ベンチャー企業やスタートアップが、最初に事業を立ち上げる際、狙うべきとされるのが「隙間産業」です。
隙間産業は「ニッチビジネス」とも言われます。
多くの大企業が、創業期にはニッチ産業で大きな成果を残し、徐々に事業規模を拡大してきました。今回は隙間産業の定義や実例をご紹介します。
また「隙間産業」と「ブルー・オーシャン戦略」の違いも解説します!
この記事の目次
隙間産業とは
隙間産業という言葉を聞かれたことはありますか?
スタートアップは確実に成功を収めるために、この隙間産業を探すことが多いです。
意味は以下の通りです。
大企業などが進出しない専門的で小規模の市場や、これまで注目されていなかった分野に着目、進出し、また、新しい販路を開発するなどして生み出された産業のこと。
引用元:コトバンク
ニッチ産業やニッチ市場とも呼ばれますが、こちらの方が一般的かもしれません。大企業が収益性の面から関心を持たなかったり、対応が難しかったり…といった領域を、あえて攻めていくビジネスのことです。
ニッチ産業で高い収益をあげるベンチャーや中小企業は多数あります。
政府もスタートアップ支援に注力
政府もベンチャー、中小企業、スタートアップの支援を積極的に進めています。
経済産業省が策定中のプロジェクト「J-Startup」も、ベンチャー、スタートアップ支援の一例です。経済産業省から任命を受けた推薦員によって、選定されたスタートアップはJ-Startup企業として認定。官民一体となった支援が受けられます。
具体的には大企業による協業機会やオフィススペースの提供のほか、J-Startup認定VCによるファイナンス支援などがされます。
J-Startupのより詳しい情報は、経済産業省の公式ウェブサイトで随時更新される予定です。
隙間産業・ニッチ市場が注目される理由
スタートアップするなら、誰でも成功を最短距離で収められる分野でやりたいものです。
スタートアップの心得や成功の秘訣を探して行くと、よく目にするのが「まずはニッチを狙え」というもの。そして段階的に、モノポリー(独占)に繋がる市場を探していくのが成功への近道です。
Facebookの例
現在アメリカの大企業として名を馳せるものにも、初期は隙間産業・ニッチ市場で事業をスタートしたものが多いのです。
たとえばFacebookは元々、ハーバード大学のドメインのメールアドレスを持つ学生限定のSNSとして開発されました。
Paypalの例
PayPalは、世界で2億人以上が使う安全な決済サービスとして知られています。
1998年に起業したPayPalは2002年にeBayの子会社化。一時期はeBayのオークションの70%以上がPayPal支払いを受け入れていました。PayPalは今でこそ、インターネット上で汎用性の高い支払い手段として定着しています。しかし、今の成功はeBayという巨大市場を「攻略」したからこそもたらされたものなのです。
大企業が見逃していた、潜在的なニーズを掘り起こせる
ニッチビジネスは、後述しますが大企業が参入していない領域です。
いわば放っておかれ、捨てられてきた領域ですが、その理由もちゃんとあるわけです。収益化困難で未参入ということもあります。
セブンイレブンの例
ニッチビジネス元祖成功例としてよく取り上げられるのは、コンビニチェーンのセブンイレブンです。店名の由来となった朝7時-夜11時営業は、スーパーの営業時間外というニッチな時間帯を狙ったものです。
セブンイレブンの国内第1号店は、1974年開店の豊洲店。当時、スーパーマーケットは朝9時開店、夜は7時か8時に閉まるのが一般的でした。
お客様の立場からすると、買いたい時に店が開いていない、仮に開いていたとしても自分の欲しい ものがない、そういう時代背景があったのです。 セブン‐イレブンは年中無休、朝7時から夜11時の営業で、お客様からまさに「開いててよかった」と 喜んで頂けました。
こうした声にもっと応えようと、翌年福島県郡山市で初の24時間営業の店を 開始したのです。現在は約99%の店舗が24時間営業を実施しております。
価格競争に巻き込まれない
