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社内SEは楽ってホント!? 転職者が誤解しやすいポイント3つ&プロが教える後悔しない転職の秘訣

更新: 2019.11.08

ITエンジニアの中でも、社内SEは人気職種の一つ。もともと求人数が少ないこともあり、一つの募集ポジションに応募が殺到することもある。

type転職エージェントのキャリアアドバイザー青田有貴さんによれば、他のIT系職種同様ここ数年で社内SEの求人は増加傾向にあるという。だが、転職者には「安易に選択するのは避けるべきだ」と助言していると青田さん。

その理由は何だろうか……?

「残業を減らしたい」「勤務地を固定したい」
それって社内SEじゃなきゃダメ?

IT・Web系領域の転職サポートを専門とする青田さん。年間400名以上のエンジニアのキャリア相談に応じているが、社内SEへの転身を希望するエンジニアは、「安定した働き方に魅力を感じて」と話す人が多いという。

「一番多いのは、30代〜40代になって、勤務地や労働時間など、ご自身のワークライフバランスを見直したいという理由から社内SEになることを考え始める方。20代の転職希望者もいますが、その場合は『今の仕事がつらいから、もっと自分でコントロールできる仕事がしたい』という方や、『常駐先ではなく帰属意識を持って自社で働きたい』、『発注側で働きたい』と仰る方が多い印象です」

ただ、こうした希望は掘り下げていくと必ずしも社内SEになることでしか叶えられないものではない。優先する希望条件との兼ね合いによっては、他の選択肢によって理想の働き方が実現できる可能性もある。

「社内SEの仕事について良い面も悪い面もよく理解した上で、それでも『なりたい』と思えるならいいのですが、『今の仕事の悪い面』を変えることと、『社内SEの仕事の良い面』だけを見て転職してしまうと、結局は長続きしないケースが多いのです」

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社内SE希望の転職者が勘違いしがちなポイント3つ

では、社内SEの仕事やキャリアについて、転職者が抱くイメージと現実は、何が違うのだろうか。特に勘違いされがちなポイントを、青田さんは3つ挙げる。

【勘違い1】
■社内SEの仕事は楽

社内SEは基本的に社内の人とのやりとりがメインの仕事になるため、納期が緩やかで残業も少ないイメージを持たれている。だが、「その実態は、企業ごとに全然違う」と青田さんは指摘する。

「そもそも、社内SEは社内に数名しかいないことがほとんど。大きい規模の会社でも、社内SEは少数しか置いていないところもあります。人が少ないから仕事を代わってくれる人もおらず、相談が殺到して多忙になってしまうケースもないわけではありません。

例えば、会社によっては深夜も電話に対応しないといけなかったり、土日の作業も多かったりします。システムの入れ替えが頻繁にある会社だと、深夜や休日出勤で対応しなければいけないこともよくありますね」

【勘違い2】
■社内SEは給料がいい

青田さんによると、社内SEの年収相場は会社規模や年収レンジにもよるものの、20〜30代で400万〜500万円台くらい。マネジャーになれば、600万円~くらいが相場だという。一見すると給料が良いように思えるが、一般的に昇給チャンスが少ないことは念頭に入れておくべきだという。また、多くの転職者が希望するシステム企画などの上流に関わるまでは、社内SE経験者でない限りは、下積み期間も長く、すぐに携わることができない点も注意が必要だ。

「先ほどもお伝えしましたが、社内SEは人数が少なく人の流動もあまりないので、なかなかポジションに空きが出ません。上が詰まっているから、なかなか昇進昇格できないことも多いのです。現在、社内SEとして働いている方が、転職したいといって登録いただく際には『年収が上がらないから』という点を理由として挙げられる方も多いです。転職した時点での年収がどうなるかだけでなく、キャリアを重ねたときに収入がどうなっているかも事前に確認しておきたい点です」

