タレントマネジメントという言葉を聞いたことはありませんか。近年注目を集めいている、人材活用・育成手法の一つです。
この記事では、タレントマネジメントの定義や目的、実践方法などについて詳しく解説します。
この記事の目次
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、企業の目標達成のための最適な人材配置、育成などを行うための取り組みのことです。
自社の人材(タレント)を最大限活かすため、一人ひとりの能力やスキルを一元的に管理し、配置や採用、評価、昇進・昇格などの組織運営に役立ており、近年多くの企業が取り組み始めているのです。
タレントマネジメントの大きな目標の一つに、「リーダー候補の育成」があります。
タレントマネジメントの定義
一般的なタレントマネジメントの意味について解説しましたが、実は「タレントマネジメント」という言葉には明確な定義はありません。
ここではアメリカの2つの機関による定義を紹介します。
SHRM(全米人材マネジメント協会)による定義
1948年に創設され、現在約165カ国に約29万人の会員を持つSHRM(Society for Human Resource Management:全米人材マネジメント協会)によると、タレントマネジメントとは以下のように定義されています。
人材の採用、選抜、適切な配置、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の各種の取り組みを通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、その適性を有効活用し、成果に結び付ける効果的なプロセスを確立することで、企業の継続的な発展を目指すこと
引用元:タレント・マネジメントとは? 株式会社スマートビジョン
ASTD(米国人材開発機構)による定義
1994年に創設された非営利団体で、約100カ国に約4万人の会員を持つASTD*(American Society for Training & Development:米国人材開発機構)は、2009年にタレントマネジメントを以下のように定義しています。
*2014年にASTDからATD(Association for Talent Development:人材開発機構)に名称変更しています。
仕事の目標達成に必要な人材の採用、人材開発、適材適所を実現し、仕事をスムーズに進めるため、職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から、実現しようとする短期的/長期的、ホリスティックな取り組み(多層的なものを有機的に統合する取り組み)である引用元:タレント・マネジメントとは? 株式会社スマートビジョン
タレントマネジメントを行う目的・目標
上述した通り、タレントマネジメントの目的は企業の目的達成や持続的な発展です。
売上・利益の向上や事業拡大といった経営目標に対して、人事戦略の視点から取り組むことがタレントマネジメントであり、それにはこれから解説する4つのプロセスが重要になります。
必要な人材の調達
まずは目標を達成する上で必要な人材を調達します。
人材調達には外部調達(採用)と内部調達(人材発掘)などの方法があります。
目標に向けた人材の育成
調達した人材が、始めから企業が求める理想の人物像と100%一致するわけではなく、多くの場合において人材の育成が必要です。
育成方法にはいくつかありますが、研修や実務を通したトレーニングの他、ストレッチアサインメントと呼ばれる手法などが用いられます。
ストレッチアサインメントとは、いわゆる「無茶振り」のようなもの。現在の実力では達成困難と思われる役職・ポジションにあえて任命することで、その人の劇的な成長を促す育成方法です。
人材の適材適所への配置
育成した人材がその能力を存分に発揮し、企業の目標達成に貢献できるような配置を行います。
各タレントに最も適したポジションを提供するためには以下の4点が重要です。
・各タレントの能力・スキル・経験などの見える化
・明確な評価基準の設定
・キャリア志向、プランの明確化
・成果や評価、キャリア志向をもとにした配置の検討
採用・育成した人材の定着
せっかく採用・発掘し、育成した人材を適材適所で配置した後、すぐに辞めてしまっては意味がありません。
各タレントが能力を発揮しながら出来るだけ長く活躍できるよう対策を打つこともタレントマネジメントに含まれます。
具体的には、各タレントがモチベーションを維持できるようなやりがい、キャリアプランや報酬の提示、スキルアップ・キャリアアップの機会提供などがあります。
なぜタレントマネジメントが注目されているのか
タレントマネジメントという言葉自体を聴き慣れていない方も多いでしょう。
近年タレントマネジメントが注目を浴びている背景について解説します。
人材不足・労働市場の変化
急速な少子高齢化により、生産年齢人口(15~64歳の人口)、労働力人口(15歳以上で労働の能力と意思を持つ者の人口)が減少傾向にある中、企業においては事業継続・発展のための人材の確保が大きな課題となっています。
そのような状況下で「足りない人材は外から補充する」という考え方から「今ある人材の能力を発掘し、最大限に活用する」という考え方に移行しつつあり、その方法としてタレントマネジメントが重要な役割を担っています。
技術革新による経営戦略の変化
近年の技術革新の成果によって、単純作業は機械に任せ人間はより高度な作業に専念することが可能になりつつあります。
