アップル社創業者のスティーブ・ジョブズ。
2015年には映画「トレインスポッティング」で知られる映画監督ダニー・ボイルによって、その半生が実写映画化。日本でも漫画家のヤマザキマリが、漫画「スティーブ・ジョブズ」を発表。
56歳の若さで亡くなったスティーブ・ジョブズは、7年を経てもなお世界中から非常に大きなリスペクトを受け続けています。そんなスティーブ・ジョブズは2005年6月12日、アメリカのスタンフォード大学の卒業式に同席。壇上でスピーチを行いました。
青年時代には大学を中退、ヒッピー文化に陶酔していたスティーブ・ジョブズ。スタンフォード大での彼のスピーチは、様々なユーモアやエピソード、そして洞察に満ちたものでした。
「ハングリーであれ。愚かであれ(Stay hungry,Stay foolish)」のフレーズで知られることとなった、2005年のジョブズのスピーチ。
その一部をご紹介します。
卒業・入学シーズンや転職の時期には、自分のキャリアについて考え込むことも増えるでしょう。もしも先が見えず、暗い気持ちになったり落ち込む時は「点と点を繋ぐ」というジョブズの言葉について考えてみてください。
撮影:246-You
この記事の目次
「ハングリーであれ。愚かであれ」ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチ
今回の記事では、スタンフォード大学の公式ウェブサイトの記事「’You’ve got to find what you love,’ Jobs says」を参照、一部を引用します。カッコ内の和文は拙訳です。
点と点とつなぐということ(Connecting the dots)
The first story is about connecting the dots. I dropped out of Reed College after the first 6 months, but then stayed around as a drop-in for another 18 months or so before I really quit.(最初のストーリーは「点と点をつなぐ」ことについてです。私はリード大学を最初の6ヶ月でドロップアウトしました。ただ本当に大学を去るまでは、18ヶ月に渡って学校に残り続けました)
And much of what I stumbled into by following my curiosity and intuition turned out to be priceless later on. Let me give you one example: Reed College at that time offered perhaps the best calligraphy instruction in the country. Throughout the campus every poster, every label on every drawer, was beautifully hand calligraphed.(好奇心と直感に従うがままに、遭遇した数々のことはのちにかけがえのないものとなりました。その一つの例を紹介しましょう。当時のリード大学は、おそらく国内で最高峰のカリグラフィ講座を提供していました。キャンパス全体に貼られている全てのポスター、全ての引き出しのラベルは美しい手書きの文字で書かれていたのです)
入学からわずか半年で大学を辞めたジョブズ。
その理由について、ジョブズは「スタンフォード大並みに学費の高い大学に入ったために、労働者階級の親の貯金を全て学費につぎ込むことになってしまった。入学から6ヶ月後には、そのことに何も意味を見出せなくなってしまった」と振り返ります。
ジョブズは、関心が持てない授業を受け続けることの意義を見失っていたのです。 その後の当てもなく、わずか6ヶ月で大学を辞めるのは無謀な決断です。
ただ実際には、この無謀な決断がスティーブ・ジョブズの人生を大きく前進させます。
退学後も学校に居座り続けたジョブズは、カリグラフィのクラスに出席。その美しい手書き文字に魅了されます。
「興味のない授業を受け、単位を取らなくてはいけない」という義務から解放されたジョブズは、カリグラフィに熱中。そこで得た知識は、後にアップルがクリエイターから愛される理由となる「美しいフォント」に反映されることとなります。
愛と喪失(love and loss)
Your work is going to fill a large part of your life, and the only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work. And the only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking. Don’t settle.(仕事とは、あなたの人生の大部分を占めるものです。心の底から充足感を得るたった一つの方法は、素晴らしい仕事と信じることをやることです。素晴らしいと信じる仕事をするには、あなたが愛することをやり続けるしかありません。もしあなたがその対象をまだ見つけていないなら、探し続けることです。決して立ち止まらずに)
アップルの共同創業者、スティーブ・ウォズニアックと20歳で事業を立ち上げたジョブズ。
事業は最初のうちは順調でしたが、次第に会社やプロダクトの方針について意見の相違が噴出。1984年にはアップルは創業以来初となる赤字を計上。1983年にアップルの社長に就任したジョン・スカリーによって、スティーブ・ジョブズはアップルを追われます。
ジョブズは、一度は深く絶望。1ヶ月はただ呆然としていたそうです。
しかし、その後ゆっくりと気持ちを立て直し、新会社「NeXT」を立ち上げ。高等教育やビジネス市場向けのワークステーションの開発に取り組みます。またルーカスフィルムのコンピュータ関連部門を買収。「ピクサー」と名付けた新会社のCEOに就任します。
ジョブズを追い出したアップルには、その後10年にも渡る冬の時代が到来します。
一方、ジョブズが立ち上げたNeXTはまずまずの成功を収め、ピクサーもディズニーにCGアニメーションによる映画作成の企画を売り込み。3本の契約を取り付けることに成功しています。
ここで契約された作品は、後の「トイ・ストーリー」です。
ジョブズはアップルに非常勤顧問として復帰。2000年に再びCEOに就任しました。アップルを追い出されたジョブズが取り組んだNeXTの基盤技術は、後のMac OS Xに引き継がれます。
深く情熱を注いだ企業と製品を、80年代に一度は失ったジョブズ。しかしスティーブ・ジョブズは、NeXTとピクサーで「最も創造的な時期」と振り返る時間を過ごしました。この時期のジョブズはプライベートでも結婚と長男の誕生を経験しています。
ジョブズがCEOに復帰してからの、アップルの快進撃は言うまでもありません。「素晴らしい仕事と信じることをやること」で、ジョブズは人生の試練を乗り越えたのです。
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時間は限られている。他者の人生を生き、時間を無駄にするな(don’t waste it living someone else’s life.)
