あなたはイスラエルにどのようなイメージを持っていますか?
地理や歴史の観点から、他に類を見ない背景を持つこの国に対して、「なんだか恐い国」という印象を持っている方もいらっしゃるでしょう。この記事を読めば、数々のスタートアップが設立されている「中東のシリコンバレー」と呼ばれるイスラエルの魅力が理解できます。
今回は、IT先進国「イスラエル」のスタートアップについて紹介します。
大手企業も注目するイスラエルのスタートアップ
「中東のシリコンバレー」「第2のシリコンバレー」として、世界中の企業から注目されるIT先進国「イスラエル」。イスラエルは、800万人程度の人口と日本の四国と同じ程度の面積の国土を持つ小さな国です。年間で800社以上のスタートアップが設立されています。
宗教的な争いのイメージが強いですが、実はイスラエルはとても治安の良い国です。テルアビブにはGoogleやFacebookなどの大手企業も支社を構え、イスラエルのIT分野の動向に目を光らせています。
イスラエルにスタートアップが多い理由とは
イスラエルには数多くの革新的な事業を手がけるスタートアップが設立されてきました。しかし、なぜイスラエルはスタートアップが多いのでしょうか。その理由について、教育・環境・軍隊といった観点から解説します。
高度なプログラミング教育
日本においても、2020年から義務教育においてプログラミング教育が必修化されたことは記憶に新しいでしょう。世界でも同様の動きは広まってます。
イスラエルは、そのような国々の中でもいち早くプログラミング教育を必修化した国です。2000年にコンピューターサイエンス教師センターを設立し、義務教育にあたる高校でのプログラミング教育を必修化しました。
ironnaによると年間で最低でも90時間、より難易度が上のコースでは450時間の学習を行うとあります。このような高度なプログラミング教育に世界に先駆けて取り組んだことにより、イスラエルは人口からは想像できないほどIT分野に強い国になったのです。
起業しやすい土壌
ITの分野において成熟したエコシステムが構築されているため、イスラエルは起業しやすい土壌が整っていると言えるでしょう。エコシステムとは「生態系」という意味を持ち、生産・消費・分解のバランスが取れたモデルのことを指します。
ITの分野において、エコシステムとは全体がつながりを持って連携する様子を意味します。イスラエル政府は国内総生産(GDP)の4.3%を起業しやすい環境づくりの投資に当てており、大学・研究機関による起業へのバックアップも充実しています。それに加えて国内外からの資金調達も、エコシステムを保つためにとても大切です。
このような起業しやすい環境の整備と「失敗を許容する文化」によって、イスラエルのスタートアップは支えられていると言えるでしょう。
失敗しても、すぐ別の企業を興すことができる「失敗を許容する文化」と、
事業成功後、自社の株式保有や大企業化にこだわらず早期に売却し、
その資金を次の研究に投じるという、起業・チャレンジ精神の旺盛さが、
イスラエルのベンチャー企業勃興をもたらす土壌になっていると言える。
引用元:今後のイスラエルのIT分野への期待 | 日本イスラエル総合研究所
徴兵制の影響
優秀な人材の育成
イスラエルのエコシステムの特徴として、徴兵制がその一部として機能していることがあげられます。高校を卒業すると男性が3年、女性が2年の兵役につく義務があり、そこでスクリーニングを行ってそれぞれに合った技術を身につけます。
組織に所属する経験
軍という大きな組織に若いうちに所属するという経験は、その後の成長に大きな影響を与えます。上長に従うことで生まれる忍耐力の向上や、国を守るために働くことで愛国心やチームワークも育まれるでしょう。
フラットな関係とチームワーク
イスラエルの方は会社で働きはじめると上長であっても、徹底的に討論を行うそうです。それはアメリカ以上にフラットな関係で、CEOであってもミスをすれば指摘されます。
働く人同士がフラットな関係を築ければ、受け身の働き方にならずそれぞれの個性を発揮して積極的な意見交換が行えるでしょう。これは、スピードやアイディアが求められるスタートアップには重要な要素です。
その一方で、イスラエルの方は目的が正しく設定されれば、それを目指して力を合わせて進む強固なチームワークも発揮します。このようなチームワークも軍隊に所属することで培われているのでしょう。
サイバーセキュリティ先進国として知られる「イスラエル」
世界一のサイバーセキュリティの技術を持つ8200部隊の存在
イスラエルの軍隊には、8200部隊というエリート集団が存在します。彼らは、サイバーセキュリティや他の国に対する諜報活動を担当。サイバーセキュリティの技術においては、世界一とも囁かれています。
この8200部隊で活躍した方たちが、退役後にそのスキルを生かして一流企業で働くケースも多いです。また、この8200部隊に所属した方がリーダーシップを発揮して、スタートアップを成功させています。そのため、8200部隊は1つのブランドの様な価値を持っているのです。
2020年に向けて日本とイスラエルが提携
「IoT(モノのインターネット)」により、人々の暮らしはどんどん便利になっています。ネットワークにつながる機器が増えれば、それだけ攻撃に対するリスクが高まります。ビジネスチャンスが増えれば、それを狙ったサイバー攻撃への対策も必要となるでしょう。
2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて、日本とイスラエルはサイバーセキュリティにおいて協力する方針で一致。国のサポートのもと、日本の企業・研究機関はイスラエルと協力して対策に努めています。
セキュリティー企業「ラック」(東京)の佐藤雅俊氏は「イスラエルは国籍に関係なく、相手企業の信頼性を評価して情報共有をしてくれる」とパートナーとしての利点を指摘する。
引用元:【東京五輪】東京五輪守るサイバー連携 イスラエルから最新技術導入、課題は人材育成 – 産経ニュース
成功者の存在
数多くのスタートアップが誕生してきたイスラエルは、他の国と比べて成功者に身近に出会える国と言えるでしょう。
イスラエルは、国のサイズに比例して経済規模も小さいです。そのため、海外の市場を目指す企業が多く見られます。株式市場への上場を目的とせず、成功した場合には海外企業にM&Aで売却する起業家もいます。