この働き方の変化に伴い、各企業はこれまでとは異なる人事戦略・経営戦略を立てる必要が出てきました。
このような背景があり、自社が持っている人材のスキルや経験をデータ化し、客観的に評価するタレントマネジメントが注目されているのです。
個人単位での働き方の見直し
働き方改革関連法が施行され始めた現在、日本社会全体で一人一人が無理なく働ける、ワークバランスを重視した働き方へのシフトが推し進められています。
企業においては、個人の希望にそった柔軟な働き方の提案やスキルや経験に応じた適切なポジションの提供は、人材確保のためにも重要な意味を持ちます。
そしてその実現のために、限られた時間でより高いパフォーマンスを発揮するための社員個人の能力を管理と適材適所が求められています。
グローバル競争
グローバル化が進み、世界市場を舞台に企業が熾烈な競争を繰り広げている現代。
その中で勝ち残っていくためには、これまでの価値観に囚われない新しいアイデアを生み出すとともに、それを実現できる能力を持つ人材の確保・育成が重要な課題となるでしょう。
日本企業においても、これまでの年功序列制度から実力・成果主義へと考え方も変化してきており、各タレントの能力・経歴の見える化と人材育成に注力する企業が増えてきています。
タレントマネジメントを実践するには
タレントマネジメントにより、企業はより少ない資源でより高い成果を出すことが可能になります。
しかし、その効果を最大限に発揮するためには正しい手順・方法で実施することが重要です。
タレントマネジメントを実践する際のポイント・手順について解説します。
目的・目標の設定
まず考えるべきなのは、「何のために」「どのようなタレントを」「いつまでに」「どれくらい」確保・育成するべきかです。
多額の費用を投資してタレントマネジメントシステムを導入したところで、その目的や目標が明確でなければ意味がありません。
タレントマネジメントは、企業の経営戦略を元に考えられるべきであり、売上増加や事業拡大といった目標達成のための手段です。
「管理したほうがいいから」といった曖昧な理由ではなく、タレントマネジメントを実施する具体的に目標を設定し、関係者間で共有しましょう。
タレントの情報・能力の把握
氏名、学歴、経歴、資格、配属、評価結果などのタレント(人材)の情報を集約し、可視化します。
これらのデータは常に最新であることが望ましいため、必要に応じて適切な権限を持つ人が更新できる体制を整えることも重要です。
大企業になると、タレントの数は数千~数万に及びます。データが膨大すぎて扱えないといったことにならないよう、タレントをスキルや経歴別にカテゴリー分けするなど、必要な情報がすぐに確認できるシステム構成も必要です。
タレントの採用・育成のスケジューリング
タレントマネジメントのプロセスの中でも特に重要なのが、このタレントの採用・育成のスケジューリングです。
経営戦略を元にどのようなタレントがどれくらい必要なのか、理想と現実のギャップを確認し、その差を埋めるための採用計画や育成計画を立てます。
人材育成は、実際の業務を通して成長を促すOJTと、研修等で知識を得るOFF-JTがあります。
強化したいポイントに合わせてこれらを使い分けると共に、社員自身が意欲を持ってこれらのトレーニングに取り組めるよう、明確なキャリアパスの提示や資格手当の支給などを並行して検討しましょう。
タレントの配置
先のステップで立てた計画を元に、タレントを配置します。
この際、タレント自身が「なぜ自分がこの部署・ポジションに就くのか」が理解できていないと、配置後期待した通りに能力を発揮し、成長できない可能性があります。
管理者は配置後も継続的にタレントのモチベートすることに加え、定期的に経過観察を行いましょう。
適切な人事評価体制の構築
タレントマネジメントにおいて、適切な人事評価体制の構築は大変重要です。
昔ながらの年功序列制度や、勤務態度など各タレントの成果以外に重点を置く評価制度のままでは、タレントの正確な能力把握ができないどころか、タレントのモチベーション低下も引き起こします。
成果を出した人が適切に評価され、それが昇給や昇格など目に見える形で示されるよう、体制を整えていきましょう。
タレントの再配置(異動)
タレントの採用・育成計画通りに人材配置を行ったとしても、それが上手くいくとは限りません。
一定期間後に期待通りの成長が見られない場合には、タレントの再配置(異動)などにより調整を行います。
再配置(異動)の背景には、
・もともとそのポジションが適切でなかった(能力のミスマッチ)
・何らかの理由により成長できていない(環境的要因)
などがあります。
なぜ期待通りの結果が出なかったのかを分析し、再度そのタレントの育成を行うのか、別のタレントにその役割を担わせるのかを決定するべきです。
タレントマネジメントシステムを活用しよう
自社でタレントマネジメントを始めようにも、何もない状態からスタートするのが骨が折れる作業です。
少しでも作業を楽にするために、「タレントマネジメントシステム」の活用をおすすめします。
タレントマネジメントシステムとは、簡単に伝えると「企業のタレントマネジメントをより円滑に行えるように設計された業務支援システム」のことです。
タレントマネジメントを支えるサービスとして様々な企業がリリースしています。
こちらの記事では、タレントマネジメントシステムの詳細と、おすすめサービスについて紹介しています。合わせてお読みください。
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