変化の早い今を生き抜くために必要な「21世紀型スキル」とは?リクルート次世代教育研究院院長が語る、これからのテクノロジーと学び
更新: 2020.10.05
今最も熱い業界の一つだとも言われているEdTech。全ての人に教育機会を与えられる手段として大きな注目を集めています。
しかし、実際の教育現場では、テクノロジーによって格差が広がっているといいます。今回は、リクルート次世代教育研究院 院長の小宮山利恵子さんに、未来の教育のあるべき姿についてお話を伺いました。
プロフィール 小宮山利恵子さん
リクルート次世代教育研究院 院長
1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。国会議員秘書、株式会社ベネッセコーポレーション等を経て、2015年11月に株式会社リクルートマーケティング パートナーズ入社。
財団法人International Women’s Club JapanにてSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育推進委員長。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。東洋経済オンラインにてICT教育の連載を持つ。
この記事の目次
一人親家庭で育ち、高校から大学院まで奨学金で通った学生時代が自分の原点
−−国会議員秘書としてキャリアをスタートさせた小宮山さんですが、いつ頃から教育について関心をお持ちでしたか。
学生時代からずっと興味を持っていました。私は一人親家庭で育ったのですが、高校・大学・大学院と全て奨学金を頂きながら勉強してきたという経験があります。
留学も一人親だからできないかなと思っていたのですが、外国からの奨学金を頂くことで行くことができました。
そのような経験から、経済的な問題で進学を諦めている人たちもやり方次第でどうにか教育を受ける方法があるのではないか、と考えるようになりました。
議員秘書時代も、国会で開かれる教育の勉強会には積極的に参加していましたね。
−−実際に仕事として教育に関わるきっかけは何だったのでしょうか。
ベネッセで福武会長の秘書として仕事をしたことです。前職の議員秘書は結婚を機に辞め、出産を経て転職活動をしました。
当時から教育関係の仕事に興味があったのですが、議員秘書の経験がどう民間で活かせるのかアピールしにくかったのですが、ご縁があり役員秘書としてキャリアを再スタートするに至りました。
ベネッセで福武会長と仕事をさせて頂いた2年間で、じっくり教育に取り組みたいという思いが更に強くなりました。
そこで、当時「IT×教育」や、ゲームの良い部分を教育に活用する可能性を考えたいと思い、グリーに転職したんです。
ITは怖いものではなく、子どもたちの可能性を拓くツール
−−グリーでは、全国の学校を回って子ども達にITの利用に関する啓蒙教育を行っていたとのことですが、全国の子ども達や親、教師と実際に話して感じたことはありますか。
まず、デジタルネイティブ世代であるいまの小・中学生は、ITに対しての抵抗感が少ないですね。おそらくスマホやタブレットを通して、幼い頃からITが日常に溶け込んでいるからでしょう。
一方の先生や親御さんはというと、まだガラケーを利用している人が多く、何を触ると何が起こるかさえ想像がつかないと話す方もいらっしゃいました。
子ども向けの講演後、PTAの方々に「GPSってどうやってOFFにすればいいですか?」と聞かれることもよくありましたね。
−−では、ITをポジティブに捉え、勉強していきたいと考えている方が多いのですね。
いいえ、必ずしもIT化を歓迎している方ばかりではありません。むしろ、「IT=怖い」と認識している人の方が多い印象でした。
講演前に先生から「ITの“怖さ”を子どもたちに教えてください」と頼まれたこともあります。
私はあくまでもITとの付き合い方を学んで、何かを知る新しいツールとして考えてほしいと思って活動していたので、これには少し驚きました。
もちろん、たった一度の炎上で就職や結婚といった人生の転機を台無しにしてしまうような怖さはあります。
ただ、単に危ないから遠ざけるのではなく、リスクを子どもたち自身に理解させた上で、ITの“面白さ”を学んでほしいと考える人が増えていけばいいですね。
週5時間以上学び続けないと、職を追われる時代が来る
−−現在小宮山さんはリクルート次世代教育研究院にて、未来の教育に関する研究をされています。
動画やプログラミングを活用した最先端のIT教育が急速に広まる一方で、スマホさえまともに触ったことがないようなITリテラシーのない大人がいる教育現場があるという二極化の現状について、どうお考えですか。
以前はITの発達によって、地域や家庭環境に関わらず全ての人が教育の機会を享受できる世界を実現できるはずだと“妄想”していました。
しかし、そこまで到達するにはまだ時間がかかりそうです。
情報にアクセスできる子ども達のみが学びを深め“豊か”になる一方、情報を得る術のない子ども達は学ぶ機会を得られぬまま取り残されている場合もあります。
更に、教育格差は地域間でも広がっています。例えば、市長などその地域のトップがICT教育に熱心だと、学校に積極的に新しい仕組みが導入されITに触れる機会が増えます。
それに対し、ICT教育に熱心な首長がいない地域では、本来ICT教育に使われるべき予算さえも他のところに使われてしまうということが起こっています。
同じ日本の公立学校に通っていても、地域の首長の考え方によって格差が生まれてしまうというのが日本の現状です。
−−このような状況を変えるには、どのようなことが必要でしょうか。
究極的には、例えばプログラミングの必修化や大学入試科目への導入など、トップダウンで施策を降ろしていかなければ問題は解決しないと考えています。
ただ、2020年の大学入試改革に先立ち、慶應大学の一部の学部が選択科目という形で「情報」を入試科目に入れるなど、徐々に社会の変化も見え始めています。
このような社会の変化を踏まえて、個人も自主的に学び続けていかなくてはいけない時代が来ています。
2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるという話は有名ですが、最近ではもっと早まるのではないかという説も出てきています。
一方で、脳科学がまだ研究の途上なので、シンギュラリティはもっと後ではないかという議論もあります。
いずれにしても、変化が早く未来が予想できない中で生き残るために個人が出来ることは、常に学び続けること以外ありません。
−−具体的には、何をどのように学んでいけばいいのでしょうか。
あるアメリカの研究では、週に5〜10時間の学習を続けていないとCEOは職を追われるようになるという話もあります。
実際にアメリカでは、オンライン授業による学位取得やピア・ラーニング(Peer learning, 対話を通して学習者同士が互いの力を発揮し協力して学ぶ学習方法)と言う公共機関を利用したグループ学習などを利用してプログラミングを学ぶ人も増えています。
これまでは一つの答えを早く正確に出す能力が重要でしたが、これからは必要な情報を取捨選択し、それらを組み合わせて、答えを導き出す能力が必要になると言われています。
だからこそ、これからの時代を生き抜くために必要な能力、いわゆる21世紀型スキルと呼ばれている能力を身につけるための機会を、全ての人に提供したいです。
その機会創出のために何ができるかを、これからも考え続けていきたいです。
小宮山さん、貴重なお話ありがとうございました!
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