企業の採用試験でエントリーシートの合否判定に導入されたり、医者の代わりに病気の診断を実施したりなど用途が広がり続けるAI(人工知能)。
今回は、AIの歴史、種類、最新事例についてご紹介します。
この記事を読めば、AI学習の一歩目を踏み出せるでしょう。
この記事は現役エンジニアによって監修済みです。
この記事の目次
人工知能とは
皆さんは人工知能と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
pepperくんのように人間を模倣したロボットを思い浮かべる人もいれば、囲碁でプロを打ち負かすソフトを思い浮かべる人もいるでしょう。あるいは、自動車の自動運転技術を思い浮かべる人もいるかもしれません。
人工知能としてあげられるものは種々様々ですが、人工知能とは人間が行う特定の作業あるいは活動全体について人間の模倣を目指して作られたものの総称です。一般に「Artificial Intelligence」を略してAIと呼ばれることもあります。
人工知能には、人間の活動全体を模倣しようとする汎用型人工知能と、人間の活動の一部を模倣する特化型人工知能の二つがあります。それぞれがどのようなものなのかは後述しますが、人間が今実現できているものは全て特化型人工知能です。
つまり、現代において人工知能とは人間の活動の一部についての模倣をしているもの、と呼ぶことができるでしょう。
人工知能といえばなんでもできるもの、と言うイメージを持ってしまいがち。
ですが、特化型人工知能と言う呼び名からわかるように、人工知能は一部の、それぞれが得意とすることしかできません。
囲碁を打つ人工知能は囲碁以外のことは何もできませんし、画像を認識する人工知能もそれ以外のことはできません。人工知能は万能ではないのです。
しかしだからこそ、人工知能の技術にはどのようなものがあるのか、現在の技術ではどのような分野に置いてどのようなことが人工知能で可能となっているのかを知ることが重要です。
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人工知能の歴史
近年のブームが「第三次AIブーム」と言われることからわかるように、これが初めてのAIブームではありません。
AI研究の発端は、今から60年ほど前の1950年頃にさかのぼります。
参照元:CATALYST
第1次AIブーム 1950年代〜1960年代
イギリス人数学者 アラン・チューリングが初めて人工知能の概念を提唱、その後アメリカ人計算機科学者 ジョン・マッカーシーが公の場で「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉を用いました。
しかし、この時のブームは、人工知能の処理能力の限界を指摘する声によってわずか10年程度で収束を迎えます。
第2次AIブーム 1980年代〜1990年代半ば
それから20年後、AIブーム再燃の時が訪れました。
人工知能に医療や法律などの専門知識を取り込み、一部であれば現実の出来事に対しても専門家と同様の判断が下せるようになったことで、再び注目を集めたのです。
専門家の知識を機械にルールとして取り込むことで、専門家と同じような判断や行動を可能とした人工知能のことを指します。
ところがこの進歩にも壁がありました。
人間の専門家の知識を機械に覚えさせるためには膨大な量のルールを作成してインプットしなければいけないということと、「人工知能は一般常識レベルの曖昧な事柄に対応できない」ということです。
また、人工知能の理解は文字列だけにしか及ばず、これを記号に結びつけることが出来ないという「シンボルグラウンティング問題」が指摘されるようになります。
例えば、「馬」と「縞(シマ)」、それぞれの概念を知っている人はシマウマ=「馬」+「シマ」だと理解することができます。しかし、人工知能にはそれができない、というものです。
そして再び、AIブームは収束・・したかのように思われていました。
第3次AIブーム 2000年代
近年のAIブームは、2つのテクノロジーの研究が大幅に進んだことで起こりました。それが「機械学習」「ディープラーニング」です。
機械学習に欠かせないものは、学習のために必要なデータです。近年、デジタル機器の急速な普及や通信技術の発達で大量のデータ・いわゆる「ビックデータ」が集まるようになりました。
これまでとは比べ物にならない量のデータ収集・解析することで、人工知能は活躍の場を広げるようになります。
一方のディープラーニングとはこれまで人間が与えていたデータの特徴をAI自身が見つけ出す仕組みを指します。これにより、AIは自ら新たな概念を理解したり、例外に対処できるようになりました。
またこれらの機械学習やディープラーニングといったテクノロジーを支える環境=高性能のコンピュータを気軽に利用出来るようになったことも、今のAIブームを支える大きな要因です。
