動画生成AI「Kling(クリング)」は、テキストや画像から高品質な動画を作れるツールとして注目を集めています。
OpenAIのSoraやGoogleのVeoに対抗する中国発のサービスで、最大3分までの動画生成が可能ですよ。
本記事では、Kling AIの基本的な使い方から登録方法、料金プラン、実践的な活用テクニックまで詳しく解説します。
初心者でもすぐに動画制作を始められるよう、画像付きで分かりやすく説明していきます。
Kling AIとは?中国発の無料AI動画生成ツール

Kling AIは中国の大手IT企業「快手(Kuaishou)」が開発した、次世代の動画生成AIツールです。
テキストプロンプトからの動画生成と、静止画像のアニメーション化という2つの機能を備えており、特に最大3分までの動画延長機能が他社製品と一線を画しています。
ここでは、Kling AIの基本的な特徴と機能について詳しく見ていきます。
中国快手が開発した高性能動画生成AI
Kling AIは、中国の大手ショート動画プラットフォーム企業「快手科技(Kuaishou Technology)」によって開発されました。
ByteDance(TikTokの親会社)と並ぶ中国のソーシャルメディア大手であり、この背景がKling AIの急速な発展を支えています。
拡散トランスフォーマーアーキテクチャという先進技術を採用し、OpenAIのSoraと同じ技術基盤で動いているのが特徴です。
2024年半ばのリリース以来、全世界で2,200万人のユーザーを獲得し、1億6,800万本以上の動画が制作されました。
1080pの高解像度動画を生成でき、複雑な動きや物理法則をリアルにシミュレートする能力を持っています。
テキスト入力で最大3分の動画を生成
Kling AIの最大の強みは、テキストプロンプトから最大3分間の動画を生成できる点です。
ただし、この3分という長さは一度の命令で直接生成されるのではなく、「動画延長(Video Extension)」機能を繰り返し使って実現します。
まず5秒や10秒のベース動画を生成し、その後4秒から5秒の追加クリップを継ぎ足していく仕組みです。
このプロセスを繰り返すことで、理論上の最大長である3分に到達できます。
単に長い動画を生成するだけでなく、段階的に内容をコントロールしながら長尺コンテンツを構築できるのが魅力ですね。
1枚の画像を5秒の動く映像に変換
Kling AIは、テキストからの動画生成に加え、1枚の静止画像から動画を生成する「画像から動画へ(Image-to-Video, I2V)」機能も搭載しています。
AIが画像の内容を3D空間的に解釈し、プロンプトに基づいて自然な動きを付加する仕組みです。
基本的なI2V生成のデフォルト長は5秒で、クリエイターは静的なアートワークや写真に命を吹き込めます。
内部的には最大77座標のモーション軌跡が計算されており、単なるエフェクトではなく高度な動き制御が行われています。
1枚の画像をアップロードし、動作の指示プロンプトを加えるだけで、元の画像のスタイルを維持したままダイナミックな映像を作成できます。
無料版は5秒動画を1日最大6本まで
Kling AIの無料プランは、ツールの基本機能を試すために提供されていますが、生成能力には厳しい制限があります。
無料プランのユーザーには毎日66クレジットが付与され、このクレジット数によって生成可能な動画本数が決まります。
最も低品質な「Kling 1.0, standard mode」であれば、5秒の動画が10クレジットで生成可能です。
この計算では、66クレジットで最大6本(66÷10=6.6)の低品質動画が生成できる計算になります。
ただし、高品質な「Professional Mode」で5秒の動画を生成するには35クレジットが必要で、この場合は1日に1本しか生成できず、生成待ち時間も非常に長いという制約があります。
Kling AIの登録方法【3ステップで完了】

Kling AIを使い始めるには、まず公式アカウントの登録が必要です。
登録プロセスは一般的なWebサービスと同様、メールアドレスとパスワードを用いた簡単なステップで完了します。
公式サイトへのアクセス、サインアップ情報の入力、メールによる認証という3つの手順を踏めば、すぐにKlingの機能を試せますよ。
公式サイト(klingai.com)にアクセス

