あなたは、「STEM教育」について知っていますか?
「何となく聞いたことがある」という人もいれば、「全く聞いたこともない」という人もいるでしょう。
実は、STEM教育は、子どもたちがこれからの時代を生き抜くために、必要不可欠なものと言われています。
アメリカやシンガポールでは、国家戦略としてSTEM教育が進められています。その一方で、日本のSTEM教育は遅れをとっています。STEM教育のひとつであるプログラミング教育も、日本の小学校での必修化は2020年からです。
STEM教育が成功するかどうかは、初等教育段階の導入がカギとされています。家庭でも、吸収力の高い幼児期からSTEM教育に触れられるよう、親がサポートする必要があるでしょう。今回は、STEM教育の意味や目的、重要性について解説していきます。これを読めば、現代の子どもたちにSTEM教育が必須である理由が分かるでしょう。
後半には、家庭でも気軽に取り入れられる、STEM教育向けのおもちゃや、子ども向け学習サービス、塾なども紹介します。
あなたもこの機会に、親子でSTEM教育に触れてみてください。
この記事の目次
STEM教育に関する基礎知識
「STEM教育」とは、理系の教育分野を総称した言葉です。
ここからは、STEM教育の定義や目的、広められたきっかけを見ていきましょう。
STEM教育とは
STEM教育とは、科学、数学の分野に重点をおいた教育のことを指します。
STEMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の単語の頭文字をとったものです。
STEM教育は、アメリカで先進的に導入されています。アメリカでは、国家戦略として、STEM教育浸透に力を入れています。STEMの4つの分野による人材育成は、アメリカ経済がこれからさらに成長するには欠かせないと考えられているからです。
これからの産業は、人工知能(AI)やロボットが、産業を大きく変えていく「第4次産業革命」に突入します。IT企業だけでなく、一般企業でも、IoT(モノのインターネット)の普及や機械化が進んでいくでしょう。
このような時代を生きる子どもたちにとって、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4分野の知識は、必要不可欠であると言えるでしょう。
STEM教育が広まったきっかけ
STEM教育は、オバマ前大統領が一般教書演説等で優先課題として取り上げたのがきっかけで広まりました。
オバマ前大統領は2009年の就任時の演説で、「We‘ll restore science to its rightful place(科学を本来あるべき地位に戻す」と述べています。
オバマ前大統領は、STEM教育分野において、以下の具体的な目標を示しました。
①2020年までに初等、中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成。併せて現在のSTEM教員も支援する。初年次から高校卒業までの間でSTEM分野の経験を持つ若者を毎年50パーセント増加させる。
②大学生については、今後10年間でSTEM分野の卒業生を100万人増加させる。
③今後10年間で、これまであまりSTEMと関係していなかった層からSTEMに関する学位を取得する学生数を増加させる。また女性の参加を促進する。
④大学卒業生にSTEMの専門知識や応用研究を学ぶ訓練制度を提供する。
これらの4つ目標を達成するために、アメリカでは年間30億ドルもの予算が投じられています。
アメリカには、このような政策を進めることで、科学技術、テクノロジーの分野で競争力を高め、世界的に優位な立場に立つ狙いがあるようです。
STEM教育の重要性
ニューヨーク市立大学教授のキャシー・デビッドソンは、以下のように述べています。
2011年に小学校に入学する子どもたちの65%が、現在存在しない職業に就く
この言葉は、現代社会のIT化のスピードが著しく、子どもたちの未来は私たちの想像できないものになることを表しています。
また、総合コンサルティング会社「アクセンチュア」が2016年11月に発表した予測では、以下のような記述があります。
人工知能(AI)が仕事の在り方を変え、2035年には年間経済成長率が倍増する可能性がある
今後は、AIによる仕事の効率化が進み、単純作業が機械化されていきます。その結果、人間の仕事は単純作業から、創造性、生産性の高い業務にシフトしていくでしょう。
このような産業構造の変化に伴い、当然「求められる人材」も変わってくるでしょう。この人材育成の基盤こそが、STEM教育です。
STEM教育は、IT化、AI時代を生き抜く能力を持つ人材を育てるために、進められているのです。
各国のSTEM教育の取り組み
STEM教育において、日本は他国に遅れをとっています。アメリカやヨーロッパ各国、東南アジアでは、国家戦略としてSTEM教育導入を進める国があります。
ここからは、積極的なSTEM教育普及がみられる、各国の取り組みを見ていきましょう。
アメリカ