ニッチビジネスのアドバンテージの 一つは「価格競争に巻き込まれづらい」ことです。競合他社が多いと、価格交渉などの競争に巻き込まれ、必然的に自社も疲弊します。
低価格競争という望まない世界に引っ張られづらい傾向があります。
顧客との深い関係性を築ける
ニッチ市場の特徴の1つは、ライバル企業の少なさです。
コンテンツやサービスの質の向上に集中でき、ブランド力を高められます。顧客もコアなファンであることが多く、企業は深い関係を築くことができます。
ニッチな産業(市場)の例
ニッチな産業(市場)で成功を収めた日本企業を2つ紹介しましょう。
Cerevo
まずは株式会社Cerevo(セレボ)です。
Internet of Things(IoT、モノのインターネット)と呼ばれる分野に着目した企業であり、コネクテッド・ハードウェアと呼ばれる製品を開発しています。
製品は超個性的。たとえばアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する「ドミネーター」の商品化です。「1分の1スケールが素晴らしい」「原作アニメそのままのサウンドと光」など、ファンの評価が非常に高い製品です。
ハードウェアの製造コストは非常に大きいため、ローンチ前に入念なマーケティングは必須なのが家電メーカーの常です。しかし、Cerevoでは必ずしもマーケティングを重視しません。
製造コストを最低限に抑えた上で、マーケティング分析を行うよりも「まずは製品を作って、世に出す」。そして反応を見るというのが、Cerevoのスタイルです。
史上初のBLEラジオ「Hint」がクラウドファンディングで大きな話題に
また、クラウドファンディングでの支援額が話題になった製品もあります。BLEラジオ「Hint」です。ニッポン放送、Cerevo、グッドスマイルカンパニー3社の共同開発商品でした。
Hintはクラウドファンディング・CAMPFIREで支援を呼びかけた結果「パトロン 1250人」「支援額 3045万5500円(2016年9月)」を記録。当時史上最多となる支援額を集め注目されました。
Cerevoの創業者は、岩佐琢磨氏。パナソニックの社員だった彼は「大手ではできないことを」という思いを抱き同社を退職・起業。
「俺は10万人に1人のレベルで頭が良い!」という自信があるなら、わざわざニッチな分野をやらなくても構わないです。
でも「俺、そこまで頭良くないしなあ・・・」という人がほとんどですよね。それなら「この分野、めちゃめちゃニッチだけど俺は得意だ!」というものを1つでも良いから見つけ、極めたほうがいいです。
「グローバルニッチ」を実現するCerevo
真にグローバルなものを作るには「ニッチだけれど、特定の国や性別に依存せずに世界中の人が共通で使うもの」という視点が必要だと、岩佐氏は語ります。
ニッチでありながら、世界の人が実は共通で使うものを、岩佐氏は「グローバルニッチ」と呼びます。Cerevoはまさにグローバルニッチという「新しいニッチ産業」を体現する企業です。
2018年4月2日、岩佐氏率いるCerevo社は子会社のShiftall(シフトール)社の全株式を、岩佐氏の古巣のパナソニック社に売却。
これに伴い社長である岩佐氏はCerevo社を退任。「Shiftall(シフトール)」社の代表取締役CEOとして、パナソニックグループにカムバックすることとなりました。
Cerevo社の約1/3ほどの人員がともにShiftalへの移籍することに。
今後岩佐氏は、古巣パナソニックで「前衛的IoT製品」の開発に尽力します。
ツインバード
家電メーカー「ツインバード」もニッチ商品の開発に尽力しています。
アイロンやトースターを安価で売るメーカーから一転、同社はマーケティング主軸の企業に生まれ変わったツインバード。
“こんなのがあったら嬉しい”
“ありそうでなかった”
このようなニッチ商品こそが、ツインバードの主軸製品です。2011年の野水重明社長就任以来、ニッチ家電メーカーにシフトしました
主な商品を紹介します。
2ドア冷凍冷蔵庫 ハーフ&ハーフ
2ドア冷凍冷蔵庫 ハーフ&ハーフは、その名のごとく冷蔵室・冷凍室が半々の冷蔵庫です。冷蔵庫の冷凍室がパンパンの家庭が、いまや殆どであることに着目。
