「よし、転職しよう!」と思い立った時、真っ先に考えることは自分の今後のキャリア形成のことですよね。
自分の強みを活かせる仕事は?今後成長する業界は?企業研究の際には新しい会社で活き活きと働く自分の姿を思い浮かべながらワクワクすることでしょう。
しかし、現実的に一番気になるのはお金、転職先の会社の賃金ではないでしょうか。
今の会社と比べて月収や年収はどの位違うのか?昇給に伴ってどの程度給料がアップするのか?手取りはどれ位なのか?等々、気なることは沢山ありますね。皆さんも企業研究の際は業界の給料の相場は調べるのではないでしょうか。転職の際に会社を選択する条件として大事な賃金。社会人として安定した生活をおくる為にある程度のお金が必要なことは言うまでもありません。
ここでは、昇給について、改めて考えてみましょう。きっと、皆さんの企業研究の参考になるはずです。
この記事の目次
昇給とは?
改めて昇給とはなんでしょうか?
昇給とは、“勤続年数や職務上の昇格に応じた賃金の増額”のことを言います。別の言い方をすると、個々の社員の成長による貢献度に応じて会社は継続的に賃金を上げていく、ということです。
定期昇給とは?
昇給にもいくつか種類があります。まず、定期昇給とはなんでしょうか?
定期昇給とは、賃金が労働者の勤続年数や年齢が上がるごとに増えていく制度を言います。定期昇給があると、入社から定年退職までの平均的な賃金の推移「賃金カーブ」は、50歳ごろまで上がり続けるのが一般的と言われています。
ただ、最近は個々の社員の貢献度をより重視し、定期昇給の比率を下げた上で、実績見合いで昇給額の幅を調整する会社も多くあります。
ベースアップ(臨時昇給)とは?
「ベア」という言葉を聞いたことはありませんか。ベアはベースアップの略です。労働者が会社と賃上げを交渉する春闘の頃になるとニュースでは「〇〇業界ではベア平均▲%で妥結」などと伝えられます。では、ベースアップ(臨時昇給)とはなんでしょうか?
企業の賃金カーブに基づいて、年齢に応じて賃金がおおむね増えていく定期昇給に対し、賃金カーブそのものを底上げする増額方式がベースアップです。好調な収益を従業員に息長く還元したり、インフレによる所得の目減りを調整したりする効果があります。
ベースアップは景気の動向に左右されやすく、かならずしも毎年行われるものではありません。
インフレ基調だった高度成長期では日本全体が好景気だったので、多くの企業でベースアップが当たり前のように行われていました。しかし、バブル崩壊以降、デフレ基調の低成長期の中では、ベースアップ自体を見送る企業が多くなりました。
昇給額と昇給率
昇給額は月収に昇給率を掛けて計算できます。昇給率は会社それぞれの賃金モデル(例:30歳主任クラスで年収〇〇〇万円)に沿って段階的に昇給する様に決められています。
(昇給額の計算例)
昇給額 = 昇給前の月収 × 昇給率
または
昇給額 = 昇給後の月収 - 昇給前の月収
(昇給率の計算例)
昇給率 = 昇給額 ÷ 昇給前の月収
転職して昇給したら一度昇給率を確認してみましょう。友人の会社と比べて「意外と良かった!」ということもあるかもしれません。
わかりやすいので昇給額に目がいきがちですが、昇給率はその企業の「成長度合い」と「社員を大切にする姿勢」を測る一つの目安ともいえます。ぜひ昇給率に注目してみてください。
海外(アメリカ)での昇給制度
ここまで、日本企業の昇給制度についてお話してきましたが、海外、特にアメリカではどんな昇給制度があるのでしょうか。
アメリカでは定期昇給ではなく、業績や会社への貢献度で収入が決まる、いわゆる年俸制を採用している企業が多いです。アメリカ本社で日本に拠点を持つ企業、いわゆる外資系企業に勤める日本人も本社と同じ給与体系になります。
