転職したいと思っているあなた。多くの企業が定めている「試用期間」について正しく理解しているでしょうか。
場合によっては「正社員になれないのでは?」「途中でクビになることってあるの?」「給料は少ない?」など疑問もわいてきます。この記事では「試用期間」のあなたの不安や疑問にしっかり応えられるように詳しく説明します。試用期間がどういうものかを知っておけば転職先でも困りません。
ご自分自身のためにもしっかり把握しておくことをおすすめします。この記事では、正社員の試用期間に関する情報をお届けいたします。
2018年5月28日追記:試用期間中の退職理由の考え方と伝え方について追記
試用期間とは?
就職や転職の求人情報を探していると頻繁に目にする「試用期間」。これは、一体どのような期間なのでしょうか。気になっている方も多いと思います。
そもそも試用期間とは?
そもそも「試用期間」とは、どういう役割や意味があるのでしょうか。試用期間は、文字通り企業側が設けた「お試しの期間」です。つまり「企業が人材の勤務態度や能力などの適性を観察する期間」ということです。基本的にはこの期間の後に、正社員としての正式な契約に移行します。
一般的には数回行う面接を、現代では1度だけで採用するといったスピーディーな人事を行う会社も増えています。しかし、その面接だけではどのような人材なのか判断がつかないことが多いのも事実です。試用期間は、そのよう状況に対するリスクを下げる手段と言えるでしょう。
試用期間の長さは法的には定められていません。企業によって自由に設定できるので、その期間はさまざまです。ただ、1カ月から半年程度であることが一般的です。企業側は、試用期間の間にその人材の適性を判断し、本採用とするかどうかを決定します。そのため、試用期間は長期雇用を前提として設けられています。
試用期間については「就業規則」や「労働契約書」にその条件が明記されているのでしっかり内容を確認しておきましょう。
参考:「試用期間」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性
試用期間中の待遇
本採用されるまでの試用期間は、どのような待遇になるのでしょうか。正社員と同様に扱われるのでしょうか。本採用になっていない自分の立場や待遇がどうなるのか気になりますよね。
試用期間といっても正社員として雇用されることが予定されているのであれば「正社員」の待遇で扱われます。
残業代や雇用保険・社会保険は?
たとえ試用期間でも残業代は支払われます。そのほか業務命令で研修に行く、などももちろん賃金は支払われます。「これは勉強だから」と支払われないことは許されません。
また、長期雇用を前提としているのですから、試用期間だからといって有給が取れず社会保険に加入できないということはありません。
試用期間中も雇用保険・健康保険・労災保険・厚生年金といった各種社会保険への加入は義務付けられています。
ただし臨時雇用者や季節労働者の場合など例外が存在するので、長期雇用を前提にしているのかどうか契約の際に提示された書類をきちんと確認しておくことも大事です。
試用期間中の解雇について知っておく
しばらく働いていたら、いきなり会社から「あなたとはなんとなく合わないので明日から出勤しなくていいです」と伝えられ、本人の意思とは無関係に突然解雇される。あなたは、試用期間だとこんな状況が起こり得ると思っていませんか?