アメリカでは、オバマ前大統領の打ち出した方針を皮切りに、活発な教育変革が行われてきました。その1つが、2013年に発表された「次世代科学スタンダード“Next Generation Science Standards(NGSS)”」です。
NGSSは、主に中高生向けの新しい学習指導要領のことです。知識詰め込み型の教育アプローチを正すことを目指し、初等中等教育の科学分野の学習要項を改訂しました。
その内容には、実際にやってみる「体験型学習」が盛り込まれています。生徒にただ科学に関する事実を覚えさせるのではなく、体験を通して科学を学ぶことを目指しています。
このような体験授業では、失敗から学ぶ経験も重要となります。まずは手を動かしてやってみるとことで、上手くいかなかった経験を次に生かす、問題解決力も養えるでしょう。
イギリス
イギリスでは、2014年に、世界初のプログラミング学習必須化が実施されました。
イギリスの生徒の年代別の学習内容を見てみましょう。イギリスでは、5歳~14歳にかけて、段階を踏んでモノづくりの基礎を学ぶことになります。
まず、5歳〜7歳では、モノの構造と3Dプリンターなどの機器の使い方を学びます。生徒たちはかなり早いうちから最先端のテクノロジーに触れることができるのです。
7歳〜11歳になると、スイッチや電球、ブザー、モーターなどを使い、実際に動くモノづくりを体験します。更に、それからコンピューターから制御する方法など、モノづくりの本格的なノウハウを学ぶことができるのです。
11歳〜14歳になると、モノづくりの詳細な計画立案や3Dモデリング作業、アイデアからデザイン化する方法など、プロダクト開発に関する一連の流れを学びます。
中等教育からは、計画案を作成してアイディアを形にするなど、より創造性が求められる内容となっています。
ただ知識を詰め込むだけでなく、実際にプロダクト開発の流れを学ぶことで、自分たちの学習の社会的意義もつかめるでしょう。
シンガポール
シンガポールでは、1965年の独立以降、国家戦略として理数教育に力を入れてきました。いわばSTEM教育の先進国と言えます。
シンガポールは、国防費と同じくらいの国家予算を教育にあてています。これを知るだけでも、いかに教育や人材育成を重要視しているかが分かるでしょう。
そしてこの取り組みの結果は、目に見える形で表れています。
経済協力開発機構(OECD)が世界各国の子どもたちを対象に実施する「学習到達度調査(PISA)」でも、シンガポールは科学的応用力や数学的応用力などで世界1位を獲得しているのです。
シンガポールは、教育の仕組みも独特です。数学の授業は小学校1年生から、理科の授業は小学校3年生から始まります。高学年になると、理数科目は専門教員が教えるようになります。
また、授業をただ聞くだけの座学だけでなく、「ハンズオン」が重視されています。ハンズオンとは、体験学習のこと。実際に「つくってみる」「活用させてみる」ことが重視されているのです。
このような活動を通して、生徒たちは、自分たちが学んでいることが何の役に立つのかを実感できます。
算数では、「バーモデル」というものを用いた「シンガポール式算数」が有名です。
例えば1+2の足し算をするときも、ただ「1+2=3」という式では解きません。図(バー)を書かせて、量が目に見える形にしてから解くようにします。
このような解き方が身に付くと、難解な文章問題も、基本となるバー(ユニット)がつかめ、魔法のように解けるようになります。
このシンガポール式算数は、「世界一の学力がつく」とも言われており、世界規模で普及しつつあります。
また、シンガポールのSTEM教育への関心は、保護者も非常に高いのが特徴です。「理数教育専門」の家庭教師をつけることも多いとされます。
生徒と教師、親が一環となって、STEM教育に力を入れていることが伺えます。
日本
これまで紹介した国々と比べると、日本のSTEM教育は遅れをとっていると言えます。STEM教育の一環であるプログラミング教育も、小学校で始まるのは2020年度からです。
また、教育現場へのICT(情報処理技術)浸透の遅れや、指導者不足も叫ばれています。今後これらの問題を解決しつつ、STEM教育を進めていく必要があるでしょう。
しかしながら、日本でもSTEM人材育成のため、以下のような取り組みが行われています。
国際科学技術コンテスト
国際科学技術コンテストは、主に高校生を対象としたプログラムです。日本数学オリンピック、化学グランプリ、全国物理コンテストなどが開催されています。
科学の甲子園
科学の甲子園は、高校生などを対象とし、6~8名のチームで戦うものです。理科、数学、情報ジャンルの筆記・実技試験によって競技が行われます。
グローバルサイエンスキャンパス(GSC)
グローバルサイエンスキャンパス(GSC)は、科学技術分野で活躍するグローバル人材を育成するための取り組みです。卓越した能力を持つ高校生が対象となっています。
ジュニアドクター育成塾
ジュニアドクター育成塾は、大学などの採択機関で実施される、科学技術人材育成のためのカリキュラムです。対象は、各地域で科学技術への学習意欲が高い小中学生となっています。
