ブラウザが何かもわからなかった営業マンが人気メディア新R25の編集長に。人生が変わった理由と今後のキャリアプランを聞いてきた
更新: 2024.07.09
TECH::NOTE編集長の桜口アサミです。
プログラミングなどが学べるテクノロジースクールテックキャンプと、未経験からエンジニア転職を実現するスクール「テックキャンプ エンジニア転職(旧TECH::EXPERT)」のオウンドメディアであるTECH::NOTEは、これまでエンジニアを目指す方向けの記事をたくさん公開してきました。
しかし、IT業界で働いている、もしくはIT業界で働きたいと思っているけど職種はエンジニアではない、という方もたくさんいます。みんな「どうやってキャリアを積んでいこうかな?」と悩んでいるようです。
じつは私もそのうちの1人。そんな悩みを解決する1つの手段となるために、非エンジニア職で活躍している方々を取材することにしました。皆さんどんなことを考えながらキャリアを歩んでいるのでしょうか。
初回は新R25の編集長である渡辺将基さん。TwitterやFacebookなどのソーシャルで毎日のように話題になるメディア「新R25」。渡辺さんは編集長としてだけではなく、大物へも臆さないインタビュアーとしても人気です。
渡辺さんはいつ、どのように頭角を現し、今後のキャリアについてどう考えているのでしょうか?人脈はどのようにつくっているのでしょうか?かなり真面目にお話をうかがってきました!
渡辺 将基
わたなべ まさき
「新R25」の編集長。現在の年齢は35歳、静岡県出身。大卒で人材会社に入社し求人広告の営業職に就く。24歳のとき当時取引先だった株式会社モンスター・ラボへ転職。その後、株式会社カカクコムを経て株式会社サイバーエージェントに在籍し、2017年に株式会社新R25を設立、同社取締役に就任。
この記事の目次
「ブラウザ」が何かわからずブラウザでブラウザと検索したあの頃
—— 最初のキャリアはIT業界じゃないんですね。
はい、IT業界じゃない企業でした。人材会社に新卒入社して1年くらい働いたあと、当時の取引先だったモンスター・ラボに転職したのがIT業界に入るきっかけになりましたね。
ただ、その時ITの知識が全くなくて。家にPCなかったですし。
「ブラウザ」って言葉も知らなかったんですよ。
—— え?!
インターネットエクスプローラーって言われたらわかったんですが(笑)。「ブラウザ開いといて」と言われて「ブラウザって何・・・?」ってなりました。
それで、ブラウザをブラウザで検索したんです。
「・・・あ、これか!これがブラウザか・・・」とビックリしたことを今でも覚えています。
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—— なんと(笑)その状態でIT業界へ転職を決意されたことがすごいと思います。
入社して本当に苦労しました。周囲がサラリと言っている言葉がわからないんですよ。はじめはわからないことを隠すのに必死でした。
—— 隠してたんですね。
「たぶんこの業界で、ここまで知らないのはやべぇな」と気づいたので(笑)。ただ、わかったフリでは乗り切れないことも多々あって。
営業をやっていたので、見積もり出したり提案を出したりしたときにお客さんから「これを作るにはどれくらいの期間がかかる?」と聞かれるんです。それを全てのお客さんに答えていくにはサーバーサイドやフロントサイドのこと、機能別の開発工数など、あらゆることがわかっていないといけないわけです。
—— そうですよね。どうやって勉強したんですか?
とにかく必死に。ありがたい話ですが、当時はエンジニアを捕まえてものすごくたくさん質問をして教えてもらいました。
今もプログラミングはできないですが、サービスをつくる上での基礎知識はこの時につきましたね。
その後は企画も出すようになり、だんだん自分がプロジェクトをまわす案件が出てきたんです。最初は営業だったのが少しずつプロデューサー的な仕事も増えていきました。
そうこうしているうちに「受託じゃなくて自社サービスをやってみたい」と思うようになり、カカクコムに転職したんです。
—— なるほどそういう経緯でカカクコムに。有名企業に入れて順風満帆なキャリアだと感じます。
いや、じつはそうでもなくて。カカクコムでは大きな仕事ができずに、正直くすぶっていたんですよ。そのタイミングで「普段自分が考えていることを発信してみたい」と思って、ブログ(Approach to Innovation)を書き始めました。
くすぶりながらも、発信していたことでチャンスをつかめた
—— どんなブログを書き始めたんですか?
