変わろうとしているDeNAが専門役員として選出したのは元バーテンダー山口徹(ZIGOROu)氏。大企業で働く魅力とプログラマー35歳定年説について

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モバイルゲームをはじめとする分野で世界トップクラスのノウハウを誇る株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)。

同社は2017年7月1日に新たに「専門役員」と名付けたポストを用意するなど、体制刷新の真っただ中にあります。

いま、DeNAの経営をテクノロジー面からリードしているのが7月よりシステムアーキテクト分野の専門役員に就任した山口徹さんです。

2000年代よりPerlハッカーとして活躍し、Perlコミュニティでは「ZIGOROu」のハンドルネームで広く知られていた山口さん。Mobageの裏側の技術を余すところなく書いた『Mobageを支える技術』の著者の1人であり、バーテンダーからエンジニアへ転身したおもしろいキャリアの持ち主でもあります。

『Mobageを支える技術』の発刊から5年、DeNA社内の技術変化やこれまでの経歴、プログラマーについてをテーマにお話を聞いて来ました。

技術面の信憑性を担保してDeNAを引っ張る「専門役員」とは

――山口さんは2017年7月、株式会社ディー・エヌ・エーの専門役員に就任されました。具体的にはどういうお仕事なのでしょう?

我々はインターネット企業ですから、テクノロジーを避けて通ることはできないです。でも経営陣の会議で組織マネジメントと並んでテクノロジーについて議論する機会は、これまでやや少なかったんです。マネジメントに専門性を持つ人間が多いので、そうしたことが議論の中心となりがちでして。

専門性の高い分野において、技術面の信憑性を担保することの必要性は大きいです。そこで新たに設けられたポジションが「専門役員」です。

僕はシステム・アーキテクトの専門役員ですが、他にもゲーム開発に専門性を持つ役員もいます。

 

――2017年現在、山口さんがDeNAで手掛けているサービスにはどのようなものがありますか?

「Mobage」のほか、PCでスマホ向けゲームを遊ぶことができるプラットフォーム「AndApp(アンドアップ)」をやっています。最近では他事業部のシステム設計のお手伝いをすることもありますね。それから新規事業の開発もしているという感じです。

AndAppを使うとスマホとPCでデータを連携させ、同じゲームを遊ぶことができます。

 

――非常に業務範囲が広いですね。周りの方にとっては「困ったら、とりあえず山口さんに相談する」というような存在なのでしょうか。

そう言っても良いかもしれないですね。僕個人は「最強の社内ニート」を自称しているのですが、その言い方は誤解を招くから止めろと色々な方に言われます(笑)

専門役員に就任したので、今後は組織マネジメントだけではなくテクノロジーから経営をリードし、積極的に若手社員を育成していけたらいいなと思ってます。

 

20歳から25歳までバーテンダーのアルバイト

――山口さんの社会人としてのキャリアは、バーテンダーからスタートしていますよね。意外な経歴だと感じます。

バーテンダーをしていたのはかなり昔の話ですよ(笑)

20歳でバーテンダーのアルバイトをはじめ、25歳まで続けました。

 

――結構バーテンダー歴が長いですね!当時はまったくプログラミングをしていなかったのですか?

してなかったですね。小中学生の頃、友達の勧めで少しだけプログラミングをやりました。ですが、挫折してしまいました。

当時のコンピュータはスペックが低かったので、処理を高速化するためにはマシン語という低級言語でコーディングをすると良いと言われてました。でも、僕はマシン語がまったく書けなかったんですよ。

マシン語で挫折した以後は、ほとんどプログラミングをしていなくて。プライベートでコードを書くことも無かったです。

 

大学中退し、バーテンダーも身体的な理由で断念。消去法的にプログラマーへ

DeNAのオフィスのエントランスには、DeNAのロゴマーク入りの巨大なダイスが置かれています。

――では、5年続けたバーテンダーを辞めてIT業界に入った理由は何だったのでしょう?

