DeNA×メルカリ×サイバーエージェント人事担当が面接で必ずする質問とは?「技術力だけアピールしても内定は出ない」
更新: 2019.11.08
2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足するといわれている。現役エンジニアにとっては、当面売り手市場を謳歌できそうだが、誰にでもチャンスが開かれているかというと、どうやらそうでもなさそうだ。
そこで、3回にわたって、エンジニアに人気の3社で技術部門の採用を担当する3人に、採用したいエンジニアとそうでないエンジニアの「境界線」について語って貰いました。
転職市場はいまエンジニアの売り手市場。とはいえ、誰でも人気企業に入れるわけではない。企業は、採用するエンジニアと落とすエンジニアをどこで見極めているのだろうか。
今回は、第1回に引き続き、エンジニアに人気の企業3社の人事責任者に採用したいエンジニアとそうでないエンジニアの「境界線」について語ってもらった。
第2回目のテーマは「書類選考や面接で人事はエンジニアのどこを見ているか」。
ヒューマンリソース本部 人材企画部組織開発グループ
立花 啓さん
Client Advanced Technology Studio チーフテックリード(Web 技術) メディア統括本部技術人事室長
佐藤 歩さん
この記事の目次
面接は「価値観を共有できるか人物」かが問われる場
――まずは各社の事例で、エンジニア採用の一般的な選考プロセスを教えてください。
株式会社サイバーエージェント Client Advanced Technology Studio チーフテックリード(Web 技術) メディア統括本部技術人事室長佐藤 歩さん
2012年入社。ウェブサービスのフロントエンジニアとして、スマホ向けSNSサービスやAbemaTVの開発などに従事。18年10月から、新規サービス開発に携わる傍ら、メディア統括本部技術人事室長を兼務する
サイバーエージェント佐藤さん(以下、佐藤) 私の見ているメディア部門では、1次、2次面接はシニアエンジニアと若手エンジニアが2人1組で担当して、人事面接は最後の確認をするパターンが多いですね。
現場のエンジニアには、技術力、キャラクターも含めて検討してもらい、「この人となら一緒に働きたい」と思う方を通してもらうようにしています。
メルカリ渋谷さん(以下、渋谷) メルカリもサイバーエージェントさんとほぼ同じで、基本的にエンジニアリングチームのメンバーとマネジャーが前面に立って採用面接を行います。
特にエンジニアリングマネジャーには、この候補者に入社してもらった場合に、お互いにどんなメリットがあるかを考えながら、面接をしてもらうようにしています。
DeNA立花さん(以下、立花) DeNAの面接プロセスも、皆さんの会社とほぼ一緒です。1次面接は現場エンジニア、2次面接がマネジャーで、最終は人事がやります。
面接のポイントは、技術力のレベルもさることながら『DeNA Quality』と私たちが呼んでいる行動規範にマッチする人物かどうか。
例えば、“「こと」に向かう”という項目があるのですが、本質的な価値を提供することに集中できる人かどうかを、一次面接の段階から見てもらっています。
――スキル面のチェックというよりも、理念に共感できる人か、社風に合う人か、というポイントを面接で確認しているということですね。
株式会社メルカリ 中途エンジニア採用担当渋谷亮介さん
IT系フリーランスエンジニア専門の人材エージェント、ギークス(旧ベインキャリージャパン)を経て、2018年7月からメルカリで、国内向けアプリの開発を担うエンジニアの採用に携わる。19年1月からチームリード
渋谷 そうです。メルカリの場合はわれわれのバリューである「Go Bold」「All for One」「Be Professional」にマッチする人物かどうかを見極めるための場が面接だと考えています。
佐藤 サイバーエージェントでは、「素直でいいヤツ」を採用基準に設けています。これは「一緒に働きたい人かどうか?」という問いを言い換えたもので、言わんとしていることは「個性はいろいろでOK。でも自分たちの価値観にあった人を採ろう」ということ。
これはエンジニアの中途採用でも変わりませんね。エンジニアに限りませんが、候補者の価値観って本当にバラバラ。それを見極めるのはとても大事だと感じています。
立花 それは確かにお二方がおっしゃる通りで、価値観が合っているかどうかは、採用を決める際の大切なポイントだと思います。
「技術が大好き」といってもいろいろじゃないですか。ひたすらエレガントなコードを書き続けたい人もいれば、お客さんが喜ぶようなサービスをつくりたくて技術にこだわりを持っている人もいる。本当に多様です。
佐藤 全員が全員、事業に関心があって、サービスにコミットしたい人ばかりじゃないのも確かです。給与が良くて、自己成長できる環境があれば、他は構わないという人もいますしね。
面接官がエンジニアなら、過去の開発経験や技術レベルは候補者と話しているうちになく把握できるものですが、その人の価値観はこちらから掘り下げないとなかなか見えてきません。だからこそ、手を替え品を替え、質問するようにしています。
渋谷 なぜわれわれが、採用面接のときに、自分たちのバリューにマッチする人物かにこだわるのかといえば、掲げているバリューを体現している人が実際に活躍しているから。いくら実力がある人でも、価値観がまるで合わない人は力を発揮していただけにくい場合が多く、お互いにとって不幸になってしまうと考えています。
立花 私もそう思います。技術力は高いに越したことはないですが、それをどう使うかは価値観に左右されます。
それに人間の価値観は他の要素と違って、すぐに変わるようなものではありません。会社の価値観と候補者の価値観が合っているかどうか、最初の段階でよく吟味するのがお互いの幸せにとって大事なことだと思います。
――書類選考の段階で選考プロセスから「落とす」ことも多いと思います。どんな点に着目しますか?
