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Webが苦手だった女性デザイナーが未経験から50サイトをトレースしてフリーランスに 独立成功の秘訣に迫る

更新: 2024.07.29

フリーランスデザイナーの兼松江梨(かねまつ えり)さん。もともと設計事務所でグラフィックデザインなどを手がけていましたが、Webには弱く、むしろ「ITは苦手」だったそう。

しかし、デザイン業界では年々、Webデザインの案件が増加。デザイナーにWeb系の案件を頼みたいクライアントはとても増えています。

そこで兼松さんが取り組んだのは、50個のWebサイトのトレースでした。

どこにどんなパーツが置かれているのか。フォントや画像のサイズはどれくらいがいいのか。そもそもこのページは「何を目立たせるためにどんな目的で作られたものなのか」。それらを考えながら、Webデザインのノウハウを体に染み込ませていきました。

今ではグラフィックデザインとWebデザインを行うフリーランスデザイナーとして、活躍中。ちなみに仕事時間は、会社員時代に比べて3分の1。今は仕事を「キツイ」と思うことはなくなったそう。

フリーランスとしての独立成功の秘訣と学習方法を聞いてみました!

Webが苦手なWebデザイナーはどうやってスキルを身につけたのか

――兼松さんはいま、フリーランスでデザイナーとして業務をしているんですよね。

はい。フリーランスとして、複数の企業でWebや印刷物のデザインとディレクションをしています。

――元々、前職でもデザインの仕事をしていたのでしょうか?

美術大学を出たあと、設計事務所に1年在籍。そのあとベンチャー企業でWebデザインを3年間やりました。その次の会社は企画系の企業に転職して、ディレクションの仕事が多くなり、デザインの仕事にも役立つ経験が積めました。

合計では、5年間で3つの企業に在籍しました。

 

――設計からWebデザインへの転身は珍しいですね!

そうかもしれないですね。

ただ、私がいた設計事務所は「設計」だけでなく、名刺から店の印刷物まですべてトータルでデザインして提供するという会社だったんです。だから、設計事務所に入ってからはずっとグラフィックデザインをやっていて、むしろCAD(設計支援ツール)はほとんど使っていません。

――ちなみに兼松さんは、プログラミングはできますか?

全然できないです(笑)

そもそも、私はあまりWebが得意じゃなかったんですよ。

――でも、今ではフリーのWebデザイナーとして活躍されてますよね。

デザインの仕事をこなす中で、少しずつHTMLやCSSの知識を身につけていきました。いまもHTMLやCSSが書けるわけではないのですが「どのようにデザインすればエンジニアさんが困らないか」は理解できるようになりました。

やっぱり企業で仕事をしている時も、フリーになってからも「Webデザイナー」へのニーズの大きさは強く感じます。それだけ求めている人が多いのが事実です。実際にデザインの仕事をしていると「やらざるをえない」状況になることも多いです。

やらざるをえない環境のパワーって本当に大きいですよ。Webが苦手だった私でもひたすらやっていくうちにできるようになりました。

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「家で仕事。外出は週に2日。打ち合わせは短時間で終わり」フリーランスになって激変した人生

――フリーランスになったきっかけは何だったのでしょうか。

雇われる働き方ではない仕事をしたかったんです。

――フリーランスになるのって不安じゃないですか?

もちろん!本当に不安でしたよ。「食べていけないんじゃないか」って思ってました。

でも、長年独立したかったので、強い気持ちと覚悟はあったので、やるぞ!という気持ちでした。もし本当にうまくいかなくなったら、また就職活動すればいいと思うと、前向きな気持ちの方が大きかったです。

――フリーになるにあたって、新しく導入したソフトなどはありますか?

会計ソフトを新しく使い始めましたね。

Taxnoteという買い切りのソフトウェアを導入しました。数学は苦手で、全然できないんですけど会計は苦じゃないです。細かい色んな数字を眺めてるのが楽しいです。

――個人事業主の届け出などの手続きはどうしましたか?

クライアントの中に行政書士さんがいるので、その方に相談して、開業届の書き方などを教わりました。一人では何も分からなかったので、とても助かりました。

――フリーランスになって、最初の仕事はどのように見つけたのでしょう?

