手のひらサイズのプログラミング専用パソコン「IchigoJam」。
わずか1500円で手に入れられる気軽さと、テレビとキーボードを繋げばプログラミング言語「BASIC」でゲームなどが作れることから人気が拡大。
子どものプログラミング入門用パソコンとして買い求める人や、電子工作目的で買う大人が増えています。「1500円で買えるパソコンで、具体的に何が出来るのか」
「IchigoJamはプログラミング初心者の大人が触っても、楽しめるのか」
「そもそも何でIchigoJamは人気なのか」
IchigoJamに対して、上のような疑問をお持ちの方もきっと居るでしょう。実はIchigoJamは鯖江市のバス乗客のオープンデータシステム開発に使用されるなど、実社会でも活躍しています。
今回はIchigoJamで出来ることや、実際のIchigoJamユーザーの声をご紹介します!
この記事の目次
こどもパソコン「IchigoJam」とは
IchigoJamは手のひらサイズのパソコンです。テレビとキーボードを繋げば、プログラミング言語「BASIC」を使ってソフトウェアやゲームの開発がすぐに始められます。
IchigoJamの開発・販売を行うのは福井県に本拠地を構えるjig.jp。
代表取締役社長の福野泰介さんは、IT分野に年々面白い技術が登場しているにも関わらず「それを使いこなせる人間が減っている」ということに着目。
子どもでも気軽にプログラミングを楽しめるように、という思いからIchigoJamを開発。初心者でも気軽に楽しめると定評があるBASICでのコーディングを可能としました。
価格は1,925円~(税込)
IchigoJamの魅力はその安価さにもあります。参考価格は1,925円~(税込)。組み立て済完成品は2,200円(税込)でamazonで販売されています。
ハードウェアとBASICの実行環境がこれほど安く手に入るというのは、驚きです。
※記事内の価格は執筆時の内容です。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
消費電力は最大でもわずか1W
IchigoJamの驚くべき点は、価格だけではありません。
消費電力は最大でも1W。低電力消費モードも搭載しているため、ボタン電池一個で長時間動作させるようなIoT(Internet of Things)開発に最適です。
Micro USBで充電ができるため、電池が切れたら一般的なスマホの充電器で給電できます。
Raspberry Piよりも低コストで省エネ
IchigoJamと同様の手のひらサイズのパソコンとして有名なのが、Raspberry Pi。Raspberry Piの入手可能なモデルの1つが「Model B」。値段は35ドル。消費電力は4.5Wです。
つまりIchigoJamはRaspberry Piより更に安く、消費電力も小さいのです。
IchigoJamでできること
BASICでおもちゃの信号機や電車を制御
Ichogoタウン開発中です!
1個のIchigoJamで信号機と踏切と光電車を動かしています✨https://t.co/fbPjpHrBHU#IchigoJam #IchigoTown pic.twitter.com/4DUPvpSvA7— Hana道場 (@hanadojo_sabae) 2018年3月19日
IchigoJamを使えば簡単なロボット制御やモーター制御が、簡単に実現できます。実際に1台でおもちゃの信号機や電車を制御、IchigoJamをフル活用して楽しんでいる方もいます。
IchigoJamでチップチューン!MMLで楽曲を演奏
MMLとは「ミュージック・マクロ・ランゲージ」の略。音符のドはC、レはD、ミはEと表されます。半音上げはコードに+を追記します。例えばドの半音上げは「C+」です。
MMLはBASICで多く使われていた楽曲演奏向けの言語であり、「PLAY」というコマンドで演奏が開始します。
ファミコンのようなピコピコ音が大好きで、自分でもゲーム音楽を作ってみたい!という方にはまさにMMLはうってつけ。
IchigoJamがあれば、1500円からピコピコ音のプログラミングが始められます。
プログラミング教室を開いて、子どもたちとオリジナルゲームを作成
IchigoJamで作って遊ぼう!BASICプログラミング。
QUEST&PCN福岡。
鯖江市のjig.jp福野泰介さんが開発したプログラミング専用手のひらこどもパソコン「IchigoJam」を使ってプログラミングを体験。BASIC言語を使ったオリジナルゲームを作ります。 pic.twitter.com/o9Kj9y90R3— 中村伊知哉 (@ichiyanakamura) 2017年8月26日
実社会でも大活躍するIchigoJam
IchigoJam で一時救命処置を効果的にする機械(デバイス)を開発中。