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人工知能の種類
普段私達は一口にAIと呼んでいますが、実は2種類に別れているという事実をご存知でしょうか。
AIはそのスペックによって、「汎用型」と「特化型」で区別されています。
参照元:CATALYST
汎用型AI
汎用型AIとは、SF映画やフィクション物語に出てくるような人間と全く同じように思考し、人間と同じ様に判断することの出来る「人間と同様もしくはそれ以上の知能を持つコンピューター」の事です。
日本人の我々がイメージしやすい物だと、ドラえもんや鉄腕アトム、ターミネーターの様な存在で、実はまだ実社会には存在しません。
その誕生に期待や不安の声が挙がるものの、現在の技術では汎用型AIの実現は程遠いと言われています。
特化型AI
一方、特化型AIとは、個別の領域においてまるで人間の様に思考するAIのことです。
例えば、画像認識や、音声認識、株の予測など限定的な範囲で人間が考えるかの様に振る舞うようプログラムされたコンピューターを特化型AIと呼びます。
前述の通り、現状汎用型AIは存在しません。つまり、メディアで取り上げられるAIという言葉は、基本的に特化型AIを指しているのです。
汎用型人工知能が実現されない理由
人工知能の利用方法と自律的な学習が達成されていない
汎用型人工知能が実現されるための課題は複数ありますが、大きくは現在の人工知能の利用法と自律的な学習が達成されていないことなどが挙げられるでしょう。
まず挙げられる現在の人工知能の利用法について考えます。現在私たちは人工知能を活用したい時には、まず始めに課題設定をします。囲碁の強い人工知能を作りたいという課題設定や、障害を自分で乗り越えるロボットを作りたい、などという課題設定です。
そして実現にに必要なデータを用意します。囲碁の強い人工知能を作りたければこれまでの膨大な量の棋譜が必要となるでしょうし、障害を乗り越えるロボットを作るためには、障害を乗り越えるためのシミュレーションをプログラムしてデータを用意します。
その後、データを学習することで、囲碁の強い人工知能を作成したり、障害を乗り越えることを学習したロボットを作成したりします。
人間が設定した課題を解くことのみ可能
ここで重要となるのは、人工知能は人間の側で設定した課題を解くことのみが可能である、と言う点です。そのため、囲碁を解く人工知能が突然会話を始めることもないですし、障害を乗り越えるロボットが突如医療ロボットとして活躍し始めることもありません。
囲碁を解く人工知能が会話をするためには新たに会話をするための学習が必要であったり会話の規則を与えてあげたりすることが必要となります。
人工知能が自ら課題設定をして学習をすることができない
二点目の自律的な学習という点についてですが、人工知能は自律的に学習をし始めることが現在は達成されていません。人工知能は自分で課題設定をしてデータを集めて学習をしていくということができないのです。
人間であれば、生活の中で様々なことについて自分で課題設定をして正解や不正解を学んで正しい行動を学習していくことができますが、人工知能はそれを全て人間がセッティングすることなしには学習をすることができないのです。
現状汎用型人工知能を作成するためには、人間が行なっている活動の全てについて個別に学習をするなどの必要がありますが、それは現実的ではありません。なぜなら、人間の活動のそれぞれを個別に全て学習するのは現実的ではないからです。
人間と人工知能のそれぞれ得意なこととは
ここで改めて、人間と人工知能のそれぞれ得意なことを見てみましょう。
人間の得意なこと
大規模な計算を高速に行うことや多数の記憶から最適解を見つけることなどは機械の得意とすることですが、人工知能には達成の難しい部分も多くあります。
それは、条件が少ない状態で適した行動を見つけることや主語などが欠落した高度な会話を理解することなどです。また、小さな変化を許容して同じものを見分ける能力なども高いと言われています。
例えば、私たちの使用する日本語には主語が欠落することが多くありますが私たちはそれを難なく理解することができます。
また、幼少期に友人であった人と10年間ぶりに会った時にでも本人を識別することなども可能です。
人工知能の得意なこと
人工知能を知り人工知能を活用するためには、人工知能がどのようなことが得意であるかを知ることが重要です。また人工知能にはできない、人間の得意なことも把握しておくと良いでしょう。
人工知能は、大規模なデータを処理することや多くのデータを用いて学習をすること、そして人間には把握できないようなたくさんの特徴量から共通点を見つけ出すことなどが得意です。
また、シミュレーションを用いて未来の予測をすることなども得意とする部分と言えるでしょう。
