あなたはエンジニアの教育の未来について考えたことはありますか?ITビジネスは今後も拡大することが予想されますが、それに対応できるIT人口の不足が世界的に問題になっています。そこで、今回は日本の小学校でのプログラミング教育が2020年から必修化が検討されていることを受け、注目を集めているエンジニアの教育についてご紹介します。
あわせて、国内外のエンジニア教育の現状や課題など詳しく解説します。この記事を読めばエンジニア教育の未来がわかります。
エンジニアの教育
日本国内のエンジニア教育について
出典:写真AC
2020年から小学校でのプログラミング教育が必修化されることが発表され、日本のエンジニアの教育について気になっている方も多いのではないでしょうか?
実は、日本ではすでに2012年から中学校ではプログラミングの授業が必修化されています。プログラミング教育が必修化された理由として、IT人口の不足が背景にあります。
2020年には36.9万人、2030年には78.9万人の人材不足が予想されている厳しい状況です。
そのため、小中高校の教育からプログラミング教育を行うことで、IT業界への関心と技術を高め、IT人口を増やすことが目標として掲げられています。
そして、総務省は2025年までにIT人口を100万人育成する方針を発表しており、新たな資格制度の導入も予定されています。
また、IT人口を増やし、技術の高いエンジニアを育てることで、AIの進化やあらゆるモノとインターネットがつながるIoTに対応していく狙いがあります。
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エンジニア教育国内市場
小学校や中学校だけでなく、プログラミング教育を行う民間企業が増えています。必修科目となったことで、注目が集まり、エンジニア教育の市場は拡大しています。
・Tech Kids Camp
インターネットメディア「Ameba」で知られる株式会社サイバーエージェントはTech Kids Campを運営しています。
Tech Kids Campは小学生のためのプログラミング入門ワークショップとして、プログラミングやデジタルのものづくりの楽しさを学んでもらうことを目的としています。
2013年8月の初めての開催以来、約13000人以上が参加し、注目を集めています。
・Life is Tech!
Life is Tech!は2011年にスタートし、約15000人以上の中学生・高校生が参加する日本最大級のIT教育プログラムです。
アプリ、ゲーム製作のプログラミングや、音楽や映像といったデジタルアートを通して、「創造する力」、「つくる技術」を習得することを目標にしています。
また、直接技術を教える大学生が500人以上いて、それに対する研修プログラムも用意されています。
短期集中の「CAMP」、通学型の「SCHOOL」などさまざまな学習の場を用意していて、多くの子供たちがプログラミングを学ぶきっかけを作っています。
・CodeCamp
出典:CodeCamp
CodeCampは社会人向けのマンツーマンで行うプログラミングスクールとして人気を集めています。
ITの発達によるワークスタイルの変化の対応を求める営業職の方や、プログラミングを学び、ITの仕組みを理解しようとする管理職の方など、エンジニア以外の方の需要も増えていることが人気の理由として挙げられます。
このように、子供たちやエンジニアをはじめ、さまざまな方のニーズがあり、日本国内のIT教育市場は急速に拡大しています。
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エンジニア教育海外市場
IT教育市場が拡大しているのは、日本だけではありません。2020年までにヨーロッパでは78.9万人、アメリカでは140万人の人材の不足が予想されています。
そのため、海外でもIT教育に力を入れる国が増えています。
ITがビジネスの成長を促すと、国民のプログラミング教育へのニーズも高まりますので、日本と同様に民間のスクールなどの教育市場が活発になっていくことが期待されています。
海外のエンジニア教育10選
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アメリカのエンジニア教育
ITの先進国であるアメリカで、プログラミング教育の推進を進めるNPO法人Code.orgは、世界的にプログラマーが不足しており、物理学や化学などと同じようにプログラミングを必修科目にすべきだと主張しています。
そして、2013年12月に公開されたCode.orgの動画では、オバマ大統領が出演し、プログラミング教育の必要性を訴えています。