サービス設計やUIなどの観点で、いろいろなサービスの成功要因を自分なりに分析したり、「こうしたらいいんじゃないか」みたいなことを書いてましたね。そのブログが結構多くの方に見てもらえるようになって。
そのタイミングでサイバーエージェント主催の社会人向けのアプリコンテストがあり、それに応募しました。そのコンテストで運良く優勝することができたんですが、さらに運がいいことに当時サイバーエージェントはUIに強い人材を探していました。僕がUIについて発信していたことで目をつけてもらえ、代表の藤田に面接してもらって入社が決まりました。ラッキーでしたね。
—— ブログで人生変えてる人だ!
です(笑)。今も採用時とかその人のTwitter探したりするので、発信することや内容って今もめちゃくちゃ大事だと思います。
—— サイバーエージェントは合っていると思いますか?
合ってますね。いろいろやらせてもらえますし。特に自分がいいなと思うのは、自分のダメな部分とかを指摘してくれる上司がいたり、目線を引き上げてくれる環境があることです。常日頃「それ、今おまえがやることなのか?」「そんなことしてたら全然ダメだよ」って言われてます(笑)。起業とかすると、自分がやりたいことできちゃう分、自分は本当にダメになると思ってるんです。
じつは僕、飽き性の逆なんですよ。同じことをずっとやってても飽きない。人に任せるべきな細かい作業とかも好きだし、ずっと続けられてしまうんです。
ただ、同じことを繰り返していたら自分も事業も成長しないじゃないですか。だからケツを叩いてくれる人が周囲にいないといけないんです。いろいろ指摘されたときは嫌なんですけどね(笑)でもあとから考えると、「ああ、あのとき言われてよかったな。目線を引き上げてもらえたな」と思うことが多いです。
起業しなくても、会社員でも、やりたいことをするには「発信」
—— 会社員のいいところを教えてくださいましたが、起業の意思はないんでしょうか?
ないですね。僕は起業に向いてないと思ってます。誰か仲間を見つけるとか巻き込むとかが一番苦手。ずっと1人で地味な作業をし続けちゃうと思います(笑)食べていける自信もまったくないですしね。
安心して死ぬ気で働けて、成長もできる今の環境が最高です。サイバーエージェントは事業領域が広くていろんなことにチャレンジできますし。
—— 自分がやりたいことをやるために何か気をつけていることはありますか?
発信することですね。発信していると、自分がどういう志向で、何が得意なのかを会社も把握してくれるんですよね。
そうすると、自分に合った仕事を引き寄せられるんです。結果的に、自分が情熱を傾けられる事業になる。
発信し続ければ、起業しなくてもやりたいことができると僕は思っています。
—— 入社前も入社後も「発信」で人生を変えていますね。
たしかにそうですね。あとは、自分に向いてるやり方を見つけられたことがよかったです。
はじめは旧来の編集長のイメージにとらわれて、マネージメント主体のやり方を模索していたのですが、僕には向いていませんでした。
うまく行かずに苦しんでいるとき、当時の上司から「もう渡辺が書くしかないよ。それでダメなら諦めよう」と言われたんです。そこから自分でインタビューをして、納得できるクオリティで原稿を書いてみたところ、うまくいったんですよね。
自分がプレイヤーとして突っ込んでいくことで、それを見た他のメンバーが「そんなふうにやればいいんだ」とか「そんなことやっていいんだ」という気づきを得てくれたように感じます。結果、チーム全体が上昇気流に乗っていきました。
—— 新R25にそんな歴史が・・・!どんな職種でも旧来のイメージにとらわれてしまうこと、多そうです。
編集長という立場上、今もどうしてもマネージメントが必要な箇所は出てきますが、早めに自分の力が1番発揮できるスタイルを知れたことは本当によかったですね。「こんなふうにチームを動かす方法もあるのか」という、大きな気付きでした。
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いいアイディアにたどり着くには、とにかく考え続けること
—— 現在、新R25のファンも増えてきていると思いますが、どういったメディアにしたいですか?