登録の最初のステップは、Kling AIの公式サイトにアクセスすることです。
フィッシングサイトや模倣サイトを避けるため、必ず正確なURL(klingai.com)からアクセスしてください。
公式ウェブサイトにアクセスすると、ページの右上隅に「Sign in」または「Sign in for free credits」というボタンがあります。
新規登録を行うには、この「Sign in」ボタンをクリックすると表示されるポップアップウィンドウから、新規登録用のリンクを選択します。
登録プロセス自体は無料で、サインアップが完了すると全ユーザーが無料のクレジットを受け取れます。
メールアドレスとパスワードを入力

次に、アカウント情報としてメールアドレスとパスワードを設定します。
メールアドレスは、後述する本人認証およびアカウント管理のために必須です。
「Sign in」ポップアップから「Sign up for free」(無料登録)のリンクをクリックしてください。
表示されたフォームに、受信可能なメールアドレスと、Klingへのログインに使用したいパスワードを入力し、「Next」をクリックします。
この際、ボットによる自動登録を防ぐためのセキュリティ検証(パズル認証)が表示されることがあり、モバイル端末では問題が発生する場合があるため、PCでの操作がおすすめです。
認証メールをクリックして完了

最後に、メール認証を完了させることで、アカウント登録が正式に完了します。
パスワード入力後に表示されるセキュリティ検証(スライド式パズル)を完了させる必要があります。
認証パズルを通過すると、Klingから入力したメールアドレス宛に認証コード(Verification code)が送信されます。
メールボックスを確認し、記載されているコードをKlingの画面に入力して「Sign in」をクリックすると、認証が完了します。
認証が成功すると、アカウントが有効化され、ダッシュボードにアクセスできるようになり、無料のデイリークレジットが付与されます。
Kling AIの料金プラン【無料版と有料版の違い】

| プラン | 料金 | できること |
|---|---|---|
| Free | 無料 | ・テキスト、画像から基本的な動画作成が試せる ・商用利用は非推奨〜制限あり |
| Standard | 月額6.99~10ドル | ・Freeより長めのクリップを安定して生成、解像度も上がりフレーム品質も安定 ・ウォーターマークを削除可能 ・基本編集ツール、高速キューアクセスなどが利用でき、個人クリエイターのライト運用向き |
| Pro | 月額25.99~37ドル | ・数十秒〜最大1分程度の高解像度な動画生成が可能。 ・ウォーターマークなし ・高度なカメラ制御、プロフェッショナルモード、詳細パラメータ調整、優先レンダリング、優先サポートなどが解放され、クリエイターやマーケチーム向き |
| Premier | 月額64.99~92ドル | ・Proと同等かそれ以上の長尺の動画を高解像度で生成可能 ・ウォーターマーク:なし ・すべての高度機能の利用と新機能優先アクセス権を得られ、チーム・企業・スタジオ運用向き |
Kling AIは、クレジットベースの料金体系を採用しており、複数のプランが用意されています。
このシステムは、無料版で機能を試したいライトユーザーから、大量の動画生成を必要とするプロフェッショナルまで、異なるニーズに対応するために設計されていますよ。
プランが上位になるほど、クレジット単価が下がり、最大動画長や解像度(4K対応)などの機能制限が解除されます。
Free(無料版):66クレジット/日
無料プランでは、毎日66クレジットが付与されます。
最大動画長は10秒まで、解像度は720pに制限され、生成された動画にはウォーターマークが付きます。
生成速度は有料プランと比較して遅く、サーバーの混雑状況によっては3時間以上待たされることもあります。
あくまで「お試し」として位置づけられており、実用的な品質の動画は1日に1本程度しか生成できません。
Kling AIの機能を体験したい初心者や、予算をかけずにテストしたい人に適しています。
Standard(基本プラン):月額6.99~10ドル
Standardプラン(Basic)は、月額6.99ドルから10ドル程度で、月間660クレジットが付与されます。
最大動画長は30秒まで延長され、解像度は1080pに向上し、ウォーターマークが削除されます。
生成速度も「Fast-track」により優先処理されるため、無料版よりも大幅に短縮されます。
ただし、660クレジットでは高品質なPro Mode 10秒動画(70クレジット)が約9本しか生成できません。
定期的に動画を制作したい個人クリエイターや、小規模なプロジェクトに取り組む人におすすめです。
Pro(プロプラン):月額25.99~37ドル
Proプランは、月額25.99ドルから37ドル程度で、月間3,000クレジットが付与されます。
最大動画長は60秒まで延長され、解像度は4Kに対応し、優先アクセス権が付きます。
ウォーターマークがなく、生成速度も高速で、プロフェッショナルな品質の動画を大量に制作できます。
3,000クレジットあれば、Pro Mode 10秒動画を約42本(3,000÷70)生成できる計算です。
本格的な動画制作に取り組むクリエイターや、ビジネス用途で高品質な動画が必要な人に最適なプランです。
Premier(エンタープライズ):月額64.99~92ドル
Premierプランは、月額64.99ドルから92ドル程度で、月間8,000クレジットが付与される最上位プランです。
最大動画長はカスタマイズ可能、解像度は4Kに対応し、最優先アクセス権が付きます。
8,000クレジットあれば、Pro Mode 10秒動画を約114本(8,000÷70)生成できます。
大量の動画を継続的に制作する必要がある企業や、制作会社におすすめのプランです。
生成待ち時間がほぼなく、ストレスなく大量の動画制作プロジェクトを進められます。
テキストから動画を生成する使い方【T2V機能】