年棒制の企業に働く社員は如何に会社に貢献したかが最も重要です。業績はもちろんのこと、その業績をいかに上司に認めてもらうかが大切なのです。いくら業績を上げても上司に認めてもらえず、結局その業績を引っ提げてさっさと他の企業へ転職・・・。外資系企業ではよくある話のようです。
当然、社員も年棒に見合った業績を上げられなければ会社から解雇される可能性もあるのです。年棒制は定期昇給と比べ、企業と社員双方にとってある意味非常にシビアな仕組みといっていいでしょう。
企業規模による昇給額の平均
ご存知の通り、社会生活は様々な企業の経済活動で支えられています。世界中の国々に優れた製品を輸出する自動車メーカーからその自動車メーカーに部品を提供する下町の町工場まで、日本を支える法人企業は約170万社もあるそうです。
では、いわゆる中小企業の定義をご存じでしょうか。中小企業は、中小企業庁により中小企業基本法で定義されており、業種ごとに下記の条件を満たすことで中小企業、または小規模企業者であると定義されます。
「卸売業」
中小企業
・資本金の額、または出資の総額が1億円以下
・常時使用する従業員の数が100人以下
上記のいずれかを満たすこと
小規模企業者
・常時使用する従業員の数が5人以下
「サービス業」
中小企業
・資本金の額、または出資の総額が5000万円以下
・常時使用する従業員の数が100人以下
上記のいずれかを満たすこと
小規模企業者
・常時使用する従業員の数が5人以下
「小売業」
中小企業
・資本金の額、または出資の総額が5000万円以下
・常時使用する従業員の数が50人以下
上記のいずれかを満たすこと
小規模企業者
・常時使用する従業員の数が5人以下
「製造業、建設業、運輸業と上記の業種以外のその他の業種」
中小企業
・資本金の額、または出資の総額が3億円以下
・常時使用する従業員の数が300人以下
上記のいずれかを満たすこと
小規模企業者
・常時使用する従業員の数が20人以下
では、大企業の定義はどうでしょうか。中小企業庁では大企業の定義を決めてはいませんが、中小企業の条件より大きな規模の企業が大企業だと言えます。
中小企業の平均昇給額
次に最近の中小企業の平均昇給額をみてみましょう
中小企業庁がまとめた「2017年版中小企業白書」によると、従業者規模が100~299人の中小企業の2016年度の昇給率は「1.8%」でした。
資本金2000万円以下の企業の月収あたりの平均月収は275,000円程度。昇給額を計算すると次の様になります。
昇給額 = 275,000円 × 0.018 = 4,950円
新卒の就職活動では、大企業から内定を何社も勝ち取る学生が多いと聞きます。そんな状況の中、大企業に流れがちな優秀な人材を確保するために中小企業も必死です。待遇面での訴求ポイントの一つとして、昇給を積極的に行っている中小企業も多くなっています。
大企業の平均昇給額
最近の大企業の平均昇給額は次の様になっています。
同じく中小企業庁がまとめた「2017年版中小企業白書」によると、従業者規模が1,000人以上の大企業の2016年度の昇給率は「1.8%」と、中小企業と変わらない結果となりました。
従業員規模がさらに5,000人以上の企業の平均値も昇給率は「1.9%」と、中小企業の昇給率とはあまり変わりません。
「なんだ、大企業も中小企業と昇給率が同じなら気にしなくてもいいか」と思われるかもしれません。しかし、大企業と中小企業とで基本給を比べると、ほとんどの場合、大企業が中小企業を上回るので、昇給率は変わらなくても給与に差がでてしまいます。
大企業(資本金10億円以上)の平均月収(男性の場合)は384,000円であり、昇給額を計算すると次の様になります。
昇給額 = 384,000円 × 0.018 = 6,912円
やはり、大企業は中小企業と比べると、基本給、昇給額共に優遇されており、その差が年収の差に反映されています。
公務員の場合は?
