個人やチームでの仕事において必ず問題や課題は発生します。しかし、それらをどうやって解決すればいいのかまで明らかになっているケースはそう多くありません。
まずはフレームワークを活用して現状分析を行い、情報を構造化しましょう!そこから課題の抽出を行って、優先順位や緊急性を考えれば、やるべきタスクがクリアになります。
この記事では、それに役立つ「状況分析のフレームワーク」を紹介します。
この記事の目次
ビジネスの状況分析に役立つフレームワーク10選と実践のポイント
ここから9種類のフレームワークを紹介します。理想はすべてのフレームワークを状況に応じて使い分けることです。
しかし、いきなり9種類すべてを把握し、活用するのは難しでしょう。
まずは、本記事を一通り読んで、それぞれのフレームワークの特徴を理解しましょう。その上で、あなたの仕事で役立ちそうなものから一つずつ実践してみてください。
MECE分析
「MECE(ミーシー、ミッシー)」とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略称です。
それぞれの単語の意味は
Mutually(お互いに)
Exclusive(重複せず)
Collectively (全体に)
Exhaustive(漏れがない)
であり、「MECE分析」は「ダブりなく、漏れがない」という意味として使われる定番の分析のフレームワークです。
例えば、ある物事に対してチーム全員でブレストするとします。
各員が出したアイデアがかぶっていないか、他にも考えるべきものはないかを分析する時などに「MECE分析」が使えます。
これにより、進めていくプランの問題点や考えるべきポイントなどが割り出せるのです。
「MECE分析」の事例
あなたは社内で新規Webサイト立ち上げのプロジェクトを任されました。あなたがリーダーとなって進めていきます。
そこでまず、サイトのテーマを決める上でやるべきことをチームメンバーとともにブレスト。以下のような候補が上がりました。
・どんなサイトの需要が高いか市場調査する
・調査する対象を決める(年齢、性別、住まい、職業など)
・調査方法の精査(ネットアンケート、街頭インタビュー、社内インタビュー)
・調査結果の集計
・再度テーマを決める議論
ここでさらに「MECE」の法則に沿って、抜け漏れがないか確認していくことに。すると、チームメンバーから以下のような意見が追加で上がりました。
「調査の結果、マネタイズできないテーマにばかり票が集まってしまう可能性がある」
これはブレストの時点で抜け落ちていた観点です。
そこで、調査をする前に
「マネタイズできそうな分野を事前に20個ほどピックアップ。その中から選んでもらう選択式アンケートで調査する」
という工程を追加することにしました。
現在の状態や集まったアイデアを分析することで、課題とその解決策を早めに見つけられます。一度冷静になって、MECEの考え方に沿って現状を見返すことが重要です。
3C分析
「3C分析」も状況分析の定番と言えるフレームワークです。3Cとは、以下の言葉の頭文字を取った略称です。
Customer(市場・顧客)
→どんなニーズがあるのか、どんな顧客がターゲットなのか
Competitor(競合他社)
→他社はどのようなサービスを展開しているのか、どんな状況なのか
Company(自社)
→自社の強み、弱みは何か、課題は何か
これらの観点に沿って状況を分析します。
自社サービスや商品の強み・弱み・立ち位置を分析し、今後伸ばしていくべき部分や改善点を導き出します。
「3C分析」の事例
あなたはプロジェクトリーダーとして、男性向けのファッションサイト運営の指揮を取っています。
直近の課題点として、サイトを訪問するユーザー数(PV数)の減少が見られ、それを改善しなければなりません。
何がユーザー数減少の原因なのか、3C分析を使って状況を見ていくことにしました。
Customer(市場・顧客)
・Googleからの検索流入でおよそ80%のユーザーがサイトを訪れる
・ユーザーは10代後半〜30代後半の男性が70%以上。若い男性が中心
Competitor(競合他社)
・自社と同じようなサイトを運営している競合サイトが10サイトほどある
・競合サイトも調べたところPVの下落が見られる
Company(自社)
・他サイトとタイアップして、そこからもユーザーを流入させている
・有名なファッションモデルを多数起用
・サイト内で連載記事を公開しており、リピーターも一定数いる
・これらの方針は3年ほど変えておらず、その間はPVは伸び続けていた
