「1分で話せ」プレゼンで綺麗に話すより大事なこととは?Yahoo!アカデミアの学長に聞く「伝える極意」
更新: 2020.03.04
AIを始め、テクノロジーの進化によって急激に変化する世界。 その中でも未来を読み取り、新しいキャリアや価値観で働く人達がいます。
テックキャンプではそんな「イノベーター」の皆さんをお呼びして変化する世界をチャンスへと変えるための新しい学びを提供します。
今回は、『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』の著者で、Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一氏をトークゲストに迎え、誰にでもできる「伝え方」についてお話いただきました。
2018年7月10日にテックキャンプ 渋谷フォンティスビル校で行われた著者講演の模様を、お届けします。
この記事の目次
綺麗に話すのは一回忘れよう。綺麗に話すことより「相手を動かすこと」が重要
伊藤:みなさん「どうやったらうまく話せるようになりますかね」と言いますが、僕だって「あの〜」「その〜」と言いまくるわけです。それでも伝えたいことは、伝わります。つまり「綺麗に話す」必要はなくて、伝えたいことがきちんと伝わればOKなんです。
「綺麗に話す」ことは一旦忘れてください。綺麗に話す分には、場数を踏めば絶対に話せるようになりますから。「どうやったら綺麗に話せるようになるか」ではなく「どうやったら、聞き手が動くか」が大事なんです。
綺麗に話すことは目的ではなく、あくまで1つの手段。コミュニケーションの目的は「相手を動かすこと」です。そのためコミュニケーションでは「相手は何に興味があるのか」「相手を(コミュニケーションによって)どこに動かすのか」を考える必要があります。
AIDMAを意識したプレゼンで相手を動かそう
そこで伊藤さんが紹介したメソッドが「AIDMA」です。
AIDMAとはマーケティングでよく使われるフレームワークの1つ。
商品に「注目」してから「行動(購入)する」までの消費者行動を5つのステップにわけた上で、それぞれのステップの英単語のイニシャルを繋げ「AIDMA」と呼ばれます。
- Attention:注目する
- Interest:関心を持つ
- Desire:いいね!と思う
- Memory:記憶する
- Action:行動する
伊藤さんはテレビコマーシャルを例に、AIDMAを詳しく説明してくれました。
伊藤:例えば「Memory:記憶する」コマーシャル。昔のチョコボールのコマーシャルは「くえっくえっくえ チョコボール」としか言ってないですが、チョコボールの名前は覚えますよね。
「Action:行動する」はとにかく「買ってもらう」こと。例えばYahoo!ショッピングであれば、Tポイント10倍キャンペーンなどを行ってお得感を演出することで買ってもらうわけです。
このように広告コミュニケーションでは、AIDMAの「どこに刺すのか」が重要です。
プレゼンも全く同じです。相手に「いいね!」と思ってもらうにはどうすればいいか。伊藤さんはこの5つのステップに従って、一つ一つ丁寧に説明してくれました。
Attention:注目する
例えば「大きな声を出す」のは、簡単に注目を集められる手段です。ですが、それでは一瞬しか注目してもらえません。重要なのは「聞き手を迷子にさせない」ことです。
そのためには、伝える内容は「スッキリ、カンタン」なものにしましょう。要点を絞った上で、中学生にもわかる内容へと落とし込むことが大事です。あれもこれも伝えようとしすぎると、相手にとっては何を言っているのかわからないという事態になりがちです。
Interest:関心を持つ
「Intrest:関心を持つ」という段階において、重要度が高いのは「ロジック」だそう。
伊藤:「面白いことを言う」のではなく、「ロジカルに考えたストーリー」で関心を持ってもらうことが重要です。
では「ロジカル」とは何でしょうか。
実は伊藤さんは「ロジカルシンキング」が苦手だったそう。
伊藤:ロジカルシンキングが本当にできなかったんです。10年前や15年前は「お前の言っていることはロジカルじゃない」と言われ続けていた。
そんな伊藤さんがたどり着いた「ロジカルとは何か」という疑問の答えはシンプルなもの。結論、ロジカルとは「意味が繋がっていたら、ロジカル」とのこと。
説明やプレゼンテーションで、言葉の意味を繋げるために必要なものは根拠です。
「この企画をやりたいです」と上司に直談判して、やりたい理由や根拠を説明できなかったら「バカか!」という話になってしまいます。
