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テックキャンプ受講生、VRアプリ「VR SUSHI BAR」を開発しSteamゲームストア2位獲得

更新: 2020.10.05

VR開発に興味があっても、「日本にいながら、VRで成功するのは難しいんじゃないか」と思っている方が多いのではないでしょうか。そんな中でテックキャンプから一歩を踏み出し、世界進出した方がいます。
それが、Steamの世界ランキングで2位を獲得したVRアプリケーション「VR SUSHI BAR」の開発者・上村隆博さんです。4ヶ月弱の開発期間でグローバルヒット作を生み出した上村さんは、渋谷を拠点にVRコンテンツ開発(現在はARコンテンツを開発)を手がける「株式会社mikai」を創業しました。

VRアプリケーション「VR SUSHI BAR」はどのようにして生まれたのか。
VR開発を始めたきっかけはどのようなものか。

「人を楽しませたい」「人を喜ばせたい」「人に幸せになってほしい」という思いを持つ上村さんにお話をうかがいました。

<上村隆博さん プロフィール>
株式会社mikai 代表。VR/ARのコンテンツ開発をおこなっている。今後はARカメラを使ったSNSマーケティングに注力していく予定。クリエイティブを活かしたデジタルコンテンツ作成が得意。※テックキャンプのVRコースは2019年2月28日に提供終了。今後も高水準な「テクノロジー人材」を育成する最高の環境を提供していきます。また、サービス内容は予告なく変更の場合がありますので予めご了承ください。最新のサービス内容は本サイトをご覧ください。

この記事の目次

「VRで寿司を握る」というアイデアの源

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VR空間で寿司を握るというアイデアが浮かんできた契機はどういうものだったのでしょうか?

開発したVRアプリを海外向けに配信するというのは、はじめから決めていました。

Steamは欧米向けのマーケットである一方、開発者の私は日本人なので「何を作ろう?」と考えたときに、忍者や侍といった「日本っぽいもの」のアイデアが色々出てきました。

他にも、枯山水というアイデアもありましたが、最終的には「やはり、寿司が良いんじゃないか」となりました。いま海外では日本食が人気ですし、「寿司」は海外で定着している文化だからです。

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また、「Job Simulator」の影響も大きかったです。

「Job Simulator」は世界的に人気のVRゲームで、コンビニ店員やレストランのシェフといった仕事をゲーム内でやるのですが、(「VR SUSHI BAR」開発前の時期に)とても売れていました。

実際にプレイしてみたら、やはり面白く、お仕事系のVRは「いけるんじゃないか」と予感しました。そこでお仕事系のVRと寿司を合わせて「VR SUSHI BAR」を開発しようと決めました。

制作にあたり、ターゲットを欧米に定めた理由を教えてください。

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VR市場は、海外の方が大きいです。

HTC Viveの出荷台数自体が世界全体で見ても多くありません。昨年のデータでは、HTC Viveの総出荷台数は42万台ほどです。VR市場は海外の方が大きいため、42万台のうち、日本向けの出荷台数はかなり少ないと考えています。

そのため、日本向けに配信しても多分売れないと思い、ターゲットを欧米に定めました。

しかし、実際には「VR SUSHI BAR」が売れた国の比率は1位がアメリカ、2位が日本で、想像以上に日本でもダウンロードされました。外国人向けに作りましたが、日本でも売れたことは嬉しかったです。

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「VR SUSHI BAR」の開発期間はわずか4ヶ月

上村さんVRインタビュー8

「VR SUSHI BAR」は、友人の方と開発したVRアプリケーションとのことでした。役割分担があるのでしょうか?

実を言うと、いま私はあまりプログラミングができていません。

本当は開発をしたいのですが、mikaiを創業したこともあり、他にもやるべきことが多いという現状があります。その分、友人には開発をメインに進めてもらっています。

ただ、事業を進めるうえでプログラミングを知っているのと知らないのとでは全く違います。

プログラミングの知識があると、新しいアプリを開発する際に「このアプリは、この部分は簡単だからすぐに実装できそうだけれど、ここは難しそうだ」と工数が読めるようになります。

アプリを一つ考案するにも、機能を実装するのにどれくらいの期間が必要か工数が読めないと、企画を考えること自体が出来ません。

そのため、プログラミングをある程度知っておくことは重要だと考えています。

「VR SUSHI BAR」の場合は、どれくらいの制作期間を費やしましたか?

「VR SUSHI BAR」は4ヶ月くらいです。加えて、Steamで申請が通るまでに1ヶ月くらいかかりました。

デザインとプログラミングは同時並行に進めました。デザインは3ヶ月、プログラミングは4ヶ月ほどかかりました。プログラミングは最後に軽量化するのに時間がかかりましたね。

VR開発を手がける「株式会社mikai」を創業した経緯

上村さんVRインタビュー4

「株式会社mikai」を創業するに至った経緯を教えいただけますか?