冷凍食品のクオリティの進化による、昨今の冷凍食品の需要の高まりを反映した商品です。
全自動洗濯機 5.5kg
全自動洗濯機 5.5kgは約1kg(約1日分)の洗濯物を、10分で洗える「快速モード」が搭載されています。
10分なら出勤前にも洗濯機を回しやすいですね。夜洗いにもよさそうです。
“みんなが欲しがる商品”は絶対つくってはいけない
野水社長の商品開発コンセプトは「“みんなが欲しがる商品”は絶対つくってはいけない」というもの。「皆が欲しいもの」は既に作られて市場に出回っているという考え方です。
「1割の方が“これ超欲しい!”となる商品がいい」と、正にニッチ路線を狙っています。
ニッチビジネスとブルー・オーシャン戦略は何が違うのか
これまでニッチビジネスについて取り上げてきましたが「それってブルーオーシャン戦略のことじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。
しかし、ニッチビジネスとブルーオーシャン戦略は厳密には違うものです。
ブルーオーシャン、レッドオーシャン、ブラックオーシャンの違い
ブルーオーシャンに対して「レッドオーシャン」「ブラックオーシャン」という言葉も存在しますので、まず区別してみましょう。
レッドオーシャン
・「激戦市場」のこと
・市場でコモディティ化(一般化)してしまったプロダクトが、細かな差別化だけを行い、競争を繰り返している状態
・それほど違いがないのに血まみれの戦いをしている状態。値下げ競争による低利益に陥りやすい
ブルーオーシャン
・その時点で競合がいない。あるいは少ない市場。レッドオーシャンから少し離れた場所に位置する。
・付加価値が高く、高利益の商品が生まれやすい市場
・ブルーオーシャンはいずれライバルが現れて、レッドオーシャン化してしまう可能性がある
ブラックオーシャン
・参入障壁が非常に高い、独占的な市場
・ブルーオーシャンがレッドオーシャンと地続きであるのに対し、ブラックオーシャンはその2つの「下層」にある
・海上ではなく、海底に存在するイメージ。天然メタンハイドレートなどに例えられる(海底の宝)
・レッドオーシャン化しづらい代わりに、事業の立ち上げの難易度も高い
ニッチ市場とブルーオーシャンの違い
「ニッチ市場」と「ブルーオーシャン」は、混同されやすいと言われています。どちらもポテンシャルに溢れた、やり方によっては大きな収益を収められる市場と捉えられがちです。
しかし起業家としてビジネスを考える場合は、この2者に対して違うスタンスで臨まなければいけません。両者はあくまで別物なのです。
「ニッチ市場」と「ブルーオーシャン」の違いは何でしょうか。
ニッチ市場
・隙間市場
・ニッチ市場は「既に市場」として現存している。
・多くの企業が面倒だったり、コストパフォーマンスが悪いといった理由で、参入を回避してきた市場。
ブルーオーシャン
・未開拓の市場
・「誰もやってなかった(やれなかった)」市場
ニッチ市場にはそれまで企業が参入を避けてきただけの、大きな理由があります。ですから収益に結びつかない可能性も大なのです。
つまりあなたがニッチビジネスを思いついたならば、その事業が「消費者に需要があるのか」を厳しく見極めなくてはいけません。
また、“隙間”ですから、王道を行く商品とのはっきりとした差別化がないといけません。
対してブルーオーシャン戦略は、未開拓ですから競合他社の動きに気を付けないといけません。モノポリー(独占)に至れなければ、ブルーオーシャン戦略に出た意味がないからです。
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まとめ
市場の見極めは実に重要ですね。
まずは独占できる市場を掴んでいくことが、大きな市場を持つにいたる秘訣です。
グローバルニッチを実現した大企業も、始めは小さなニッチを確実に掴んでいます。
それが出来てこそ、ビジネススケールを拡大できると言えます。
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