結論から言うと、労働契約としてそのような一方的な解雇は認められていません。もしも、そのような状況にあったしてもあなたは、「仕方ない」とあきらめる必要はないのです。
試用期間中の労働契約について
試用期間中と言っても使用者と従業員が契約を結んだ時点で、雇用の効力が生まれます。しかし、それと同時にその期間中は使用者は契約を解除する権利を留保した状態でもあるのです。
その試用期間の間に従業員が会社の業務には不適格と判断されれば、通常よりも大きい範囲で解雇が認められるとされています。
試用期間中に解雇と言われたら
本採用となる前にある「#試用期間」でも、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、本採用拒否は認められません。 https://t.co/8vovC76Q6x pic.twitter.com/btTL4pOWA0
— 弁護士ドットコムライフ (@bengo4life) 2017年1月20日
上記で説明した通り、試用期間であれば会社は従業員に対して契約を解除する権利を留保しています。しかし、試用期間を経て長期雇用を前提としているのであれば労働契約が締結しています。つまり、正当な理由がない限り会社は従業員の雇用契約の解除はできません。
試用期間中に解雇すると会社側から言われても、正当な理由に該当しない状態であればそのまま素直に同意するのはちょっと待ちましょう。
「正当な理由」は、無断欠勤・無断遅刻・無断早退といった勤務態度の不良や極端な能力不足などです。また経歴詐称も同じく対象になります。つまり、その会社の社員として著しく不適格であると判断される場合です。
ただし、これとは別に企業は特例として雇い入れ後14日間は従業員を解雇できるのでこれも注意しましょう。
「何となく合わない」「期待していた能力ではない」などはもちろん不当な理由です。企業は、解雇通知に関しても、通常の解雇と同じく30日前に予告する、もしくはその代わりに、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金(最近3カ月間を平均した1日分の賃金)を支払うことが義務付けられています。
通常の解雇通知の手順と同じように「30日前に予告する」、もしくは「解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払う」ことが義務付けられているのです。また、経歴詐称以外の場合には企業側に教育や指導を行う義務が発生することも合わせて覚えておきましょう。
試用期間という不安定な契約な状況は誰にとってもストレスに感じるものです。会社は従業員に対して適正な評価を行い、できるだけ解雇を回避する努力が求められます。
試用期間中に解雇と言われないために
やはり社会人としてきちんと勤務することに尽きます。なぜなら、社会人としての常識に欠ける行動をとった場合は、解雇される確率が高くなるからです。
先輩や上司からの指導や教育はその意味を理解して素直に受け止めましょう。そして、それを踏まえた自分を改善する努力は不可欠です。また、どうしても休む場合や遅れる場合にはしっかり連絡を行って事情を伝えるなど、会社の従業員として真摯な態度で働きましょう。
先にあげた無断欠勤・無断遅刻・無断早退などの勤務態度の不良や経歴詐称だけでなく、勤務中にスマートフォンでゲームをしたり友人とLINEをしたりするなどの業務と無関係の行為もよくないでしょう。
当然といえば当然なのですが、「このくらいいいだろう」という気の緩みや油断が思いもかけないミスにつながったり、協調性のない常識に欠ける行動につながったりすることもあります。
仕事に対する日々の努力はもちろん、勤務する態度について客観的に顧みることも必要です。
「合わない」試用期間中に辞めたくなったら
いざ仕事を始めてみたら「会社の雰囲気がどうも合わない」「人間関係がつらいので辞めたい」「業務内容がイメージと違う」ということが起こることも十分考えられます。試用期間中に辞めたくなったらどうしたらよいでしょう。
早めに伝えることが大切
自分の辞める意思が固まったら、まずは早い時期に会社に対して明確に伝えることが大切です。最初に直属の上司にしっかりと自分の言葉で伝えましょう。社会人として、ただ「合わないので明日から来ません」は通用しません。
試用期間であっても、雇い主である会社との労働契約は成立しています。労働基準法のルールを守り、「退職する予定日の14日前」に退職の申し出をします。これは通常の労働契約と同様の手続きと言えるでしょう。
知っておいていただきたいのは、即日退職は原則NGだということです。労働基準法では、退職予定日の2週間前に退職の申し出を行なうことが定められています。退職を決意したら、なるべく早く直属の上司に伝えるようにしましょう。