ここまで、民間企業についてみてきましたが、公務員の昇給はどうでしょうか。
公務員の給与は、基本的に俸給表によって定められています。昇級するごとに給与が増える仕組みとなっており、昇給額は2万円前後~7万円前後までさまざまです。
また、「公務員の給料は民間の給料に準ずる」という前提が存在しているため、仮に不景気によって民間全体の給料が下がった場合には、公務員もその影響を受けることになります。
したがって、公務員の昇給率は毎年同じような値になるわけではありません。
景気が落ち着いている状態では、公務員は将来の給与を比較的予測しやすい職業であると言えます。ただし、政府の政策・景気の影響などによって給与が大きく変動する可能性もあるため、時期によっては将来の給与を予測することが難しい場合もあります。
学歴による昇給額・給与の違い
次に学歴による昇給額や給与の違いを見てみましょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査を元に、平成18年の20~24歳の平均給与と平成28年の30~34歳の平均給与を比較し、この10年で実際にどの程度昇給したのかを比較してみましょう。
《平成18年度の20~24歳の平均給与》
・大卒男性 約21.8万円
・大卒女性 約20.5万円
・高卒男性 約19.2万円
・高卒女性 約16.9万円
《平成28年度の30~34歳の平均給与》
・大卒男性 約31.8万円
・大卒女性 約27.6万円
・高卒男性 約25.3万円
・高卒女性 約20万円
この結果から算出した平均昇給率と昇給額です。
20~24歳から30~34歳への10年間での学歴別の平均昇給率と昇給額
・大卒男性 平均昇給額 約10万円 平均昇給率 45.8%
・大卒女性 平均昇給額 約7.1万円 平均昇給率 34.6%
・高卒男性 平均昇給額 約6.1万円 平均昇給率 31.7%
・高卒女性 平均昇給額 約3.1万円 平均昇給率 18.3%
勤める企業や地域により違いはあるものの、やはり学歴による昇給額や昇給率にはかなり差が出てしまうのが現状です。高卒に比べて大卒は昇給額が多く、結果給与が高くなっていることは明らかなようです。
学歴別の推定生涯賃金を見てみましょう。生涯に受け取る給与とボーナスの総額については「平成28年 賃金構造基本統計調査」から、退職金については「平成25年就労条件総合調査」をもとに計算しました。
男性の場合、高卒と高専・短大卒がだいたい2億4000万円となりますが、一方、大卒は2億8650万円となり、金額で見ると、4,600万円ほどの差になります。
参照:平成28年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
昇給する方法
ここまで、昇給について、昇給額と昇給率、大企業と中小企業、学歴による違いなど、様々な切り口でみてきました。
いかがでしょうか?「なんだ、結局学歴とか条件が良くないなら、転職しても給料が上がる見込みはないな・・・」なんてがっかりしていませんか?
転職後に皆さんがより給料を上げていくにはどうしたらよいか、一緒に考えてみましょう。
一つの企業で長い間働く
日本の企業は海外の企業に比べて保守的です。日本の企業にはまだ終身雇用制度が息づいており、定期昇給制度を採用している企業は6割にもなります。
定期昇給制度を採用している企業であれば、長い期間働き続けることで給与も上がります。1ヶ月、1年という単位では大きな額に見えないかもしれません。しかし、5年10年という単位で見れば、小さな金額の積み重ねが生涯収入に大きく跳ね返ってくるのです。
一度入社した企業に腰を落ち着け、確実に仕事をこなして企業に貢献する。そんな社員の姿勢に対して多くの日本の企業はしっかりと待遇面で応えてくれます。
率先して仕事を引き受け出世する
会社で昇給する方法としては、職能資格や役職を上げる=“出世すること”もあるでしょう。
出世を狙うためには、誰よりも率先して仕事を引き受け、成果を上げることが一番わかりやすい方法です。もちろん成果を挙げれば昇給のみならずボーナスのアップも見込めます。成果によって報酬を決める会社でも通用する方法です。
多くの会社では、定期昇給だけではなく、「昇格」に伴って昇給します。昇格とは、企業の組織内の職能資格制において、現在の資格(等級)から上位の資格(等級)に上がることをいいます。
似たような言葉で「昇進」もありますね。昇進は主任から係長、課長から部長の様に役職が上がることをいいます。会社の人事制度では職能資格と役職は、「〇等級以上なら課長職」と関連付けされているケースが多い様です。
資格を取得する