Kling AIのテキストから動画を生成する(T2V)機能は、アイデアを視覚化する強力な手段です。
AIは入力されたプロンプト(指示文)を解釈して映像を構築するため、指示が具体的であるほど、生成される動画の品質と一貫性が向上します。
ここでは、Kling AIでT2Vを使いこなすための基本的なプロンプト作成術と設定方法について解説します。
英語で具体的な動作を2文以内で書く

Kling AIへの指示は、具体的かつ簡潔な英語で記述することが推奨されます。
AIモデルは現在、英語のニュアンスと構文に最適化されており、詳細な指示を理解する能力が高い一方で、長すぎる文章や曖昧な表現は解釈の混乱を招きます。
Klingの推奨構造では、「被写体(Subject)」「被写体の説明(Subject Description)」「被写体の動き(Subject Movement)」「シーン(Scene)」「シーンの説明(Scene Description)」を明確に含めることが求められます。
例えば、「A man, wearing a red jacket, is jogging, in a foggy forest, at sunrise」のように、要素を簡潔に組み合わせることが大事です。
高品質な動画を得るための第一歩は、必要な情報を精査し、2文以内の具体的で詳細な英語プロンプトを作成することです。
「犬が走る」より「Golden retriever running in park」

プロンプトの具体性は、生成される動画の品質を決定づける最も重要な要素です。
「犬が走る」のような曖昧なプロンプトでは、AIは「どの犬種」が「どこを」「どのように」走るのかを推測するしかなく、結果としてありきたりで意図しない動画が生成されます。
対照的に、「A golden retriever running in a park, chasing a red ball, sunny day」(公園で赤いボールを追いかけるゴールデンレトリバー、晴れた日)というプロンプトは、AIに対して「犬種」「場所」「具体的な行動」「天候(光の当たり方)」という4つの明確な指示を与えます。
ガイドラインでも、「a fluffy white cat with blue eyes playing with a ball of yarn(毛むくじゃらの白い猫が青い目で毛糸玉と遊んでいる)」のように詳細に記述することが推奨されています。
Kling AIを使いこなすとは、AIに「推測」させるのではなく、具体的な指示によってAIを「演出」することに他なりません。
5秒・10秒・30秒から動画時間を選択

プロンプトの入力と並行し、生成する動画の長さを選択する必要があります。
この設定は、生成される動画の用途(例:SNS用の短いクリップ、物語の一部など)に影響するだけでなく、消費するクレジット量と生成待ち時間にも直結します。
Klingのインターフェースでは、通常5秒や10秒といった選択肢が用意されています。
無料プランのユーザーは、多くの場合5秒または10秒に制限されます。
一方、有料プランにアップグレードすると、Standard (Basic) プランで30秒、Proプランでは60秒といったより長い動画の生成が可能になり、クレジット消費は長さと比例します。
左右パン・ズームイン・固定の3つから選択