25歳のときに椎間板ヘルニアになったんです。

 

――身体的な理由があったんですね。

バーテンダーは長時間の立ち仕事なので、ヘルニア持ちには仕事を続けるのが難しくて。

25歳になる頃には、もう大学は辞めてしまっていました。もうバーテンダーはできないし、大学にも戻れないという状況に追い込まれたときに「プログラマーなら、いまの自分にだってできるんじゃないか」と思いついて。そのようにして、消去法的に次の仕事を決めたんです。とにかく何か1つでいいから、生業を見つけたかったんですよ。

体調さえ崩さなかったら、いまも僕はバーテンダーを続けていたんじゃないかなと思いますよ。バーテンダーの仕事は本当に楽しかったんです。僕自身お酒好きですし、昼より夜が好きなので。

 

――IT業界への転職はスムーズに進みましたか?

いえいえ。正直、非常に苦労しました。本当に大変でしたよ。大学を中退した25歳のバーテンダーで、しかもアルバイト。おまけにプログラミングの実務経験はゼロだったんですから。

そんなキャリアの人間をプログラマーとして雇ってくれる企業は、そうそう無いですよね。

 

最初はBASIC、好きはPerl、注目はGo

――山口さんが1番最初に身につけた言語って何ですか?

BASICです。

 

――ちょっと意外です。「ZIGOROuさんと言えばPerl」というイメージがあって!

Visual Basicもやっていましたし、JavaやPHPもやってました。JavaScriptも不得意ではないですし。

 

――1番好きな言語は何ですか?

好きな言語となると、やっぱりPerlです(笑)1番使っていた時期が長かったので。でも1番使い込んでいた時期に比べたら、いまはPerlに対して冷静なスタンスで接していますよ。

 

――山口さんが最近注目しているのはどのプログラミング言語でしょう?

Go言語(Go-lang)です。GoはDeNAでも推しています。

これからの時代はAPIを介したサービス連携が当たり前のように行われる時代になっていくと思うのですが、API連携をするにあたって事前にバリデーションしやすい静的型付け言語は実用性が高いと考えてます。(※入力されたデータやプログラミング言語による記述が、要件を満たしているかどうかを検証すること)

Go言語は、カジュアルで書きやすい文法を持っていることも魅力ですね。記述が冗長になりがちな言語は、やはりエンジニアにとって書きづらいですから。

 

DeNAにいる理由は大きな裁量権を持って優秀なメンバーと仕事ができること

――エンジニアはフリーランスとして独立したり、リモートワークといった働き方も可能です。ただ山口さんは独立することなく、働いていますよね。「ZIGOROu」の名前があれば、お1人でもきっと仕事ができるだろうと傍から見ていると思うのですが・・・。フリーではなく、DeNAでエンジニアとして働くことの面白さとは何でしょう?

1つ言えるのは「大きな裁量権を持てるかどうか」ですかね。

フリーというのは企業の中で働くのではなく、外部の人間として誰かから直接仕事を貰うということですよね。

例えば僕が技術顧問としてフリーで仕事を受けたとしても、外部から参加している限りはアドバイザー的な役回りになってしまうんじゃないですかね。もう少し現場に近いプロジェクトメンバー的な立ち位置で仕事を受けたとしても、問題が発生した場合に最終的に責任を負うのは恐らく内部のメンバーじゃないですか。

そうした働き方よりは自ら責任を背負い、ある程度大きな裁量権を持って優秀なメンバーと仕事をする方が僕個人としては面白いと思っているのでDeNAにいるという感じですね。

 

『Mobageを支える技術』から5年。変化が大きかったのはクラウドサービス

――山口さんは2012年に発刊した『Mobageを支える技術』の執筆に参加されています。Mobageの大規模Webインフラ、ビッグデータ分析などに関する具体的な技術を徹底的に解説した1冊でした。

懐かしい!(笑)あの本を出してから、もう5年になるんですね。

Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~ (WEB+DB PRESS plus)
――この5年の間、クラウドサービスが普及するなどインフラ周りの技術は大きく前進しました。DeNA社内では発刊後、どのような変化がありましたか?