とりわけ人工知能の得意とする分野は主に以下の分野です。人工知能を利用したいと考える時には、この分野で活用できないかを考えてみるのがよいでしょう。
分類
その他にも、コンビニのポイントカードなどの利用から、似たような商品を購入するユーザをあぶり出すことも可能です。
予測
未来を予測することは人間には少々難しい部分もありますが、機械では今までのデータを多くインプットすることで起こりうる未来を予測することや、その複数の可能性を高速に計算することなどが可能です。
たとえば今までに発生した災害のデータから、起こったことのない災害が発生した場合の予測を行うことも可能です。私たちはその予測を用いて起こりうる災害への対策を立てます。
推薦
例えばアマゾンでは、自分の購入した商品が分析されて同じ商品を購入したユーザが他に購入した商品を推薦するなどが行われています。また、googleの検索においても検索ワードに関連して検索をされるワードの推薦がされます。
最適化
機械の得意とすることとして大規模な演算を高速に行うことが挙げられます。
多くのパターンを高速に試すことによって最適な解を求めることも機械の得意とする分野です。
認識
ディープラーニングは画像の認識などの分野に強く、画像認識においてはすでに人間と同等か時にはそれ以上の性能を発揮することが研究によって明らかになっています。
人工知能の社会応用
人間の代わりに顧客対応
コールセンターで人間のサポートをする為に導入されている人工知能が、IBMのWatsonです。
三井住友銀行ではコールセンター全席でWatsonによるサポートが導入されています。
顧客からの問い合わせをリアルタイムで文章化し、業務マニュアルやQ&A集から回答候補を問い合わせ担当に提示することで、導入前よりも迅速で正確な回答を実現しています。
医者よりも正確な診断で患者の命を救う
Watsonは医療の現場で病気の診断に利用され、時に医者よりも正確な診断を下すこともあるとされています。
例えば、医者が急性骨髄性白血病と診断した患者を別の病気であると見抜き、患者の命を救う一助となったことがありました。
Watsonは最新の医学論文や臨床医療のデータを取り込んで、数十万件の医学的根拠を学習しており、事例のような判断に繋がったのです。
画像を認識し、自動運転を可能に
車の自動運転にもAIが活用されています。
アメリカにある半導体メーカーのNvidia Corporationは自動運転の開発プラットフォームを提供しています。
ディープラーニングと画像認識機能により、駐車場の中から空いているスペースを探し出して駐車をすることや、運転手からスマートフォンで呼び出しを受けて、運転手の元まで自動で走ってくる事などを可能にしています。
機械学習とは
人工知能の分野の中でも、特に注目されているのが機械学習(マシーンラーニング)です。
機械学習(マシーンラーニング)とは、コンピューター(人工知能のプログラム)がデータを学習していく学習手法を指します。
機械学習には大きく分けて三つの学習方法が存在します。教師あり学習、教師なし学習、強化学習の三つです。
機械学習:教師あり学習
教師あり学習とは、人間が正例と負例を与えて学習する学習手法です。つまり人間が機械に正解や不正解を教え、それを学習することで新たな未知のデータに対しても正例か負例かを判定することができるようになるというものです。
機械学習が利用されている身近な例は、迷惑メールフィルタ機能です。コンピューターがフィルタリングを自動で出来るようになる流れは以下のようになります。
- 大量の過去データ(メールの文面)がコンピューターに与えられる
- 過去のメールから迷惑メールとされているものの特徴を学習する
- 未知のデータ(メール)に、②で学習した迷惑メールの特徴があるか無いかを調べる
- 特徴の有り無しによりメールを分類する
- 人間がその分類が正しいかどうかを機械に伝える
機械学習:教師なし学習
教師なし学習とは、人間が正解や不正解を教えることなしに学習を進める手法のことを言います。
教師なし学習においては分類やそれを用いた推薦などを主な目的として使用します。
機械学習:強化学習
強化学習とは、囲碁の人工知能などを作成する時に主に用いられる学習方法です。
囲碁などの高度なゲームなどにおいては、一手が正解であるのか不正解であるのかを人間ですら判定することができません。
そのため、学習をする際には最終的な効果を最大化するように学習を行います。
つまり、最終的に勝ちやすい一手を学習していき局面局面でもっとも勝つ可能性の高い一手を指すように進化していくような学習方法を強化学習と言います。
強化学習では数多くのシミュレーションを行い、その結果を用いて学習を進めるため人間が最初に正解を教えるわけではないことから、教師なし学習に分類されることもあります。
人工知能の未来
人工知能の未来はどのようになるのでしょうか?
