テクノロジー
日本の誇るスーパーコンピュータ「京」!スペックやできることを紹介

日本の誇るスーパーコンピュータ「京」。

このコンピュータは一体何に使われ、私たちの生活にどんな影響を与えているのでしょうか。意外と知られていないスーパーコンピュータについて、今回は「そもそもスーパーコンピュータとは何か」というところから、紹介していきたいと思います。

スーパーコンピュータとは

「スーパーコンピュータ」は身の回りにはありません。名前は聞いたことはあっても、どういうものかは知らないのではないでしょうか。今回はこれを紹介しましょう。

スーパーコンピュータとは、コンピュータの中でも特に大規模なもの。高速に処理を行えるよう特別に設計されたものを指します。当然時代によって処理速度はどんどん高速になっていきます。よって「どの程度速ければスーパーコンピュータと呼ぶか」という、決まった定義があるわけではありません。

その時代の最先端を行くものをスーパーコンピュータと呼んでいるのです。

世界最速マシンは1秒間に9.3京回計算をする

では世界最速のスーパーコンピュータは、一体どれくらいの計算速度を持っているのでしょうか。

画像出典:JSCHINA.com.cn

2017年11月のTOP500というランキングをみると、現在最も速いのは中国の「神威太湖之光」。1秒間に9.3京回の計算を行います。ちなみに「京」というのは1兆の1万倍という単位です。

ちなみに日常的に私たちが使っているパソコンのCPUは、1秒間にどれくらい計算するのでしょうか。

一般的によく利用されるCPUとして有名なのが、IntelのCore iシリーズ。Core i7のクロック周波数は3.6GHzです。3.6GHzは1秒間に36億回計算することに相当します。

このように比較するとスーパーコンピュータは個人のコンピュータでは到底太刀打ちできない、ものすごい計算速度だということがわかりますよね。

ちなみに2位は同じく中国の「天河2号」。「神威太湖之光」は天河2号の3倍くらい速かったそうです。これら中国のスーパーコンピュータはCPU(中央演算処理装置)も中国製で、独自のものを利用しています。

スーパーコンピュータは何故計算が速いのか

では、このスーパーコンピュータというのは、何故計算速度が速いのでしょうか。実際、計算速度を上げようとすると、どの様にしたら良いのでしょうか。

実は言葉で書くと非常に単純で、2つの要因に集約されます。一つ目はCPUの速度を上げること、もう一つは、そのCPUを大量につなげることです。

1つ1つのCPUの性能を高める

まずは、CPUの性能を高めるところからです。これには幾つかのアプローチ方法があります。これまで主流だったのは動作周波数(クロック数と言います)を上げること。

動作周波数を上げていくと発熱が大きくなるので、回路をできるだけ小さくしたり、電流の流れる経路を短くするという努力をしていました。この性能アップは「ムーアの法則」として有名になりました。ただしこれには限度もあります。

よってCPUの中で演算を並列処理させたり、最近では演算のためのコアを複数載せる(4コア、6コア、6コアなどと書かれているものです)。外部からのデータ入出力を高速化するなどの工夫がされています。

性能が高いCPUを大量につなげる

もう一つは、こういう努力によって高速化したCPUを大量につなげてしまう方法です。

1個のCPUで計算を行うのではなく、例えば100個のCPUをつなげば、計算速度は100倍になります。1万個つなげれば1万倍速くなります。CPUの性能が上がりにくくなった近年では、大量につなげることで計算速度を上げています。

もちろんそのためには広い面積が必要ですし、電気代もかかります。ですので大量のCPUを使用するスーパーコンピュータは土地代が安く、電気を潤沢に使えるところに建設する傾向があります。

スーパーコンピュータ 京とは

画像出典:理化学研究所

世界のトップは中国だという話でしたが、日本のトップは何位なのでしょう。

今回紹介する「京」が日本で最も速いスーパーコンピュータです。2017年11月の「TOP500」では世界第10位とされています。ただしこうした順位は、指標によっても変わります。例えばHPCGという指標では京は世界1位となっています。

