。 |
aptX LL | aptXと同等の音質かつもっとも遅延が少ない。 |
aptX HD | 24bit / 48kHzに対応した高音質コーデック。低遅延。 |
aptX Adaptive | 高音質・低遅延・接続安定性を実現したコーデック。 |
LDAC | SONYが開発した最大24bit / 96kHzに対応した高音質コーデック。遅延性は比較的高い。 |
Samsung Scalable Codec | サムスン独自のコーデックで、高音質・接続安定性を実現。遅延性については非公開。 |
HWA | Huaweiが開発した高音質・低遅延コーデック。 |
UAT | Hiby Music独自のコーデックで24bit / 192kHzの超高音質。 |
LC3 |
SBCの約半分のビットレートで高品質な音質を提供できる次世代型コーデック |
SBC
SBC(Sub Band Codec)はBluetoothオーディオの標準コーデック。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は16bit / 48kHz。レイテンシ(遅延)は220ms(±50ms)で、原則全てのBluetoothオーディオ機器で再生可能。
登場初期は「音質が悪い」とも言われていました。しかし技術の進歩とともに改善され、機器によっては他のコーデックとも遜色ない水準に達しているといわれています。
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AAC
出典元:Apple
AAC(Advanced Audio Coding)は、SBCよりも低遅延・高音質なコーデック。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は16bit / 48kHz。
レイテンシ(遅延)は128kbps時で120ms(±30ms)、おもにApple製品(iPhone・iPad・AirPods)で採用されています。
aptX
aptXはCSR(現在はクアルコムが買収)が開発した、低遅延・高音質なコーデック。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は16bit / 48kHz。レイテンシ(遅延)は70ms(±10ms)で、Androidスマートフォンの標準コーデックに採用されています。
aptX LL
出典元:Qualcomm® aptX™ Low Latency Synchronised Audio
aptX LL(aptX Low Latency)はその名の通り低遅延なコーデック。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は、aptXと同じ16bit / 48kHzでありながら、レイテンシ(遅延)は40ms未満と非常に少ないです。
映像と音声のズレが少ないことから、動画鑑賞やゲームに最適なコーデックといえるでしょう。
aptX HD
aptX HDはaptXの音質面を改善したコーデック。
レイテンシ(遅延)は約130msとaptXより劣るものの、量子化ビット数 / サンプリング周波数は24bit / 48kHzに拡大されており、より表現の幅が広まりました。
aptX Adaptive
出典元:Qualcomm® aptX™ Adaptive Audio Codec Technology
aptX Adaptiveは高音質と低遅延を実現した次世代コーデック。
電波の混雑状況・データ量に応じて転送ビットレートを可変させ、接続安定性と低遅延を実現しました。
レイテンシは50〜80msとaptXと同等を維持しながら、量子化ビット数 / サンプリング周波数は、24bit / 48kHz(現在は24bit / 96kHzに拡張)。
低遅延・高音質・接続安定性を実現したバランスの良いコーデックといえるでしょう。
LDAC
出典元:Sony Japan | LDAC™で高音質ワイヤレスリスニング
LDAC(エルダック)はソニーが開発した高音質コーデック。
遅延はあるものの、量子化ビット数 / サンプリング周波数は最大24bit / 96kHzに対応しており、いわゆるハイレゾオーディオの再生が可能。
周囲の状況に合わせて音質優先・標準・接続優先の3つのモードから選択できます。
Samsung Scalable Codec
出典元:What is scalable codec? | Samsung India
Samsung Scalable Codecはサムスン独自のBluetoothコーデックで「Galaxy7」以降のサムスン製スマートフォンや「Galaxy Buds+」などのイヤホンで採用されています。
周囲のWi-Fi干渉を分析・最適化し、安定した接続を提供します。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は最大24bit / 96kHzに対応し、遅延の少ない「ゲームモード」も搭載しているのも特徴です。