あなたは、競合他社もPVが下がっているという点に着目しました。そして自社の施策に問題があったというよりは、より広範囲でPVが下がっている理由があると推測。
さらに調査を続けたところ、先月にGoogle検索結果のアップデートがあり、自社の記事が検索順位を大幅に下げていることが発覚。
Googleから多数のユーザーを獲得している自社サイトにとって、大きな影響を与える要因です。
競合サイトの記事も同じような影響を受けていることから、「生活・ファッション」に関わる分野でアップデートが行われたと考えました。
この場合、今後やるべき施策としては以下が考えられます。
・過去に書いた記事のリライト
・記事の書き方の見直し
・Google以外でのユーザー獲得強化(SNSや他サイトからの流入)
市場・顧客、競合他社がわかっているのであれば、3C分析を利用することで現状の見直しも図れます。
4C分析
「3C分析」と似ている「4C分析」。
「4C分析」とは、
Customer Value(顧客価値)
Cost(費用)
Convenience(利便性)
Communication(顧客との対話)
この4つの言葉の頭文字を取った略称。つまり「4C分析」は自社サービスや商品を購入・利用するお客さんを分析するフレームワークです。
顧客の視点に立って考え、課題や改善点を導き出すのに役立ちます。ユーザーの減少が見られたり、不満を寄せられることが多くなった時はこの4C分析を活用してみるといいでしょう。
4C分析の事例
あなたが所属するチームで「スマートフォン向けのゲームアプリ」を開発・リリースしました。しかし、思った以上にユーザーは増えず、レビューも酷評がかなり多い状況です。
そこで、開発したアプリを4C分析に当てはめて、問題点を探ることにしました。
Customer Value(顧客価値)
→暇な時間を楽しめる
Cost(費用)
→ダウンロード無料(アイテム・キャラクターの入手には課金が必要)
Convenience(利便性)
→起動時間は早く、小さな子でも操作できる
Communication(顧客とのコミュニケーション)
→Twitterでゲームの最新情報を週1回以上は流しており、アプリ内でも通知している
この結果、ユーザーが伸びないのはCustomer Value(顧客価値)とCost(費用)にあると仮定しました。
・他のゲームアプリでも暇は潰せるため、自社アプリを利用するメリットがない
・課金要素を増やしすぎて、多額のお金を使わないとクリアできない
この2つの要素を踏まえ、
「どうすれば自社のアプリを楽しんでもらえるのか」
「1人のユーザーから多くの利用料をとるのではなく、少額の利用料で多くのユーザーに楽しんでもらうにはどうすればいいか」
を改めて話し合うことになりました。
SWOT分析
「SWOT分析」も覚えておきたいフレームワークです。
自社サービスや商品を、
Strength(強み)
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threat(脅威)
に当てはめて、現在の状況を分析、整理します。
Strength(強み)、Weakness(弱み)は「内部環境」と呼ばれ、自社サービス・商品そのものに関する要素です。
Oppotunities(機会)、Threat(脅威)は「外部環境」と呼ばれ、自社サービス・商品を展開している市場や取り巻く環境などを指します。
これらの観点で、強みを伸ばすべきか、弱みを改善していくべきかなどを考えられるのがSWOT分析です。
内部環境は自社内の施策で改善は可能でしょう。しかし外部環境は、自社でコントロールするのは非常に難しい上、だからと言って何も対策をしないと売り上げに大打撃を与えることもあります。
状況分析は自社内のみならず、外部にまで目を広げて行うべきです。状況分析フレームワークの基本として、SWOT分析は必ず理解しておきましょう。
「SWOT分析」の事例
あなたはスポーツ用品を取り扱うサイトの運営チームリーダーです。サイトからの売り上げを現状よりもさらに上げるために、SWOT分析を試しました。
Strength(強み)
・「スポーツグッズ」「おすすめスポーツグッズ」などのワードで検索上位を取れている
・競合よりも長い運営実績がある
・ユーザーの満足度は90%以上
・スポーツグッズメーカーと契約を結んでいるため、他サイトでは扱っていない商品も売れる
Weakness(弱み)
・SNSを使った集客が手薄
・ユーザーの流入がGoogleの検索に依存
・自社製品を開発しているわけではないので、新商品の発売はメーカーに左右される
Oppotunity(機会)
