数あるマーケティング用語の一つであるAIDMAは、消費者の購買決定プロセスを説明するモデルの一つとして広く知られています。
確立されている枠組みを意味する「フレームワーク」を知ることで、マーケティングの基本を理解できるでしょう。
この記事では、マーケティングに携わるのであれば知っておきたい基本的なフレームワークを解説します。
この記事の目次
AIDMA(アイドマ)とは
AIDMAとは、アメリカの著作家であるサミュエル・ローランド・ホール氏によって1920年代に提唱された概念です。
ある商品・サービスを前に消費者がどのように思考し、購入の意思決定をするかを説明するモデルで、具体的には以下の単語の頭文字を取って命名されました。
Attention:注目、商品やサービスについて知る
Interest:興味を持つ
Desire:欲しいという欲求
Memory:記憶
Action:購買行動
ターゲットとなるユーザーのモチベーションがどのレベルにあるのかを見極め、各段階に適したコミュニケーション戦略を実施することで購買行動(Action)に結びつけることを目指します。
AIDMAモデルは、住宅や車など商品・サービスを知ってから購買の意思決定を行うまでの期間の長い(消費者が検討を重ねる)商材に対して特に有効とされています。
AIDMA以外にもAISAS、AIDCA、AMTULなど様々な購買決定モデルが提唱されており、マーケティング担当者は対象の商品・サービスの特徴や状況に応じて適切なモデルを選択し、当てはめていきます。
AISAS(アイサス)とは
1920年代に提唱されたAIDMAに対して、近年のインターネットの普及により2005年に提唱された新しいモデルがAISASです。
インターネットという特殊な環境下での購買活動の広がりを受けて電通が提唱しました。AISASは以下の頭文字を取っています。
Attention:注目、商品やサービスについて知る
Interest:興味を持つ
Search:検索
Action:購買行動
Share:共有する
「Googleに聞く」といった表現も使われるようになった世の中で、購入を検討している商品やサービスについて一度詳細や口コミをネットで調べてから決める、という人は多くいます。
さらに、その情報収集をTwitterやInstagramなどのSNSを使って行う人も多くいる状況で、商品・サービスの使用体験を共有する(Share)するというプロセスも大きな意味を持ちます。
有名人など、世間に対してより影響力のある人を指すインフルエンサーという言葉もある通り、共有する(Share)をプロセスの一つとするAISASは、今後のマーケティング戦略を考える上で重要なフレームワークです。
その他のフレームワーク
AIDAM、AISASの他にもマーケティングの世界には多くのフレームワークがあります。
状況に応じてそれらを適切に使い分けることで、消費者の購買活動をより理解し、活発化させられるでしょう。
その他のフレームワークも一つずつ紹介していきます。
AISCEAS(アイセアスまたはイシーズ)
AISCEASは2005年に広告雑誌の中で提唱された購買決定モデルの一つです。具体的には以下のプロセスに分けられています。
Attention :注意( 広告やメディアに注意をひかれる)
Interest:関心(興味・関心を持つ様になる)
Search:検索( インターネット等で情報収集)
Comparison:比較 (様々な製品を比較)
Examination:検討 (購買を検討する)
Action:購買(購買をする)
Share:共有(購買した製品の感想や他者との共有を行う)
AISAS(Attention,Interest,Search,Action,Share)と基本的な構造は同じです。
しかし、検索(Search)から購買(Action)の間に、比較(Comparison)と検討(Examination)が入っている点で、AISASよりも詳細にプロセスを分けています。
AIDA(アイダ)
AIDAはアメリカのセント・エルモ・ルイスによって提唱された消費行動モデルで、AIDMAの元となった概念です。
1920年代に同じくアメリカのE・K・ストロングが論文で用いたことから広がりました。
AIDAはユーザーの購買決定プロセスを初めて概念化したものであり、AIDAの提唱によってユーザーの感情やモチベーションの段階をより意識した効率的なマーケティング活動が可能になりました。
Attention:注目、商品やサービスについて知る
Interest:興味を持つ
Desire:欲しいという欲求
Action:購買行動
の4つのプロセスから成り立っており、記憶(Memory)がプロセスに含まれていない点がAIDMAとの違いです。
AIDMAの解説で触れた通り、住宅や車といった高額商材の場合、「買うか買わないか」「どれを買うか」の決定まで時間を要するため、モチベーションや各サービスを「記憶する」プロセスが必要になります。
一方で、低額商材の場合には商品・サービスを目の前に即決することも一般的であるため、AIDMAよりもAIDAが適しているとされています。
AIDCA(アイドカ)
ターゲットである消費者と直接コミュニケーションを図ることで購買行動を促すマーケティング手法であるダイレクトマーケティングで活用されるフレームワークがAIDCAです。
Attention:注目、商品やサービスについて知る
Interest:興味を持つ
Desire:欲しいという欲求
Conviction:確信する
Action:購買行動
不特定多数の潜在顧客ではなく、見込み客をターゲットとするダイレクトマーケティングでは、欲しいという欲求(Desire)を持たせた後に、すぐにそれを購入する価値があるという確信(Conviction)を持たせ、購買行動(Action)に繋げることができます。
AIDCAS(アイドカス)
AIDCASは、AIDCAと同じくダイレクトマーケティングで活用される購買決定プロセスフレームワークの一つです。
AIDCAの概念の最後にSatisfaction(満足)を加えて成り立っています。
Attention:注目、商品やサービスについて知る
Interest:興味を持つ
Desire:欲しいという欲求
Conviction:確信する
Action:購買行動
Satisfaction:満足