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元々私はデザイナーとしてフリーランスで仕事をしており、モバイルアプリのUIなどの開発に関わることもありました。

そして、仕事をするうちにプログラミングの必要性を強く感じ、テックキャンプのiOSアプリ開発のコースを受講しました。Swiftでのコーディングを学び、受講後にはコースのエヴァンジェリスト(※広報役の一種)のようなポジションに就きました。

その集まりの際に、テックキャンプのオフィスで初めてVRを体験したんです。

初めてプレイしたVRゲームは、HTC Viveの「Audioshield」でした。体験して「これはやべえぞ!」と本当に感動して「これは絶対に来る!」と思いました。

起業には以前から関心がありましたが、「どういった分野で起業をしようか」と迷っていました。その際に、モバイルアプリの分野で起業をしようとも考え、市場のリサーチを進めてもみました。

しかし「こういうアプリを作りたい」と思いついたアイデアは、既に似たようなアプリがリリースされていることが多かったです。(モバイルアプリ市場は)完全にレッドオーシャンであるため、「これはキツイぞ」というのが正直な実感でした。

そういった時期に、テックキャンプのおかげで出会ったのがVRです。「VR市場にはチャンスがある」と感じ、株式会社mikaiを立ち上げました。

テックキャンプを受講した理由

上村さんVRインタビュー6

上村さんがテックキャンプを受講したきっかけとは、どのようなものでしたか?

最初は出版社系のデザインを2年間勤めていました。

その後独立したのですが、独立する半年ほど前、「Processing」というビジュアルプログラミングに触れる機会がありました。Processingとの出会いを通じプログラミングのおもしろさに気づき、「独立するなら、ウェブは出来ないと駄目だ」と強く思ったんです。そうしてウェブの勉強をはじめ、コードを書くようになりました。

もっとも、HTMLとCSSを書くだけではフロントエンドの一部のことしか分からないため、コーディングをしていても当初の思いとは裏腹に面白みを実感できませんでした。そこで、より深いプログラミングの知識を得たいと考え、Swiftの独学を始めたのですが、すぐに挫折をしています。

その後、テックキャンプのiOSコースを受講し、オフィスでVRに出会いました。VRとの出会いの後、新たにテックキャンプのVRコースを受け直し、いまに至ります。

※インタビュー当時の内容です。

Swiftを独学で習得することは難しかったですか?

分からない箇所は友人のエンジニアに質問し、独学を進めていました。

しかし「あれも教えて」「これも教えて」と山のように質問をするのは、相手が友人とはいえ気が引けました。そのため、より質問がしやすいプログラミングスクールの受講を決めました。

実はほかのオンライン形式のプログラミングスクールとテックキャンプ、どちらを受講するべきか迷いました。

そこで、知り合いのエンジニアに「どちらを受講するべきだと思う?」と相談をしたところ、「分からないところがあったら、対人ですぐに質問ができたほうが良い」とテックキャンプの受講を推薦されたため、テックキャンプを受けることに決めました。

テックキャンプを受講して、本当に良かったと思ってます。

テックキャンプのiOSコースの受講前には、ビジュアルプログラミング以外のプログラミング経験はありましたか?

JavaScriptやjQueryのライブラリを使った簡単なコーディングはできました。

しかし「クラス」や「メソッド」といったプログラミングに関する専門的な知識はありませんでした。iOSコースを受講した際に、モバイルアプリを一つ練習で作ったことで、プログラミングへの理解が深まりました。

VR開発の敷居は、思っていたよりも低かった

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VR開発は技術的なハードルが非常に高い分野だと思いますか?

VR開発を始める以前は、VRに「すごく遠い世界」のようなイメージを持っていました。しかし、実際にやってみると、VR開発は想像よりも簡単でした。

VR開発は、開発向けのSDKが充実しています。開発の敷居は、受講前に思っていたよりもずっと低かったです。

VRコースの受講時、学習はどのように進めましたか?

受講期間のスタート前に、カリキュラムの一部を先にオンラインで見ることができたので、先行公開されたカリキュラムは、進められるところまですべて進めました。ちょうどテックキャンプのVRコースが開講間もない第一期だったこともあり、皆モチベーションが高く、学習の進みは早かったです。

実は、テックキャンプのVRコースは友人と一緒に受講しました。受講期間後に、その友人と共に開発を進め、初めて完成させたVRアプリケーションが「VR SUSHI BAR」でした。

一日の学習時間は、どれくらいでしたか?

4時間から5時間ほどでした。

平日は18時に仕事を終わらせ、渋谷校に来て、23時頃までカリキュラムを進めていました。土日もなるべく渋谷校に来るようにし、なるべく早くカリキュラムを終わらせようとしていました。

モチベーションが下がってしまう瞬間や、辛くなる瞬間はありませんでしたか?