・2020年の東京オリンピックでユーザー数が増加する可能性が高い
・近年は様々なスポーツで日本人選手が活躍し、スポーツの注目度が高まっている
Threat(脅威)
・オリンピックをきっかけに競合サイトが増える可能性がある
・Googleのアルゴリズム変更でいつ検索順位が下がるかわからない
・オリンピック後も売り上げが続くとは限らない
この結果、まずは
・Google検索以外でのユーザー流入を強化する
・オリンピックに向けた施策を行う
・オリンピック後も売り上げを維持する施策を行う
ことにしました。
PDCAサイクル
「PDCAサイクル」とは、現状の課題を見つけ、実践。そこから導き出されたさらなる課題を解決していくサイクルの事です。
P:Plan(計画)
D:Do(実行)
C:Check(評価)
A:Action(改善)
この順番に沿って作業を進めていくと、現状の分析と課題解決の方法を見つけられ、仕事のクオリティを高められます。
新卒社員なら特に、PDCAサイクルを意識しながら仕事をすることでスピードのある成長につながるでしょう。
「PDCAサイクル」の事例
あなたは営業職として働いています。
チームで、先月の営業成果を各自で振り返り、改善点を導き出すことになりました。
そこで、「PDCAサイクル」に沿って振り返りを進めていきます。
Plan
目標:月内で新規契約5件を獲得する
→そのための手段
・テレアポを月800件行う
・セールスレターを5本書いて送る
・既存の取引先に連絡して、別部署の担当者を紹介してもらう
Do
・テレアポ→月500件(目標-300件)
・セールスレター→5本(目標達成)
・取引先への連絡→20件行い1件紹介をもらった
Check
結果:月内新規契約4件(目標-1件)
目標達成できなかった原因
・テレアポの不足(充分な時間を割けなかった)
・セールスレターの内容(2件受注したがさらに改善できそう)
Action
次月で目標達成するための改善策
・作業効率化(書類作成の時間を短縮)→テレアポの時間を増やす
・セールスレターのコツを学習(本を1冊以上読んで実践)
課題と解決策が見えてきたので、これらを踏まえて今月は営業活動をしていくことにしました。
PEST分析
PEST分析は、自社業界を分析することに役立つフレームワークです。マクロ環境を分析し、自社プロダクトやサービスの未来を予測することなどに活用できます。
PESTとは、
Politics/Political(政治面)
Economy/Economical(経済面)
Society/Social/Cultural(社会/文化/ライフスタイル面)
Technology/Technological(技術面)
の頭文字をとった略称です。
政治、経済、社会、技術の動きが自社業界にどういう影響を与えるのか。
そのためにどのような施策を実践するべきなのかを考えられます。
「PEST分析」の具体例
あなたは居酒屋の店長です。開店時間は17時で、朝の5時まで営業しています。ビジネス街にあるため、利用客の多くは仕事終わりの会社員です。
店長としてはさらに売り上げを伸ばしたいところ。
店舗でできることはやりつくしたので、PEST分析を使い飲食業界に関連する外部環境を考えてみました。
すると、Economyの部分で追い風となりそうな制度を発見。企業で毎月最終金曜日に導入されているプレミアムフレイデーです。
普段より退勤時間が早くなるプレミアムフレイデー。この時間に店を開ければお客さんをたくさん獲得できる可能性が高いです。
しかもビジネス街ならば、プレミアムフレイデーで早めに帰宅する会社員も多いと予想できます。
そこであなたはテストとして、月の最終金曜日は開店時間を2時間早め、3ヶ月間でどれだけ顧客と売り上げが増えるかを見てみることにしました。
デシル分析
デシル分析とは、サービス・商品を購買したユーザーをランク分けして分析するのに役立つフレームワークです。
これにより、購買金額の高いユーザー(優良顧客)を割り出し、そのユーザーにアプローチすることで効果的なマーケティングを実現できます。
「デシル」とはラテン語で「10等分」という意味の言葉です。全顧客を10等分し、購買金額の高い順に「1デシル〜10デシル」へとランク分けしていきます。
「デシル分析」の事例
自社サービスの購入履歴から、ユーザー1,000人を割り出しました。それを10等分し、100人ずつのグループに分けます。
購入金額が高い順にランク分けしたら、上のランクのグループに優先して新サービスの広告を打ち出していく方針にします。
バリューチェーン