心臓マッサージの圧力とテンポを、IchigoJam で計測。
みんなが気軽に練習することで、たくさんの命が救われるかもしれないですね。#IchigoJam pic.twitter.com/bsSDJKhPkm— Hana道場 (@hanadojo_sabae) 2017年9月22日
IchigoJamは教育目的に留まらず、実社会でも活躍が期待される機器です。
低消費電力という利点を活かし、組み込み開発に使われるケースが特に多いようです。心臓マッサージの圧力、テンポの計測を可能とするデバイスの開発も、IchigoJamを使って進められています。
バス乗客のオープンデータシステム開発にIchigoJamとBASICが採用
いやもう、ラズパイとかIchigoJamとか、小型で安価、でもそれなりのOSとI/Fとアプリ開発環境があって、それ使ってセンサーやアクチュエーターを介してモノを動かし制御して…って出来る。それで製品作る事も出来れば純粋に遊ぶ事も出来る。実にいい時代になったよなぁって思いますよ。笑
— 水踊or新川武彦 @ ハロプロだけは見守ろう(但し以前よりは緩く暖かくで) (@mizuodori) 2017年5月31日
jig.jpが本拠地を置く福井県鯖江市では、公共バス「つつじバス」の乗客のオープンデータシステムの開発にIchigoJamを採用しています。
「ITのまち」として、オープンデータの集計と公開に積極的な鯖江市。バス乗客のオープンデータ収集にあたっては、運転手が操作盤のボタンを押すと乗降車データを集計する仕組みが採用。その開発にIchigoJamが使われました。
IchigoJamを活用して、集計されたデータは「データシティ鯖江」から実際にダウンロード可能です。
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IchigoJamで使うBASICとは?
C言語よりも古い手続き型言語
BASICは「手続き型」と呼ばれる形式のプログラミング言語です。その歴史は長く、誕生年はなんとC言語よりも前。
自分の年齢とプログラミング言語の年齢を見比べるとおもしろい。Perlと同級生だけどあまり付き合いない???? pic.twitter.com/0YQ6UkQreO
— suin (@suin) 2018年3月14日
手続き型のプログラミング言語は、問題を解くための手順(=手続き)を1つ1つ処理として記述します。プログラムの上から順に処理が実行されます。
プログラミングに馴染みの無い人でも、コードを見ればプログラムの処理の流れが一目瞭然のため「分かりやすく」「簡単」なのがメリットです。
手続き型言語はオブジェクト指向、関数型言語よりも歴史が古く、比較的ハードウェア言語に近いモデルです。BASICの他には、C言語やCOBOLが手続き型に該当します。またPHPも元来は手続き型の言語として誕生、バージョンアップを経てオブジェクト指向に対応した歴史を持ちます。
組込みソフトウェア開発の現場では、いまでも手続き型言語が好んで使われるケースもあります。
Visual BasicやVBAに派生
BASICは初心者向けの言語として普及。長い歴史の中で、数々の派生言語を生み出しました。
その中でも特に有名なのが、Visual BasicとVBAです。Visual Basicは元来のBASICに比べ、オブジェクト指向に近い仕様が加えられるなど独自の進化を遂げ、Windowsアプリの開発などでいまでも使用されています。
Nintendo DSiウェア「プチコン」に採用され、教育向け言語として再び注目
そんなBASICが、近年改めて大きな注目を浴びるきっかけとなったのが2011年発売、Nintendo DSiウェアの「プチコン」です。
プチコンは、その名の通り「小さなコンピューター」。1980年代に発売されていた低価格のホビーパソコン、8ビットパソコンを再現したソフト。プチコンにはBASICをベースとした、SmileBASICという独自のBASICが使われています。
続編として2014年には、Nintendo 3DS向けに「プチコン3号 SmileBASIC」も発売されています。
2017年6月には栃木県宇都宮市の宇都宮大学教育学部附属中学校で、Nintendo 3DS LLと「プチコン3号 SmileBASIC」によるプログラミングの公開授業が実施。40人の学生がBASICを学ぶなど、教育向け言語としてBASICが改めて脚光を浴びています。
手続き型言語特有の「スパゲッティコード」に問題
Visual Basicはアマチュアだった時は大好きだったけど、プロになって他人の尻拭いみたいな仕事をさせられた瞬間に大嫌いになるプログラミング言語の第一位になり、しまいにゃ殿堂入り間違いなしやおまへんか。????
