「社内の異なるOSに対応したシステムの構築」などの問題に対して、頭を悩ませている担当者の方は少なくないでしょう。
そのような問題に対する解決策として、「DaaS(Desktop as a Service)」という選択が注目されています。
今回は、クラウドサービスの1つである「DaaS」の特徴や代表的なサービスについて紹介します。DaaSの市場規模が拡大している理由や、VDIとの違いについても理解しましょう。
この記事の目次
市場規模の拡大を続けるDaaS
働き方改革やWindows 7のサポート終了といった要因も後押しして、DaaSの市場規模は拡大が予想されています。
まずはDaaSの将来性や、その成長の背景について紹介しましょう。
2021年度は2016年の約3倍に成長する見込み
出典元:ITR
DaaSについては独立系のITコンサルティング・調査会社である株式会社ITRが、国内のDaaS市場規模の推移とその将来予測を発表しています。
そのレポートによると、2016年には113億円規模だったものが、2021年には325億円と約3倍に伸びると推定されています。
これは古いOSでしか動作しないアプリケーションや、古いブラウザでしか動作しないWebシステムがレガシー資産として残ってしまっている企業がまだあり、それらを使い続けざるを得ないために仮想デスクトップ環境が必要になっているという事情が大きく影響しているようです。
参照:ITRがDaaS市場規模推移および予測を発表 | ITR
働き方改革による労働環境の多様化による需要の増加
また働き方改革によって、テレワーク・リモートワークやノマドに代表されるような社外での作業が増えて来ているのも理由として挙げられます。
その際に、パソコンを持ち帰ったり、持ち出したりするのは紛失や破損の可能性が高くなります。
ですから仮想デスクトップとしてデータのみならず、OSの環境そのものを仮想化してしまい、働く場所や時間を選ばないような環境の構築を行ってしまおうというわけです。
この流れが加速することによって、DaaSやVDIの需要はこれからも伸びていくと予想されているわけです。
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DaaS(Desktop as a Service)とは
このDaasですが、これまでにもあったVDIとは一体何が違うのでしょうか。まずはDaaSとはどういうものかを説明してみましょう。
DaaSはクラウドサービスの1種
DaaSは「Desktop as a Service」の略語です。これまでにもIaaS・PaaS・SaaSなど、インターネット経由で提供される様々なサービスがありました。
DaaSもこれらと同様で、クラウドサービスの1種です。読み方は「ダース」と言います。
SaaSの様にソフトウェアをサービスとして配信するのではなく、デスクトップ環境そのものをサービスとして配信するというものです。
DaaSには3種類の形態がある
このDaaSには配信の方法として3種類の形態があります。その形態は目的によってどれを採用するべきなのかはかわりますが、できることは同じだと考えて構いません。
プライベートクラウドDaaS
1つ目は「プライベートクラウド」を利用したDaaSです。特定の企業向けに構築されたプライベートクラウド上に構築しています。
他の企業からは独立した環境として構築されているため、セキュリティなどの安全性が高いことや、安定稼働をさせられるというメリットがあります。
また自由なカスタマイズが可能な点もメリットです。
バーチャルプライベートクラウドDaaS
2つ目は、プライベートクラウドDaaSよりは手軽に導入できる「バーチャルプライベートクラウドDaaS」です。
サービス事業者が提供するIaaSやPaaS上に構築されたサービスで配信されるデスクトップ環境を利用します。
IaaSやPaaS上に構築されますので、環境としては独立していません。
ただし、他社が同じDaaSを使うことはありませんから、ある程度セキュリティは担保されます。また、カズタマイズ性も高いままです。
パブリッククラウドDaaS
3つ目はパブリッククラウド上に構築されたDaaSです。
契約した全ての人が同じ環境を使えますので、カスタマイズ性はありませんし、セキュリティ面でもそれぞれで工夫が必要となります。
その分安価に利用することが可能です。
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とDaaSの違いとは
3種類のDaaSについて説明しましたが、そもそもこれまであったVDIとDaaSとの違いはなんでしょうか。
DaaSはVDIとクラウドコンピューティングの組み合わせ
実はDaaS自体はそれほど新しい技術ではありません。基本的にはVDIをクラウド上で運用するものですし、VDI自体も20年以上前から存在するシンクライアント端末に似たような動作をします。
