世の中では「フルスタックエンジニア」が求められるようになってきています。とはいえ、これはどの様なエンジニアなのでしょうか。一般のエンジニアとは何が違うのでしょう。今回は、「フルスタックエンジニア」とはどのような職種なのか、どうすればなれるのか、その年収や将来性は、などについて紹介しましょう。
この記事の目次
フルスタックエンジニアについて
最近見かけるようになった「フルスタックエンジニア」という職種。これは一体どの様なスキルを持ったエンジニアなのでしょうか。まずはそこから見てみましょう。
見かけることが増えたフルスタックエンジニア
元々、スタック(stack)というのは「重ね合わせる」という意味の言葉です。つまり、IT系で言うと、システムエンジニア・サーバーエンジニア・データベースエンジニア・ネットワークエンジニアなど、専門の技術者が分業していたものを「重ね合わせ」て1人でやってしまうエンジニアということです。
ありていにいえば「何でも屋」ということになるでしょうか。大手のように分業できるだけの人数をかけられる企業ではなく、むしろ少ない人数で開発を行わざるを得ないスタートアップやベンチャー企業の求人でよく見られるようになっています。
エンジニアが目標とする存在
このフルスタックエンジニアですが、最近は目指しているエンジニアが増えています。目指している理由は人それぞれだとも考えられますが、やはり大きな目的としてはキャリアアップやフリーランスとして独立を目指している人もいるでしょう。
実際に、フルスタックエンジニアのスキルがあれば、申し分ないキャリアを持っていなくても転職しやすいでしょうし、独立するのであればなおさら仕事を受けやすくなります。
言葉の意味から考えるフルスタックエンジニア
では、「フルスタック」というのは正確にはどういう意味なのでしょう。辞書で「full-stack」という言葉を調べてみると「複数の技術分野についての知識や技能に精通していること」とあります。
先ほどシステムエンジニア、サーバーエンジニア、データベースエンジニア、ネットワークエンジニアを1人で兼ねると書きましたが、「どれか一つが専門家だけど、他は知っている程度」というわけではなく、専門家に近いレベルの知識・技能を持っている事が求められています。
ただし、ではいくつ以上の分野について専門家並みであれば良いのか、というのは特に決まっていません。そのため、どこまでできればフルスタックエンジニアと言えるかという定義を決めるのは難しいです。よって、たいていは2つ以上のスキルを持っていればフルスタックエンジニアと呼ばれる事が多いようです。
フルスタックエンジニアを企業が求める理由とは
求人でもフルスタックエンジニアを求めるものが増えてきました。もちろんそれには理由があるのです。次に、企業がフルスタックエンジニアを求める時代背景について説明します。
ITエンジニアに対する要望の変化
まずは何と言っても、企業がITエンジニアに求める内容が大きく変わってきた事が大きな理由として挙げられます。
これまでは、ITエンジニアは渡された仕様に沿ってアプリケーションを開発し、納品すれば終わりでした。しかし、近年のアプリケーションでは納品後の運用・改良・機能追加が大事になってきています。
つまり、発注側の企業にとっては、これまでの社内システムのように納品で終わるのではなく、リリースした後に寄せられる利用者のニーズに合わせて継続した改善を続ける事が重要になっているのです。
最初の開発時には専門のエンジニアが大人数で分担しながら開発しても良いでしょう。しかし、その後の継続的な改善を大人数で行うと、メンバー間での情報共有などのやりとりを行うための時間が必要となり作業スピードが落ちてしまいます。
