アプリダウンロード数も、社員数も知名度も右肩あがりのメルカリ。メルカリUS、メルカリUKと世界進出しグローバル企業となっていますが、日本発のフリマアプリです。しかし、フリマアプリの中でじつは後発のサービス。そんなメルカリをどう拡大していったのか。キーマンであるCOOの小泉文明氏の話を「THE BUSINESS DAY#2」で聴くことができました。
こちらの記事は2018年7月に開催されたメルカリのカンファレンスイベントのレポートです。
以下内容は全て小泉氏がお話したことをライターがまとめたものであり、質問はファシリテーターである日本経済新聞社編集委員の奥平氏によるものまたはそれを要約したものです。
この記事の目次
フリマアプリとして後発だったメルカリ 最初に注力したのは「継続率」
じつはメルカリはフリマアプリでは後発なんですよね。フリル(現ラクマ)はメルカリがリリースされる1年前にすでにありました。フリル以外にも、ほとんどのネット企業が参入してきていた分野で10社くらいはうまくまわっていたんじゃないかなと思います。
私がメルカリに入社したときは100万ダウンロード突破したかしてないか、みたいな時期でした。ちょうど入社の当日だったと思うんですが、どこかのメディアにフリマアプリ特集が載っていたんです。そのときメルカリがなくって(笑)「あ、これはやばいな」と思いました。
そんな中でどうやって勝負したかというと、まずプロダクトを磨くことに力を入れました。中でも注力したのは継続率をあげていくことでした。
テレビCMに3億円、オンライン広告に1.5億円
当時のメルカリはテレビCMをつくったことがあるスタッフがいませんでした。私も全くの素人で、CMを打つ前は会社の考査が入るということも知らなかったんです。CMをつくり、すでに3億円払ったあとにCMが流れないかもしれない、ということがありました(笑)びっくりしますよね。
当初、その考査で「CtoCサービスはトラブルが多いんじゃないか」ということが心配され、それが考査が止まっていた理由だったようです。
何とか考査に通るように動きました。メルカリがどう大丈夫なのか、トラブルが起きないようにしているのか、Wordにして資料を作成したんです。なぜWordかと言うと、提出先の企業で切り貼りして社内用の資料をつくれるからです。
大企業の人が手を動かさなくても良いように自分たちが先回りしてやってあげる、それくらいのつもりでいくとスピードもあがります。
広告ではテレビに3億、オンライン広告に1.5億なので合計4.5億つかいました。15億円弱投資金として集めての4.5億なのでかなりの投資です。日本で勝ち切るためにアクセル踏みましたね。
メルカリがテレビCMを打った理由
(質問:プロダクトがよければ口コミで自然に広まるという意見もあると思います。テクノロジー分野の発想として「テレビCMは邪道だ」とはならなかったのでしょうか?)
もちろんプロダクトがいいということは大前提です。じつはCMについてはコロプラの馬場さんに聞いたんですよ(笑)「CM効くよ」と。200万ダウンロード位いくとそこから口コミがワークしていくと聞き、じゃあやってみようという流れでした。
かなりの投資額なので、成功する前提で信じて打ったんですが、結果、かなり効果があったと思っています。
日本で勝ち切るためにプロダクト開発以外にやったこと
- カスタマーサポート拡大(仙台拠点設立)
- CM
- ヤマト運輸にメルカリ便を提案
日本で勝ち切るために大切なことは何なのか、かなり考え優先度をつけてやっていました。カスタマーサポート拡大とCMと、じつはもう1つあります。スライドにはないのですが、ヤマト運輸にメルカリ便を最初に提案したのがこの時期です。
当初、ヤマト運輸のナンバー3くらいの方とお会いすることができました。ベンチャーが大企業と何かしたい時、下から行っても絶対に通りません。トップのほうからいかないといけない。上からいくルートを探すのが大事。僕はとある先輩にお願いをしてつないでいただきました。
しかし権限がある人と会えたからと言って簡単に通るわけではないんですよね。いかに相手にもメリットがあるか。僕がやったことは、ヤマトの決算資料を読み込み、ストラテジーを読み、その時のストラテジーに合う提案をしました。
その当時ヤマト運輸は個人顧客を増やすストラテジーでした。そのためそれに合う企画を渡しましたね。そうすると社内でも企画が通りやすいんです。