そのような、M&Aによって多額の資金を獲得して、それを元手に新たな事業を展開する「成功者」が身近にいれば、「自分も負けない」というモチベーションになるでしょう。また、具体的な成功のイメージが持てるということも大切なポイントです。
イスラエルの注目のスタートアップ11選
以下で、イスラエルの様々な分野で活躍する注目のスタートアップを紹介します。
Cybereason(サイバーリーズン)
2012年に誕生したセキュリティ関連のスタートアップ。日本では、ソフトバンクと共同で2016年からサイバーリーズン・ジャパン を展開しています。
現在のセキュリティ対策の多くが、攻撃が発生した後の防御に焦点を当てています。それに対して、Cybereasonは最新のセキュリティソリューションプラットフォーム「Cybereason Complete Endpoint Protection」によって、「攻撃前」「攻撃後」「ダメージ発生前」といったすべての段階で脅威に対応。
8200部隊の技術から生まれたCybereasonのサービスは、AI・機械学習など最先端の技術が活用されており、その効果の高さによって世界中から注目されています。
Vayyar(バイアー)
2011年に創業したVayyar(バイアー)は、カメラを使わない高周波を使った3Dイメージングセンサーなどの設計や開発を行う企業です。ソフトバンクとのIoT分野で協業することを2017年に発表しています。
Vayyar – Meet a new kind of imaging device
Next Insurance Inc.
パロアルト、カリフォルニア、ケファールサバにオフィスを構えるInsurTechのスタートアップ「Next Insurance Inc.」。InsurTechはInsurance(保険)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。
中小企業向けにフォーカスした保険のプラットフォームを開発する企業です。スモールビジネスを展開する様々な業界向けの保険を展開して、注目を集めています。
Next Insurance が、シリーズAラウンドで2,900万ドルを調達した。今回のラウンドを主導したのは、Munich Re/HSB Ventures、Markel 及び Nationwide で、その他既存の投資家も参加している。
引用元:Next Insuranceが2,900万ドルを調達、スモールビジネス向けの保険商品プラットフォームを開発 – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
Next Insurance: Best Small Business Insurance Online
Zebra Medical Vision
レントゲンやMRIなどの画像をディープラーニングによってAIに学習させ、病気の見落としを防ぐ医療ツールの開発を行う企業です。Zebra Medical Visionは、NVIDIAから次世代AIスタートアップとして投資された実績があります。
Zebra Medical Vision | Medical Imaging & AI
SimilarWeb
競合サイトや業界の分析が行えるツールを提供。会員登録を行えば、無料版が利用可能です。Google・Microsoftをはじめとする3000以上の企業に導入実績があります。
SimilarWeb – デジタル・マーケット・インテリジェンス&ウェブサイトトラフィック
Yotpo
世界中の17万以上のサイトで導入されているオンラインマーケティングツールを提供しています。ECに特化した高機能なレビュー機能を手軽に実装可能です。
Airobotics
イスラエルでドローンの自律飛行の許可を獲得したことで話題を集めた企業です。自律飛行とは事前にプログラミングを行って、自動で飛行ことを指します。つまり、パイロットの操作がなくても、ドローンのみで飛行できるということです。
ドローンの自律飛行が許可された企業は他にもあります。しかし、民間企業ではAiroboticsがはじめてです。
Automated Industrial Drones | Airobotics
Moovit
Moovitは、世界一の交通案内アプリを提供しています。無料で使用できることと引き換えにユーザーからその街の情報を収集。ユーザーから収集したビッグデータを分析することで、より正確な交通案内を実現します。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、Google・Appleに勝って公式交通アプリに認定されました。
OrCam
人口視覚を活用して、視覚障害者の生活の向上を目指す企業です。画像認識技術を利用したAIカメラを搭載したウェアラブルデバイスなどの開発を行っています。
Help People who are Blind or Partially Sighted – OrCam
Cognata
フォルクスワーゲングループの自動運転技術の開発を行うAIDと提携したことで話題を集めた企業です。Cognataは自動運転・コンピュータービジョン・ディープラーニングを得意としており、自動運転のシミュレーションプラットフォームの開発を手がけています。
Cognata Fast Lane to Autonomous Driving – Cognata
WalkMe
WalkMeはユーザビリティを改善するツールを提供する企業です。ナビゲーションなどを改善することでUXの向上をはかるプラットフォームの提供を行っています。
WalkMe™ – Digital Adoption Platform
さいごに
「中東のシリコンバレー」と呼ばれるイスラエルのスタートアップについて紹介しました。どのようなスタートアップが設立されているのかを知ると、アメリカをはじめとする世界中の企業が注目する理由がおわかりいただけたのではないでしょうか。
イスラエルでは、現在のプログラミング教育の開始を早め、さらなるエコシステムの向上を目指しています。義務教育におけるプログラミング教育の必修化を行う日本にとってもモデルとなる国と言えるでしょう。
IT業界に留まらず、これからのビジネスに大きな影響力を持ったイスラエルの動向を今後もチェックすることをおすすめします。
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