会社員時代に一緒に働いていた仲間が、私よりも先に独立していたんですよ。そこで私が独立することを告げたら、仕事を発注してくれました。その仕事のおかげで、フリーになったけど仕事が無い……という状態にはならずに済みました。

――フリーになって仕事時間は長くなりました?それとも短くなりましたか?

すごく短くなりました。はっきり言って、3分の1以下です。

労働時間が短いことって、あらゆる意味で本当に大事だと思うんです。実際、私はフリーになってより心身共に健康になりました!

――仕事はどこでやっていますか?

家ですね。家の大きなディスプレイで作業をすることに慣れたので、外出先での作業はだんだん出来なくなりつつあります(笑)。

なので、お客様と会う時だけ外出して、後は家で作業することが多いですね。外出は週に2日、多くて3日です。それもフルに1日出るわけではなくて、数時間打ち合わせしたら終わりです。

――仕事の進め方はどのようにしていますか?「月曜日はこのクライアント。火曜日はこのクライアント」というように曜日で区切っているのでしょうか。

いえ。一社にデザイン案の確認依頼のメールを送って、返信を待っている間に別のクライアントの仕事もして……というように常に複数タスクを回すことが多いです。

業務時間は短いんですけど、業務している時間の生産性や効率はものすごく高めることを意識してます。

タスク処理能力はフリーになったことで、さらに自信がついたスキルの1つですね。

――フリーランスになるとスケジューリングもクライアントとの連絡もすべて自分で行う必要があります。タスク管理がうまくできない人も多いと思うのですが。

私はそうした細々としたことが好きなので、特別なことをあまり気にせずとも自然と管理できてますね。特にToDoアプリを使っているわけでもなく、スケジュール管理は紙の手帳でやってます。手帳が好きなんですよね。

コミュニケーションツールは基本的にはFacebook Messengerを使ってます。もちろん、お客様から「メールでお願いします」というように指定があったら、合わせてます。

フリーランスになる一番のメリットは「働く時間の自由度」

――フリーランスになって感じた一番のメリットはなんですか?

自分で時間をコントロールできることです。会社員だった時は自分で案件のボリュームや納期を調整出来なかったので、人生ほとんどの時間は働いていました。

好きな時に休めるし、好きな時に働けるのは本当に楽しいです。私は元々仕事が好きなんですけど、働く時間の自由度ができたことでより楽しくなりました。

仕事が好きで、楽しめないと、フリーランスになって独立することは難しいんじゃないかなと思います。好きな仕事で、かつ、もっとこういう風に仕事がしたいという気持ちがあるからこそ、フリーになる意味があるんじゃないかなと思います。

もう1つは、頑張ったら頑張った分だけ、お金が入ってくることです。

会社員だった時は、その月どんなに忙しくて、どんなに寝てなくても入ってくるお金は一緒でした。逆にどんなに暇でもお金は入ってきますけど、それって私にとってはやりがいがなく感じました。

自分が本気で頑張って、それに見合ったお金を支払ってもらい、そのお金でまた新しいことにチャレンジしたり、好きなことをする。

このサイクルが、私にとっては一番気持ちいいんです。

――「フリーランス」や「副業」のように、会社に雇われるだけではないキャリアを目指す人は多いです。フリーランスや副業で一番大事なことはなんだと思いますか?

一生続けても嫌じゃない仕事をすべきです。

――というと?

好きじゃないことをやっても続かないです。私の場合は、たまたま「一生続けても嫌じゃないこと」がデザインでした。好きなことを仕事にするってことです。

最初は趣味から始めるのでもいいので、まずは好きなことをやってみて、それがどう仕事につながるかを考えるのがベストだと思います。

フリーランスなるなら「独立を焦らない」 イレギュラー案件を乗り切る力をつけるには?

――独立する際、絶対に気をつけておいた方がいいことは何ですか?