Kling AIは、静的な映像だけでなく、プロフェッショナルなカメラワークを模倣した動画を生成する能力を持っています。
この機能により、クリエイターはAIに「カメラマン」としての役割を与え、よりダイナミックで映画的な表現を追求できます。
ユーザーは、カメラの動きを明示的に指示できます。例えば、「左右パン(Pan)」、「ズームイン(Zoom-in)」、「固定(Static shot / steady camera)」などです。
初期のモデル(Kling 1.0や1.5)では、これらの動きがUIのドロップダウンメニューから「選択」する形式で提供されていました。
しかし、Kling 1.6以降の新しいモデルでは、AIの文脈理解が向上し、プロンプトに直接「The camera… slowly zooms in」や「Pan shot」と書き込むことで、より自然で複雑なカメラ制御が可能になっています。
画像から動画を生成する活用方法【I2V機能】

Kling AIの「画像から動画へ(I2V)」機能は、1枚の静止画像を驚くほど自然にアニメーションさせ、クリエイティブの幅を大きく広げます。
この機能は、単に画像にエフェクトを加えるのではなく、AIが画像の構造を理解し、プロンプトの指示に従ってリアルな動きを生成するものです。
ここでは、I2V機能を最大限に活用するための具体的なテクニックと、高品質な結果を得るための設定について解説します。
人物写真は正面向き・高解像度を使用

画像から動画を生成する際、特に人物を扱う場合は、入力する写真の品質が結果を大きく左右します。
Kling AIは、顔の微細な表情変化や、音声に合わせて口の動きを生成するリップシンク機能など、高度な顔アニメーション技術を備えています。
これらの機能をAIが正確に実行するためには、元となる画像が顔の特徴(目、鼻、口など)を明確に認識できる必要があります。
そのため、障害物で遮られていない「正面向き」で、AIが顔のテクスチャや輪郭を詳細に分析できる「高解像度」(1080p出力サポート)の写真を使用することが強く推奨されます。
低解像度や不鮮明な画像、あるいは横顔や顔の一部が隠れた画像を使用すると、AIが顔の構造を誤認識し、不自然な動きや破綻したアニメーションを引き起こす原因となります。
風景画像に自然な動きを3秒で追加

KlingのI2V機能は、壮大な風景写真に「生命感」を吹き込むのにぴったりです。
静止した風景写真に、風、水、光といった自然な動きをわずかに加えるだけで、視聴者の没入感を高める「シネマグラフ」や「アンビエント動画」を作成できます。
例えば、森の画像に「leaves moving in the wind(風にそよぐ葉)」という動きを、寺院の画像に「water reflections(水の反射)」という動きを、モーションブラシやプロンプトで指示します。
5秒や10秒のクリップを生成し、それをループ再生させることで、ウェブサイトの背景やソーシャルメディアの投稿として活用できます。
この手法は、単に画像全体をパン(横移動)させるよりも、はるかに洗練された印象を与え、Klingはこれらの微細な動きを非常にリアルにシミュレートします。
Elements機能で炎・雨・雪エフェクトを重ね合わせ

Kling AIの「Elements機能」、一般に「モーションブラシ(Motion Brush)」と呼ばれる機能は、I2V生成において最も強力なコントロールツールの一つです。
この機能により、ユーザーは画像内の「特定の要素(Elements)」だけを動かし、他の部分を「静止(Static)」させることができます。
例えば、暖炉(Yule log)の画像に対し、モーションブラシで「炎」の部分だけを塗りつぶし、その部分だけが揺らめくように指示できます。
同様に、雪景色の画像に「snow falling(降雪)」を、都市の画像に「rain-soaked(雨に濡れた)」エフェクトをプロンプトで指示しつつ、モーションブラシで動きの方向や範囲を制御することが可能です。
このElements機能(モーションブラシ)を使いこなすことで、単なる「画像全体のアニメーション」から脱却し、意図した「特定の要素だけが動く」という、プロフェッショナルな映像表現が実現できます。
Kling AI 1.6と1.5モデルの機能比較