And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.(何よりも大切なのは、自身の心と勇気に従う勇気を持つことです。あなたの心と勇気は、自分がどういうことをしたいのかを本当はもう分かっているのです。それ以外のことは全て後回しで構いません)
2003年に膵臓癌と診断されたスティーブ・ジョブズ。
一度は医師に身辺整理が必要と告げられ、ジョブズは大きく死に近づきます。
彼が、その時に強く意識したのが「時間は限られている」ということです。その後、幸いにも治療に成功。療養後、業務に復帰し、登壇したのが2005年のスタンフォード大の卒業式スピーチでした。
2005年以降のジョブズの人生にも、病は暗い影を落としました。
2008年の第二世代iPhoneの発表の場に、大きく痩せた姿で登場。体重減少の理由は「ホルモンバランスの問題」とされ、2009年1月から6月末までCEOを休職しています。
2011年1月には、2度目の休職を行い、CEOとしての日常業務をティム・クックに引き継ぎました。
その後、8月までCEOとしてアップルの戦略決定に携わります。スティーブ・ジョブズは2011年8月24日にアップルのCEOを辞任。10月5日に56歳の若さで、生涯を終えました。
撮影:Chris
スタンフォード大での卒業式スピーチの最後を、スティーブ・ジョブズは以下の有名なフレーズで締めくくっています。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」という言葉は「ホールアースカタログ」という1968年に創刊、1974年に廃刊した雑誌の最終号からの引用でした。
On the back cover of their final issue was a photograph of an early morning country road, the kind you might find yourself hitchhiking on if you were so adventurous. Beneath it were the words: “Stay Hungry. Stay Foolish.” It was their farewell message as they signed off. Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself. And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you. Stay Hungry. Stay Foolish.(最終号のバックカバーには、早朝の田舎道の写真が載っていました。もしあなたが冒険好きなら、ヒッチハイクをする時に目にするような類のものです。その下には「Stay Hungry.Stay Foolish.(ハングリーであれ。愚か者であれ)」と書かれていました。彼らからのお別れの言葉です。Stay Hungry.Stay Foolish.私自身も常にそうありたいと願い続けてきました。そして今、卒業し、新たな一歩を踏み出すあなたにもそうあってほしい。Stay Hungry.Stay Foolish.)
スティーブ・ジョブズの卒業式スピーチから、多くの人が「点と点を繋ぐこと」を学ぶ
スティーブ・ジョブズの卒業式スピーチは、スタンフォード大のYouTubeチャンネルにアップロードされています。
2018年3月現在、再生回数は2925万回を超え、間もなく3000万回に達しようとしています。
ジョブズの人生は決して順風満帆なものではありませんでした。
わずか半年での大学中退。アップルの共同創業者、スティーブ・ウォズニアックとの衝突。アップルからの追放。2000年にCEOに復帰してからも、わずか3年で膵臓癌を発症しています。
しかし、そんな彼の言葉が今も多くの人を魅了してやまないのは、ジョブズの言葉は「暗中模索するように、不安を抱えながら生きる人」に寄り添いながらも、力強く背を押すものだからではないでしょうか。
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式スピーチの点と点の話が身にしみてる今日この頃
— つきのわ桜LoveLive Sunshine HAKODATE UNIT CARNIVAL (@blossom_sym) 2018年3月16日
今たまたま見つけたスティーブ・ジョブズのスピーチ。「心に従え」って言葉にとても勇気付けられた。やっぱり僕の選んだ道は間違いじゃない。
— こういち@かけっこ先生 (@educationalrun) 2018年3月25日
人生の方向性が分からなくなった時とかに、スティーブ・ジョブズが大学の卒業式でスピーチしてる動画を見てるんだけど(笑)この前カリグラフィーやってる人と話したときに、ちょうどそのスピーチの話で喜んでくれてたから何がどう役に立つか分からないもんだなあと思った。
— ハートフルどすこい糸原@キッカケ (@68270294) 2017年11月7日
体験の目的なんか後付けでいい。やってる最中にさほど深く考えていなかろうが、後から振り返るとあれはこんな目的でやってたのかもなと納得できるもの。それを故スティーブ・ジョブズは、スタンフォード大の卒業式スピーチで”connecting the dots”(点と点を繋げる)と表現した。
— ロイド㌠@ネコ喪中 (@Blacktea1987) 2017年8月28日
さいごに
これから社会に飛び出す、スタンフォード大の卒業生にスティーブ・ジョブズが贈った言葉は「ハングリーであれ。愚か者であれ」というものでした。
ジョブズはスピーチの中で、幾度となく「自分の心と勇気に従うことの大事さ」を強調しています。それ以外のことは、後回しでも構わないとさえ言っています。
ジョブズは「点と点を繋ぐ」ことの大事さについても語ります。
しかし、点とは「打っている最中は、それがきちんと繋がるかどうか」は分からないものです。後から振り返った時に、結果として繋がるものです。 だからこそ自分の心に従い、勇気を持って「最初の点を置く」ことが大事です。
もしあなたが人生に迷っていたり、やりたいことがあるのに躊躇っているならば「自身の心と勇気に従う勇気」を持ちましょう。スティーブ・ジョブズ自身が、常にそう心がけていたように。
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