そのため、少人数、場合によっては1人のフルスタックエンジニアで運用から改善を行って欲しいという企業の要望があるのです。
ハードルが下がったWebサービスの開発
2つ目の理由として、クラウドの普及により、1人でもWebサービスを開発できるようになったということがあります。ネットワークやサーバーをあまり意識する必要が無くなってきたというわけです。
またアプリケーション開発時にフレームワークを組み合わせれば、フロントからデータベースまでを含めた高度な開発が、以前よりも1人のエンジニアでやりやすくなっています。
さらに、Webサービスに必要なスキルを身につけるための時間やコストが圧縮されているため、エンジニアになるハードルは以前に比べると下がったと言えるでしょう。
スピーディーな開発
3つ目の理由としては、開発速度のスピードアップです。実際に、10年ほど前と比較しても、1つ1つのプロジェクトにかけられる時間やコストが大幅に減ってきています。
以前は、1年かけて完全と考えられるアプリケーションを開発するという流れでした。今は、まずスモールスタート(最低限の機能)でリリースし、利用者の要望に合わせて機能追加を行うという開発スタイルに変わってきた事が大きな違いでしょう。
開発の手法もウォーターフォール型から、アジャイル型に変わってきました。スクラム開発などの開発手法がもてはやされているのも、このような背景があります。
大人数で開発するのでなく、1人での開発であれば伝達のミスの可能性もなくなります。そして、スピーディーな開発が行えるようになります。もちろんそれによってコスト削減も可能でしょう。
コスト削減も可能
伝達ミスによる工数削減によってコスト削減が可能と書きました。
そもそも2人必要なところを1人で納められるわけです。万が一開発期間が延びたところで、確実にITエンジニアを雇うというコストを削減できるようになります。
フルスタックエンジニアの仕事の特徴
では、フルスタックエンジニアと呼ばれる人たちはどの様な仕事をしているのでしょうか。その特徴を紹介しましょう。
すべてのフェーズに関わるので業務はハード
従来の開発では複数の専門エンジニアが設計書の読み合わせを行った上で分業して作業をしているというのは先に説明したとおりです。作業フェーズもバラバラで、自分が必要とされるフェーズまでは別のプロジェクトの仕事をしている、ということもあったでしょう。
しかし、フルスタックエンジニアの場合は、1人ですべてのフェーズを担当しますので、当然の結果として業務はハードになる場合が多いのが特徴です。
また、それに伴って負う責任も重くなります。従って、「何が何でもフルスタックエンジニアを目指す」というよりも、企業が求める人材と自分がどのように働きたいかというビジョンをマッチさせることが大切になります。
仕事を失うリスクが低い
とは言っても、大勢の人がフルスタックエンジニアを目指すのには、それなりの理由があります。
というのは、ITエンジニアになるためのハードル全体が下がっているために、経験年数が浅いエンジニアでもそれなりの開発が行えてしまいます。そのため、経験年数の長い専門職のエンジニアが必要でなくなりつつあるのです。
さらに中国、インドのみならず、ベトナムなどの東南アジアでオフショア開発の行える企業が増えてきたため、プロジェクトを丸ごと海外のコストの安い企業に発注してしまうというケースも増えてきました。
つまり、日本国内で求められるエンジニアのスキルが、必然的に複数のスキルを持つフルスタックエンジニアになってきているのです。ですから、フルスタックエンジニアはこのご時世でも仕事を失うリスクが少ないということにもなります。
フルスタックエンジニアの年収は?
