35歳過ぎてもコードで食っていけるのか? 40代のえふしんさんに聞いてみた【エンジニア転職ウワサの真相】
更新: 2019.12.17
BASE株式会社 取締役CTO 藤川真一(えふしん)氏
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、07年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。10年、想創社を設立し、12年4月まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。14年8月からBASE株式会社のCTOに就任。2017年9月に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科博士課程を単位取得満期退学、2018年1月博士(メディアデザイン学)取得、同学科研究員。
「35歳定年説」が誕生した背景にある、SIerの事情とキャリアシフト
結論から言うと、「35歳定年説」はWeb系エンジニアには当てはまりませんね。もともと「35歳定年説」が生まれた背景には、「マネジメントをやらないと給料が上がらない」というSIerの事情があります。
歴史あるSIerを含む老舗の大企業には定年までのモデルが確立されていて、若い人が毎年どんどん入ってくる。その人たちを育てていかなければいけないわけです。エンジニアとしてはずっとコードを書いていたいというニーズがあるけれど、会社としてはチームで結果を出すために皆を指導する立場にチェンジしてほしい。
世の中では当たり前のように歳を重ねたら給料が上がると思われているけれど、「なぜ歳を取ると給料が上がるのか」という問いに答えられる人はほとんどいません。僕は「年長の社員は、ちょっとずつ新入社員から給料を分けてもらっている」と考えるとシンプルなのではないかと思います。
若手社員からもらっている給料分、彼らに何を提供できるのか。それが指導やマネジメントなのではないでしょうか。一方の個人を見ても、技術力が高いリードエンジニアのバリューはアウトプットですが、自分一人のアウトプット量には限界があります。給料を上げようと思ったら、リードエンジニアにせよピープルマネージャにせよ周りを動かす必要があるんですね。
つまり、組織としてマネジャーを置かなければという事情とは無関係に、チームのアウトプットの質を高めようと思ったら、個人もマネジメントへの移行を考えなければならないわけです。その最初のタイミングが、35歳前後。こういったキャリアのシフトのことを「35歳定年説」と呼んでいたのだと解釈しています。
ビジネスとして成熟していないWeb系企業に「35歳定年説」は当てはまらない
ただ、これは大手SIerを含む老舗企業の話。冒頭で述べた通り、Web系エンジニアには当てはまりません。まだ歴史の浅いWeb系企業は、経験の浅い若手を育てる余裕がなく、技術力が高い人の活躍で成り立ってしまう会社も多いです。「35歳定年説」が当てはまるほど、まだビジネスとして成熟していないと考えることも可能です。
経験や技術がない人を受け入れても会社が成立し、成長する組織になること。これがWeb系企業にとっては重要なことで、そのためにやるべきはビジネスを大きくしていくことに尽きます。逆にそのような成長をした企業は年齢に関わらず、エンジニアリングチームを成長させるためのエンジニアリングマネージャを必要としています。そのような会社が永続することで、Web業界にも定年までの人材育成モデルがでてくることが望ましいと思っています。
僕は今、45歳ですが、この業界に年上の人はほとんどいませんし、僕も含めて別業界からの転職者ばかり。終身雇用を目指すわけではないですが、Web系企業に勤める年長者として、まずはWeb系エンジニアの定年までのモデルを作っていかなければと思っています。
ウワサ1>SIer崩壊説って本当?
ウワサ2>マークアップエンジニアはなくなる?
取材・文/天野夏海 撮影/赤松洋太
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