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プログラミングに苦手意識があった33歳・IT企業取締役 2ヶ月休職して技術をゼロから学び直す

更新: 2020.08.28

UIデザイナー、IT企業取締役、人事などを歴任。33歳まで順風満帆なキャリアを歩んできた尾毛川 弘人さん。

しかし33歳の夏、尾毛川さんは突如2ヶ月間の休職を決意。学生時代に学び、苦手意識を持った「プログラミング」をTECH::EXPERTでもう一度学び直しました。

突然、自らのキャリアに中断期間を設けた理由は何だったのか。

取締役の地位まで上り詰めたにも関わらず、なぜ再びゼロから技術を学び直したのか。プログラミングを使って、いったい何をやりたいのか。

尾毛川さんに話を聞いてみました。

<プロフィール>

大学でユーザビリティを学び、2007年にUIデザイナーとしてエムティーアイに入社。

2010年にビジネスサイドに転向。その後複数の新規事業立ち上げに尽力し、2014年に事業と共にエムティーアイの子会社であるメディアーノへ出向。

2015年12月よりメディアーノの取締役として経営に参画し、2017年8月よりエムティーアイの人事を兼務し組織改善を担当中。

UIデザイナーからビジネスサイドに人事まで やりたい仕事をやるための「引き寄せ力」の秘訣

ーーもともとはUIデザイナーだったそうですね。

大学の頃に「情報アーキテクチャ学科」という学科でデザイン、UIに関する勉強をしていたんです。たとえばデジタルツールを利用するユーザーにとって、そのツールのインターフェースや項目の並び順は「本当に使いやすいのか」「適切なのか」。そうしたことを研究していて。その頃から、プログラミングも授業の一環でやっていましたね。

当時は苦手意識のほうが強かったですけど(笑)

ーーそうして大学を卒業後、UIデザイナーになったのですね。

はい。とは言っても、就職活動を始めたばかりの頃はSIerを受けていたんです。ただ、試験を受けていくにつれて「なんか違うな」という感覚が芽生えて。

一方、強い興味を持つようになったのが携帯電話向けコンテンツでした。当時はまだガラケーだったんですけど、本当に就職活動で携帯に助けられる機会が多かったんですよ。携帯が無かったら、電車の乗り換えすら分からなかったでしょうね。

そうして携帯向けのコンテンツを提供する会社に、UIデザイナーとして入社することを決めました。

ーーいまのご自身のキャリアは、ビジネスサイドですよね。デザイナーからビジネスサイドにキャリアを転換するきっかけはなんでしたか?

2010年頃、株式会社エムティーアイの社内でスマートフォン対応に特化した特設部署が立ち上がり、それに参加したことがきっかけでした。部署自体は半年で解散したんですよ。すると、当然メンバーは基本的には元々いた部署に戻っていくことになります。

ですが、僕は一緒に特設部署にいた先輩に「お前は絶対、ビジネス側をやった方がいい」と強く誘われて。それでデザインの部署に戻るのではなく、ビジネスサイドに転向することに決めました。

ーー誘いを受けるときに、迷いはありませんでしたか?

なかったですね。というのも、本当の意味での「UIやUX」って、画面デザインとイコールでは無いと思うんですよ。

ーーというと?

当時の「UIデザイナー」の仕事って、ツールの機能がすべて決まったあとに「レイアウト」や「並べ方」を考えることが多くて。そもそもどういう課題が存在していて、その課題を解決するためにどんな機能を盛り込むべきか、という段階から企画に参加できることってあまり無かったんです。

僕は、本当の意味でのUIやUXとは「どんな課題をどう解決すると最高の体験になるか」考えるべきものだと思っています。そうした問題と真摯に取り組むためには「デザイナー」としてフロントだけをやり続けるのではダメだという、確信に近い考えをずっと持っていました。

だからこそ、ビジネスサイドをやることに決めたんです。

ーー現在は、株式会社エムティーアイの人事も担当されていますよね。

エムティーアイで人事を担当するようになったのは、この1年のことです。3年前から僕は、エムティーアイの子会社「株式会社メディアーノ」の取締役をしているのですが、その時期から「組織」についてよく考えるようになりました。