その後いろいろありましたが、当時まだ小さなベンチャーでもヤマト運輸さんは丁寧に対応してくれました。
バリューは「作って終わり」ではダメ いかに浸透させるかが重要
入社したときに感じたのは、メルカリは会社というよりプロジェクトチームに近いということです。
もう少し「会社」にしないといけないと感じたので、まずやったことがミッションとバリューを定義することでした。会社としてどういう価値観をもち、何を信じるのかということを明確にしたことが僕の最初の仕事でした。
ミッション、バリューに力を入れるのはすぐに数値として成果が出ないんですが、きちんと決めておくと迷ったときの判断基準となります。
何か難しい判断をしないといけないとき「それをやることはバリューに沿っているよね、じゃあやろう」という風にスムーズに決めることができる。迷ったときの判断基準がバリューですね。
このように、バリューがあることで社員が迷わずにいることができると思っています。数値としての成果はなかなか難しいですが、非常に生産性はあがったと思っています。
あと、ミッション・バリューは毎日意識して過ごすことが大切。
そのためには毎日目にすることが必要です。水にデザインとして入れたり、Tシャツにしたり、何度も唱和することで意味がある。響きは英語のほうが覚えやすいので英語です、響きがいいですしね。ただ、英語だと日本人にとって意味が人それぞれだったりするので日本語を補足で加えています。
(次のページでは「会社とプロダクトを分けることが重要 プロダクトが組織を引っ張っていく状態は危ない」の詳細をご紹介します!)
会社とプロダクトを分けることが重要 プロダクトが組織を引っ張っていく状態は危ない
これは僕のmixi時代の反省というか、もっとちゃんと見ていかないといけなかったなと思うことなんですが。
プロダクトが強い状態だと経営陣が「ミッションはこれだ」「うちのバリューはこうだよ」と言わなくても、みんななんとなく1つになっていけるんですね。これがプロダクトが組織を引っ張っていく状態です。これはある意味、楽といえば楽なんです。だからmixi時代、経営として僕はそこを疎かにしてしまったという経験があると思っています。
でもプロダクトというのはライフサイクルがあるので、いい時もあれば悪い時もある。いい時はプロダクトが組織を引っ張っていけるんですが、悪い時に入ったらみんなのイメージがブレ始めるんです。
ひとりひとりの理想像がブレ始めたりだとか、働き方とかバリューもブレ始める。そうなると何が答えなのか、何が大切なのかわからなくなってくるんです。そうするとメンバーみんな好き勝手言い始める、みたいなことが一般的に起こりがちなんです。
途中でうまくいかなくなったスタートアップというのはそういう形がきっかけで弱くなっていってしまうと思うんです。
メルカリではプロダクト自体はCEOの山田がしっかり作っていくという前提があり、そこは信じています。しかしやっぱり会社とプロダクトは分けないといけないな、と。
この会社はそもそもなんでやっているのか、どういう働き方であるかとか、どういう価値観を信じるのか、そのあたりをきちんと決めないとドツボにはまるのではないかと、恐れのようなものがあって1番最初にそこを定義づけることに力を注ぎました。
新規事業を閉鎖し、リソースを集中させ更に成長を目指す
(質問:3つプロダクトクローズさせましたね。)
そうですね。まず大前提は会社にとって人材のリソースは最も重要なことです。そのリソースをどこに注力するのが会社が拡大していくのか考える必要があります。
会社全体、トータルでリソースの最適化が大切なんですね。特に新規事業は難しいので、早めの判断が必要だと思っています。違うと思ったら早めに撤退。
ただ、起業したことがないとか経営の経験がない人は「止める」という判断ができなかったり怖がったりするのでそこは気をつけています。閉鎖するサービスメンバーのメンタルケアにも気をつけていますね。
ここでも大事なのが、メンバーが会社に紐付いているのか、プロダクトに紐付いているかという違い。
プロダクトが好きなのか、会社が好きなのか、後者であればプロダクトがなくなっても ALL FOR ONE を貫いてくれると信じています。
執筆:桜口 アサミ
2018/07/25 一部の表現を、登壇者の意図が変わらない範囲で少し柔らかめに変更しました。
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