学校や会社、人が集まる場所では必ずと言っていいほど起こる「いじめ」。長い間、社会問題として解決できないままになっています。
さらに最近はSNSの発達によって、周りの人が関与できないクローズドな場でのいじめも発生している様子。
そんなSNS社会におけるいじめの対策につながるアプリがあります。「STOPit(ストップイット)」というアプリです。
この記事では「STOPit」の導入事例やいじめ対策アプリを使うメリット・デメリットについて徹底解説します。
インターネットやSNSで起きるいじめの実態については、以下の記事を参照してください。
関連記事:ネットいじめ体験アプリ「チャットログ」とは?ネットの言葉による暴力の実態
この記事の目次
アメリカ発のいじめ対策アプリ「STOPit(ストップイット)」
出典:STOPit
小学校などで発生する数々のいじめ。その対策アプリとして注目されているのが「STOPit(ストップイット)」というアプリ。2014年5月にアメリカ・ニュージャージー州のIT企業が開発しました。
現米大リーグマーリンズCEOのデレク・ジーター氏、元プロ野球選手の松井秀喜氏などがサポーターを勤めています。
昨今、小中学生でもスマートフォンを持っていることが多く、アプリも使い慣れています。先生に直接相談したり、いじめ相談の窓口に電話するよりも気軽に相談できることから「STOPit」の利用者は世界的に急増中です。
開発国であるアメリカでは、約6000の学校で330万人が利用したという実績があり、いじめ対策の新たなる方法として普及中です。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも導入が進んでいます。
「STOPit」の仕組み
「STOPit」を通して、地域の教育委員会などにいじめについて匿名で相談可能。相談を受けた担当者は、相談者の在籍する学校に相談内容を連絡するという仕組みです。
これまでのいじめ相談の手法と大きく異なる点として、「STOPit」での相談はコミュニケーションアプリ「LINE」のように文章で送ることができるということがあります。リアルタイムで相談担当者とやり取りができる手軽さが魅力です。
担当者は「DOCUMENTit(ドキュメントイット)」という管理サービスを使うことで、送られてきたいじめの報告・相談を一括で管理が可能となっています。「DOCUMENTit」を通して相談者とメッセージを送り合うこともできるのです。
以下は解説動画です。あわせてご覧ください
柏市、草加市などの小学校で「STOPit」導入開始
「STOPit」の導入を進めているのは海外だけではありません。日本国内の小中学校でも導入が始まっています。
平成27年10月に設立された「ストップイットジャパン」が「STOPit」の独占販売代理店契約を結び、国内での展開を開始。28年7月に大阪の私立中学校での導入をきっかけに、29年には千葉県野田市の公立中学20校にも導入されました。
さらに、平成30年度からは千葉県内の野田市、山武市、埼玉県の草加市、奈良県の奈良市、茨城県の牛久市、などでも導入を予定。全国約100万校、5万人以上が利用できることになります。
「STOPit」導入でいじめが発覚するなどの効果あり
「STOPit」はすでに効果を発揮しており、これまで潜在化していたと思われるいじめの発覚などに役立っています。
平成29年度に「STOPit」を導入した柏市では、486人の中学生が利用しました。そのうち、市の教育委員会への相談件数は、電話が12件、メールが3件、「STOPit」が133件。圧倒的に「STOPit」を使っての相談が多く、いじめ発覚にも役立ったというデータが出ています。
参照:いじめ対策アプリ導入広がる 匿名で報告や相談、効果高く 千葉
学校だけでなく企業向けサービスも実施
いじめがあるのは小中学校のような教育機関だけではありません。大人が働く会社でも発生する可能性があります。
最近はハラスメント問題なども世の中を賑わせており、大人でも集団の中で悩みを感じている人が確かにいるのです。
「STOPit」はこのような会社内での問題を匿名で報告・相談できるよう企業向けのサービスも実施しています。
参照:「仕事を辞めたい」今すぐ転職すべき人・そうでない人の違いを解説
いじめ対策アプリを使うメリット
日本国内でも導入の進む「STOPit」。実際にどのようなメリットがあるのか考えてみましょう。
いじめの相談をするハードルが下がる