メディアーノでは採用を直接担当することはなかったのですが、組織づくりについて色々考えるなかで人事の仕事にも興味が湧いてきたんです。

ちょうどその時期にエムティーアイから人事をやらないかと声がかかったので、人事の仕事を始めました。

ーー「やりたい仕事」を実際に手がける機会に恵まれている印象があります。「引き寄せ力」がすごいですね。

一番は周りに恵まれていると思いますが、「こういう仕事がしたい」と常に発信することは心がけてますね。発信していると、それを受け取ってくれた方が仕事を紹介してくださることがあるので。もちろんしっかり結果でお返しすることも意識しています。

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33歳・IT企業取締役が休職してプログラミングを学んだ理由「先が見えない時代だからこそ、プログラミングが重要」

ーー2ヶ月休職し、TECH::EXPERTフリーランスコースを受講されました。順調だったキャリアに一旦休止符をうち、プログラミングを学んだ理由は何だったのでしょう?

プログラミングを学びたいとはずっと思い続けていたんです。ですが、その時間を作らずに年齢を重ねてしまったのが事実で。
そんな中、ある時ぽっと事業の諸々のタイミングが落ち着いて。まとまった学習時間が取れるメドが経ったんですね。

仕事がひと段落しているし、後輩たちも育ってきたというタイミングだったので「学ぶなら今しかない!」と思い、休職を決断しました。

※2020年1月15日からTECH::EXPERTのコース区分が廃止となり、転職支援の有無をお選びいただく形となります。詳細は本サイトをご確認ください。

ーーその時、ご自身はおいくつでしたか?

33歳です。

ーープログラミングをやりたいというのは純粋な欲求だったのでしょうか。それとも仕事に役立ちそうだという目星が付いていたのでしょうか。

仕事に役立つだろうとは考えてましたね。それには2つの理由があります。

まず1つは、エンジニアの気持ちが理解できるようになること。

ITサービスの企業にとって、エンジニアって本当に大事な存在ですよね。でも、マネジメントサイドがエンジニアの働き方や技術に理解がなかったら「エンジニアが働きづらい環境づくり」をしてしまう可能性があります。それって、ITサービスの企業には致命的なことだと思うんです。

エンジニアを大切にするマネジメントのためにも、マネジメント側がプログラミングを学ぶことは大事だと思います。

もう1つは、プロトタイプ作り。

正直に言って、いまのビジネス環境は10年前よりも「先が見えない」と感じてます。なかなか難しい時代だなって純粋に思うわけです。どんなサービスが当たるか。何をすればうまくいくのか。そういうことって、はっきり言って分からないですよ。

でも、どこかで企画にゴーサインを出さなくてはいけない。そういう時、ゴーサインを出す根拠が「データだけ」というのは心細いものです。やはりプロトタイプがあるだけで、判断の精度は上がります。プロトタイプをユーザーに使ってもらえば、生のユーザーの声も拾い上げられますしね。

こうした企画から開発、検証までのサイクルをより品質が高く、スピード感が高いものにするためにはプログラミングが大事です。だからこそアイデアをパワポに落とし込むんじゃなくて、プロトタイプとして可視化する力が欲しかったんです。

1日10時間のプログラミング学習 2ヶ月で新たなビジネスアイデアを形に

ーー2ヶ月間の受講を振り返って、感想を教えてください。

あまりにもあっという間でしたね。正直、途中では「うわ、心折れそう……」って時もありましたよ(笑)

ーー何が一番大変でしたか?

学習のリズム作りですね。1日10時間以上、パソコンと向き合い続けて学習をするという習慣がなかったので。

もちろん普段もそれくらい仕事に打ち込む日はありますけど、大抵はミーティングのように「パソコン作業ではない業務」もあるものです。

ここまでパソコンと延々向き合うのは初めてでしたし「この学習スタイルに慣れることができるのだろうか」と不安にもなりました。

ーー学生時代のプログラミング経験は、今回の学習にもいきましたか?

学生時代に学んでから時間が経っていたので、正直、はじめは記憶が抜け落ちていたところもあります。

ただ、少しずつ学習のリズムが掴めてくると、コーディングで詰まった時に「ああ、こういうこと学生時代にもあったなあ……」というように感覚が蘇ってもきました。

もっとも学生時代に触れた言語はC、Java、アセンブラだったので、今回学んだRubyとはあくまで別物でしたけどね。

ーーTECH::EXPERTの受講期間中、どのようなアプリケーションを開発しましたか?