シンクライアント端末は、端末内にハードディスクなどの記憶装置を持たず、基本的にはCPUとメモリ、ディスプレイとキーボード、マウスのみで構成されています。
OSやアプリケーションなどはサーバー側にインストールされているものをネットワーク経由で呼び出し、表示する形です。
その際に「ネットワークブート型」と「画面転送型」の2種類がありますが、VDIではサーバー上に用意された画面を端末側で表示する「画面転送型」です。Windowsのリモートデスクトップと同じ考え方です。
今後は5Gなどの通信速度向上が見込まれることから、「画面転送型」の仮想デスクトップサービスが伸びていくと考えられます。
DaaSとVDIの特徴と共通点
先にも説明したとおり、DaaSとVDIは共通している部分が多いです。ほんのわずかな違いが存在するのみと言っても良いでしょう。
ここでは共通する特徴とそれぞれの特徴について解説してみましょう。
DaaSとVDIの共通点
基本的にはサーバー側に用意されたデスクトップ環境を、画面転送型でサーバーから端末に送ってもらい、端末ではそれを表示するだけというのが、共通点です。
もう少しいえば、VDIにはオンプレミス型で自社内に構築するものと、クラウド型で社外に構築するものの2種類があり、前者をVDI、後者をDaaSと呼んでいると考えればよいでしょう。
DaaSの特徴
DaaSの特徴はサーバーにクラウドを利用する点でしょう。したがって、特徴もクラウドが持っている特徴を引き継いでいます。
初期投資が不要
何と言っても初期投資が不要な点です。
クラウドサーバーを利用すると、オンプレミス型と異なり、サーバーの購入費用などの初期投資は不要ですから、導入もスピーディーに行え、費用面も抑えられます。
特にサーバーの設置場所や必要なスペックの割り出しなど、最初に考えるべきところを省略できるのがメリットです。
スケーラビリティに優れている
次に、利用者が増えるなど運用規模が大きくなったときに、すぐに対応が可能です。
スケーラビリティに優れているという言い方ができます。
そのため、まずは試験導入や必要な部門だけで使いはじめ、その後に全社員に展開するといった、スモールスタートを行うのに適しています。
必要なときに必要な分だけを契約できるのがDaaSの魅力です。
運用コストが抑えられる
そして運用コストが抑えられる点もクラウドを利用しているDaaSならではの利点です。
オンプレミス型のVDIを導入するとどうしてもサーバーの保守料金やデータセンターのラック使用料などがかかります。
しかし、DaaSではこのような費用が不要となりますので、運用コストは必要な導入数に比例することになります。
ベンダーのサービス仕様に左右される
一方、ベンダーが提供する「パブリッククラウドDaaS」などは、カスタマイズ性が低くなります。
基本的にはサービス仕様そのままでの利用が前提になります。
もちろん「プライベートクラウドDaaS」の様に、サーバー仕様を自社向けにカスタマイズできる場合もあります。
しかし、その分コストが高くなりますので、カスタマイズ性とコストはトレードオフの関係になっています。
遅延が発生する場合がある
そしてもう一つのデメリットは、クラウドを利用しているが故に、ネットワーク自体の混み具合や負荷、ルーティングの経路によって、通信の遅延が発生する場合があります。
可能性は限りなく低いのですが、負荷が大きくなりすぎるとネットワーク切断の可能性ももちろんあります。
VDIの特徴
それではDaaSに対するVDIの特徴はなんでしょう。基本的にはDaaSの逆だと考えれば良いでしょう。
初期投資の費用が必要
まず、自社でVDI環境を構築するためのサーバーを用意する必要があります。
当然のことながら将来を見越しての計画も必要になりますから、外部のデータセンターに設置するのか社内のサーバールームに設置するのかを始め、決めなければいけないことも多くなります。
また、利用する部署を増やすたびにハードウェアの増強も必要となります。このようにDaaSとは異なり、VDIには初期投資の費用が必要になるのです。
柔軟なカスタマイズが可能
もちろん全てを自社で用意するわけですから、インフラの管理やデスクトップ環境のカスタマイズなどは柔軟に対応できます。
部署毎の要望も対応可能ですので、様々な要望が社内で出てくるような業態であれば利用する価値は高いと思います。
運用コストがかかる
その代わりに、メンテナンスやセキュリティの対応といった運用コストがかかります。
セキュリティを保つためには自社で対応する必要があるわけですから、運用コストはクラウドベースのDaaSに比べるとかかってしまいます。
またオンプレミスサーバーのメンテナンス要員も必要になりますので、どの程度の規模で運用するのかにも依りますが、運用コストについてもそれなりに覚悟する必要があります。
