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IoTで注目を集めるビーコン(Beacon)とは?GPSとの違いや活用事例を解説

更新: 2019.10.03

あなたの携帯に搭載されているかもしれない「ビーコン」について知っていますか。

あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、着実に私たちの生活に浸透しているものです。そして近年、モノとインターネットをつなぐIoTの仕組みにより、ビーコンにさらなる注目が集まっています。

この記事では、「ビーコン」の仕組みや活用事例、GPSとの違いなどをわかりやすく解説しています。

ビーコンとは

ビーコンとは、Bluetooth信号を発信し、端末の位置を知らせる発信機のことです。

ビーコンという言葉自体は古くからあり、もともと狼煙(のろし)や灯台など、何かを誘導し、信号を送るものを指していました。車に取りつけて、道の渋滞状況を分かりやすくするビーコンや、雪山で雪崩に埋まっても位置を特定できる雪崩ビーコンなど様々な端末が存在していました。

現在ではやや意味合いが変わり、Bluetoothを使った情報収集・発信サービスを意味することが多くなりました。

ビーコンが注目を集める理由

ビーコンが近年ますます注目を集めるようになった理由は、大きくふたつ。無線通信技術「BLE」の向上とスマートフォンの台頭です。

BLE(Bluetooth Low Energ)とは

無線PAN技術である Bluetooth の一種であり、IoTを視野に行われたアップデートBluetoothバージョン 4.0 で新たに追加された低消費電力の通信モードのことです。

従来のBluetoothは(Bluetoothクラシックとも呼ばれます)、消費電力がとても大きいという側面がありました。これは最大通信速度24Mbpsと大容量データ転送を想定していたためであり、多数の受信機を配置するような用途には向かないものでした。

一方、BLEは諸費電力が非常に少なく、安価となっています。そしてBLEを活用した省電力通信が可能になったことにより、数センチ~数10センチ単位のピンポイントで端末の位置情報を特定できるようになったのです。

受信機を細かい間隔で配置しビーコン端末が発する信号を受信することで、ユーザーやモノの位置を正確に把握することが可能です。この技術により、ビーコンがマーケティングやIoTなどあらゆる物事に活用されるようになりました。

スマートフォンの台頭

従来のビーコンは遭難者救助や高齢者等の見守りサービスに活用されていましたが、広く普及しているというわけではありませんでした。

なぜならビーコンを利用するためには専用の端末を所持していなければなりませんでした。特定の目的がなければ、わざわざ端末を持ち運ぶこともないため、日常的に使われているものではなかったのです。

しかしこの問題は、スマートフォンがビーコン端末として機能するようになったことで解決しました。

2013年6月リリースのiOS 7で搭載された通信プロトコル「iBeacon」により、専用端末がなくてもiPhoneやiPadがビーコンとして機能するようになったのです。 

スマートフォンで電波が受信できるようになり、ニューヨークの百貨店Macy’sが顧客向けサービスに取り入れました。またPayPalはPOS端末のビーコンを使ったスマホ決済を開始しました。

日本でも2014年12月にビーコン技術を使ったナビゲーションアプリ「東京駅構内ナビ」が登場しています。

iBeacon(アイビーコン)

iBeaconは、iOS7から標準搭載されたBLEを活用した技術のこと。iOS7以上で、Bluetoothをオンにしている状態であればすべての端末で機能します。

iBeaconの仕組みは、発信側のビーコン端末から「アドバタイズメント・パケット」と呼ばれる、あらかじめ設定された固有のID情報を発信します。IDの情報は、proximityUUID/Major/Minorの3種類の識別子で構成されており、受信側の端末(iPhone)に発信側のビーコン端末と同じ識別子が含まれていると、受信側の端末に様々な通知を送ることができます。

この技術は店舗のマーケティングなどに活用されています。発信側(店舗側)は、ビーコン端末の対応アプリと連動させることで、さまざまなマーケティング活動が展開可能になるのです。

iBeaconが多くのマーケティング担当者の視線を集めたきっかけがこちらの動画です。エスティモート社(米国)が、2013年9月10日に公開したもので、道行くユーザーのiPhoneに商品やセール情報をプッシュ通知したり、店舗側でユーザーの動きを分析するなど、具体的なiBeaconの活用方法が紹介されています。