富士通と理化学研究所が共同開発したスーパーコンピュータ

そもそも「京」とはどういうスーパーコンピュータなのでしょうか。

「京」は文部科学省が理化学研究所と共同で始めたプロジェクト。理化学研究所と富士通と共同開発したものです。当初はNECと日立も含めた4社での共同開発でしたが、NEC、日立が2009年に撤退。2社での開発となりました。

ちなみに「2位じゃダメなんですか?」という発言が有名になった、民主党政権下の事業仕分け。

この発言はスーパーコンピュータ「京」に予算を付けるかどうか、という議論の中での発言でした。2社が撤退したのに予算額がそのままであったためその理由などを問われたのですが、文部科学省の担当者が「1番を目指すために必要なのだ」としか言わず「1番を目指す理由」を明確に説明しなかったため、しびれを切らした蓮舫議員が先の発言を行いました。

この辺は議事録を読んでもらうと、経緯がよくわかります。

2012年9月から利用が開始

「京」は2012年6月に完成し、9月から利用が開始されました。それまでは「地球シミュレータ」というスーパーコンピュータが国内では最も速く、それこそ地球環境の未来予測シミュレーションなどに使われてきました。有名なのは、地球温暖化によって、2100年には世界の気温がどの様になるのかをシミュレーションした結果でしょう。

現在は他にも様々な問題が数多くあります。地球温暖化の問題に限らず、スーパーコンピュータを活用し、今の時点で解決できるものは解決しようという方針で、文部科学省の「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」という計画のもとに開発が進められました。

スーパーコンピュータ 京のスペック

画像出典:理化学研究所

スーパーコンピュータ「京」のスペックはどのようになっているのでしょう。

先ほどの、CPUと接続している台数をベースに紹介しましょう。まずCPUですが、これは富士通が設計・開発を行った「SPARC64 VIIIfx」が採用されています。小型化により省電力も達成したCPUで、さらには故障の少なさも売りになっています。1つのCPUには演算処理を行うコアが8つ搭載されていて(8コアCPU)、これが1秒間に1280億回の計算を行います。

「京」はこれを88128個、並列でつないで使用することで、1秒間に1京回という演算を行うのです。ただし、これだけの大規模システムですから、安定した状態でエラーなく動作させるのは、独自の技術が必要です。ここにはエラーリカバリー機能などを搭載することで、処理をエラーなく、安定して行えるようにしています。

スーパーコンピュータ 京のできること

ではこれだけのスペックを持つスーパーコンピュータ「京」は何に使われているのでしょうか。先ほど「様々な課題を解決する」と書きましたが、具体的な使われ方を紹介してみましょう。

まず、速い演算速度は、細かな分解能で、何度も何度も繰り返し計算するものに向いています。例えば地震・津波、気象という環境系がまずあります。これは先ほど紹介した地球温暖化のシミュレーションなどが代表例です。同じ様な感じで、宇宙のことについても、銀河や宇宙の構造がどの様に進化してきたのかを大規模にシミュレーションすることが可能になっています。

また原子や分子の振る舞いをシミュレーションする必要のある創薬、ものづくり、材料の開発などでも利用されています。

京ユーザー向けソフトウェア

計算科学研究センターでは、「京」のユーザー向けに様々なソフトウェアを公開しています。例えば、電子の振る舞いや、粒子の振る舞いを計算するSPH、流体力学の計算を行う様々なソフトウェアが準備されています。これらを組み合わせる、または拡張する事で、空気の流れをシミュレーションし、天気予報に繋げたりするわけです。

これらのソフトウェアは計算科学研究センターの共通基盤として開発されたり、「京」用に最適化されています。

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Tatsuya T. Yamada Tatsuya T. Yamada
天文学・宇宙物理学の研究を行い、一般向けの講演会や解説書も書いていた。現在は、1991年から行っている「パソコンを使った教育」を本業とし、eラーニングソフト・コンテンツを開発している。教育ビッグデータ、教育へのAI活用の専門家。日本天文学会、教育システム情報学会、宇宙作家クラブ会員。
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