また、Android7.0以降をサポートするサムスン製モバイル機器では、ストリーミング再生中の損失を補完して元の音質に近づけるUHQオーディオにも対応しています。
HWA
HWA(High-Res Wireless Audio)はファーウェイが発表したコーデック。
Savitechが開発した、LHDC(Low latency and High-Definition audio Codec)をベースにしています。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は最大24bit / 96kHzに対応し、低遅延モード(音質制限あり)もそなえていますが、対応したイヤホン・ヘッドホンは少ない状態です。
UAT
出典元:HiBy W5
UAT(Ultra Audio Transmission)は、Hiby Music(ハイビィミュージック)が開発した、超高音質コーデック。
量子化ビット数 / サンプリング周波数は最大24bit / 192kHz、ビットレートは最大1.2Mbpsまで対応し、多くのハイレゾ音源を低圧縮で伝送可能です。
現在、送信・受信機器ともにHibyMusic製品に限られています。
LC3
LC3(Low Complexity Communications Codec)は、次世代Bluetooth規格「LE Audio」に採用されている新しいBluetoothコーデックです。
LC3は、ドイツの研究機構「Fraunhofer IIS(フラウンホーファー)」とスウェーデンの大手通信機器メーカー「Ericsson(エリクソン)」が共同開発しました。
上記の画像で表しているように、SBCの約半分のビットレート(160kbps)でSBCと同等の音質を実現できます。省電力・低遅延なのも魅力。
今後のワイヤレスオーディオ・ワイヤレスイヤホン市場を支える注目の技術です。
Bluetoothコーデックの確認方法・対応情報
本章では、以下のスマホやPCのBluetoothコーデック対応情報・確認方法を解説します。
- Android
- iPhone・iPad
- Windows PC
- Mac
基本的に全ての機器がSBCに対応しているため、SBCでの接続は可能です。
しかし、SBC以外のコーデックで接続したい場合は、送信・受信側ともに同じコーデックに対応している必要があります。
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Androidの場合
Android端末でのBluetoothコーデックの確認方法は以下のとおりです。
- 「設定」アプリを開く
- 「開発者向けオプション」をタップ
- 「Bluetoothオーディオコーデック」をタップすると表示されます
※開発者向けオプションは「設定」→「端末情報」→「ビルド番号を7回タップ」で表示。
iPhone・iPadの場合
iPhone・iPadではBluetoothのコーデックを確認する方法がありません。
SBCとAACに対応しており、イヤホン側がAACに対応していればAACで送信されます。
Windows PCの場合
Windows PCでのBluetoothコーデックは以下のとおりです。
- Windows 11:SBC・aptXに加えてAACにも対応
- Windows 10:OS標準でaptXに対応
- Windows 8.1まで:おもにSBC
Windows 11 からは、期待されていたAACにも対応しました。
Macの場合
MacのデフォルトBluetoothコーデックはSBC/AACですが、Mac OS Catalina/v10.15.2以降であれば設定でaptXを有効にできます。
MacでaptXを有効にする手順は以下のとおりです。
- MacのBluetoothをオフ
- ターミナルを起動し「sudo defaults write bluetoothaudiod “Enable AptX codec” -bool true」を入力しEnterを押す
- パスワード入力画面になるので、現在ログインしているユーザのパスワードを入力しEnterを押す
- Bluetoothをオンにして、aptXに対応したBluetoothイヤホンとペアリング・接続
- optionキーを押しながらメニューバーのBluetoothアイコンをクリックし、接続したイヤホンを選択すると「有効なコーデック」欄にaptXが表示
まとめ:Bluetoothコーデックは目的に合わせて選ぼう
Bluetoothコーデックの概要・種類・確認方法について解説しました。
Bluetoothは利用するコーデックの種類によって、遅延や音質などに違いが出ます。
音楽鑑賞・動画鑑賞・ゲームなど、それぞれの目的に合わせて、Bluetooth機器を選ぶ際の参考になれば幸いです。
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