Eddystone

iBeaconの出現から2年ほど遅れて、Androidはビーコンプロトコル「Eddystone」を発表しました。マルチプラットフォーム対応に加え、「端末のChromeブラウザに直接URLを送信する」「端末のバッテリー電圧、温度、広告回数や起動時間を取得」などの独自の機能を搭載しています。

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ビーコンにできること

位置情報を把握する

Bluetoothがオンになっている端末の位置情報を正確に把握することができます。これは建物の中の位置や動きなども詳細にわかるため、店舗に訪れた顧客がどのような動きを辿ったのちにレジに向かうのか・もしくは何も買わずに退店するのか、などを調査することができます。

これにより、「商品は適切に置かれているか」「道に迷うような案内表示になっていないか」などを分析し、改善につなげることができます。

スマホアプリへのプッシュ通知

位置情報の取得を応用することで、専用のアプリが入っていたり事前登録をしている端末に通知を送ることができます。

こちらも店舗マーケティングに活用されています。店舗内にいる顧客のアプリにだけクーポンを配布したり、タイムセールの案内を送ることが可能になるのです。

従来のクーポン配布や案内などは、メルマガなどで一斉に送付せざるを得ませんでした。そのため、顧客側も自分に関係のない内容のものや、時間や場所が合わないものばかりが送られてくることになっていました。次第にメールを確認しなくなる人も多かったことでしょう。

性別や年齢などの情報を事前に登録しておけば、対象に合わせた情報だけを選択して送信することも可能となります。

位置情報と通知を組み合わせたマーケティング

上記ふたつを組み合わせることによって、店舗付近にいる顧客に適切かつ効果的なマーケティングを行うことができるようになります。

特にLINEが提供する「LINE Beacon」はユニクロやソフトバンク、キリンビバレッジなど様々な企業が活用しています。

ビーコンの活用事例

ここからは活用事例を通して、ビーコンとはどのようなものなのかを理解していきましょう。

tepcotta

東京電力と府中市、株式会社ottaが共同で行うサービス「tepcotta」はIoT技術を活用した子供や高齢者の見守りサービスです。

これは、ビーコンを搭載したキーホルダーなどの専用携帯端末を持った高齢者や子どもの位置情報や履歴を、家族や保護者などがスマホアプリやPCで把握できるというもの。

あらかじめ登録した基地局付近を高齢者や子どもが通過した場合、メールやアプリの通知を送ることも可能です。

また2017年9月より、タクシーに搭載したタブレットがこの基地局の役割を果たすシステムがリリースされています。動く基地局としてますます地域の安全が守られる仕組みができつつあるようです。

「&HAND」プロジェクト

「&HAND」プロジェクトは身体・精神的な不安や困難を抱えた人のSOSを周囲に知らせ、具体的なサポートにつなげるというものです。

視覚障害者や妊婦の方など、手助けを必要とする人がSOSを発信すると、その位置情報から周囲の人のLINE にメッセージが届きます。チャットボットなどを通じて手助けを必要とする人の状況が分かり、具体的な行動を起こすことができるのです。

このように、ビーコンは周囲に存在する人やモノへ無作為に情報発信することも可能なのです。

図書館・美術館

ビーコンを活用した図書の貸し出しを試験的に行なっている図書館があります。高知県立図書館では、自分が探している本が、ビーコン機能により、大体の位置が把握できるようになっています。敷地面積が広く蔵書数も多い図書館ほど利用者は快適に図書館を活用できるようになるでしょう。

図書館に限らず博物館や美術館でもビーコンは積極的に活用されています。東京都現代美術館で開催された「ガブリエル・オロスコ展-内なる複数のサイクル」展ではビーコンを利用し、作品に近づくとその作品の情報を受け取って説明してくれるなどの取り組みが行われていました。

LINE Beacon

記事前半で解説した「位置情報と通知を組み合わせたマーケティング」を積極的に行っているのがLINEです。

LINEが搭載する「LINE Beacon」は受信端末が無線圏内に入ると、位置情報を利用してクーポンや商品情報がLINE経由で通知されるという機能です。様々な企業がクーポンや商品情報をLINEを経由してユーザーに届けています。

ソフトバンク

ソフトバンクは渋谷のハチ公前広場にある店舗の屋外広告に近づくと、LINEを経由して受信した人のみが見られる限定動画をトライアルで配信しました。

ユニクロ

ユニクロも一部店舗でビーコンを活用しています。

店舗付近に近づくと、LINEにクーポンやチラシなどを配布します。店舗へ足を運んでもらう狙いと、LINEのお友達登録を促す狙いがあります。

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ビーコンとGPSとの違い

「位置情報を把握する」というとGPSを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。ビーコンとGPSは同じようで、全く異なる技術です。

