
日本最大級の釣り専門放送局を運営する株式会社釣りビジョン。同社は自社で企画からロケ、編集までを一貫して行う制作体制を強みとしている一方で、限られた人員でいかに生産性を高めるかが課題となっていました。
そこで同社は「テックキャンプ AI活用支援サービス」の動画研修プログラムにメンター(講師)による伴走オプションを付加した「生成AI×業務改善研修 ベーシックプラン」を導入。選抜された社員が実務に直結するシステムを自ら開発し、番組制作における作業工数を大幅に削減する成果を上げました。
本取り組みについて、プロジェクトの推進責任者である社長室・室長の吉田さんと、現場で実際にシステムを開発した制作部・制作一課・課長の柴田さんにお話を聞きました。

吉田さん:現在の社会情勢において、採用や人材育成はどの企業にとっても大きな課題です。当社も例外ではなく、限られた人員と時間の中で生産性を向上させるためには、業務効率を上げるアプローチが不可欠だと考えていました。今はリモートワークの普及などもあり、ワークライフバランスが求められる時代です。社員個人のスキルアップに委ねるだけでは限界がありました。
吉田さん:はい。そうした課題を解決するための手段の1つとして、生成AIに関心を持っていました。自社に導入した場合どのような効果が得られるのか、期待と不安が半々でした。そのような状況の中、以前から繋がりのあったdivさんに相談させていただいたのが、最初のきっかけです。
吉田さん:実は当社の事業特性上、全社横断的な研修を取り入れるのが非常に難しいという事情がありました。当社は番組の企画からロケ、編集まですべての工程を自社で行っています。部署によって業務内容が全く異なるため、画一的な研修を実施しても、現場の生産性向上に直結しにくいという課題がありました。
吉田さん:当社の代表が、他社がテックキャンプの研修サービスを導入して、業務の時短や効率化に繋がったという成功事例を聞いたことが大きかったです。
また、共通のカリキュラムはあるものの画一的な研修ではなく、現場の課題に直接アプローチできる実践的な内容である点も魅力的でした。今回は全社員ではなく、20名を先行して選抜し受講してもらいました。結果として、それぞれが自分の業務に直結するツールを開発でき、一つの部署で形になったものを他の部署へ横展開するという、非常に有益な形を作ることができました。
吉田さん:その通りです。実は当社で利用している既存のシステムがあり、それを改修するためにベンダーへ依頼すると多額のコストがかかる予定でした。しかし、今回の研修を通じて社員が実装した機能を活用することで、その要件の大部分を自社内でカバーできることが分かったのです。
現場の課題解決を目的にスタートしましたが、高額なシステム改修費用をかけずに、短い研修期間でそれ以上の価値を持つ仕組みを実装できたことは、会社にとって非常に大きな収穫でした。テックキャンプの研修を選んで良かったと感じています。

柴田さん:調べ物を効率化したり、資料を要約したりするツール、といった程度の印象でした。当社のメディアの特性上、「リアルな釣り映像」を視聴者に届けることが価値であり使命ですので、映像そのものに生成AIを使うという判断には至っていませんでした。私自身のITスキルも、学生時代にHTMLに少し触れたことがある程度で、プログラミング経験は全くありません。
柴田さん:最初は「なかなか教材のボリュームがあるな」と戸惑いもありましたし、担当番組の制作が重なり非常に忙しい時期で。ロケで飛行機を待つ時間など、隙間時間を使ってなんとか学習を進めていました。
ただ、動画の中でプログラミングの話が出てきたとき、AIが代わりにコードを書いてくれると知ってから「面白そう!」と興味が湧いてきました。そこからは「AIを活用すればこんなこともできるのでは」と具体的なアイデアが次々と浮かぶようになりました。
さらに、メンターさんとの定期的な面談のおかげで、とても良いペースで学習を進めることができました。「次回の面談までに何をやってみようか」と相談して、毎週新しいことに挑戦するサイクルが生まれたんです。
柴田さん:まずは、ディレクター業務を楽にするためのツールを作りました。
例えば私の編集スタイルですとロケから帰社後、撮影素材を10時間ほどかけて見直し、誰がいつ何を喋っていたかを手書きでメモしています。出演者の発言に番組の最も大切な要素が含まれているからです。
そのメモからさらに半日ほどかけて番組の軸となる要点をまとめているのですが、それをAIに任せる仕組みを作ったところ、これまで半日かかっていた作業が数分程度で終わるようになりました。「こんなに簡単なんだ」と本当に驚きましたね。

柴田さん:はい。自分の課題があっという間に解決してしまったので「次は他の人の役に立つものを作ってみよう」と考えるようになりました。
そこで着手したのが、番組の字幕起こしシステムの開発です。釣り番組は専門用語が多く、地方では方言や、使う用語も変わってくることから、一般的な音声認識ツールでは誤変換だらけになってしまいます。しかし、AIに釣り用語などの参考資料を読み込ませて開発を進めた結果、非常に精度の高い字幕生成システムを作ることができたんです。
柴田さん:メンターさんのサポートのおかげで、AIに的確な指示を出すプロセスを学べたので、つまずくことはありませんでした。AIとの対話で分からないことがあれば「小学生にもわかるように教えて」と指示を出すと、非常に分かりやすい言葉で返してくれるので、よく活用していますよ。
柴田さん:まだ実運用に向けた調整中ではありますが、これまで1時間の番組の字幕起こしにかかっていた約5時間の作業が、約1時間ほどに短縮できる見込みです。社内にあるスペックの高いPCを使うと15分ほどで処理が完了することもありました。
AIと日本語で会話するだけで、専門用語にも対応できる実用的なシステムが作れてしまったことに、ただただ驚いています。
吉田さん:受講生それぞれがやりたかったことを、実質1ヶ月強の期間で想像以上に形にできたというのは、素晴らしい成果です。
また、業務効率化という直接的な成果以上に加えて「AIへの的確な指示は、人のマネジメントと同じである」と気づかされたことが大きかったですね。自分が思った通りに生成AIが動かない時、実は自分の指示の出し方が的確ではなかったのだと思い知らされました。仕事への取り組み方や、人との関わり方について改めて勉強になったと感じています。
吉田さん:今回、部署ごとに全く異なる業務を抱える中でも、現場の担当者がAIを活用して業務効率化ツールを開発し、同じような業務を持つ他の担当者や部署へ横展開していくという良い流れが生まれました。今後は、勤怠管理システムとの連携など、人事や総務といった管理部門でもAIを活用できるようマニュアル化を図り、全社的な業務改善を進めていきたいと考えています。
AIは決して何でも解決してくれる魔法ではありません。単純に「楽をしよう」「AIが何とかしてくれるだろう」という受け身のスタンスで使おうとすると、期待した結果は得られないと思います。
一方で「この課題を解決したい」という明確な目的を持って、AIを仕事のパートナーとして活用すれば、これほど心強いツールはありません。今までと同じ時間でより多くの仕事ができたり、新たな価値創造に時間を使えるようになったりと、組織にプラスの効果をもたらしてくれます。
今回の研修を通じて、社内にAI活用の種をしっかりと蒔くことができました。今後はこの取り組みをさらに広げ、自ら業務課題を解決できる人材を育成しながら、企業の成長へと繋げていきたいと思います。
組織の生産性向上やAIの活用方法に悩んでいる担当者は、まずは課題を持つ現場のメンバーに、テックキャンプのAI研修を受講してもらってみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、会社全体を変える大きな原動力になるはずです。