アプリを使って匿名で相談できる「STOPit」は、いじめを相談する小中学生の心理的なハードルを下げると思われます。
いじめに悩む子供達の中には、理由があって先生や友人はもちろん、親にも相談できない子もいるでしょう。
- いじめが公になれば、いま以上にいじめられるかもしれない
- いじめられていることが恥ずかしくて他人に言えない
- 自分の言葉ではうまく説明できない
など。
こうした悩みを持つ子供達からすると、直接自分の口から話す、あるいは電話を使って相談するというのはハードルが高いです。このような状態ではいじめの解決にはつながりません。
いじめを相談することすらできない子供達を救う手段として、スマートフォンを使って文面での相談ができる「STOPit」の手軽さが役立ちます。
相談することで安心する子供が増える
いじめに悩む子供たち。その悩みの原因がいじめ自体にあるのはもちろんですが、「誰にもいじめを相談できない現状」も、悩みを助長させていると思われます。
誰かに相談しただけではいじめの解決にはなりません。相談し、いじめを防止する対策を実行して初めて解決したと言えます。
「STOPit」は、いじめ解決の最初の段階、「いじめられている子供が誰にも相談できない」という状態を解消し、安心を与える役割を果たしてくれるツールです。
まずはいじめを相談することで安心感を得たい、そのように感じている子供達の悩みを解決する手段として「STOPit」を使うメリットがあるでしょう。
潜在化していたいじめも学校側で対策が取れる
「STOPit」を通した相談件数が増加していることは、先ほど挙げた柏市の事例の通りです。これまでいじめを相談できなかった子供達による相談が増え、明るみになったケースもあるでしょう。
このような流れが続けば、学校側はいじめの実態を把握し、次々に対策を取ることができます。
具体的な対策は、いじめで悩む子を受け持つ担当教員が考えることになると思われます。教員の対応によっていじめが解決するかどうかは分かれますが、そもそも発覚していないいじめに対して対策を練ることすらできません。
「STOPit」が直接的ないじめの解決になるわけではありません。しかし、いじめを明るみにし、教員が対策を練れるという点で大きな効果を発揮していると言えます。
「STOPit」の存在がいじめの抑止につながる
誰でも簡単にいじめの相談ができる「STOPit」の存在は、いじめをしようとする気持ちの抑止にもつながります。
自分が誰かをいじめたとして「STOPit」で報告されてしまえば、先生や担当者に伝わってしまうでしょう。いじめを受けた本人だけでなく、その周りの人が報告する可能性も考えられます。
「STOPit」を導入することでこのような思考が働き、いじめ・ハラスメントの抑止になるというわけです。
いじめ対策アプリを使うデメリット・課題
現代社会、学校の中で行われるいじめを見つけ出す手段として役立つ「STOPit」。一方で「STOPit」を使うことによって生じるデメリットや、今後解決していかなければならない課題があるのも事実。
ここからは、いじめ対策アプリにどのようなデメリット、課題があるのかを考えていきましょう。
相談するだけでは根本的な解決にはならない
先ほどもお伝えしたように、いじめは誰かに相談するだけでは解決しません。いじめ防止の対策を実行することで解決につながります。「STOPit」はあくまで相談のハードルを下げるツールであり、いじめを根本的に解決するツールではないのです。
「STOPit」をよりいじめ解決に役立てるとすれば、相談のあったいじめの事例と対策、その対策の成否をまとめたマニュアルを作る、などの方法があるでしょう。
教育委員会からはマニュアルを元にアドバイスを行ったり、「STOPit」を導入した学校・企業にマニュアルを配ったりすることで、いじめ防止ツールとしてさらに役立てるかもしれません。
いじめが実在するのか判断しにくい
「STOPit」は匿名でチャットのように気軽に相談できる点が強みです。しかし、この強みが悪用される可能性も考えられます。
例えば、実在しないいじめの相談をして、ある一人の人間をいじめの張本人に仕立て上げるなどのようなケースです。
相談の内容に矛盾点があるなどすれば本当の相談かどうか判断もつくでしょうが、必ずしもそうとは限りません。この点が問題となる可能性は少なからずあるでしょう。
また、相談者本人はいじめやハラスメントだと考えていても、第三者から見たらそのレベルまで達していないなどのケースも考えられます。