そもそもビーコンは信号を発信する発信機そのもののことを指します。そして、GPSは人工衛星から発する電波を活用して、位置情報を把握する仕組みのことです。発信源が異なるということがわかるでしょう。

GPSは建物の中や地下だと電波が遮断されて受信できなくなってしまうデメリットがあります。一方で、ビーコンは端末のBluetoothがオンになっている限り(かつ専用アプリがインストールされている)、建物の中や地下でも電波を受信することができるのです。

ビーコンはある程度の距離内しか受信することができません。しかしGPSは人工衛星が発信源のため、広範囲で受信を行うことができるのです。

GPSの活用事例

携帯電話

携帯電話には一台にひとつGPSが搭載されています。地図アプリでのナビゲーション利用や、携帯を紛失した際の追跡・位置情報の把握はこのGPSが搭載されているからこそできることです。

カーナビ

カーナビも衛星からの電波を受信して位置情報を取得し、最短ルートを分析しています。GPSは建物内やトンネルでは電波を受信しづらいので一時的に利用できなくなることもあります。

ビーコンの最大のメリットは導入コストの低さ

価格は1台数100円~数1,000円程度

店舗へのビーコンの導入を後押しする要因のひとつが「導入の手軽さ」にあります。

アプリックスが提供する受信機「MyBeacon® Pro 汎用型/近接域特化型」の場合、単3乾電池2本で動作し、省電力で駆動します。

Amazon等で購入でき、価格は1台数100円~数1,000円程度のものも多く存在します。大企業だけでなくとも、比較的手軽に導入することができると言えるでしょう。

仮想ビーコンも登場

電池切れや盗難リスクを解決する方法として「仮想ビーコン」技術があります。米スタートアップMist Systemsは、仮想ビーコン機能を備えた大規模無線LANシステムIntelligent Wireless Cloudを提供しており、1台で8つまでの仮想ビーコンを生成できます。

クラウド上の管理システムから数や配置を操作できるため、管理コストをさらに下げることができるでしょう。 

今後ますます活躍の場が広がることが期待される

近年、街中で無線イヤフォンをつけている人を多く見かけるようになりました。AppleやBOSEなど無線イヤフォンの開発販売を行っている企業も多くあります。

無線イヤフォンが一般に流通するようになったきっかけのひとつに「iPhoneのイヤフォンジャックの廃止」があります。

iPhone7以降のモデルには通常のイヤフォンジャックは存在していません。理由としてはiPhoneの限られたスペースを最大限に活用するため、バッテリー容量の向上などを実現するためであると言われています。

このイヤフォンジャックの廃止により、常にBluetoothがオンの状態にする人が多くなりました。

Bluetoothが常時オンになることが人々の間で当たり前のこととなれば、ますますビーコンの活躍の幅が広がることでしょう。 

ビーコンについて学べる書籍

ビーコンアプリの作り方について解説している書籍です。SwiftやJavaを使って、位置情報アプリや地図アプリを実際に作っていくことができます。

こちらもプログラミングを通してビーコンの仕組みを学ぶことができます。BLEの理解に欠かせないGAP(汎用アクセス・プロファイル)とGATT(汎用アトリビュート・プロファイル)についても丁寧に解説されています。

ビーコンアプリ開発に必要な知識

Swift

SwiftはiOSで動作するアプリケーションの開発に用いられるプログラミング言語です。xCodeと呼ばれるソフトを用いることで直感的にアプリ開発を行うことができます。

関連記事:【Swift 入門】絶対つまづかないSwiftプログラミング

Java

JavaはAndroidアプリの開発などに用いられるプログラミング言語です。多くの開発現場で使われていたり、OSに依存しないという特徴があります。

さいごに

省電力での稼働や導入コストの低さから、ビーコンは今後ますます私たちの身近なものとなっていくでしょう。

マーケティングや販促なども、ビーコンを活用し、顧客一人ひとりに合わせた施策を行っていくことが主流になっていくかもしれません。

ビーコンを活用したマーケティングによるクーポンや最新情報を手に入れたい場合は、Bluetoothをオンにするのを忘れないようにしましょう。

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