国民的メディアにしたいです。20代のビジネスマンなら読んで当たり前だと言われるような。
バーティカルメディア(特化型メディア)には興味がなくて、確固たるブランドがありながら大衆層にリーチできるメディアをイメージしています。
ただ、そういうことを言うと、周囲からは「浅く広いメディアになるぞ」と言われますけど、僕は世の中に「狭く深いメディア」か「広く浅いメディア」しかないのであれば、「深く広いメディアをつくれば勝てるってことだ」と考えています。難易度の高いことを実現するからこそ競争力になるはず。
ただ、事業として収益性の高いメディアにするのは相当難しい。プラットフォーム以外の成功事例が少なすぎます。その意味では、NewsPicksはすごいですよね。さまざまな要素が絡み合って、絶妙なバランスでメディアとしても事業としても成立しています。
僕のスタイルは、時間をかけてずっとずっと考えるスタイルです。
僕は、常日頃からメディアやコンテンツのことをずっと考えています。本当にいいアイデアって、合宿とか短期間で集中して出てくるもんじゃないんですよ。ネットで調べましょう、さぁ考えましょう、では絶対無理。そんな簡単なものじゃない。
仕事中もプライベートでもずっと考え続けて、アイデアの欠片がちょっとずつ集まってくる。でもすぐ行き詰まるので一旦寝かせて、また別のアイデアを考え始める。そんなことを繰り返しているうちに、これまで考えていたことが急に線でつながってモノになったりするんです。質の高いアイデアにたどり着くためには、頭の中で膨大な壁打ちが必要です。
フットワークが重くても著名人と人脈を築くコツ
—— 渡辺さんは、堀江さんやはぁちゅうさん、箕輪さんといった著名人の方ともつながりが強そうですが、人脈をつくるコツはありますか?
僕は一般的な編集長みたいに、人脈を積極的に作ろうとするタイプではないです。フットワークもすごく重い。飲み会とか全然行かないですし。自分から連絡もしないですね。
—— たしかにあまり飲み会とか行ってるイメージない・・・。そうすると、どうやって人脈をつくれているのでしょうか?
発信力×事業成果だと思います。またここで発信が出てきますが(笑)ただ、人脈に関しては発信力だけあっても意味ないと思いますね。事業が成長していく中で発信していると、レバレッジが効く。自分から「会いたい」と言わなくてもむこうが知ってくれるパターンも出てきます。
自分のその時のレベルに合った人とつながれることが心地いい人脈だと思っています。自分から会いたい会いたいと言って身の丈に合わない人とつながっても、向こうには何も響かないし、自分も手応えがない。時間の無駄です。
その時の自分のレベルにマッチする人とは、一度会ったら継続的につながれることが多いですね。そういう人脈づくりが1番意味があるし、楽しいです。
キーマンとして国民的ヒットサービスを作りたい
—— 今後のキャリアはどう積んでいきたいと考えていますか?
キャリアはさすがにこの歳になるとかなり考えますね。ただ、キャリアうんぬんよりも国民的ヒットサービスをつくりたいという気持ちがかなり強い。LINEのように誰もが使っているサービスをつくりたいんです。それを今の会社でできたら嬉しいですね。
さらに言えば、自分がそのサービスのキーマンでいたい。これは本当にただの自分の欲ですが(笑)
だから、できあがったフェーズで参加するよりも「自分が大きくした!」と言えるフェーズでジョインしたいですね。
—— メディアを国民的ヒットサービスとしたいのでしょうか?