ただし、「退職の1ヶ月前に願い出ること」などの社内規定が存在する場合には、それに従う必要があるので注意してください。
また、退職には、「自主退職」と「合意退職」があります。自主退職は労働者である自分の意思によって退職の効力が発生します。雇う側の意思とは関係なく、自己都合で一定期間が経過した後に退職できます。
合意退職は退職願を提出して、雇う側がそれに合意することで退職の効力が発生します。どちらの形であっても、退職までにある程度の日数が必要です。早めの対応をおすすめします。
理由はきちんと伝える
どうしても辞めたいという強い意思があるのなら、理由もきちんと伝えたほうがお互いにとって適切な対応です。
うつ病などの心の病気によって休むことが必要な状況や上司からのパワハラが理由の場合には、会社にしっかりと伝えることにより職場環境の改善につながる場合もあるでしょう。
また、「会社の雰囲気に違和感がある」「やたら飲み会があるのが嫌だ」などの個人的で感情的な理由であっても会社批判はしないようにします。
「私が入社前に勝手にイメージを持ってしまい、実際に働いてみると現実は違うことがわかりました」とあくまで自分を主体にして伝える方が納得されやすいでしょう。
以下で、状況に合わせた退職理由の考え方について詳しく解説します。お互いが納得できる円満な退職のために参考にしてみてください。
社風や雰囲気が自分に合わない場合
先輩や上司との人間関係や会社の社風になじめないことを負担に感じる場合も考えられます。時には、自分の周囲に働きかける努力や我慢が足りないのではないかと悩み、退職の判断が難しい場合もあるでしょう。
しかし、そのような状況が続けば、精神的に大きな負担になることは事実です。会社に対して、ネガティブな感情も抱くかもしれません。ただ、自分に合わないからと言って退職の理由として会社自体を否定するような表現を使うのは避けましょう。
そのような退職の理由を耳にして、今後も働くあなたの上司や先輩はけして良い気持ちはしません。その方たちは、あなたが退職する会社でこれからも働いてくのです。あなたにとっても周囲の方にとっても、気持ちの良い退職を心がけましょう。
希望していた仕事内容ではなかった場合
スキルアップを目的として転職をしたのに、面接で話した業務内容とは異なり現場では単純作業ばかりで成長が見込めない。あるいは、その逆に仕事の幅が広すぎて、何でも屋のようになってしまっていることがつらいというケースも考えられます。
また、実施に働いていみると最初にイメージした条件・内容とは違うという場合もあるでしょう。このような希望していた仕事内容とは異なった場合にも、会社のせいにするのではなく自分の視点から退職の話を伝えましょう。
また、仕事の内容に不安・不満を感じたときには、退職を決断する前にまず上司や人事の方に相談することをおすすめします。それにより、客観的な意見を得て悩みが解決したり、希望する現場への異動が実現したりということも考えられます。
退職を伝えるタイミングや方法について
試用期間中という短い間の付き合いであっても、会社に対して退職の意思を伝えるのは簡単ではありません。まずは、メールや社内の連絡ツールを利用して、上司にアポイントを取ります。そして、退職に関する話し合いを行う時間を確保してもらいましょう。
退職の意思を誰かに代わりに伝えてもらったり、メールやLINEといったツールを使ったりして済ませるのではなく、やはり自分の口から直接伝えるのが社会人としての礼儀です。
また、口頭での約束だけではトラブルの原因になる場合もあります。金銭や退職日などに関わる重要な内容であれば、話し合いや手続きの内容について書面に残すことも大切です。退職届を出して、会社に受理してもらうという正規の手続きも忘れずに行いましょう。
転職の履歴書を出す前に
とにかく早く仕事を変えたいという気持ちで転職活動を開始。深く企業のリサーチを深く行わずに履歴書を出したら再びミスマッチ。このような残念な状況は起こりがちです。
まずは本当にここに採用されてずっと働きたい会社なのかどうか、よく確認しましょう。
特に今の職場環境があまり好ましくない時など、とにかくどこでもいいから仕事を変えたいという気持ちから焦ってしまうこともあります。
しかし、あなたの人生に大きく関連する仕事選びが、そのような一時的な気分に影響されるのは良いことではありません。条件や労働環境を慎重に吟味しましょう。またあなたに合わないしごとを選べば、振り出しにもどってしまいます。
求人サイトや会社のWebサイトに掲載されている情報だけで選ぶのではなく、説明会などに足を運んで詳しく調べましょう。また、企業の口コミや評価を知ることができるサイトでの実際の評判・社内環境・制度・雰囲気などのさまざまな事項のリサーチも重要です。