基本的には大きくテンションを上げたり下げたりすることは無く、着実にカリキュラムを進めることを意識していました。

受講期間中、カリキュラムで一つ簡単なVRコンテンツを作りました。

自分が作ったものが、思い通りに動いてくれるというのはとても嬉しいです。「こうかなあ?」「違うなあ……」と試行錯誤して、苦労が実ったときにはテンションが上がりました。

カリキュラムやメンターの対応はいかがでしたか?

カリキュラムはとても分かりやすかったです。

メンターに別途質問をしなくても、VRコースのカリキュラムだけで、順調に学習を進めることができるくらい完成度が高かったです。また、分からない点があると、優秀なメンターがすぐに質問に答えてくれる環境はありがたかったですね。

C#のプログラミングを行う段階で、詰まってしまうことはありませんでしたか。

Swiftでの開発経験があったので、C#がとても難しいという印象は無かったです。

Swiftはよりモダンな言語で、C#はややクラシックな印象があります。C#で詰まることはなかったと言うと嘘になります。ただし、Swiftの方が開発段階で詰まりました。

でも、プログラミング学習は1つ言語を覚えておくと、次の言語を新しく勉強するハードルが少し下がります。プログラミング言語は、どれも似ているんです。大体、変数があり、if文があり、クラスがある。

そういったことを覚えておくと、学習コストは下がると思います。

VRは「遊園地的」なコンテンツ

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VRには面白いコンテンツが多いと思います。ただ、VRゲームには「一回性」のようなものを感じる時もあります。

面白いゲームには、そのゲームをやりたくてうずうずしてくるような中毒性がありますよね。本当は仕事をしなくてはいけないのに、ついずっとコントローラーを握ってしまうというような中毒性のある面白さがゲームの本質だと思うんです。

 

一方、VRは「遊園地的」だと思います。

遊園地のジェットコースターのように、プレイヤーが一回の体験から受けるインパクトが非常に大きいです。しかし、中には質の低いVRコンテンツもあります。

2017年下半期に「Fallout 4 VR」が発売されます。VR分野の一流のデベロッパによるコンテンツがリリースされると、VR市場の風向きは変化するのではないでしょうか。

また、一般層にVRが広く楽しまれるようになるためには、デバイスがコードレスかつセンサレスになることも重要だと思いますね。Googleがレノボ・HTCと共に、スタンドアロン型のVRヘッドセットを開発しているようなので期待しています。

もっとも、いますぐにコンシューマー向けVRをビジネスとして成立させるのは、難しい部分もあります。

mikaiではいまVRではなく、モバイルARに注力しています。背景には、AppleのARKitのリリースをはじめとするAR市場の盛り上がりがあります。facebookもARスタジオをはじめており、ARは、今年の後半にはより注目される市場に成長すると考えています。

株式会社mikaiのミッションに込めた思い

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mikaiのミッション「人を楽しませることで、人を幸せにする!」に込めた思いを教えてください。

映画・テレビ・ゲームなど何でもいいですが、誰でもこれまで夢中になって楽しんだことってあると思うんです。その楽しんでる時って、ほんと幸せですよね。

特に若い頃、私はずっと音楽やゲーム、漫画などに夢中でした。そういった体験が今の私に色濃く残っている。それらは私の人生をすごく奥深く豊かにしてくれました。

同じ体験を、自分たちの作ったものでみんなにしてもらいたいというのがミッションに込めた思いです。

あと、自分はデザイナー時代からずっとどうやったら人が楽しんでくれるかということを考え、形に落とし込んできました。私が社会に提供できる価値はそこだと思っています。

また大学時代には社会学を専攻しており、「クール・ジャパン」関連の卒業論文も書き上げました。
それもあって、ずっとそうしたコンテンツ消費には興味がありますね。

テックキャンプの受講で、本当に1カ月で人生が変わる

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上村さんにとって、テックキャンプの受講とはどういう意味合いを持つものでしたか?

まさに「人生を変える1ヶ月」だったと思います。

このキャッチコピー通りの時間でした。iOSコースの受講期間は2ヶ月でしたが、VRコースは1ヶ月でした。テックキャンプを受講したことで、本当に1ヶ月で人生が変わりました。

テックキャンプの受講を考えている方に、アドバイスをお願いします

カリキュラムは少しでも早く終わらせてください。受講期間が始まる前に、できる限りすべて終わらせるくらいで良いと思います。

それから、何かモノを一つ作る。

カリキュラムを読むだけではプログラミングはできるようになりません。モノを作ることで、できるようになります。作るものは何でも良いですし、遊びのような感覚で作るのでも構わないです。とにかく「オリジナル」のアプリを作ってください。

ーー上村さん、今回は貴重なお話ありがとうございました。

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この記事を書いた人

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音楽ライターとしてエイベックス、ビクター、トイズファクトリー等に所属するアーティストの取材を担当。2016年に開催された『Bjork Digital』の取材経験から、VR×音楽に関心を抱く。2017年よりテクノロジーに関するライティングを開始し、テックキャンプ ブログにジョイン。猫とウサギを飼っています。

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