
株式会社九州日立システムズでは、Copilotの導入によりAIの利用環境を整えていました。しかし、活用は議事録作成や提案のアイデア出しといった個人の業務補助に留まっており、「組織としてAIをどのように業務に組み込んでいくか」については明確になっていませんでした。
そこで同社は各事業部からエバンジェリストを選抜し、テックキャンプの伴走型AI研修を導入。研修を経て現場メンバーが開発した自動化ツールは、1作業あたり20分を要していた工程を20秒に短縮し、18部署へ展開することで、1ヶ月あたり合計360分(6時間)の作業時間を6分まで削減することが可能となりました。
本インタビューでは、AI導入を推進した担当者と、実際に現場で業務改善を実現した以下の4名に話を聞きました。


志水さん:当社ではCopilotの導入が進み、環境としては整いつつありました。ただ、外部のクラウド系サービスに機密情報を投入することにはセキュリティ上の制限があり「社内で許可されたツールのなかで、どう活用していくか」という前提がありました。実際の活用も、議事録の作成や提案のアイデア出しなど、どうしても個人レベルに留まっていました。
津國さん:そうです。親会社を含めたグループ全体で生産性向上の方針があり、AI活用の推進が求められていました。ただ、現場としては「ここから先、どう進めればいいのか」が決まっていませんでした。新しいツールを次々と入れるのではなく、今ある環境を使って業務にどう組み込むかを、組織として模索している状態でしたね。

志水さん:社内でもツールの使い方を教える研修は実施していましたが、それだけでは実務への応用が難しく、組織的な活用にまでは広がりませんでした。加えて、生成AIは技術のアップデートが非常に速いため、 自社の人財だけで教育体制を維持するには限界がありました。そこで、知識の習得に留まらず、実際の業務で成果を出すまで伴走してもらえる専門的な体制が必要だと考え、外部研修の検討を開始しました。
志水さん:はい。いくつか提案を受けましたが、動画学習などによる「一般的な知識の提供」に留まるものがほとんどでした。私たちが求めていたのは自社の業務に合わせた実践的なサポートであったため、 現場の課題に寄り添い、成果創出まで伴走してくれる点が決め手になりました。
志水さん:全員一斉にではなく、まず各事業部からエバンジェリストを選抜して先行育成する方針にしました。この選抜メンバーに成功体験を持ち帰ってもらい、事業部内へ広げるのが狙いでした。
津國さん:選抜の際には、AIへの意欲だけでなく、本業と並行して時間を確保できるか、部門の協力を得られる環境かどうかも重視しました。現場の業務は常に動いているため、実務で使える形まで持っていくには、周囲の理解という前提が欠かせません。
内田さん:メール作成や文章修正など、部分的な補助が中心でした。業務全体の効率化につながるかというと、正直そこまでのイメージは持てていなかったです。
的野さん:私も検索エンジンとして使ったり、文章作成の補助として使ったりする程度でした。そもそもAIを使って業務改善ツールを作れること自体、当時は知りませんでした。部内の工数を削減したい思いはありましたが、それをAIを活用して解決する具体的なイメージはできていませんでした。
内田さん:AIに対する認識が、文章作成を手伝ってくれる便利なツールから、 業務改善のためのパートナーに変わりました。研修内容が、操作方法を覚えるだけではなく、 自分の業務フローを分析して「どこにAIを適用すべきか」を考える構成だったのが大きかったと思います。
的野さん:私も同じで、AIが「頼れるパートナー」に変わりました。これまでは単なる検索ツールとしての活用でしたが、今は何か新しいことに取り組むとき 「まずAIに相談してみよう」という習慣が自然と身についています。
的野さん:私は定型業務を自動化するVBA*ツールの作成を目標に設定しました。プログラミングは未経験からのスタートであったため、最初はエラーが出るたびにまずCopilotに聞いて解決する手順を徹底しました。
*VBA(Visual Basic for Applications):ExcelをはじめとするMicrosoft Office製品の操作を自動化するためのプログラミング言語
的野さん:いいえ、そこで大きかったのがメンターの存在です。社内システムの画面遷移の処理など、AIだけでは解決しにくい企業特有の事情がありました。そこをメンターに相談し、 実務の前提を共有しながら一緒に解決の糸口を探してもらえたことで、開発を進めることができました。
的野さん:はい。技術指導だけでなく、 当社の業務背景まで理解して伴走してくれるメンターの存在は本当に心強かったです。このサポートのおかげで途中で挫折することなくツールを完成することができ、自走する力も身につきました。
内田さん:私はメルマガ文面作成の自動化に取り組みました。これまでは商材ごとにゼロから作成していたので、工数がかかる上に切り口が属人的になりやすい課題がありました。そこで、配信目的やターゲット条件を入力するだけで、Web遷移を促す文案を複数パターン自動生成する 「メルマガ作成エージェント」を構築しました。過去のメルマガや社内の表現ルールを読み込ませているので、当社のトーンに沿った文章がすぐに出てきます。
内田さん:商品系メルマガの作成が6〜10時間から4〜7時間へ、セミナー系メルマガが4〜5時間から約2時間へ短縮できました。ただ、工数削減だけが成果ではなく、 AIが提案する多彩な切り口のおかげで、実際の申し込み数が増加しました。時間と質の両面で成果を実感しています。
的野さん:私は、案件の売上承認に関わる進捗確認とフォロー表作成の自動化に取り組みました。もともとは、担当者が手作業で社内システムにログインしてデータを抽出し、Excelで加工して承認者向けのフォローメールの下書きを作るという定型作業を、特定の一人が行っていました。これを効率化するため、Copilotを活用してVBAのコードを組み、一連のフローを全自動化するツールを作成しました。 実行ボタンを押すだけで、ブラウザの起動からデータ取得、メールの下書きまで、すべてツールが自動で処理します。
的野さん:1作業あたり20分かかっていた工程が、約20秒で完了するようになりました。約98%の削減です。事業部内には18の部署があるので、 全部署に展開すれば360分(6時間)相当の作業が6分に収まる計算です。誰でもボタン一つで実行できるので、特定の人に頼っていた属人化も解消することができました。
津國さん:外部の視点が入ったことで「そもそもこの工程は本当に必要なのか」を根底から問い直せるようになったのが大きかったです。社内にいると、今までのやり方にとらわれがちですから。
志水さん:最終報告会での成果は想定以上で、部長層からも「この効果なら部署内で横展開したい」という声が出ています。以前はAI活用に対してイメージが曖昧だったメンバーにも、研修を通してAI活用の実感が生まれたようです。
的野さん:まずは事業部内で説明会を実施して、自分がAI活用や業務改善の窓口になりたいと考えています。私自身が未経験からツールを作成したため、その経験を還元していきたいです。
内田さん:私も、今回作成したエージェントを部内に展開して、メンバーの業務支援に取り組んでいく予定です。
志水さん:今回の取り組みで、エバンジェリストが業務にAIを適用する進め方を実践できました。今後はこの知見を各部署へ展開して、 業務でAIを活用することが当たり前の状態をめざしていきます。お客さまからも業務改善の相談は増えているので、社内で得た知見を対外的な提案にも生かしていきたいです。
津國さん:いきなり大きな変革を狙うのではなく、まずは手元の小さな業務から始める。そこで 小さな成功体験を得て、一つずつ積み上げていく。それが結果として、組織全体の現実的な変化につながると考えています。
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