あなたは「お寺」と聞いて、どんなものをイメージしますか?
「木造の古くからある歴史の深い建物」をイメージする方が多いでしょう。
しかし最近、お寺でもITが活用されるようになり、このイメージから少しずつ変わってきています。この「お寺×テクノロジー」が、お寺を利用する人の抱える悩みも、お坊さんの抱える悩みも解決する糸口になるのです。
この記事では、お寺で活用されるテクノロジーの事例を紹介します。
この記事の目次
お寺の利用者もお坊さんも悩みを抱える
お寺にまつわるお悩みは大きく2つに分けられます。
「お寺の利用者の悩み」
「お寺を運営するお坊さんの悩み」
まず、具体的にどんな悩みがあるのか、2つの観点から見ていきましょう。
お寺の利用者によくある困りごと
まずは、葬儀や法事でお寺を利用する人たちによくあるお困りごとからです。
葬儀の手配はどうやればいいの?
身内が亡くなったことで、急遽、喪主として葬儀を手配しなければならないこともあります。しかし初めての場合、どうやって手配すればいいのかわからず困ってしまうことでしょう。
身内で喪主を経験した人がいれば相談できますが、そうでなければ手配も一苦労です。
インターネットで調べれば一連の流れを知ることはできますが、「自分の家はどのお寺に葬儀を依頼すればいいのか」といった細かい部分まで調べるのは難しいです。
葬儀にどれくらいお金がかかるの?
葬儀においてもっとも不安な点はお金でしょう。一通り葬儀をすると数百万円はかかってしまうようなイメージもあるかと思います。
具体的にいくらかかるのかはお寺や葬儀の内容によっても変わります。しかし、その金額が公表されていないことが多いので、不安も大きくなってしまいます。
将来的に葬儀に使えるお金を貯めておきたいという方も、いくらあれば十分なのかがわらず困ってしまうでしょう。
お寺が遠くてお墓参りになかなか行けない
例えば、仕事の関係で東京でくらしているが、実家は地方にあるという方の場合。自分の家のお墓もその地域のお寺にあることが考えられます。
お寺が遠方にあると、お墓参りにもなかなかいけないでしょう。
最近は「お墓参り代行サービス」なるものが登場しています。自分の代わりとなる人にお金を払い、お墓参りをしてもらうサービスです。
このようなサービスができるほど、お墓参りの時間が取れないことを問題に感じている人もいるのです。
お坊さんにお悩み相談はできるの?
お坊さんは、人生のお悩みや宗教に関することなどの相談を受けてくれる場合があります。
説法を仕事とするお坊さんのお話であれば、説得力もありますし、ありがたみも段違いでしょう。友人や家族に相談するよりも心がスッキリすることから、利用者は急増しているようです。
しかし、なかなか相談ができない人がいるのも事実。お寺に行く時間がなかったり、「お坊さんの時間をもらってまで相談するべき悩みなのか?」と考えて足踏みしたりしてしまうのでしょう。
ペットの葬儀をしてほしい
最近は、飼っていたペットが亡くなった際に葬儀を希望する飼い主も増えています。
ペットも家族の一員なので、きちんと見送りたいという気持ちから生まれたニーズです。
ただ、どのお寺でもペットの葬儀を請け負ってくれるわけではありません。対応してくれる寺を探すのにも一苦労でしょう。
お坊さんたちが抱える悩みごと
続いてはお坊さんたちが抱える悩みごとについて見ていきます。
「坊主丸儲け」なんて言葉がありますが、決してそんなことはなく、お坊さんたちの仕事には苦労が絶えないのです。
事務作業が多すぎる
事務作業の多さがお坊さんの作業負担を増やしています。
特にお寺では情報を紙ベースで管理していることが多く、例えば帳簿をつける際も手書きで行っているところもあるそう。
お寺として長く運営し情報量が増えれば、それだけ管理も大変になるということです。
さらに問題を大きくさせている原因として、お寺で働く人の数があります。お寺は住職とその家族数名で運営していることが多く、とにかく人手不足な状態です。
ただでさえ事務作業が多いのに、誰か一人でも体調不良で働けなくなったら、他の人に負担がかかってしまいます。
お寺全体の管理が難しい
お寺で管理しなければならないのは、情報だけではありません。お寺の敷地内にあるものすべて管理対象です。
特に仏具は高価なものが多く、盗難にも注意を払わなければなりません。それらの管理も少ない人数で行っているのがお寺の現状です。
住職が高齢の場合、お寺の全体の掃除をするのも一苦労でしょう。
さらに夜間も防犯に気を配らなければならないと考えると、仕事の大変さが伝わってきます。
参拝客が減っていてお寺の先行きが不安
お寺は、参拝客や法要で利用する人がいることで運営できています。しかし地方のお寺では、地域の人口減少や檀家離れが激しく、経済的に困窮しているというケースが多く見られます。
2040年までに20~39歳の若人女性人口が5割以下に減少する市区町村(消滅可能性都市)には、全宗教法人の3分の1が存在しており、あと20年ほどで運営不可能になってしまうお寺もあるのです。
お寺にまつわるお悩みを「テラテク」が解決する?