| 1.6モデル | 1.5モデル | |
|---|---|---|
| 人物の表情 | 表情・肌・動きが自然でシネマティック | 動きや表情が機械的になりやすい |
| 生成速度 | 高品質ゆえに処理負荷が高く、1.5より遅い | 1.6モデルよりも約30%高速 |
| プロンプト解釈の精度 | ・深い解釈が可能 ・複雑な意図を忠実に再現 | ・単純な構図なら十分 ・複雑な構図には不向き |
| スタイル適性(実写 / アニメ) | 実写・フォトリアル向け。物理演算の精度が高い | アニメ・ピクサー風向け。軽い動きで表現しやすい |
Kling AIは、ユーザーのニーズに合わせて複数のAIモデルを用意しており、特に「1.6」と「1.5」は主要な選択肢となります。
これらのモデルは、機能とパフォーマンスにおいて明確なトレードオフを持っており、プロジェクトの目的に応じて使い分けることが大事です。
ここでは、1.6と1.5の主な違いを比較し、どのような場合にどちらを選択すべきかを分析します。
1.6モデルは人物の表情変化がより自然
Kling 1.6モデルの最大の進化は、リアリズム、特に人物表現の圧倒的な向上にあります。
1.6は、プロンプトの意図をより深く理解し、物理的な動きや光の相互作用をリアルにシミュレートする能力が格段に向上しています。
Klingのコア機能の一つである「強化された表情(Enhanced Facial Expressions)」や「リアルな肌のテクスチャ」は、1.6モデルでその真価を発揮します。
直接比較では、1.6のカメラムーブメントは「滑らかで流動的(smooth and fluid)」、水の動きは「よりリアル(much more realistic)」であるのに対し、1.5は「機械的(mechanical)」で「静的(static)」と評価されています。
このリアリズムの追求が、人物の微細な表情変化をより自然に描写する能力に直結しており、実写や人物中心の映像を生成する場合、1.6モデルの選択は必須と言えます。
1.5モデルは生成速度が約30%高速
Kling 1.5モデルは、1.6と比較した場合、生成速度において利点があるとされています。
一般的に、AIモデルは品質とリアリズムを追求する(1.6モデル)ほど、計算リソースと処理時間が増加する傾向にあります。
1.5モデルは、1.6モデルほどの複雑な物理演算やプロンプト解釈を行わないため、より高速な処理が期待できます。
資料では、1.5の利点として「generation speed is faster(生成速度が速い)」と明確に述べられています。
このため、1.5は「タイトなスケジュール(tighter timelines)」や、品質よりも速度を優先する「シンプルなプロジェクト」でのドラフト作成に適していると推奨されますが、実際の速度はサーバーの混雑状況にも左右されます。
リアル映像なら1.6・アニメ風なら1.5を選択
モデルの選択は、生成したい動画のスタイル(実写かアニメか)によって決定すべきです。
前述の通り、Kling 1.6モデルは「リアルな映像」に特化しており、その強みは「リアルな物理演算」と「プロンプトへの忠実な再現性」にあります。
一方、アニメ(Anime)やピクサー(Pixar)といった非リアルなスタイルにおいて、Klingの評価は「Average(平均的)」や「Below average(平均以下)」と、実写(Cinematic: 4.8/5)ほどの高評価ではありません。
つまり、1.6の強力すぎるリアル志向の物理エンジンが、アニメ特有の誇張された動きを再現する上で、かえって「足かせ」になる可能性があるのです。
したがって、フォトリアルな実写映像を求めるなら1.6を、1.6のリアルな物理演算が不要な(あるいは邪魔になる)アニメ風のスタイルを試すなら1.5を、という使い分けがおすすめです。
プロが教えるKling AIでの動画生成のコツ

Kling AIで高品質な動画を安定して生成するためには、ツールの仕様を理解した「プロの視点」が必要です。
AIは万能ではなく、入力(プロンプトや設定)の質が、出力(動画)の質に直結するためです。
ここでは、Kling AIのポテンシャルを最大限に引き出すための、3つの実践的なコツを解説します。
プロンプトに色・時間・天気を必ず含める

生成される動画のクオリティを飛躍的に高める最も簡単な方法は、プロンプトに「色(Color)」「時間(Time)」「天気(Weather)」の3要素を必ず含めることです。
これらの要素は、AIがシーンの「ライティング(照明)」と「アトモスフィア(雰囲気)」を決定する上で、最も重要な手がかりとなります。
例えば、「A cozy cafe in Paris」(パリのカフェ)というプロンプトは曖昧です。
これを「A cozy cafe in Paris during a rainy evening」(雨の夜のパリのカフェ)とするだけで、AIは「ネオンの反射」「濡れた路面」「室内の暖かい光」といった具体的なビジュアルを構築し始めます。
同様に「warm golden light streaming over cobblestone streets」(暖かい金色の光が石畳に差し込む)や「fog or rain」(霧や雨)、「bathed in sunset gold」(夕日の金色に照らされて)といった表現は、動画のムードを劇的に変化させます。
生成待ち時間を10分から3分に短縮する設定