中高生の科学研究実践活動推進プログラム
中高生の科学研究実践活動推進プログラムは、将来の優秀な科学技術人材育成のために実施されています。中高生が主体となって行う科学技術研究の活動内容に対して、教育機関と大学が連携してアドバイスを行います。
STEM教育は理系の生徒だけに向けたものではない
STEMの語源(科学、技術、工学、数学)を聞くと、「理系の勉強をする人だけのものでは?」と考える人も多いでしょう。しかし、今後STEM教育の4分野は、教養のような位置付けになっていくと考えられます。
前述したキャシー・デビッドソンの言葉の通り、今の子どもたちが大人になる頃には、今ある仕事の半分はなくなっていると予想されます。現段階でも、さまざまな企業にIoTやAIなどが導入されています。
今後は、どのような仕事をする場合でも、ビジネスマンであれば、AIやテクノロジーを使いこなす能力が求められるようになるでしょう。
2020年には、日本でも小学校からのプログラミング教育が必修化されます。テクノロジーをはじめ、科学の知識や数学の論理的思考など理数系学問は、もはや「読み書きそろばん」のような位置づけになるのではないでしょうか。
ですので、STEM教育の分野も、将来社会に出るために身に付けるべき教養となることが予想されます。
この記事のハッシュタグ
これからの時代を生きる子どものために親ができること
テクノロジーの発展が目覚ましい現代社会を子供たちが生き抜くために、STEM教育は必須となるでしょう。
しかし、日本の教育現場では、STEM分野のカリキュラム調整が他国よりも遅れているのが現状です。
ここからは、子供たちの未来を切り開くために、親としてできることを紹介します。
子どもにプログラミングを習わせる
未来を担う子供たちにとって、プログラミングスキルは必要不可欠となるでしょう。
吸収力の高い幼児期のうちに、家庭でも積極的にプログラミングに触れる環境を整えることをおすすめします。
プログラミングと聞くと難しく考えがちですが、子供向けのプログラミング学習では、「ビジュアルプログラミング」がメジャーとなっています。ビジュアルプログラミングでは、ブロックをつなげるように、楽しくプログラムが組み立てられるようになっています。
近年は、幼児期からプログラミングに触れられるおもちゃやツールが増えています。子供向けのプログラミングスクールも多数ありますので、まずは体験だけでもしてみてはいかがでしょうか。
以下の記事では、プログラミング初心者におすすめの学習サイトを紹介しています。子どもでもゲーム感覚で楽しく学べるので、この機会にぜひアクセスしてください。
参照:ゲームでプログラミングが楽しく学べちゃう!厳選17サイト
上記の記事で紹介しているものの他にも、子ども向けプログラミング学習サービスやスクールがあります。
次の項目からいくつか紹介しますので、参考にしてください。
ビジュアルプログラミング学習サービス「Scratch(スクラッチ)」
スクラッチは、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが開発したビジュアルプログラミング言語です。「〇歩動かす」「15度回す」などが書かれたブロックをつなぎ合わせて、キャラクターを動かせます。
対象年齢は8歳~で、初心者でも簡単にプログラミングを楽しめます。インストールなしで、ブラウザ上でできる手軽さも魅力でしょう。
5歳から楽しめるスクラッチジュニアもありますので、お子さんの年齢に合わせて選んでみてください。
コードモンキー
出典:コードモンキー
コードモンキーは、オンラインで利用できるプログラミング学習サービスです。コードを書いてキャラクターを動かすことで、ゲーム感覚で楽しみながらプログラミングを学ぶことができます。
こちらの記事では、実際にゲームを進めながら、どのようなことを学べるのかを解説しています。実際にコードを書いてプログラムを組んでいくので、実践的にプログラミングを学ぶことができます。
参照:CodeMonky(コードモンキー)とは?ゲームで遊んで学ぶプログラミング
ディズニープログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」
テクノロジア魔法学校は、ディズニーのプログラミング学習教材です。中高生向けプログラミングスクールを展開する「Life is Tech!」が提供しています。
白雪姫やベイマックス、アナと雪の女王などの名シーンが登場し、ディズニー好きにはたまらない世界観でしょう。対象年齢は12歳以上となっており、12歳未満の場合は保護者のサポートが必要です。
子ども向けプログラミングスクール
近年は、子ども向けプログラミングスクールも増えてきています。例えば、サイバーエージェントが運営する「Tech Kids School」では、アプリやゲーム開発のカリキュラムが提供されています。
また、東京新宿にある「ADjust Academy」では、現役プログラマによるロボットプログラミングが学べます。