最初の3週間はカリキュラムを進め、そこに掲載されているアプリケーションの開発をしました。

その後3週間はチーム開発を経験させて頂き、残りの受講期間はオリジナルアプリの開発に専念しました。受講前から「作りたいアプリ」が明確に決まっていたんです。なのである程度技術が身についたら、あとは一人でアプリを作り込んでいくという段階に進みましたね。

受講期間中に作成したアプリは、自社に戻ってからも開発を続け、何らかの形で事業に生かしたいなと思ってます。

ーーTECH::EXPERTの受講生は、受講を終えると転職します。一方でご自身は、修了後はもともと在籍していた会社に戻ります。会社に戻った後のキャリアはどうお考えですか?

フレキシブルに働きたいですね(笑)。

基本的にはマネジメントを行うことになると思います。その過程でエンジニアと関わりあうことは絶対にありますし、学んだ知識がいきてくるはずです。

先にお話ししたプロトタイプの話もしかりです。企画においてもプログラミングスキルが活かせる場面があると思います。

それに加えて、何らかの形で開発にもプレイヤーとして携われたらいいなと思っています。弊社にもRubyを使うサービスがあるので。

※テックキャンプ エンジニア転職のチーム開発は80期(2020年6月20日開催)をもって終了となりました。今後も受講生にとって最適な学習スタイルの提供を目指していきます。

プログラミングスキルを持つビジネス人材はなぜ企業にとって魅力的なのか

ーー尾毛川さんはIT企業取締役であると同時に、人事でもあります。マネジメントや人事から見ると、経営やマーケティングなどビジネスの知識があった上で、プログラミングスキルも持っている人材は魅力的に映るものですか?

魅力的です。

例えば、お客様からヒアリングを重ねてアプリケーション開発の企画を進めるとします。その際、エンジニアの素養を持つビジネスサイドの人間であれば、その場で抽出された課題に対して「こうした仕組みを作れば、その課題は解決できます」というように優れた提案が可能になりますよね。

一方でプログラミングの知識がない人だと、こうした具体性を持つ提案はなかなかできません。両者には、想像以上に大きな差があると思います。お客様からすれば、より深い知識を持つ人に仕事を頼みたくなるのは当然じゃないですか。

もちろん「経営に特化した知識がある」というように、1つの分野に特化した知識を持った人材も魅力的ですけどね。

ーー「エンジニアの素養」とは具体的にどの程度のスキルを指していますか?

エンジニアでなくとも構わないけれど、1つのアプリケーションを自分で作りきったことがある程度のスキルですね。
「プログラミングに関する”知識”」があるだけではダメで、実際に手を動かしてアプリを作った経験があることが重要です。

ーー今後、ご自身はどのような人材になりたいですか?

まずマネジメントとしては、エンジニアのことを深く理解した組織づくりができる人間になりたいですね。

その上でプレイヤーとしては、プログラミングスキルを生かして自分のアイデアを可視化し続けられる人材になっていきたいです。

ーーTECH::EXPERTの受講を検討している方に、アドバイスをお願いします。

プログラミングを学んで「転職するかどうか」に関わらず、プログラミングって身につけておいて絶対に損はないものだと思います。

プログラミングは、マネジメントサイドにとっても、企画やディレクターにとってもいかせる場面がたくさんある技術ですしビジネスパーソンのスキルアップにも最適です。

TECH::EXPERTフリーランスコースは独立や転職の意思がない人でも「学習時間が確保できるなら」という条件付きで、純粋なスキルアップ目的での受講が可能です。開発はもちろんコーディングした後のテストからチーム開発まで網羅的にスキルが学べるので、プログラミングを少しでも仕事にいかしたいと思うなら、思い切って飛び込んでみるのもありだと思います。

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この記事を書いた人

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音楽ライターとしてエイベックス、ビクター、トイズファクトリー等に所属するアーティストの取材を担当。2016年に開催された『Bjork Digital』の取材経験から、VR×音楽に関心を抱く。2017年よりテクノロジーに関するライティングを開始し、テックキャンプ ブログにジョイン。猫とウサギを飼っています。

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