商品・サービスを購入した後の行動である満足(Satisfaction)は、また同じ商品・サービスを利用してもらう(リピーターになってもらう)ために重要な要素です。
アフターサービスなどを充実させることで、購入した商品・サービスだけでなくそれを提供する企業や媒体のファンになってもらうことを目指します。
SIPS(シップス)
SIPSは電通が考案したフレームワークで、2011年に提唱されました。
ソーシャルメディアの普及を受けて提唱されたモデルで、以下の要素で成り立っています。
Sympathize:共感する
Identify:確認する
Participate:参加する
Share & Spread:共有・拡散する
テレビや雑誌を利用した広告では、企業から消費者に一方的にメッセージを届ける構造となっています。
しかしながらソーシャルメディアを利用した広告では、企業が発信するメッセージをより世間に普及させるためには、メッセージを受け取った人が別の誰かに共有(Share)することが重要になります。
誰かが共有・拡散した情報を、また別の誰かが受け取って共感。そして、その人が確認・参加のフェーズを経て、別の誰かに共有・拡散するというサイクルが生まれます。
SIPSは、ソーシャルメディアに関連の深い商品・サービスのマーケティングに適しています。
AMTUL(アムツール)
AMTULは日本のマーケティング業界の草分け的存在の一人である経済評論家の水口健次氏によって提唱されたフレームワークです。
AMTULは以下のプロセスに分けられています。
Aware:興味を持つ、認知する
Memory:記憶する
Trial:接触する、試用する
Usage:利用する(初めて購入する)
Loyalty:常用する(継続して購入する)
AIDMAやAIDAが商品・サービスを購入してもらうという短期的な購買行動をゴールとしていることに対して、AMTULはユーザーとの長期的な関係構築をゴールとしています。
AMTULでは、「再生認知率」「再生知名率」「使用経験率」「主使用率」「今後の購買意向率」という指標で、各段階でどれだけ目標が達成できているかを定量的に計測することができます。
AISA(アイサ)
AISAは、ソーシャルメディアの持つ影響力に着目した購買決定プロセスモデルです。
Attention:注目する、知る
Interest:興味を持つ
Social Filter:ソーシャルフィルター
Action:購買行動
AISAS(Attention,Interest,Search,Action,Share)と似ていますが、AISASの三番目のSがSearch(検索)であることに対して、AISAのSはSocialFillter(ソーシャルフィルター)であることに大きな違いがあります。
SocialFillter(ソーシャルフィルター)とは、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNS上で繋がっている友達(ソーシャルフレンド)が発信する情報のことです。
ARCAS(アルカス)
ARCASは、電通が提唱したモデルで店頭販売におけるマーケティングに用いられます。
Attention:気づき
Remind:思い起こし
Compare:比較
Action:購買
Satisfy:満足
ARCASの特徴は、来店から購入、再来店までのユーザーの行動を体系的に整理しているところにあります。
デパートやスーパーなどの行き、そこで商品やサービスに気づいた消費者は、普段の生活でのその商品の利用シーンや過去にテレビで見た広告などを思い起こし、購入の動機づけをします。
その後、商品を比較することで購入意思を固め、購買行動を取ります。
商品・サービスの利用体験に満足することが出来れば、再来店に繋がるのです。
SAIDCAS(サイドキャス)
SAIDCASはインターネット時代に対応する新しい消費行動プロセスモデルとしてGMO(GMO インターネット 株式会社)によって提唱されました。
Search:検索
Aware:認知
Interest:興味
Desire:欲求
Conviction:確信
Action:行動
Satisfy:満足
SAIDCASは提唱元のGMOのマーケティング戦略の成功事例を元に作り出されたもので、大口顧客を開拓し、需要を伸ばしていくことをゴールとしています。
AIDEES(アイデス)
AIDEESはユーザー同士の繋がりが重要な役割を担うインターネット時代における消費行動プロセスモデルとして元東京大学大学院教授の片平秀貴氏が提唱しました。
ユーザーが商品を知り、購入、商品・サービスの体験をした後にそれを共有するまでの流れを表しています。
Attention:注目する、知る
Interest:興味を持つ
Desire:欲しいと感じる
Experience:体験する、購入する
Enthusiasm:感動する、心酔する
Share:共有する、推奨する
プロセスの5つ目のEnthusiasmと6つ目のShareが特徴で、自身の商品・サービスを通して得た体験が素晴らしいほど、それを別の誰かに伝えたいという気持ちが高まります。
AIDEESを活用したマーケティング戦略を取ることで、企業はより少ない広告費でより多くのユーザーに商品・サービスを広めることが可能になります。
AIDMA・AISAS・SIPSの3つは理解しておこう
これまで様々な購買行動モデルを紹介してきました。
その中で最も基本とされるAIDMA、AISAS、SIPSについて、その違いを整理しておきましょう。
AIDMA:消費者の購買行動モデルのひな型
AISAS:インターネット普及時代の購買行動モデル
SIPS:ソーシャルメディアの影響を考慮した購買行動モデル
多くの購買行動モデルのひな型であるAIDMAは1920年に提唱されました。
その後、インターネットが広く一般化するようになった2005年に提唱されたAISAS、ソーシャルメディアが持つ影響力が強くなった2011年に提唱されたSIPSに続きます。
今後も時代の変化と共に新たなプロセスモデルが提唱されていく可能性がありますが、新しいモデルは古いモデルに取って代わるものではなく、AIDMAなど基本となるモデルの上に成り立っていくものとされています。
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