また、システム部門は事業会社などではコスト部門扱いになるので、SIerなどのエンジニアが主役の企業とは異なり、評価制度や基準が明確になっていないケースも。

「同世代の営業職はどんどん昇進していくのに、社内SEの方は全然昇格しないケースや年収が上がっていかない、なんてことがあると聞きます。結局、『入社時だけでなく、ゆくゆくのことも考えて選択肢を選ぶことが大事だった』ということで、社内SEになってからすぐに『やっぱり社内SEは合わない』と言って転職を希望される方もいらっしゃいます」

【勘違い3】
■エンジニアとして培った技術力がいかせる

社内SEに転身してすぐ転職活動を再開する人に最も多いのが、「思った業務ではなかった」、「技術知見が生かせない」、「社内の板挟みに耐えきれず」というケースだそう。

「社内SEは、現場、経営層、ベンダーなど、いろいろな立場の人との調整役になることが多く、板ばさみになりがちです。『技術をやりたかったのに、調整ばっかりで仕事が面白くない』といって、入社早々に意気消沈してしまう人は結構います。あとは、会社や経営層があまりにもIT投資に消極的で、社内SEとしての出番がほとんど無い、ルーティンワークや日々の障害対応ばかりでつまらない、というケースもありますね」

また、青田さんは社内SEの仕事について、技術力よりもコミュニケーション力が必要とされる「企画型の仕事」だと表現する。

「社内SEは、会社の売り上げを支える現場の業務をITでどう効率化するか、ITでどうやって会社の売上UPを支えるか、を考える仕事。高い技術力よりも、他部署の人とコミュニケーションを取って、日々の業務のコストカットできる点を考え、カットできた費用で次のシステム投資を考える。また、システム導入時には費用対効果の説明や、導入メリット、デメリットなどを経営層に説得し、決裁をもらう、といった自分の企画を通す提案力は求められます。そこをよく理解しないまま転職した方の中には『もっと技術的なことがしたかった』と言って、後悔する方が多いんです」

エンジニア売り手市場ならではの落とし穴も

さまざまな場面でIT人材の不足が叫ばれているなど、エンジニアの転職者にとっては優位な状況が続いている。ある程度、IT技術の知識がありコミュニケーションスキルに問題がない転職者であれば、複数の内定を獲得するケースも多い。しかし、この状況が“転職失敗”を招くことにも繋がっていると青田さんは言う。

「面接が進み、とんとん拍子に内定となり『一週間以内に必ず返事してください』って採用担当に急かされると、『年収も希望額だし、まあいいか!』と、簡単に内定承諾に至ってしまう方が結構いるんです。これは、エンジニア売り手市場ならではの落とし穴だと思います。転職目的やキャリアパスを明確にしたり、企業の情報収集をする間もなく、『スカウトを貰ったから』、『会った人の印象が良かった』など、表面的な情報だけで判断し、入社まで至ってしまうことも。売り手市場だからこそ、ミスマッチが起こりやすくなっています」

実際、“最後の転職”と思って社内SEに転職したものの、短期間で転職活動を再開してしまう人を青田さんは何人も目にしてきた。

「社内SEは技術力を磨いていける職種ではないので、『やっぱり技術がやりたい』と思った時に、そこからSIerなどベンダー側へ行きたいと思っても、社内SEの期間が技術面でのブランクとなってしまい、キャリアチェンジのハードルも上がります。実際、一度社内SEになった方が転職する場合、違う会社の社内SEとして転職される方がほとんど。社内SEは勤務地が固定できたり、比較的ワークライフバランスも整うなど、メリットはありますが、技術者としてのキャリアを希望するのであれば、潰しが効きにくい選択肢でもあることを理解して選ぶ必要はあります。

若手の方であれば、まずはエンジニアとして技術力の向上、業務知識をつける、マネジメント経験を積むなど、経験の幅を広げてからのほうが、将来のキャリアの選択肢は拡がると思います。『今が嫌だから』『客先常駐だからダメだ』など、短絡的なマイナスの気持ちにとらわれず、長期的な視点を持って転職先選びをすることが大事です」

取材・文/栗原千明

こちらの記事はエンジニアtypeのコンテンツから転載しております。元記事はこちら

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この記事を書いた人

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