代表的なDaaS・VDIサービス
それではDaaSサービスやVDIサービスを展開している代表的なベンダーを紹介しましょう。
Amazon WorkSpaces
出典元:Amazon WorkSpaces(セキュアな仮想デスクトップ(VDI)サービス )| AWS
まずはAmazonです。同社はAWS(Amazon Web Service)のようなクラウドサービスを展開していますので、このクラウド環境にVDIを構築して提供しているのが「Amazon WorkSpaces」です。
デスクトップとして提供できるOSはWindows 7、Windows 10、または Amazon Linux 2デスクトップです。
Windows 7はいつまで提供されるのかはわかりませんが、もし2020年1月以降も提供されるのであれば、テスト環境として利用することも可能です。
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Citrix WorkSpace
出典元:Citrix Workspace – デジタルワークスペースソリューション – シトリックス
仮想環境構築のXenを展開していたCitrixによるDaaSサービスです。クラウドで提供するため、数時間で利用開始ができる点がメリットであるとうたっています。
仮想環境を構築するソフトウェアをベースにしているDaaSサービスですので、セキュリティ的にも信用できます。
また、この後に紹介する別のサービスでも、同社のものがベースとして使われていたりします。
VMware Horizon
出典元:Horizon 7 | 仮想デスクトップ インフラストラクチャ | VDI | VMware
3つ目は仮想環境構築のベンダーとして有名なVMwareが提供するサービスです。
「VMware Horizon」は、クラウドを利用するDaaSS型のサービスと、オンプレミス環境にサービスを構築して提供するVDIの両方を提供しています。どちらを利用するかは、企業での活用方法や導入目的と合わせることができます。
またDaaSの場合、インフラ部分の提供がサービスに含まれますので、強固なセキュリティを実現しつつ初期費用を抑えることができます。
Windows Virtual Desktop
出典元:Windows Virtual Desktop | Microsoft Azure
4つ目はMicrosoftが展開するDaaSサービスです。Microsoftが展開しているAzureサーバー上にWindows10やWindows7、Windows Server2012以降を構築できます。
これにより、期限が切れたWindows7を仮想環境(仮想デスクトップ向けのセキュリティ更新プログラムがあります)で使うことができるなどのメリットがあります。
特にWindows系OSについては、開発・提供をしている会社のものですので、安定度も含めて相性は抜群です。
ソフトバンクのデスクトップサービス
出典元:デスクトップサービス | DaaS(仮想デスクトップ) | ソフトバンク
5つ目はソフトバンクが提供しているDaaSサービスです。iPadなどのタブレットからでもデスクトップ環境を利用できるようになります。
また現在利用中のPC端末をシンクライアント端末化するUSB型シンクライアントを使い、仮想デスクトップを利用することもできます。
ワークプレイス-LCMサービス
出典元:FUJITSU Managed Infrastructure Service ワークプレイス-LCMサービス – 富士通
最後は富士通が提供しているDaaSサービス「V-DaaS」です。富士通のデータセンターでVMwareベースの環境を構築しています。
また「VCC」ではCitrixの「XenApp」や「Xen Desktop」でDaaS環境を構築・提供しています。
シンクライアント端末も提供していますから、社内システムを丸ごと置き換える時には、トータルでサポートしてもらえます。
まとめ
どうしても古い環境を捨てるわけにはいかない場合もあるでしょう。
しかし、働き方の変化に伴い、情報漏洩を防ぐための手段としても仮想デスクトップを利用するというのは、今後ますます重要な選択肢として多くの企業に取り入れられると考えられます。
その際に、自社内にオンプレミス型のVDI環境を構築するのか、それともクラウドベースのDaaSとして活用するのかは、企業の運用ポリシーや初期費用・運用コストへの考え方によって変わるでしょう。
それに合わせたサービスや、サービスを提供している企業も複数ありますので、まずは自分たちが必要としている要件をまとめ、そこから最適なものを選択してみてください。
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