もちろん、どれだけ調べてもどうしても働いてみたら自分の合わないこともあります。ただ、少しでもそのようなリスクを減らすためにも丁寧なリサーチは必要です。
試用期間終了時に気をつけたいこと
試用期間が終わってほっとした気分に包まれたところで、「採用されなかった」「試用期間の延長」という思いもかけないことが起きたら大変です。このような時の対処はどうしたらいいのでしょう。
以下で試用期間終了時に起こりやすいトラブルと、抑えておくべきポイントについてまとめて紹介します。
試用期間が終了後の「不採用」
試用期間満了となれば、これからもこの会社で本格的に活躍していこうと思うでしょう。そのような試用期間満了となった段階で「当社には合わないから採用はしない」などと採用を拒否された場合は、どうすればいいのでしょうか。
「試用期間だったからそんなものか」「テスト期間なので仕方がない」と納得してしまいそうですが、これは労働契約の解約と同じことで解雇に該当するのです。「正当な理由なくして不採用にはできない」と覚えておいてください。
社会通念上認められる理由がなければ、試用期間を満了した社員を不採用にはできません。
試用期間を延長されてしまった
日々一生懸命働いて、試用期間が終わりほっとしたのも束の間、「当初の予定からもう3カ月間終了期限を延長したい」と言われたとします。これはどう対応したらいいのでしょうか。
「せっかく正式に雇用されると期待していたのに」と思うのは当然のことです。ただし、企業側にも試用期間の延長に相当する正当な理由がある場合は認められます。それは次の通りです。
1.延長する場合があることが就業規則や労働契約書に明記されていること
2.延長の理由に合理性が認められること
3.延長する期間が、最初の試用期間と合計しておおむね1年以内であること
上記以外の、たとえば企業側から「なんとなく合わない気がする」などのあいまいで合理性がなり理由で延長することはできないのです。最長でも1年程度と認識しておくと良いでしょう。あまりにも長過ぎる試用期間は無効となるケースもあります。
また、わが国の労働基準法においては、試用期間の長さの限度は特に定められていないのですが、民法90条「公序良俗」の観点から、おおむね1年程以内が試用期間の上限であると考えられています。
前述のように、従業員の試用期間には上限もあります。企業側はむやみに試用期間を長くとれないことも覚えておいてください。また、何度も試用期間の延長を行うこともNGです。これは、不安な気持ちを抱えながら働いている従業員のことを考えれば当然でしょう。
試用期間での「困った」はまず相談
「就業規則にも労働契約書にも記載されていないのに、研修中の賃金が支払われない」「解雇と言われてしまった」など試用期間中に困ったことが起こるかもしれません。
そんな時は1人で抱え込まずに早めに相談することが、解決への糸口になります。以下に試用期間中に困った時の対処についてまとめました。
相談する先は?
なによりもまずは使用者である会社に相談することです。たとえ会社側に大きな不満があったとしても、「試用期間中のことで相談をしたい」旨を伝え、冷静に自分の困っていることや疑問を相談することが大切です。
また、真摯に相談しているにもかかわらず、会社側に問題をあいまいにされたり取り合ってもらえない場合もあるでしょう。そのような時は、トラブルの内容ごとにそれに対応した所轄の行政機関に相談ができます。
賃金が支払われないなどのトラブルは「労働基準監督署」、社会保険に関することは「年金事務所」、雇用保険に関することは「ハローワーク」に相談ができます。
弁護士に相談する選択肢も
行政期間に相談しても問題が解決しない時に相談したいのが弁護士。その中でも、労働問題に強い弁護士に相談すると心強いでしょう。
会社側に違法性はないのか、対応する方法はあるのかなど、法律上の観点から解決策を見いだせる可能性が高いです。金銭的に不安がある場合には、最初は無料法律相談などを利用するのも手です。
ただ、弁護士に依頼して訴訟を行うと時間も費用もかかります。そのため、気持ちを新たに転職活動を再開したほうがよい場合もあるということ覚えておきましょう。
さいごに
なんとなくあいまいだった「試用期間」ですが、ポイントをしっかりおさえておけば大丈夫です。まずは「長期雇用を前提としているか」をチェックしましょう。
そして「試用期間だからといって簡単に解雇できないこと」「給料も残業代もきちんと支払われること」「福利厚生も受けられること」も覚えておきましょう。
「自分から辞めるときは14日前に伝える」ことも頭の隅に置いて、「ここだ」と思ったらとにかく精一杯仕事をする、これが何より大切です。
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