このような子ども向けプログラミング教室では、無料の体験授業も開催されています。気になるスクールがあれば、気軽に申し込んでみましょう。
科学実験に触れる機会を与える
現状、日本の教育過程では、科学の実験などは小学校高学年や中学校になってから行われます。
しかし、好奇心旺盛な幼少期〜小学校のうちに、このような科学体験をすることで、科学分野への興味が深められるでしょう。
子どもの身の回りには、たくさんの不思議があります。例えば、なぜ磁石がくっつくのか、鏡はどうして映るのか、CDはどうして音が出るのかなど、挙げていけばキリがありません。
そのような「なぜ(疑問)」を実験を通して考察することで、論理的に考える力も身につくでしょう。
このような科学に触れ合う機会は、普段の生活ではなかなか作れないかもしれません。そのようなときは、夏休みなどの長期休みを利用して、科学実験にトライするのがおすすめです。自由研究課題として提出するのもいいでしょう。
夏休みなどの長期休みには、親子向けの科学教室やワークショップが開催されることもあります。このようなイベントに参加して、科学の楽しさを知るきっかけにしてもいいでしょう。
また、「子供の科学」という雑誌では、子どもの身の回りにある科学や、プログラミングについての情報が発信されています。科学へのアプローチ方法のヒントが詰まった内容なので、ぜひ親子で読んでみてください。
こちらの記事でも「子供の科学」について解説しています。
参照:「子供の科学 8月号」はVR・AR特集!大人も子どもも見逃せない面白さ。自由研究にも
ロボット教室に通わせる
ロボット教室は、レゴやパズル、工作が好きな子どもにはぴったりです。ロボット自体を組み立てる楽しさ、そして自分でプログラムを組んで動かせられる楽しさがあります。
例えば、「ヒューマンアカデミー ロボット教室」のベーシックコースでは、コマ回しロボットを作ります。このカリキュラムでは、どのように工夫すればコマが長く回るようになるのかなどを考え、学ぶことができます。
また、「レゴ®スクール」のロボットプログラミングコースでは、レゴ®のロボット教材を使用します。自分のアイディアをロボットを組み立てて形にしたり、最後にはプレゼンテーションで自分の成果を発表します。
このような、自ら何かを考えて作ったり、課題に取り組む姿勢は、AI時代を生き抜く力につながるでしょう。
ロボット教室は、現在はあまり一般的ではありません。しかし、今後はAI時代の習い事として、ロボット教室がメジャーになっていくでしょう。
STEM Toysで遊ばせる
アメリカでは「STEM Toys」というジャンルが確立されています。
STEM Toysには、プログラミングの概念を学べるもの、数字や計算の勉強をできるもの、簡単なロボットを作れるものなど、さまざまなアイテムがあります。
乳幼児向けのおもちゃから、本格的なロボットプログラミングが楽しめるものまであります。あらゆる年代に向けたSTEM Toysがありますので、あなたのお子さんに合ったアイテムを見つけてみましょう。
遊びを通して自然に科学や数学に触れることができるので、STEM教育の第一歩として取り入れてみてはいかがでしょうか。
以下のAmazonのページでもSTEM Toysが特集されています。合わせて参考にしてください。
参照:Amazon STEM Toys~理系脳を育むおもちゃ~
さいごに
時代の流れとともに、教育に求められることも変わってきます。特に、現代はIT化のスピードが著しく、子供たちの未来はもはや私たちの想像できないものになっているでしょう。
これからのIT化社会、AI時代を生き抜くためには、STEM教育が必要不可欠となります。家庭においても、幼児期から積極的にプログラミングや科学に触れさせてみましょう。
近年は、子ども向けのプログラミング学習サービスや、ロボットやおもちゃなどが増えています。あなたのお子さんが興味を示すのであれば、ぜひ与えてみてください。そして、楽しんで学べるSTEM教育ツールに、親子で触れてみましょう。
このようなSTEM教育ツールは、親子間のいいコミュニケーションにもなります。子どもの新たな才能に気付くきっかけになるかもしれません。
あなたも、子どもの「なぜ?」という気持ちを大切に、身の回りのSTEM分野に触れる機会を作ってみてください。それはきっと、子どもの未来を切り開く鍵になるはずです。
はじめての転職、何から始めればいいか分からないなら
「そろそろ転職したいけれど、失敗はしたくない……」そんな方へ、テックキャンプでは読むだけでIT転職が有利になる限定資料を無料プレゼント中!
例えばこのような疑問はありませんか。
・未経験OKの求人へ応募するのは危ない?
・IT業界転職における“35歳限界説”は本当?
・手に職をつけて収入を安定させられる職種は?
資料では、転職でよくある疑問について丁寧に解説します。IT業界だけでなく、転職を考えている全ての方におすすめです。
「自分がIT業界に向いているかどうか」など、IT転職に興味がある方は無料カウンセリングにもお気軽にお申し込みください。