佐藤 正直に申し上げると、履歴書や職務経歴書にはあまり重きをおいていません。個人ブログのアドレスやGitHubのアカウントが書いてあったらラッキーといったぐらいでしょうか。
基本的には、書かれている内容が的外れな内容でない限り、なるべくお会いする方針です。
渋谷 私も佐藤さんと一緒です。候補者が個人ブログやGitHubを公開してくれたら必ず目を通すようにしています。
履歴書については選考の決め手になるような情報がないのでほぼ見ません。職務経歴書に関しては、経歴と経歴の間にストーリーがあるか、そのストーリーが当社に入社いただくことで、どのようにつながっていくのかをイメージしながら読むようにしています。面接でそのイメージが正しいかどうかを紐解いていきます。
株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材企画部組織開発グループ立花 啓さん
DeNAに入社後、ECサービスやモバイルゲームなどのバックエンド開発に従事。その後、エンジニアマネジメント、事業責任者を歴任し、2016年からエンジニア採用、人材開発、組織開発、技術広報などを担当している
立花 確かに、応募書類から読み取れることは限られています。手元の情報だけで、即NG、即OKと判断することはできません。こちらから開示している情報も限られていますし、求人内容からよほど大きく外れている人でない限りは、われわれもまず「会って話してみよう」となることが多い気がします。
エンジニア採用が厳しい折、良いエンジニアはなるべく取りこぼしたくありませんからね。
知りたいのはファクトとファクトの間にあるもの
――面接の際に、各社で必ずする質問はありますか? 狙いとあわせて教えてください。
佐藤 最初の自己紹介とか、簡単な質疑応答でその人のことが少しでも見えてきたら、ちょっと踏み込んだ質問をします。
例えば、「技術者としての成長にこだわりたい」という人なら「自分の思い通りにならなかった開発について聞かせてください」とか、「事業にコミットできる環境にいきたい」という人なら「いま担当しているサービスの競合状況やユーザーの動向を教えてください」とか、質問を一段階掘り下げるんです。すると、言葉に詰まってしまう人もいますし、きちんと説明してくれる人が出てきます。
ポイントは話が上手だとか、下手だとかということではなく、話の内容から候補者自身でさえ気付いていない本心や価値観のありどころを見極めようとしていることですね。
渋谷 エピソードを掘り下げて聞くのは大事ですよね。私が特に注意して聞くようにしているのは、いかに「パンドラの箱」を開けてきたかということ。
どんな会社にも、誰も手を付けたがらないタスクってありますよね。そういうイヤなタスクが詰まった箱を「ただ何となく開けてみた」とか「仕方なくやった」とかではなく、あえて自分から開けにいく人は、自分のキャリアや仕事に関する視座が高いと感じています。
ですから、「なぜパンドラの箱を開けようと思ったのか?」「どうして成功したと思うか?」「もし別の環境だったらどう対処するか?」と、エピソードのディテールをなるべく掘り下げて引き出すようにしています。
立花 われわれが本当に知りたいことって、ファクトとファクトの間にあるんですよね。
佐藤 確かにそうですね。そこは、面接官の技量が問われるところだと思います。
渋谷 そうした情報を引き出せるかどうかは、面接官の手腕にかかっているというのは、おっしゃる通りだと思います。
話を掘り下げて聞いていくことで、職務経歴書を読むだけではピンとこなかったキャリアとキャリア、ファクトとファクトの間が埋められるような、納得感のあるストーリーを話せる人は、自己分析と反省を次の機会に生かせる人であるはずなので、同じことを別の場でも再現できる人だろうという期待を感じますね。
立花 エンジニアが考える自分の強みって、どうしても技術力や専門性の高さに偏りがちじゃないですか? だからわれわれ面接官が掘り下げていかないといけないというのは確かにあると思います。
人事の立場から見れば、「エンドユーザー視点ですごく面白いサービス要件を考えられる」「プロジェクトがかなりヒドい状態に陥ってしまったときに、巻き取ってゴリゴリ推進していける」「メンバーが落ち込んでいたら声をかけてあげて正しい方向に導いてあげられる」といった技術力以外のところも十分な強みなので、面接官である私たちがそこを引き出す必要があると思っています。
佐藤 面接官と候補者がエンジニア同士だと、本論とは少し外れた技術ネタで盛り上がって、人となりと一緒に候補者自身の強みが垣間見えることがあります。でもエンジニア自身が、立花さんが挙げられたような経験を強みとして自覚していなければ、自分から話そうとは思わないでしょうね。
立花 そうですね。エンジニアの採用ですから技術力が大事なのは前提としてありますが、その一方で技術力以外の強みを聞き出せたら、行動規範にマッチするかどうかも分かります。「その強みはここで生かせそうだ」「こういう志向の持ち主なら、この部門の仕事がはまるかもしれない」とイメージできる方の方が内定を出しやすい。
技術スキル以外の強み自覚しているエンジニアは、転職に強いエンジニアといえるのかもしれませんね。
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴
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第1回 採用強者3社も獲得に苦戦!?人事が明かす「今すぐ欲しい」エンジニアの実態【メルカリ×DeNA×サイバーエージェント座談会】
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