かなり色々な変化がありました。まず、この5年の間にサービスをグローバルに展開する機会が増えてきたことです。

グローバルにサービスを提供する上で、求められるのは現地の国の法令を守ること。特に個人情報保護は慎重に行う必要があります。

国外ユーザーの個人情報を、日本国内にてオンプレミス(サーバやネットワーク機器を自社の建物やデータセンターに設置、運用する形式)で管理すること自体が法に抵触するというケースもあるんですよね。だから、オンプレミスからクラウドに切り替えざるを得ないという状況も生まれました。

国内でヒットしたタイトルを、国外でもリリースするといった場合にもクラウドサービスを利用しています。特に大規模サービスにとってはクラウドは本当にメリットが大きいです。

大規模Webサービスでは扱うデータ量が非常に多いのですが、オンプレミスではそれらのデータをとにかく小さな単位にひたすら分割し、管理していたわけです。そうすることで特定のサーバだけで、膨大なデータを捌く必要がなくなるので。

ただどれだけデータを細かく分割しようとしても、分割には限度があるんです。

ユーザー数がどんどん増える中、どのようにデータベースを分割し、どのようにスケールアウト(システムを構成するサーバーの台数を増やすこと)していくかというのは常に悩みの種でした。

AWS Lambdaはクラウド上でアプリを実行するためのプラットフォーム。サーバーレスで何らかのイベントが発生した時のみコードを実行し、実際のコンピューティング使用時間に対してのみ使用料金が発生します。

 

こうした難しい管理をクラウドで完結できるというのは、本当に楽ですよ。AWSやGCPといったパブリッククラウドの品質も向上してきていますからね。

大抵のWebアプリケーションはパブリッククラウドが提供するサーバーレスの枠組みで十分収まるのも事実です。サーバーレスで十分運用可能なサービスであれば、それにシフトしていくというのは、うちの会社に限らずIT業界全体の大きなトレンドになっています。

一方、サーバーレスの苦手な分野というのもあると思います。例えば長時間に渡ってコネクションを接続し続けることが必須のサービスなどは、サーバーレスでやるのはまだ難しい部分があるので自前でサーバーインスタンスをクラウド上に構築する必要があります。

求められる要件に合わせて、クラウドとオンプレミスを適材適所でそれぞれ使うようになったというのが『Mobageを支える技術』以後の5年の大きな変化でしたね。

 

プログラマーの35歳定年説について「全力で逃げろ」

――エンジニアとしていま、新しく学んでみたい技術はありますか?

エンジニアは技術を学び続けなくてはいけないのは前提ですが、その上で最近は非エンジニア領域の本を読むことが増えてますね。

というのも、エンジニアはシステムの利用者が置かれている市場環境などについても知っておくべきだと思うので。相手の課題を深く理解することで要件を満たすだけでなく、潜在的なニーズに応えるプラスアルファの機能なども提供できる可能性があります。

 

――「プログラマー35歳定年説」という言葉があります。この説についてはどのようにお考えですか?コーディング技術を突き詰め、非エンジニア領域の知識、たとえばマネジメントスキルなどを持たないプログラマーは35歳以降、キャリアには困難が待っているのでしょうか。

非エンジニア領域の知識を持たず、技術を突き詰めることは悪いことではないですよ。技術そのものが好きで、没頭する方の気持ちは僕もすごく良く分かりますしね。

僕が俯瞰的に物事を考えるようになったのは、単に僕が歳をとったからです(笑)

僕がいまからGo言語を全力で勉強して、若手を追い抜き最前線で開発をするエンジニアになったとしますよね。でも、それってあまり意味が無いことだと思うんです。

というのもやはり上の世代の人間は、自分の仕事を少しずつ次の世代に託していくべき存在です。自分の仕事は他の人でもできるようにどんどん見える化し、いずれ自分自身は手を引くべきです。今いる場所からはあえて「逃げて」、新たな領域を切り開くのが上の世代の役目です。

