エンジニアは「即戦力」より理念に共感した「未経験者」を育てるほうが費用対効果が高い。
更新: 2020.06.08
「企画とお金はあるけどエンジニアがいない」エンジニア不足が叫ばれる今、どうやって社内にエンジニアリソースを増やすかはIT企業にとっては死活問題です。
今回は、在籍するエンジニアの9割が入社時に未経験にも関わらず業績を伸ばすTEMONA株式会社CTOの中野 賀通さんにエンジニア教育についてお話を伺いました。
プロフィール
TEMONA株式会社 取締役 CTO 中野賀通さん
なかののりゆき
高校時代は部活動でレスリング120キロ級の選手として活躍。中学・高校の工業高校の教員4年経験、その後、上場直後のベンチャーにエンジニアとして参画。 クラウド事業の立上げや、数々の国内大手企業のマーケティング基盤構築のプロジェクトにPL、PMとして従事。2014年TEMONA株式会社にCTOとして参画し、インフラ整備から技術者採用・教育までに幅広く携わっている。
社内のエンジニアの9割が未経験者
──会社とエンジニアの体制について教えて下さい。
エンジニアチームは現在10名ほどいます。プログラミング経験者は1名だけで、ほとんどはゼロから育てたメンバーです。
エンジニアといってもTEMONAの場合はエンジニアがビジネスモデルを考えたりPL/BS読んだりするので、ただコードを書いているだけというわけではありません。
──教員として働いていた経験は今のCTOとしてのエンジニア教育方針に活きていますか。
中学校の教員時代に「本気で学べばどんなことでも身につけられる」という原体験があります。
とある生徒から本来なら高校の過程で取るようになっていた電気工事士の国家資格を取りたいと相談を受けました。ほとんどの先生は「まだ早い」と揃って反対しました。
しかし、本気でやりたいという熱意を応援したいと考えて勉強に付き合った結果、史上最年少で電気工事士を取ることが出来ました。エンジニアリングスキルも同じで熱意を持って取り組めば必ず身につけられると考えています。
「未経験から育てる」ほうが費用対効果が高い
──即戦力で活躍できる人を求める会社が多い中、新卒の未経験者を育てることに力をいれるのはなぜですか。
会社の理念に共感してゼロから成長した新人は、一緒に会社を作っていこうという気持ちの部分が強く現れています。
正直、業務の中では「もっと早く出来るようになれよ、ここまで来いよ」と思うこともあります。
ただそれ以上に、このメンバーはいつか伸びてくれると絶対的な信頼を持っていますし、実際できるようになっているので不安はありません。
逆に、技術力だけで採用してしまうと会社へ貢献するという気持ちが薄くすぐに辞めてしまうことも多い。中長期でみると未経験者にゼロから教えることは費用対効果が高いです。
中途も要所に応じて必要だと思いますが、会社のリソースに育てる余裕があれば新卒をとって自社で育てるべきだと思いますね。
──初心者を半年で1人前にするためにやっていることはなんですか。
学習していないと不安になるような文化をつくることを大事にしています。
具体的には、朝8時半からの早朝勉強会や開発合宿があります。普段の開発業務を少し超えた内容をアウトプットしてもらうことで「あいつあんなことまでしってるんだ」という緊張感が生まれています。
↑朝勉強会の様子
あと、もう一つ成長に大きな影響を与えているのが評価制度です。
TEMONAではアメーバ経営をもとにした独立採算制を採用しています。エンジニア一人一人を1つの会社と見立て、お互いに受発注することで仕事をすすめていきます。
そうすることで「ただ楽しいからコードを書く」だけではなく、自分という人間が赤字なのか黒字なのかはっきり見えるようになる。生産性の高い人はやはり黒字になるし、そうではない人は赤字になっている。
新卒で負けず嫌いの子だと自分が赤字なのが絶対に許せなくて必死で勉強します。管理する手間は大きいけど、メリットは大きいですね。
↑個人の赤字黒字が明確になるように独立採算制度
技術力が高い人が、教えるのもうまいとは限らない
──これから社内で新人を技術者に育てたいと思っている人がいたらどんなアドバイスをしますか。
エンジニアを育てたことがある人を最低1人はいれるべきです。教えた経験を持っている人は、その人が何が分からないかというところが瞬時に分かる。
気をつけなければならないことは、技術力が高い人が教えるのがうまいとは限らないということです。技術力が高くて「ドヤ」ってなっている人ほど教育できません。
技術力に自信がある人ほど「自分の優位性を保ちたい」という意識が生まれます。突き放すのではなく、相手の立場で考えられる人がいなければ効率的な教育は期待できません。
──中野さん貴重なお話ありがとうございました。
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