企業に属さない働き方や、そのような働き方をする人たちを表す言葉として使われる「フリーランス」と「個人事業主」。
この2つの言葉を同じ意味として使ってはいませんか。厳密には、フリーランスと個人事業主には違いがあります。
この記事ではその違いについて詳しく、簡単に解説していきます。
これから独立を考える方は、しっかり理解しておきましょう。
この記事の目次
フリーランスとは
企業などの組織と雇用契約を結ばず、個人で仕事をする働き方のことを「フリーランス」と呼びます。またそのような働き方をする人々は「フリーランサー」と呼ばれています。
会社員やアルバイトは働く企業と、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、労働する期間・時間によって給料が支払われるのが一般的です。
一方でフリーランスは、単発の業務ごとに契約を結びます。1つの仕事だけで契約が終わることもありますが、一定の期間を決めて長期的に契約が続くこともあります。
「フリーランス」に具体的な職業はなく、あらゆる職業で、フリーランスとして活動している人がいるのです。
フリーランスとして働く人の多い職業としては、
- システムエンジニア、プログラマー
- Webデザイナー
- イラストレーター
- Webライター
- コンサルタント
- (学習塾などの)講師
- 美容師
などが挙げられます。
特にIT系の職種については、パソコンやネット環境があれば自宅でも作業できることから、企業に属さず働くフリーランスになる人も多い傾向かあります。
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個人事業主とは
税務署に「開業届」を提出したフリーランスは、個人事業主として扱われます。
個人事業主も、企業などの組織に属さず働いている点や、基本的な働き方についてはフリーランスとほとんど同じです。
個人事業主は、株式会社や合同会社などの法人を設立していないフリーランスのことと考えていいでしょう。
売上によっては、個人事業主から法人へと切り替える人もいます。節税などの面でメリットが増えるためです。法人化するタイミングの基準はありませんが、年商800万〜1000万円を超えたあたりから法人化を検討する人が多いです。
個人事業主になれる職種おすすめ17選!今から目指せる職種や必要な手続き一覧も厳密には「フリーランス=個人事業主」ではない
「フリーランス」と「個人事業主」は同じ意味の言葉として使われがちですが、厳密には「フリーランス=個人事業主」ではありません。開業届を出しているかどうかが違いになります。
副業として仕事をしている人は、開業届を出さずにフリーランスとして働いていケースも見られます。その原因の一つとして、売上が少額だった場合、この後解説する確定申告の必要がないことも考えられるので、個人事業主になるメリットが少ないことが挙げられます。
税法上は区別される「フリーランス」と「個人事業主」ですが、働き方や業務内容などはほとんど同じであるという認識でいいでしょう。
フリーランスと個人事業主の共通点
では具体的に、フリーランスと個人事業主とで共通する点も紹介しておきます。
仕事は自分で獲得する
会社員やアルバイトは、会社と雇用契約を結んだ際に決められた仕事を行うのが一般的です。会社内には業務に必要なものはそろっており、決められた時間の中で仕事を行います。基本的に仕事は会社から与えられることが多いです。
一方、フリーランスや個人事業主は自分で仕事を獲得することから始めます。クラウドソーシングサービスに登録したり、企業に営業メールを送ったりして仕事を受注しなければなりません。
仕事をする環境を自分で整えるという点は、フリーランスにも個人事業主にも共通しています。
確定申告を行う
個人での収入(売上から経費を引いた金額)が38万円以上ある場合、年度末(2月中旬〜3月中旬)に確定申告を行う必要があります。企業に所属しているならば企業が一括で対応してくれるため、自分で行う作業はほとんどありません。
ただ、個人で事業を行うフリーランス、個人事業主は確定申告を自分で行います(収入額によっては申告が不要の場合もあります)。
申告を行わないと、税務署は所得税や住民税などの請求ができません。もし規定以上の収入があるにもかかわらず申告していないことが発覚した場合、追加徴収の対象となってしまう可能性があります。
国民健康保険/国民年金に入る
会社員は、所属している会社の社会保険に入り、その保険料や厚生年金が給料から引かれていきます。その分手取り額は少なくなってしまいますが、保険証を使って医療費を安く抑えたり、年金をもらえたりするメリットがあるのです。
フリーランス・個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的です。自分で保険料・年金を支払います。
他にも「社会保険を任意継続」したり「国民保険組合」に入ったりなどの方法があります。
個人事業主になるために必要な手続き
個人事業主になるためには、先述の通り税務署に「開業届(個人事業の開業・廃業届出書)」を提出する必要があります。