Kling AIの生成待ち時間を「10分から3分に短縮する」ための、ユーザーインターフェース上の「設定」ボタンは存在しません。
リサーチによれば、生成が遅延する(時には3時間や30時間待たされる)根本的な原因は、無料ユーザーの増加による「サーバーの過負荷(Overloaded Servers)」です。
システムは、リソースを割り当てる際、意図的に「有料ユーザーを優先(Prioritize paid users)」します。
ユーザーレポートでは、無料クレジット(またはクレジットパックのみ)のユーザーが30時間待ったのに対し、「Pro account」のメンバーは「長くても10分、通常はそれ以下(Standard modeで5分以下)」と回答しています。
つまり、待ち時間を短縮する唯一の「設定」とは、「有料プラン(サブスクリプション)に加入すること」であり、有料プランに加入すると、「優先生成レーン(Fast-track generation)」が適用され、待ち時間が劇的に短縮されます。
3ステップで誰でも思い通りの動画を作る手順

Kling AIで思い通りの動画を作成するには、試行錯誤を体系化する「3ステップの手順」が有効です。
ステップ1:アクセスとプロンプトの定義。Klingにログインし、「テキストから動画」または「画像から動画」を選択します。プロンプトには被写体、動き、シーン、そして色・時間・天気を具体的に定義します。
ステップ2:設定と生成。動画の長さ(5秒、10秒など)、アスペクト比、使用するモデル(1.6か1.5か)を選択します。「Creativity vs Relevance(創造性と関連性)」のスライダーを調整し、生成を実行します。
ステップ3:確認と反復(Refinement)。生成された動画を確認します。期待通りでなければ、プロンプトをより具体的に修正して再生成します。I2Vの場合は「Motion Brush」、T2Vの場合は「Video Extension」を使い、生成された動画をさらに修正・延長します。
Kling AIを使うときの注意点【重要】