よって根拠は3つ考えるべき。根拠が1つでは「でも、その根拠は弱いのでは?」「俺は反対だな」という意見が出ることもあります。一方で根拠が3つあると、通りやすいそう。
伊藤さんによれば「コンサルタントは、プレゼンテーションで根拠を3つあげる傾向がある」とのことです。
Desire:いいね!と思う
「内容を簡単にする」「スッキリさせる」などは、あくまで内容をロジカルにまとめ上げる「左脳に訴えるアプローチ」でしかありません。
ですが人間は感情で動く生き物でもあります。左脳に訴えるだけでなく、右脳にも訴えかけなくてはいけません。そこで伊藤さんが語ったのが「想像してください」という言葉の大事さ。
伊藤:「想像してください」という言葉は「Desire:いいね!と思う」に訴えかけます。写真を使うのも良いです。「想像してください」と言ってイメージを刺激することで右脳に訴えて、いいね!という感情を引き起こします。
プレゼンテーションというとついつい自分の思いばかりを語りすぎて、観客を置いてけぼりにしてしまう人が多いのではないでしょうか。
「想像してもらう」ことで、観客にも「動いてもらう」ことができます。すると観客はプレゼンテーションに対して、より能動的に参加する立場になります。
「想像してください」という単純な言葉の力に、ハッと気づかされた箇所でした。あまりにシンプルですが、効果は絶大です。
Memory:記憶する
話したことを「記憶してもらいたい」からといって、聞き手に「覚えてくださいよ!」と言ってもほぼ無意味です。ポイントをキーワードで言うことが重要です。
その実例として、伊藤さんが語ったのが孫正義氏を相手に行ったプレゼンテーションのエピソード。
伊藤さんは欲しい日にキッチリ商品が配達されるサービスのモデルを「キチリクルン」という言葉とともにプレゼンしたところ、孫正義氏から好評価をもらったそう。「キチリクルンって面白いね」と孫さんが言い、キーワードの大事さを実感したとのことでした。
Action:行動
相手に動いてもらう、最後の最後の決定打が「Action:行動」です。
伊藤:人は「正しいことを言うだけ」では動かないです。情熱と自信で動きます。正しいことを後ろを向いてぼそぼそと言っているだけでは「絶対に言うことなんて聞かない」という気持ちになってしまいますよね。
情熱イコール「一番好きか」ということです。サッカーの話でも、自分のプロダクトの話でも「好きなこと」について話すときは情熱的になるものです。
「自信」とは「とことん準備したかどうか」。たとえばプレゼンに至る前の根回しや、会場の席の配置をどうするか。直前の挨拶やプレゼン終了後のフォローなど、プレゼンそのものだけではない様々な取り組みもトータルで大事です。
つまりプレゼンとは「単なる話し方」に留まらない、広い意味の伝え方の技術と言えるでしょう。
プレゼンは1時間に10回練習できる!
300回練習したら孫正義氏相手のプレゼンでも緊張しなくなる
伊藤さんは孫正義氏へのプレゼンに当たって、300回練習したそうです。300回練習すると、目の前に孫正義氏がいることに緊張していても、練習の成果で勝手に口が動くそう。
伊藤さんは「朝、昼、晩1時間ずつ時間をとり、毎日3時間プレゼン練習をすること」の重要性を語ります。プレゼンは1時間に10回練習できるため、1日30回練習できます。10日やれば300回です。つまり「300回の練習」というとハードルが高いですが、実際に練習する日数自体はたった10日で十分なのです。
わずか10日の練習で、孫正義氏を相手にしても自信を持って話せるくらいの「徹底的な準備」が可能になると思うと「自分もやってみようかな」という気になりますよね。
さいごに
プレゼンテーションのプロフェッショナルの伊藤さんですが、今もなおスキルを伸ばすために並々ならぬ努力を重ねています。以下の投稿でスキルが伸びる(伸ばす)流れがよくわかりますね。
いま、エンジニアに求められるのは「プログラミングスキル」のみではありません。技術に加えて、マーケティングスキルや顧客の要望をくみ取るヒアリング能力など広い意味でのコミュニケーションスキルが求められます。だからこそ、未経験からのエンジニア転職者の市場価値が高まっています。
プログラミングスキルと「1分で話す」力はとても相性が良いです。高いプレゼンテーション能力と、プログラミングスキル。両方のスキルを兼ね備えた人材を目指しましょう。
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