届出の用紙は、税務署や税務署のホームページからダウンロードするなどして手に入れましょう。
さらに、開業届には以下の記入が必要となります。
- 屋号、職業(屋号は個人事業主として事業を行う時に使う名称のことです)
- 開業日(開業日はいつにしても問題ありません)
- 事業内容
- マイナンバー
- 青色事業専従者、従業員に支払う給与(給料を支払う従業員がいない場合、未記入でOKです)
青色申告承認申請書を提出するのがおすすめ
また、開業届を提出すると同時に、「青色申告承認申請書」も提出しておくといいでしょう。確定申告をする際に「青色申告」ができます。
確定申告は「白色申告」と「青色申告」に分けられます。白色申告は単式簿記(取引を1つの勘定科目に絞って記載する方法)で記帳するため、申告にかかる手間が比較的少なくて済みます。
「青色申告」は複式簿記(取引を複数の科目で記載する方法)で記帳する分、作業の手間は増えます。しかし、節税の面で得られるメリットが大きいです。売上額が大きいのであれば、青色申告のメリットを活用できるでしょう(具体的なメリットについては後ほど解説)。
青色申告承認申請書は、開業届を提出してから2ヶ月以内に提出しなければなりません。同時に提出した方が、提出し忘れなどを防げるでしょう。
例外として、1月1日〜1月15日までに開業した場合、その年の3月15日まで青色申告承認申請書を提出したら、青色申告ができるようになります。
青色申告のメリット
では、青色申告のメリットについて解説していきましょう。
ここでは4つの大きなメリットを紹介します。
収める税金額が控除される
青色申告を行う場合、「10万円控除」または「65万円控除」が受けられます。
この控除は、所得税や住民税、国民健康保険の金額を算出する計算に反映されるため、支払う税金の金額を下げることにつながるのです。青色申告を行う一番のメリットと言えるでしょう。
3年間赤字を繰り越しできる
その年の事業が赤字になってしまった場合、3年先まで繰り越すことができます。
これにより、翌年以降の節税対策につなげるられるのです。
家族への給料を経費にできる
青色申告では、事業を手伝ってくれる家族を「専従者」とし、支払う給料(専従者給与)を経費とすることも可能です。こちらも節税対策になります。
白色申告の場合、専従者への給料を経費にはできませんが、確定申告の際に最高86万円まで控除することができます。
30万円未満の償却資産を一時期で必要経費にできる
10万円以上のものや耐用年数1年以上のものは固定資産扱いとなり、減価償却が必要です。
具体例を挙げましょう。例えば、事業で必要となる50万円のコピー機を購入したとします。この50万円は全額をその年の経費にすることはできません。帳簿上で少しずつ資産価値を減らし、経費として計上します。
青色申告の場合、「少額減価償却資産の特例」を受けることが可能です。これは、30万円未満のものであれば、購入した年に経費として一括で経費にできるという特例です(合計限度額は300万円まで)。
利益が大きなってしまいそうな年には、この特例を活用することで節税になります。
企業と契約する際の主な形態
フリーランス、個人事業主の中には、企業と契約して仕事をこなす人も多いです。
その場合、主に以下のような契約形態で働くことになるでしょう。
業務委託契約
フリーランス、個人事業主が企業と取り交わす契約として一般的なのが「業務委託契約」です。業務委託契約は「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の2つに分かれます。それぞれ説明します。
請負契約
請負契約は、仕事の成果物に対して報酬が支払われる契約形態です。
仕事のやり方やスケジュールの進捗などについては、仕事を請け負ったフリーランスが自分の裁量で決めることができます(打ち合わせが発生するなど、全てを決定できるわけではないので注意が必要です)。
ただ、成果物の納期は決められているので、納期を守れる範囲で仕事を進めていく必要があります。
委任契約(準委任契約)
委任契約は、決められた期間内で求められる仕事をこなすことで報酬が得られる契約形態です。成果物を納める必要がないケースもありますが、もちろん報酬に見合った働きをしなければ契約が打ち切られてしまうこともあるでしょう。
「委任契約」は弁護士など法律に関する業務を行う場合の呼び方で、それ以外の業務の場合は「準委任契約」と呼ばれます。
秘密保持契約(NDA)
働く中で知ることになる秘密事項に関する契約です。関係者以外に秘密を明かさないことや、仕事に関することで開示請求があった場合は承諾するといったことなどを取り決めます。
今後、「フリーランスになりたい」「個人事業主として働きたい」と考えている方は、2つの言葉の違いを理解しておくべきです。
どちらの働き方でも問題はありません。副業や、稼いだ金額が少額のうちはフリーランスでも問題ないでしょう。やがて、取引先が企業になったり、売上が大きくなってきたら個人事業主として開業届を出し、確定申告は青色申告で行った方がメリットを受けられるでしょう。
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