手軽に相談できるがゆえに、悪用や必要のない相談に担当者のタスクが奪われてしまうことも考えなければなりません。
導入コストによって利用できない組織もある
「STOPit」はいじめの減少に役立つ画期的なツールであることは間違いありません。ただ、「STOPit」のみならず、これまでにないツールの導入には新しい取り決めなどが必要となるものです。
- 運用担当を決める
- 担当者が使い方を把握する
- 学校などへの連絡手段を決める
- 新しいシステム導入を告知するコストを決める
- これらを行うために新しく人を雇う必要はあるか考える
などやるべきことは多く、すぐに導入を決定できない組織も多いでしょう。
これは「STOPit」の課題というより、各学校や企業で対処しなければいけない課題です。サービス提供側と利用する側、双方の体勢が整って初めて「STOPit」のような新しいサービスが利用できます。
スマートフォンやケータイを持っていない子供への対応
「STOPit」はスマートフォンなどのモバイル端末からアクセスして利用するアプリです。小中学生のスマートフォン普及率も高まっているものの、100%ではありません。
インターネット犯罪に巻き込ませないために、子供が小さいうちはスマートフォンや携帯電話を持たせないという家庭も一定数あるでしょう。スマートフォンを持っていない子は「STOPit」を利用できない可能性が高いです。
匿名性を守るために個人の端末に依存しなければならない「STOPit」ですが、モバイル端末を持っている子といない子にがいることによる情報格差(デジタル・ディバイド)の解消も課題となるでしょう。
参考:デジタル・デバイド(情報格差)とは?原因や解決策などわかりやすく解説
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「STOPit」の使い方
「STOPit」は個人単位で使うものではなく、学校や企業などの組織全体で登録して使うものです。各組織にはアクセスコードが発行され、そのコードを知っている人のみが報告・相談を行うことができます。
各組織のアクセスコードを入力して初めて個人での利用が可能となります。あなた自身が所属する組織が「SPOTit」に登録していなければ使えないという点をご理解ください。
「報告」ボタンでいじめを担当者に報告
いじめを受けている、あるいはいじめの現場を目撃した場合は、「SPOTit」アプリ内にある「報告」ボタンを押しましょう。
担当者に直接いじめがあったことを報告することが可能です。
報告したことが第三者に知れ渡ることはないので安心して報告できます。報告の内容はテキストのみならず画像、動画としても送れます。
出典:STOPit
「メッセンジャー」機能で担当者へリアルタイムで相談
「メッセンジャー」ボタンを押せば、相談担当者とリアルタイムでのやり取りが可能となります。使い方は「LINE」などのメッセージアプリと同様で、相談したい内容を直接入力すれば、担当者に届きます。
相談者の名前は匿名ですし、使っている端末が自分専用のものであれば、他の人に相談したことが知られることはありません。こちらも画像や動画を送付可能です。
詳細は「STOPit」公式サイトからご覧ください。サイトはこちら
出典:STOPit
「STOPit」はSNS社会におけるいじめ解決に役立つ
一昔前のいじめとは異なり、現在のいじめ問題は明るみに出ることすら少なくなってしまいました。原因の一つにはSNSの発達があるでしょう。
友人や家族と簡単に連絡が取れるSNSは世界中に利用者がおり、生活には欠かせないツールとなっています。利用者が増えた分、不正アクセスなどを防ぐためによりセキュリティが強化。個人間の連絡内容もクローズド化されました。
これらは、普通にSNSを使う上では安全を担保する良い機能と言えるでしょう。一方で、個人間のやり取りが他人にわからないことで、SNS上で起きるいじめが発覚しにくくなっているのです。親や先生といった身近な大人でも、子供達がどんなコミュニケーションをとっているのかわかりにくくなってしまいました。
このような時代背景があるからこそ、いじめに悩む人々がより簡単に相談できるツールが必要です。その解決策として「STOPit」が役に立つはずです。今後も、小中学校を中心に導入されていくことでしょう。
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