では、複数のスキルを持っているのだから、フルスタックエンジニアの年収は普通のエンジニアの2倍とか3倍あるかといえば、そうでもありません。
実際にフルスタックエンジニアだけの年収を調べた結果はないのですが、エンジニアの平均年収として一般的に言われている450万円~700万円の中に収まっている可能性が高いと考えられます。
おそらく、ITエンジニア全体の平均年収である502万円よりは高いでしょう。Webサイトによっては、600万円以上という情報もあります。
転職に有利な場合も
仕事を失うリスクが少ないという話をしましたが、複数のスキルを保持していると転職にも有利になる事があります。
特に少数精鋭を求める企業では、技術力のあるフルスタックエンジニアは良い条件を提示される場合が多いでしょう。また、ITスタートアップが創業メンバーとしてフルスタックエンジニアを探している場合もあります。
フルスタックエンジニアになるには
ではフルスタックエンジニアになるためには、どの様なスキルを身につければ良いのでしょう。
専門分野を複数持つ
これまでも紹介していますが、何と言っても複数の専門分野を持つ事が重要です。アプリケーションエンジニアである場合はデータベースにまで詳しくなる、サーバーエンジニアの場合にはネットワークの知識も身に付ける、などです。
もちろん全ての分野について専門家レベルになれば申し分はないのですが、一つの分野を極めるだけでも大変です。ですので、あまり欲張らないことも重要です。
また、あまりかけ離れた分野を選ぶのもおすすめしません。例えば、サーバーエンジニアやネットワークエンジニアがセキュリティの専門家としてのスキルを身につけるのはわかりますが、データベースエンジニアがセキュリティの専門家になるのは少し分野が離れすぎています。
必要となるスキル
スキルとしては、開発に対する幅広い知識と技術が不可欠になります。もちろんスキルや経験と合わせて必要となるのが、合理的にプロジェクトを進めるマネジメント力や、顧客の要望をヒアリングして課題を明確にする分析力です。
また、提案する企画力やプレゼンテーション力もあるにこしたことはありません。フルスタックエンジニアは、それらの能力を合わせ持ったジェネラリストであることが求められます。
クラウドコンピューティングの知識
Webアプリケーションの構築の場合、昨今はクラウド化が進展しています。ですので、AWSやAzureなど、クラウドコンピューティングについての知識が必要です。
ミドルウェアとプログラミング言語
サーバーの構築についても、Apacheなどのミドルウェアについての知識があると良いです。また、その上で動作するプログラミング言語も、最低1つは覚えておきたいです。言語はJava・PHP・Rubyなど何でも構いません。
行動力の高さが重要
そして、フルスタックエンジニアは受け身ではいけません。自分から進んで新しいことにどんどんチャレンジする、行動力の高さが重要です。わからないことは調べ、必要となった技術をすぐに学ぶというスタンスで仕事に臨みましょう。
また、その行動力の高さを生かし、さまざまなプロジェクトに参加した経験は、フルスタックエンジニアを目指す上で大きなプラスになるでしょう。
目標設定を行って学習を続ける
さらには目標設定を行って学習をする事も必要です。目標をマイルストーンとして設けて、スキルの習熟度を確認しながら学習しましょう。また、マイルストーンを達成することで、自分の成長を実感できるでしょう。
フルスタックエンジニアに限ったことではありませんが、エンジニアは学習し続ける姿勢がとても大切です。
フルスタックエンジニアの将来性は?
ではもしフルスタックエンジニアになれたとして、その将来性はどうなのでしょうか。
求人数は減っている?
実は、日本におけるエンジニアに対する求人数は少し減ってきています。コストやスピードだけで考えると、日本国内のエンジニアは高くつきます。そのため、海外へのオフショア開発などに仕事が流れている現状があります。そのような背景により、求人数が減っているのです。
需要は拡大している
とはいえ、フルスタックエンジニアの需要が減っているのかと言えば、そうではありません。
むしろ開発の需要自体はどんどん増えています。単純な開発がオフショアに流れているだけなのです。
逆にスペシャリストのエンジニアが不要になるわけではありませんし、プロジェクト全体をしっかりと把握できるジェネラリストとしてのフルスタックエンジニアが求められていることも事実です。
さいごに
エンジニアとしてのスキルアップを考えた場合、一つの専門分野に留まってしまうと、よりコストの安いオフショアに開発案件が出て行ってしまう、という流れができ上がりつつあります。
そのような流れの中で、日本国内にいながらにして開発会社の社員として、場合によってはフリーランスとして仕事をしっかりと確保するには、徹底的にスペシャリストとして能力を高めるのも方法の1つです。
あるいは、複数の分野の専門家として活躍できるフルスタックエンジニアになるかというのが、これからのエンジニアの進む道と言えるでしょう。
皆さんも世の中の流れを読みながら、定期的にスキルセットを見直して見てはいかがでしょうか。
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