メディアかどうかにはこだわりはないです。今は新R25をやっているので、それをできるだけ多くの人に読んでもらいたい、インパクトを残したい、と思っていますが。
僕、典型的な編集者ではないですからね。ディレクターを経て編集者になっているので、コンテンツというよりトータルプロデュース志向が強いと自負してます。中途半端なキャリアなんじゃないかと悩むこともありましたが、今はむしろそれがよかったな、と思っています。
今のWebメディアってコンテンツを作っては消費されていく構造が強くて、確固たる成長戦略を描くのが難しいんです。そうなるとコンテンツだけじゃなくてメディアや事業を設計する力が必要で、そこでプロデューサー目線・ディレクター目線が生きてきます。
一方で、メディアをやるなら強度のあるコンテンツを生み出せる力はやっぱり必要。それもある程度感覚をつかむことができたので、ディレクタースキルと編集スキルのハイブリッドが今の自分の強みですね。
—— 渡辺さんがおっしゃるとおり、キャリアを考えたときに「いろいろ経験する」ということを「中途半端なキャリア」と悩む人もたくさんいますよね。
たしかにそういう面もあるかもしれません。つまみ食い程度のスキルだとそうなりそうですね。そうじゃなくて、一定期間没頭して、特定のスキルをがっつり伸ばすことが重要です。そうすれば、代替不可能で高次元なハイブリッド人材になれます。
リーダーとして意識している3つのこと
—— マネージメントは苦手だということですが、実際にチームを引っ張る上でリーダーとして気をつけていることはありますか?
考えてみると、3つあります。
- 「自分はこうしたい」という意志を示す
- 新しいチャレンジを先導する
- 朝令暮改を恐れない
「自分はこうしたい」と意志を示すのは、サラリーマン編集長だからこそ意識しないといけないことだと思ってます。自分の気持ちや温度が宿っていない言葉は絶対メンバーに伝わってしまうので。
また、新しいチャレンジを先導できる存在じゃなければいけないとも思っています。既存の枠組みのなかでのチャレンジはメンバーみんなでできることですが、そういったものを大きく壊してリスクのあるチャレンジをするというのは、リーダーしかできないじゃないですか。
最後の「朝令暮改を恐れない」ですが、これはちょっと前に反省したことがあって。
ユーザーのことを常に考えていると、どうしても考え方が変わることがあるんです。決定事項だとしても考え続けた結果「これじゃダメだ」と判断が変わる。でも一度チームメンバーに「こうします」と言ったことを覆すって、勇気がいります。「この前言ったことと違うじゃん」と思われるんじゃないかと気になりますよね。メンバーに言ったことを充実に守る方が誠実なマネージャーに見られますし。
そんなことに悩んでるとき上司に「お前の役割は何だ? 事業を成功させることだろ。本音を言えないリーダーが一番最悪だ」と言われてハッとしたんです。
メンバーに気を遣うことが自分の役割じゃない。ユーザーや事業に向き合うことが一番大切なことでそのために変えるべきところは変える。方針が変わるときは、ちゃんとメンバーにそれを説明して「ごめん」と素直に謝ればいいんだと。最終的には、そうやってユーザーに向き合っているリーダーの方が信頼を集めると思います。
僕も、いつでも本音を気兼ねなく言える暴君タイプのリーダーになれたら楽なんですけどね(笑)
おすすめの1冊
—— それでは最後に、読者へおすすめの本を1冊教えてください。
あまり本を読まないんですが「ストーリーとしての競争戦略」これはとても参考になりました。ビジネスを考える上でのチェックポイントが自分のなかで確立されたというか。おすすめですね。
—— 渡辺さん、今日は本当にありがとうございました!
テックキャンプではTI業界だけでなく、転職を考えている全ての方におすすめです。
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編集後記
渡辺さんが話されていた「ずっと考えてるんです。ずっと。ずっとです。」がとても印象に残っています。キャリアアップやサービスの成長には、こういった泥臭い時間が必ず存在します。
また、今回のインタビューでは改めて発信することの大切さを痛感しました。私の周囲からも「Twitterやろうかな、でも今さら始めてもなぁ・・・」と言う声もよく聞こえてきます。世の中の多くの人がそう感じているかもしれません。
それでも、人生で1番早いスタートは今!
泥臭く続けていると、あなたの人生も変わるかもしれません。最後に渡辺さんのこちらの記事をご紹介します。
大切なのは目線と勇気 新R25編集長の「聞き出す力・企画の力」 | FEATUReS
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