このことからも、アメリカが国としてエンジニアの教育に力を入れていることがよくわかります。
Code.orgは、マイクロソフトやアップル、グーグルなど大手IT企業が協賛しており、幼稚園年長から高校生までの子ども達に向けた教材や教員用のツールをWeb上に公開。プログラミング教育の導入を総合的に支援している
中国のエンジニア教育
中国は大学を卒業するエンジニアの数が年間60万人以上と、世界最大の規模を誇ります。
1984 年に中国経済の近代化を行った鄧小平の「コンピュータ教育は子供から始めるべきである」という指示に従い、中国では子供のIT教育に力を入れてきました。
現在では小学校・中学校からICTを活用した授業が行われています。
中国の教育は、急速な経済発展と同じように、先進国に追いつき追い越せの時代にある。コンピュータは当然の道具で、広州市内の学校では、すべての普通教室にプロジェクターとスクリーンが設置されている。そして、教科指導にコンピュータを活用するねらいが強く、すべての教科においてICTを活用している。
韓国のエンジニア教育
韓国は1997年に「デジタル教科書」、「スマート教室」。「スマートラーニング」導入の議論が始まり、現在では韓国の多くの小中学校でタブレットや電子黒板などが設置されたスマート教室が導入されています。
それ以前からも、6割の授業でインターネットやPCを使っていたことからも韓国がIT教育に力を入れてきたことがわかります。
2018年からは小中高校でプログラミングが必修科目となることが決まり、さらにIT教育市場が活発になることが予想されます。
学校で電子黒板とタブレットPCを使うことだけがスマート教育ではない。韓国政府が2011年から推進するスマート教育の「SMART」は「Self-directed(自ら主導する)」「Motivated(動機づけられた)」「Adaptive(学習者に適合した)」「Resource enriched(充実した教材を使った)」「Technology embedded(技術が埋め込まれた)」の略字である。
引用元:ICTでイノベーションを育む IoT時代に向けた韓国のスマート教育 – WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
フィリピンのエンジニア教育
フィリピンのITサービス産業は成長を続けており、その人材は外資系企業から注目されています。
その理由として「安い人件費」「英語やアメリカ文化に慣れている」「大学を卒業し、高い質の教育を受けている」などが挙げられます。
しかし、フィリピンには高度な技術を持ったエンジニアや、その指導者が足りていません。その需要をカバーするためにIT教育のシステムの充実が課題とされています。
学校にとって、ITの専門家を採用する予算がないこと、PCの運用管理が大きな負担であることが最大の問題だ。この事情は、日本といえども同様だ。解決策はないものだろうか?
ベトナムのエンジニア教育
ベトナムの多くのIT企業では技術の高いシステムエンジニアや、管理職の人材が不足しています。そのため、教育や研修に力を入れている企業が多くあります。
また、大学への進学率は1割程度と低いですが、エンジニアを目指すベトナム人には優秀な人がとても多いです。
大学に通う学生は、日本の有名一流大学に匹敵するレベルの学力を有しており、アメリカなどの外資系IT企業からも高い注目を集めています。
引用元:ベトナムエンジニア達の教育環境
シンガポールのエンジニア教育
シンガポールは韓国、イギリスとならんでICT教育の先進国です。
シンガポールには国が策定したICT教育マスタープランがあり、1997年から5年ごとにレベルアップする計画で、現在は第3段階にあります。
教育ソフトの開発をはじめ、インフラの整備や教員の指導力向上などさまざまなICT活用のための環境が整備されていっています。
そのマスタープランの第2段階からはじまった取り組みとして、フューチャースクール@シンガポールがあります。
厳しい選定基準があり、子供たちがICTを使いこなし、自ら進んで学ぶことができる力を身につけることを目的としています。
また、フューチャースクールは、日本の「フューチャースクール推進事業」のモデルになっていて、日本だけでなく世界が注目しているプログラムです。
シンガポールのフューチャースクールが実践するICT教育では、各個人が、所有するモバイル端末をインターネット上に広がる無限の知にアクセスするツールとして駆使、各々の学問的関心に従って、学校=先生の枠を飛び越えた先のリソースをたどり、独自の学習を追究することができる
イギリスのエンジニア教育
イギリスでは2014年から初等・中等教育過程の全学年で、「computing」と呼ばれるコンピューターやITの基礎科学やプログラミングなどを学ぶ専門教科が創設されました。