これまでお寺の運営にITが関わることはほとんどありませんでした。
かつてはそれでも運営できていましたが、時代が移り変わる中で状況は厳しくなっています。
そんな中、お寺が抱える深刻な問題をテクノロジーの力で解決しようとする動きが見え始めています。
以下はその一例です。
小路竜嗣氏とfreee株式会社による「テラテク」
出典:Peatix
2019年6月12日、クラウド会計サービスなどを運営するfreee株式会社が、寺や神社のIT技術導入を考えるイベントを開催しました。
その名も「テラテク!お寺のIT活用を一緒に考えませんか?」。
「テラテク」とは、「寺(テラ)」と「テクノロジー」を合わせた言葉です。テクノロジーの力でお寺の現状を変えるという目的を込めて名付けられました。
講師を務めたのは、浄土宗善立寺の小路竜嗣(こうじりゅうじ)さんら現役のお坊さんたち。小路さんはお寺へのテクノロジー導入を数年前から続け、オウンドメディアも運営してきたという経歴があります。
小路さんは、お寺の抱える問題を解決するためには「問題があることを発信し、世の中の人たちにもっと知ってもらうこと」が大切だと話します。
今回のイベントも、小路さんがお寺の問題について記事をきっかけに実施に至ったとのこと。
イベントで小路さんは、freee株式会社が運営するクラウド会計サービスなど、サブスクリプション型サービスを利用する重要性を説きました。
参照:お寺の困りごと“あるある”をテクノロジーでどう解決する?
書類の電子化
小路さんはまず、紙で管理している情報をスキャナーで読み取り、DropboxやGoogleドライブといったクラウド上で管理することを勧めていました。
これにより情報を紙ベースで管理する必要もなくなり、情報を追加する際もパソコンなどを使ってできます。少ない人数で運営するお寺でも作業の負担軽減が可能です。
帳簿をつけるのもクラウド会計サービスを使えば、手書きする必要はありません。しかし2019年6月の時点で「freee」のソフト単体では宗教法人の会計に対応していないとのこと。
小路さんとのコラボをきっかけに、サービス内容が変化することに期待です。
クラウド型防犯カメラ
お寺の防犯面には、クラウド型の防犯カメラ設置を小路さんは勧めます。
怪しい気配や物音がすれば、その場所まで確認しに行かなくても、スマートフォンでカメラが撮影した動画をチェック可能です。
夜遅くでも外に出る必要がなく、身体的な負担を軽くすることができます。
こういったクラウド型・サブスクリプション型サービスは月額数千円から利用可能です。お坊さんの働き方だけでなく、運営のコストも下げられます。
法要×テクノで集客
福井県福井市にある浄土真宗本願寺派の照恩寺。こちらで住職を務める朝倉行宣さんは、法要や参拝に訪れる方が減っていることに危機感を感じていました。
そこで、ある変わった手法で法要を行うことに。それが法要にテクノ音楽やプロジェクションマッピングを組みわせた「テクノ法要」です。
若い頃、DJやライブの照明係などの仕事をしていた朝倉さん。当時の経験を生かし、お寺の中にプロジェクタを設置、お経をテクノ音楽に乗せて流すことでこれまでにない法要を実現しました。
「テクノ法要」は大きな反響を呼び、お寺の利用者でもあるお年寄りにも受け入れられているとのことです。
こういった斬新な取り組みが、お寺の集客に一役買っています。
お寺の利用者の困りごとも解決
テクノロジーが解決してくれるのは、お坊さんの悩み事だけではありません。
お寺の利用者が抱える困りごとも解決するサービスが登場しています。その事例も紹介します。
お坊さんマッチングサービス「ブッタスク」
出典:ブッタスク
「お坊さんを探せる」というこれまでになかったマッチングサイト「ブッタスク」。法務、宗派、エリアで検索すると、対応できるお坊さんを一覧できます。
葬儀はもちろん、お墓参りやお悩み相談、ペットの葬儀にも対応。サイト内で費用も公開されているので、予算に合った法務の相談もできます。
各お坊さんへのレビュー機能があり、評判や人柄などがわかる点も安心です。
「ブッタスク」を利用すれば仏事に関するお困りごとはほとんど解決できるでしょう。
公式サイト:ブッタスク
お坊さん相談サイト「hasunoha」
出典:hasunoha
「hasunoha」は投稿型のお悩み相談サイトです。
同じようなサイトに「Yahoo!知恵袋」がありますが、「hasunoha」の最大の特徴は、回答してくれるのが全員お坊さんということ。
お坊さんに相談したくても事情があって相談できない方でも、ネットを通して気軽に相談できます。
ただ現状、質問数が多すぎて回答できるお坊さんの人数が足りていないとのこと。お悩みを投稿してすぐに回答がもらえるかどうかはわかりません。
サイト:hasunoha
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お寺にはIT参入の余地あり
この記事で紹介したように、昔ながらの体制が残るお寺にもITが参入しつつあります。しかしこれらはほんの一部であり、お坊さんたちが抱える悩みは山積みです。
また、こういったお寺の事情が顕在化しないことで、お寺の利用者もわからないことが多く困る人が今後も増えることでしょう。
そういった問題を解決するべく、どんどんお寺にITが参入すると予想できます。「お寺×テクノロジー」がどのような結果をもたらすのか、今後も目が離せません。
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