企業によっては資格手当を出す場合があります。IT系企業であれば、情報処理試験やベンダー系資格などが対象になっているようです。
企業にとっては、資格保有者を多く社員として雇用していることで、業界に必要とされる一定のスキル保持を訴求できるメリットがあります。
社員の資格取得の意欲向上を目的として、資格手当を給与に加えて支払う企業もあります。また、資格取得は昇格のタイミングで重視されることが多く、昇給にも良い影響があります。
外国語を習得する
企業によっては英語や中国語等、外国語を習得することで手当が出ることもあります。
海外との取引が日常的に行われる企業や部署ではTOIEC等のスコアが昇進や昇格の条件となっているケースも最近は増えています。
外国語を習得していれば、業務の選択の幅も増えることになり、昇給につながりやすくなるといえるでしょう。
給与の高い職種に転職する
外資系に勤めるビジネスマンは、より高い収入を求めて転職を繰り返すケースが多いようです。外資系でなくても、今いる企業にこだわらないのであれば、給与待遇の良い企業を求めて転職する方法もあります。
最近では人手不足から給与を高めに設定している企業も多いので、転職することが昇給に直結する場合が多くなっています。
例えば、給与アップとスキルアップを目指して、エンジニアやプログラマーに転職する人も多いです。プログラミング未経験からエンジニア転職をするため、スクールに通う人は増えています。
以下の記事ではプログラミングスクールの選び方を解説しています。こちらも参考にしてみてください。
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昇給が見込める会社かを判断するには
企業はたくさんあり、さまざまな条件で採用を行っています。1つの企業でも役職や職種、社員の年齢などによって雇用条件は全く異なっています。
企業研究していた時には魅力的に見えて転職した会社も、入社時と数年後の給料を比べると「思いの他給料が上がっていなくてがっかり」なんてこともあるかもしれません。
しかし、ある視点からしっかり分析することでその企業における昇給等の給与面での待遇について、ある程度想定することができます。
成長中の業界・企業か
「10年後に生き残る会社、消える会社」こんな記事を掲載している雑誌をみかけることがありますよね。企業や業界も人間と同じ様に寿命があります。昇給が見込める会社は成長期にある業界に多く存在しているといって良いでしょう。
例えば、IT業界などのようにこれから技術発展が見込める業界。2020年の東京オリンピック開催にあたり好景気にある建設業界。業界の伸びや需要の高まりを受けている企業は昇給をする傾向にあります。
理由はそれだけ売上が高いことと人材を確保するためです。現在働いている社員に昇給で応えるだけでなく、新規採用する社員に対しても給与面での高い待遇で募集をかけることも多いです。
参考までに、【2018年版】これから伸びる業界、衰退する業界についてもまとめています。あわせてご覧ください。
事業拡大に積極的か
事業拡大などに積極的で、新聞・ニュースなどで話題にもなっている企業も昇給を行いやすい企業といえます。多くの事業に進出することは、それだけ企業の財政面に余裕があり、成長を図ろうとしていると考えられるためです。
ただ、注意点として、事業拡大に積極的な企業については、必ずしも経営環境が良好とは言い切れないケースが多々あります。主力事業で売上を出せないため、事業多角化の目的として他の事業に可能性を求めていることも考えられます。
経済紙や企業ホームページなどで経営層のメッセージから具体的な意図や背景を想像してみましょう。また、少し時間はかかりますが、IR情報の決算書から数年間の経営状況を分析し、事業拡大の目的を深く理解しておくべきでしょう。
まとめ
ここまで昇給について色々な切り口で解説してきました。昇給額や昇給率も平均を見ると企業ではほとんど差がないようですが、実際は業界、個々の企業によってさまざまです。
入社する前に正確な昇給額の情報を集めるのは難しいのですが、企業の業績や業界の景気などについて、様々な情報を収集し、できる限り具体的に想定してみましょう。
昇給は企業人としての仕事のモチベーションの源泉とも言えます。「現在の条件があまりよくないから」「努力しても仕方ない」とあきらめたり、妥協しないようにしましょう。
多くの日本の企業は実績だけでなく、社員を評価する際には「過程・プロセス」も重視する方向にあります。転職後は常に自身のありたい姿を目指して日々成長していく様に努力しましょう。そうすれば、昇給という結果が自然と伴ってくるはずです。
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