Kling AIは非常に強力なクリエイティブツールですが、その利用には重大な注意点とリスクが伴います。
利用規約やプライバシーポリシーには、ユーザーの生成物やアップロードデータに関する厳格な制限が記載されており、これに違反すると法的な問題に発展する可能性があります。
アカウントを登録し、Klingを利用するということは、これらのルール全てに同意したことになりますので、利用を開始する前に必ず確認してください。
有料プランなら商用利用・販売が可能
この見出し「有料プランなら商用利用・販売が可能」は、リサーチに基づくと、非常に曖昧かつリスクを伴う解釈であり、注意が必要です。
Klingの利用規約(TOS)は、商用利用に関して一見矛盾した記述を含んでいます。
TOSの4.6項には「当社の書面による許可なく、商用目的で出力を使用または変更してはならない」と、商用利用を原則禁止する記述があります。
一方で、有料サービス規約では、有料の「メンバーシップサービス(Membership Services)」の特典として「ウォーターマークの削除権」が付与されるとあり、これは商用利用を前提とした機能と解釈できます。
規約では「クレジット(Credit)を利益目的(for profit)などの非個人的な目的で取得・使用してはならない」と明記されており、「クレジットパックでの利用は商用不可」、「月額サブスクリプション(Pro/Premier)での利用は商用可能」という二重構造である可能性が極めて高いです。
実在人物の顔は使用禁止・罰金リスクあり
Kling AIにおいて、実在する人物の顔(特に本人の同意がないもの)をアップロードし、動画を生成することは固く禁止されています。
これは、ディープフェイクや非同意のポルノ、名誉毀損といった深刻な社会的・倫理的問題を防ぐためです。
リサーチでは、AIプラットフォームが「欺瞞的または有害な方法(deceptive or harmful ways)」で個人の肖像を使用することを厳しく禁止していると指摘されています。
Klingの利用規約では、ユーザーが規約に違反して第三者に損害を与えた場合、その損失(弁護士費用を含む)をKlingに「補償(indemnify)」する義務を負うとされています。
見出しにある「罰金リスク」とは、Klingから直接科されるものではなく、この補償義務や、被害を受けた実在の人物から起こされる民事訴訟によって発生する金銭的リスクを指します。
個人情報を含む画像は絶対にアップロードしない
ユーザーは、顔写真に限らず、いかなる個人情報や機密情報(例:住所が写った写真、プライベートな文書)もKling AIにアップロードすべきではありません。
Klingのプライバシーポリシーによれば、Klingはユーザーがアップロードしたすべての「ユーザーコンテンツ(User Content)」を「保存し、処理する(store and process)」権利を有します。
これには、単なる画像データだけでなく、AIが顔の特徴を処理するために分析した「目、鼻、口のベクトルポイント(vector points)」や「輪郭線(contour lines)」といった、生体情報に近いデータも含まれます。
これらのデータは、コンテンツモデレーションやサービス改善の目的で分析されます。
また、規約では、これらのデータが「データ損失、データ漏洩または盗難(data loss, data leakage or theft)」のリスクにさらされる可能性があることを免責事項として記載しており、Klingにアップロードしたデータは、もはや完全にプライベートなものではなくなり、分析・漏洩のリスクを伴います。
Kling AIに関するよくある質問
Kling AIの導入を検討するにあたり、多くのユーザーが共通の疑問を持っています。
ここでは、Kling AIに関する「よくある質問」に対し、簡潔に回答します。
- Kling AIはスマホアプリで使える?
-
はい、Kling AIはGoogle Playストアなどで公式のスマートフォンアプリを提供しており、利用可能です。アプリ版では、PC版と同様にテキストから動画、画像から動画への生成、および最大3分までの動画延長機能がサポートされています。
- 生成した動画の画質はどのレベル?
-
有料プランを利用する場合、最大で4K解像度のプロフェッショナルレベルの画質が期待できます。画質はサブスクリプションのプランによって明確に階層化されており、無料プランでは最大720p、Standard (Basic) プランでは1080p、ProプランとPremierプランでは最大4K解像度での生成が可能です。
- 英語が苦手でもプロンプト作成できる?
-
はい、DeepLなどの高精度な機械翻訳ツールを利用すれば、英語が苦手でも問題なく高品質なプロンプトを作成できます。日本語で具体的に文章化(主語、場所、動作、天気など)し、それを機械翻訳してKlingに入力すれば、英語ネイティブでなくても精度の高い動画生成が可能です。
- 一度に複数の動画を同時生成できる?
-
はい、Klingは「バッチ生成(Batch Generation)」および「無制限のタスクキューイング(Queue unlimited tasks)」に対応しています。これにより、一つ一つの生成が完了するのを待つ必要がなく、複数のアイデアを次々と生成キューに追加して作業効率を上げることができます。
- 生成した動画の著作権は誰にある?
-
非常に複雑な問題ですが、現状の法解釈では、AIが生成した部分に著作権は発生しないとされています。ただし、Klingの利用規約は「サービス利用は、入力/出力に対する所有権の移転を構成しない」と定めており、ユーザーが完全な所有権を主張することを制限しています。事実上、ユーザーは「Klingの規約の範囲内で利用するライセンス」しか持っていないと解釈するのが最も安全です。
まとめ
Kling AIは、中国の大手IT企業「快手(Kuaishou)」が開発した、次世代の動画生成AIツールです。
テキストや画像から高品質な動画を生成でき、最大3分までの動画延長機能や、1080p・4Kといった高解像度出力、モーションブラシによる詳細なアニメーション制御など、プロフェッショナルな機能を備えていますよ。
料金体系はクレジット制で、無料プラン(66クレジット/日)から、月額10ドル程度のStandardプラン(660クレジット/月)、さらに上位のPro/Premierプランまで、ニーズに応じた選択が可能です。
ただし、無料版はウォーターマークが付き、生成速度も遅いため、実用には有料プランがおすすめです。
Kling AIは強力なツールですが、商用利用に関する規約が厳しく、実在人物の顔の使用や個人情報のアップロードは厳禁です。
これら規約を理解し、正しいプロンプト(色・時間・天気を含む具体的な英語指示)を用いれば、最強のクリエイティブパートナーとなり得ます。
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