「バリューチェーン」も、事業の状況分析に役立つフレームワークです。
顧客にサービス・商品が届くまでの流れをチェーンのようにつなぎ合わせて考えることから名付けられました。
「バリューチェーン」により、サービス・商品を生み出し顧客に届くまでの工程の中で、どこに付加価値があるかを分析できます。
その付加価値を伸ばしたり、各プロセスごとの付加価値をつなぎ合わせて顧客満足度をアップさせる方法を見つけ出したりできます。
「バリューチェーン」の事例
あなたは自社で運営している「IT業界のニュースをまとめるWebサイト」のリーダーです。ライバルサイトに負けないよう、自社サイトの価値をさらに伸ばす施策を打とうと考えています。
そのために、「バリューチェーン」のフレームワークに自社サイトを当てはめて考えることにしました。
大まかに工程を分けると、以下のようになりました。
1.サイト制作(デザイン編集)
2.記事執筆のための取材
3.記事公開
4.SNSで拡散
5.ユーザーが閲覧
6.ユーザーがSNSで拡散
その上で、ライバルサイトと比べて自社サイトの圧倒的な強みは
・足を使った取材
・記事公開の早さ
・SNSでの拡散力
にあると想定。さらに伸ばすために
・事前に最新情報を手に入れるルートの増加
・いつでも記事公開ができるよう執筆者のシフト見直し
・SNSのフォロワー増加のためのキャンペーン実施
を直近で行う施策としました。
VSPROモデル
VSPROはモデルは、組織マネジメントシステムを見直す上で役立つフレームワークです。VSPROモデルは、次の5つの要素から成り立っています。
Vision(将来像)
Strategy(戦略)
Process(工程)
Resource(資源)
Organization(組織)
これらの観点からチームのマネジメントを考え、最適に行われているかを判断できるのがVSPROモデルの特徴です。
「VSPROモデル」の事例
あなたはチームのリーダーとして、プロジェクトを進めています。作業の進捗に遅れが出ていて、自分のチームマネジメントに問題がなかったのかを振り返るべき状況です。
そこでVSPROモデルに当てはめて考えてみることにしました。
Vision
・チームのあるべき姿は明確か
・将来像がチームメンバーにも共有できているか
→再度ミーティングを実施し、ビジョンの共有を行う
Strategy
・掲げたVisionを達成できる戦略立てができているか
・戦略に抜け漏れはないか
→今一度「MECE」に沿って戦略を分析する
Process
・作業内容やチームメンバーの仕事配分に問題はないか
・作業を効率化できる方法はないか
→チームメンバーへのヒアリングを行って、作業工程を見直す
Resource
・チームの人員は足りているか
・予算に余裕はあるか
→人員が不足しているので、さらに上の役職者に相談する
Organization
・チームが動きやすい組織(会社)作りができているか
・全社的な作業に問題はないか(請求書の提出、会議の頻度など)
→必要ならば洗い出し、全社的な会議の議題にしてもらう
状況分析のフレームワークを効果的に使うポイント
フレームワークの特徴を理解したら、それをいつ使うのかも知っておきましょう。そのためには、以下のポイントを押さえておくことをおすすめします。
現状分析を行う目的を明確にする
一言で「現状分析」と言っても何をどう分析するのかは様々です。
まずは、現状分析をする目的を明らかにしましょう。その上で、どのフレームワークを使うのか考えます。
例えば、
・自社サービスの強みを考えたい→SWOT分析、3C分析、4C分析、バリューチェーン
・顧客のニーズを知りたい→3C分析、4C分析
・プロジェクトに不足点がないか見直したい→MECE分析
・自分の作業効率を上げたい→PDCAサイクル
・事業に影響がありそうな外部要因を考えたい→PEST分析
・チームマネジメントを見直したい→VSPROモデル
このように「目的」と「フレームワークの特徴」両方を比べて、どのフレームワークを使えばいいのか判断していきましょう。
アイディアを考えるのはあくまでも自分
フレームワークを理解して、実際に使うだけでは不十分です。それでは問題、課題の洗い出しはできても、具体的な改善策までは見つかりません。
フレームワークは問題を解決する答えを出すためのツールではないことを意識しておきましょう。
解決につながるアイディアを出すのはあなたやチームメンバー自身。そのための補助ツールという認識でフレームワークを活用してみてください。
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