義務教育の必修科目でプログラミング教育が行われたのは、経済的上位国のG20の中ではもっとも早い対応です。
そして、イギリスでは子供たちへの教育だけでなく、教える側の先生の教育にも力を入れていることが特長です。
政府はBritish Computer Societyに200万ポンドを投入して400名の‘指導教師’たちのネットワークを作り、そのほかの学校の教師たちの教育に当たらせるとともに、教室で使用する教材なども提供している。また110万ポンドを投じて行われている’Computing at School’プロジェクトは、オンラインのリソースと学校でのワークショップにより、今すでに教室でプログラミングを教えている小学校教師に対する教育訓練を提供している。このほか、コンピューティングの教師になりたい者への政府奨学金があり、またコンピュータ科学の教師への25000ポンドの奨学金がMicrosoftやGoogle、IBM、Facebookなどの協賛により設けられている。
引用元:イギリスは義務教育(5-16歳)公式カリキュラムにプログラミング教育を導入–9月施行にさきがけYear Of Codeキャンペーンを助成 _ TechCrunch Japan
エストニアのエンジニア教育
エストニアは人口130万人ほどの北欧の小さな国ですが、プログラミング教育に力を入れていることで知られています。
実は、エストニアはITリテラシーが高く、あのSkypeが生まれたIT大国でもあります。エストニアでは2002年に全国民へ番号が付与されたIDカードが導入され、現在では銀行口座へのアクセス、選挙でのインターネット投票をはじめ、民間企業のサービスを利用できる優れた制度が整っています。
すでに小学校1年生からはじまるプログラミング教育を導入していて、エンジニアの育成にも力を入れていることがわかります。
その活動をMicrosoftも支援している点にも、世界的に注目度が高いことがわかります。
国内のIT発展状況とは裏腹に企業たちは職業プログラマーの確保には手を焼いていたようです。しかし、プログラミングの教育が小学校1年生から始められると、ITが経済全体にもたらす付加価値が他の産業の倍に膨れ上がったといいます
イスラエルのエンジニア教育
イスラエルは人口が約852万人の小さな国ですが、エンジニア教育がとても発達した国です。
まず、2000年に「コンピューターサイエンス教師センター」を設立し、カリキュラムや教材をそろえて、高校でのコンピューターサイエンスを必修科目としました。これにより、イスラエルのIT分野は大きく発展を遂げました。
イスラエルの国防軍のプログラミングのレベルは高く、技術のある人材が徴兵を受け、その期間後は民間企業で発揮することが多くみられます。
さらに、高校卒業時に優秀な人材には、大学費用を軍が負担し、その後、軍で知識開発に挑戦させるというシステムがあります。
このプロセスを経た人材がスタートアップを起こすことがあり、イスラエルのIT市場を活性化させています。
このようにイスラエルはプログラミング教育に力を入れており、さまざまなIT分野の技術レベルが向上し、大きな利益をあげています。
個人としての能力がある上に、国防軍に所属中に、チームとして働く力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、失敗やリスクへの考え方、分野に縛られない能力、瞬時の判断能力を磨くことができる上に、ネットワークも作ることができるので、国防軍はいわば起業家養成機関の様を呈している。
フィンランドのエンジニア教育
フィンランドは、幼稚園から大学まですべて無償で、世界的にも教育水準が高い国として知られています。
そして、2016年から小学校の必修科目としてプログラミングが加わることが決まっています。
職業に関わらず、ITリテラシーを高めることは社会全体の底上げになるとして、プログラミングだけでなく、他の教科でもIT教材の導入をはかり、教育のアップデートを目指しています。
「今やテクノロジーと生活は切っても切り離せず、コンピュータサイエンスに関する知識は世界を正しく知るために必要不可欠。特殊な技能ではなく、市民として一般的な知識になっていくはず。プログラマー育成に力を入れるというより、すべての人に機会を与えるのが目的」
引用元:小学校でプログラミング必修に 使うツールは教師が選び、国はシェアを促進――フィンランドの教育現場の「責任と自由」 – ITmedia ニュース
政府によるITエンジニア教育予算
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日本政府のエンジニア教育予算