— 倉瀬美都 (@clausemitz) 2018年3月14日
再評価されるBASIC。しかし、さらなる普及や大規模システム開発での採用には中々至っていないのも現実です。
大きな壁となっているのが、手続き型言語特有の「スパゲッティコード」問題です。
手続き型言語では全ての処理を「手続き」として1回1回記述する必要があります。大規模開発の現場では、膨大な処理を全て1つ1つ手続きとして書かざるを得ず、コードの再利用性も低いという問題が起きます。
複数のプログラマーが参加しての開発では、デバッグがしづらくミスが起きやすいです。
この大規模開発への弱さとソースコードのデバッグのしづらさ、コードの再利用性の低さといった問題を俗に「スパゲッティコード」と呼びます。スパゲッティとは、コードがぐちゃぐちゃに絡み合った状態の比喩です。
手続き型言語は、1人で短いコードを書く分には非常に分かりやすく、書きやすい言語です。
しかし、大規模開発ではスパゲッティコードが生まれやすいという弱点があるのです。
スパゲッティコードの問題を解決するのが「オブジェクト指向」
こうした問題を解決するのが、オブジェクト指向型のプログラミングです。
例えば、手続き型言語でレーシングゲームを作るとします。そして1万台の車の処理を書くとします。開発途中にその車の仕様を変えたくなった場合、1万台それぞれの車の処理を書き換えなくてはいけません。非常に作業が膨大な上、仕様変更に弱いです。
その点、オブジェクト指向ではまず「車」というオブジェクトを用意し、その「車オブジェクト」の振る舞いを定義しておきます。そして、以後の処理は「車オブジェクト」を呼び出す形で書いていきます。
後から仕様変更をする場合には、元の「車オブジェクト」だけを書き換えれば問題ありません。
オブジェクト指向の言語として、代表的なものにはRubyがあります。Rubyは現在、Webアプリケーション開発の現場ではスタンダードの言語であり、数多くのスタートアップが採用しています。
無論、手続き型言語を学ぶのは「オブジェクト指向」を理解する上で無駄ではありません。またオブジェクト指向よりも、手続き型言語が優れている点も沢山あります。
重要なのは、プログラミングの基礎の考え方を理解することです。
手続き型言語でも、オブジェクト指向言語でも1つ言語を身につけることで、他の言語を覚える上でのハードルは圧倒的に低くなります。
そういや自分は
N88-BASICから始めて、HSP、Perlで汚いコードを書き連ねてきて、
C#ですっとオブジェクト指向に則ったまぁまぁきれいなコードを書くようになったな。
非構造化プログラミング→構造化プログラミング→オブジェクト指向、
と順当な進展ではあるけど、一つそれなりに書けば割と通用する。 https://t.co/7msE7w5SlL— kurema (@kurema_makoto) 2018年3月13日
さくらインターネットから「IchigoSoda」発売!IoTがさらに身近に
2018年5月8日、IchigoJamの互換機「IchigoSoda」がさくらインターネットから発売されました。
IchigoSodaは、LTE通信モジュール「sakura.ioモジュール」を、IchigoJamに取り付け可能にする基盤です。「sakura.ioモジュール」は、さくらインターネットがIoTシステム向けに提供を開始した通信モジュールです。
sakura.ioモジュールにはソフトバンクのSIMが組み込まれ、LTE回線でデータ送信が可能になります。IchigoJamの魅力はそのままに、LTE通信を活用したIoTが楽しめるようになります。
「Wi-Fi環境を気にせず、屋外で気軽にIoTシステムを活用したい」というような方には、IchigoSodaは低電力かつLTEが使えるため、最高の選択肢です。
まとめ
IchigoJamはRaspberry Piを上回る低コスト、省エネを実現。近年、注目されるIoT(Internet of Things)の分野で、1つのスタンダードになりつつあります。 また手続き型言語であるBASICの人気再燃にも大きく貢献しています。
ただし、手続き型言語には一長一短があります。
IchigoJamやRaspberry Piなどを使い、IoTや組込みソフトウェア開発をしていきたいという方にはBASICをきっかけにCやC++といった言語の学習がおすすめです。
一方、BASICでのゲーム開発をきっかけに「もっと本格的なゲームを作りたい」「VR開発やAR開発もしたい」という方はゲームエンジン「Unity」を学ぶと良いでしょう。
そして「twitterのような世界中で使われるWebアプリケーション開発に挑戦したい」という方には、オブジェクト指向であるRubyの学習がおすすめです。
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