私は、一番最初に細かく業務の対価を設定しますね。この作業をやったら幾ら、ここまで仕事をしたら幾らとマイルストーンを決めます。

「この作業って幾らもらえるのかわからないけど、とりあえずやっておこう」という状態には絶対にしないです。デザインって、完成するまでどんなものが納品されるかわからなくて、お客さんは不安だと思うんですよ。だからお金のことまで心配になるような案件の進め方はしないように気をつけています。これは自分のためにもなっています。

フリーランスとしての私のルールは、絶対にお客様を不安にさせないということなんです。

――初心者や未経験者が将来的にフリーランスとして、デザインの仕事をするためには最低何年程度のキャリアが必要だと思いますか?

デザイナーとして仕事を始めてから、最低でも2年は企業で経験を積むといいかなと思います。

あまり焦って独立するよりはじっくり経験を積んだ方がいいと私は思いますし、闇雲にフリーランスを勧めることは出来ないです。

――それは何故でしょう。

やっぱりフリーになると、イレギュラーなトラブルにも絶対遭遇するので。そういう時に、デザイナーとして経験が浅いと「どうしたらいいんだろう」とパニックになってしまうと思います。そして、もしちゃんと納品できなければお客様とそれっきりになってしまう事もありえます。

企業で経験を積むと、そうしたトラブルの対応策も学べますし、独立してからも「前にもこんなことあったな」と冷静に対応できます。

こういう時にはこうすればいいという引き出しは、沢山持っておいて損はないです。技術的なスキルだけであれば、独立してからでも何とかなります。

まず第一に必要なのは、お客様とのやり取りやイレギュラーな案件への「対応力」や「引き出し」ですね。

Webデザインを未経験から身につけるなら「Webサイトのトレースを50サイトやろう」

――初心者・未経験者が独立までの「2年間」を濃密なものにするにはどうしたらいいでしょう。

数をこなすことです。

特にWebデザインに関して言うなら、ひたすら既存のWebサイトをトレースしてみるのがおすすめです。私はWebデザインを始めた頃、最初の1ヶ月から2ヶ月で50サイトほどトレースしました。

これだけ数をこなすと、サイトのボタンの配置やフォントサイズの「良いとされる基準」が分かってくるんですよ。大体こんな感じのデザインにすると見やすいんだなというのが感覚的につかめます。

ちなみに私がトレースした時はIllustratorでやったんですけど、Photoshopでもできます。自分がメインで使っていきたいツールで練習してみるのがオススメです!

――初心者でもトレースしやすいサイトって、どんなサイトでしょうか?

2つあります。

1つは何らかのランディングページ。

ランディングページって、文字の大きさやグラフィックにメリハリが効いていて「ある特定の商品を買ってほしい」という狙いが分かりやすく表現されているんです。

トレースしながら「このページは一体、何を目立たせたくてこういうレイアウトにしているんだろう」「この配置の狙いは何だろう」というのを考えるのは、本当に勉強になります。

もう1つは自分が眺め慣れているサイトです。普段何気なく見ているサイトが、こんな風につくられていたんだなと、実際につくってみると様々な発見があると思います。

 

――最後にこれからフリーランスを目指す、初心者や未経験者の方にアドバイスをお願いします。

「自分の仕事」を、自分で安売りすることだけはしないでください。

もちろん、本当に一番最初に仕事を取ってくるときには、多少単価が安くても引き受けることは大事だと思います。ですが、何でもかんでも安請け負いしてしまうと、あとから自分が苦しむことになります。また、デザインの仕事の価値を下げることにもなります。自分が与える成果や喜んでもらえた分、適切な対価をもらうのは大切です。自分が働きやすい環境を自分で作る工夫をしていくことが、フリーランスでは大切だと私は思っています。

また、フリーランスで良い仕事をし続けるためには、一緒に仕事をする相手を慎重に選ぶこともなにより大事です。

仕事相手が信頼できる人物かどうか、見極めましょう。「好きになれない相手」とは仕事をせず「好きな相手」と一緒に働くのが一番ですよ!

テックキャンプ フリーランス

――兼松さん、ありがとうございました!!

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この記事を書いた人

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音楽ライターとしてエイベックス、ビクター、トイズファクトリー等に所属するアーティストの取材を担当。2016年に開催された『Bjork Digital』の取材経験から、VR×音楽に関心を抱く。2017年よりテクノロジーに関するライティングを開始し、テックキャンプ ブログにジョイン。猫とウサギを飼っています。

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