まず、日本政府のエンジニア教育の予算についてご説明します。
日本経済の約4倍の経済価値をもたらすと考えられているIoTや、AIの進歩による第四次産業革命を踏まえて、日本は新産業構造ビジョンの一環として、平成28年に5億円、平成29年に約4億円の投入が予定されています。
これは、2020年度からの小学生のプログラミング必修化を見据えた、プログラミング教育を支援するための予算です。
IT技術による、ものづくりの高度化を目指して、日本が本格的に取組んでいる姿勢が伺えます。
海外政府のエンジニア教育予算
次に、海外政府のエンジニア教育の予算をご説明します。
まず、アメリカではオバマ大統領が子供のコンピューターサイエンス教育のために、総額で40億ドルを投じると発表しました。
これは、科学・技術・工学・数学の分野、いわゆるSTEMに分類される仕事が2018年までに51%がコンピューターサイエンス分野に置き換わるという急速な社会のシステムの変化を予想した対応です。
また、イギリスではコンピュータサイエンスを教える指導教師のネットワークを作るために、200万ポンドを投入し、教師の教育訓練のために110万ポンドを投入するなど、制度だけでなく、教育を行う側の品質の向上にも力をいれています。
アメリカ、イギリスだけでなく、世界的に大きな予算がエンジニア教育には使われています。
エンジニアの教育は何歳から?
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各国比較によるエンジニア教育の年齢
◆初等教育段階(日本の小学校に相当)
必修科目:イギリス、ハンガリー、ロシア
2016年から必修化予定:オーストラリア、フィンランド
◆前期中等教育段階(日本の中学校に相当)
必修科目:イギリス、ハンガリー、ロシア、香港
選択科目:韓国、シンガポール
2016年から必修化予定:フィンランド
◆後期中等教育段階(日本の高等学校に相当)
必修科目:ロシア、上海、イスラエル
選択科目:イギリス、フランス、イタリア、スウェーデン、ハンガリー、カナダ(※オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、香港、台湾、インド、南アフリカ
日本だけでなく、世界中でプログラミング教育を必修科目とする動きが進んでいます。しかし、それを教える人が不足している点、そして教える人をどう教育するのかという点も世界的に課題となっています。
予想されるエンジニア教育のメリット・デメリット
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エンジニア教育で予想されるメリット
エンジニア教育が活発になることにより、予想されるメリットについてご説明します。
まず、小学校からプログラミング教育を行うことによって、ITに興味を持つ間口を拡げることにつながり、将来的にIT人口が増えることにつながります。
そして、プログラミングを勉強する過程で、論理的な思考や問題を解決する力が育つことも考えられます。
また、学校でコンピューターサイエンスの教育を行うことで、ITリテラシーの高い人材を育てることができます。
今後、情報技術の知識は、さまざまな職業につくうえで基礎となると考えられており、日本の国際競争力を高めることにもつながります。
エンジニア教育で予想されるデメリット
エンジニア教育で予想されるデメリットとして、詰め込みの教育になってしまう危険性が考えられます。
必修科目とすることで、学習する内容が増えてしまい、充分に知識や技術が習得できなくなり、教育の品質が低下する恐れがあります。
また、充分にプログラミングについて理解できない場合には、苦手意識を持ってしまう可能性が考えられます。
合わせて、教える側がしっかりとプログラミングの知識があり、正しい知識を教えられる指導力があるのか、という問題点もあります。
そして、すべての人がIT業界で働くわけではないため、プログラミング教育が必修科目となることで他の教科の学習時間が短くなり、論理的に文章を読解する力が育たない危険性があることがデメリットとして考えられます。
まとめ
未来のエンジニアの育成のため、コンピューターサイエンスの教育に世界中が力を入れていることがよくわかります。
プログラミングを学び、ITリテラシーを高めることは、エンジニアだけでなく、さまざまな職業で働く方にとって、基礎技術として必要となっていきます。
現在ではプログラミングを学べる高品質なオンラインサービスも増えています。これを機会に、あなたもプログラミングについて学んでみてはいかがでしょうか。
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