若手に仕事を引き継ぐためにはマネジメントの知識が必要ですし、新たな領域を切り開くためには技術だけでなく、マーケティングの知識も必要です。つまり「逃げる」ためには、非エンジニア領域の知識が求められるんです。

僕はこの先の何十年か、全力で逃げようと思っていますよ(笑)自分が下の世代に追いつかれそうになったら仕事を見える化した上で明け渡し、自分自身はまた更に新たな領域に逃げるんです。

 

自分がエンジニアに向いているのかどうかは未だに分かっていない

――バーテンダーから転身した山口さんが、エンジニアとして自信を深めていくことができた要因は何だったのでしょう?「自分はエンジニアに向いている」という確信を得られる出来事があったのでしょうか?

うーん・・・。僕は自分がエンジニアに向いているのかどうかは未だに分かっていません。いままでやってきたことの1つ1つにはある程度、満足はしてますけどね。

過去に手掛けた開発案件を振り返って「この箇所は、ものすごく頑張った。あの時の努力のおかげで、こういうスキルを手に入れられた」「この部分は、いまだったらこういう風に作るなあ」と、後から考えたりもします。そのように反省をしつつ、その時々で自分を納得させながら、開発を続けてきたというのが正直なところですね。

だから自分がエンジニアに向いていたのかどうかは、死ぬ直前に分かるものじゃないですかね。「ひょっとしたら、エンジニアに向いていたのかもしれない・・・」ってなるかもしれません(笑)

 

考える力・反省する力・先を読む力がある人が強い

――山口さんでもそう思うということは、エンジニア初心者の方がもし「向いてないかも」と考えてしまっても仕方ない事かもしれないですね。では、山口さんはどういう知識やスキルを持っている人を、優秀だと感じますか?

僕は「考える力」がある人を優秀だと感じますね。知識欲があり、自分でやったことを後から振り返ることができる人は優れた人です。

例えば「今回はこういう風に案件を進めたけど、あそこはもっと良くできたな。あそこでああいう判断をしておいたら、もっと完成度が上がったかもしれない」というように反省する力ってとても大事です。

先を読む力も大切ですね。例えば、2つ選択肢があるとして「Aを選んだら、工数は少なく済むからスケジュールに余裕が出る。けれど、サービスがスケールして来たらこういうリスクが出る。一方、Bを選んだら・・・」といった具合にメリットとデメリット、将来的に起こり得るリスクなどをしっかり検討することは重要ですから。

世の中にはレベルの高い試験をいくつもクリアして、難関資格をたくさん持っている人っているじゃないですか。でも中にはそこで得た知識を使う才能が無い人もいるんですよね。才能を使う才能が無いというか。知識を持っているだけでなく、その知識を使うことができるというのが本当の意味での「考える」ということです。

この考える力、反省する力、先を読む力がある人は強いですね。

 

基礎的な素養として、プログラミングを学ぶのはエンジニア志望者でなくともおすすめ

――さいごに、未経験からプログラミング学習を始める20代・30代の方に向けてアドバイスをお願いします。

エンジニアに転職するか否かに関わらず、基礎的な素養としてプログラミングの考え方を身につけておくのはおすすめです。

プログラミングの考え方と作用を学ぶのは、それほどハードルが高いことではないです。例えば、Scratchのような教育向けのプログラミング言語を触るだけでも制御構造の組み合わせによるアルゴリズム化の基礎は学べます。

手軽に実行環境を用意できるという意味では、最初に学ぶ言語は個人的な考えですがJavaScriptが良いと思います。開発環境の準備がほぼ不要ですし、言語仕様がアップデートされており、今後強い型付けを持った言語として再注目される可能性があります。

――山口さん、ありがとうございました!

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