フェイスブックが開発をしていたAI(人工知能)ボブとアリスの興味深い事例をご紹介します。
人工知能の会話
2017年、フェイスブックが独自に研究を進めるAI(人工知能)を搭載したチャットボットが、英語を元にした奇妙なやりとりを始めたことがBBC Newsをはじめとする世界中のメディアで報道されました。
ボブとアリスと命名された2機のチャットボットは「複数の帽子、ボール、本の交換をする会話」を反復するように命令され、実験として自動的に会話を行っていました。
その際に、英文法を正確に守った会話をするようにとは指示されていませんでした。
するとボブとアリスは一見、意味をなさないめちゃめちゃな英単語の羅列による会話をはじめたのです。
人間にはよく意味が分からない英文でありながら、AI(人工知能)同士の間では会話に一定のルールが生まれており、やり取りが成立していたのです。
人工知能は危険?
フェイスブックはAI(人工知能)が求めていた成果を達成できなかったとして、ボブとアリスの研究を停止しました。実験が続けられていたら、人間には発想できないような新たな文法ルールを持った英語ベースの言語が生まれていたかもしれません。
一方、中にはボブとアリスの存在を「ターミネーター」シリーズに登場する自我を持ち、人間と敵対するコンピューター「スカイネット」になぞらえて、人工知能が人間には制御不能な状態に陥ることを危険視するメディアもありました。
ボブとアリスの事例は、人工知能の専門家の間で見解が大きく分かれていることもポイントです。
編集部で独自にAI専門家の方々にヒアリングしたところ、今回の事例を「AIの暴走」とセンセーショナルに報道するメディアに対しては批判的な声が小さくありませんでした。
今回のボブとアリスの一件は大きな反響を呼んだ反面、まだまだ議論の余地がありそうです。
人工知能でなくなる仕事
オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン氏は論文で銀行の窓口担当者やレジ係といった職業を、機械によって自動化され、あと10年から20年で無くなる仕事である指摘しています。
人工知能でなくなる仕事一覧
マイケル・A・オズボーン氏が、あと10年から20年で無くなる仕事として挙げたのは以下の職種です。
「あと10~20年でなくなる職業」として可能性が高いと言われるもの
テックキャンプ プログラミング教養代表 真子による「AI(人工知能)とは?AIの歴史・種類・機械学習・最新事例について紹介」は、テクノロジーを教養として学ぶ重要性についての記事です。
決められたルールだけで動く仕事はAI(人工知能)やロボットの普及によって、将来的に淘汰される可能性があります。つまり現代は、非エンジニアがテクノロジーを身につけることの重要性が高まりつつあるのです。
さいごに
AI(人工知能)は医師の診断やコールセンター業務のサポートに、実践レベルですでに導入されています。今後、AI(人工知能)は更に性能を向上させ、多くの人間の仕事がAI(人工知能)に置き換えられていく可能性は非常に高いです。
AIが多くの仕事を自動化する時代には、人間は創造性の高い仕事をすることが求められます。そのためには一人ひとりがAIに対するリテラシーを高め、AIと共存し、AIには出来ない仕事をしていくことが重要です。
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